突然車のバッテリーが上がってしまったら......その時点で車は走行できなくなってしまい、身動きがとれなくなってしまいます。
そんな困った事態にならないためにも、バッテリーが上がったときにどう対処すれば良いか、あらかじめ知っておくことが大切です。
ここでは、バッテリーが上がってしまったときの症状から、その原因や対処法、予防法まで幅広くご紹介します。
- 目次
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1.バッテリー上がりの前兆
バッテリーの役割
バッテリーは、ヘッドライトやブレーキランプ、エアコンやカーナビなど、自動車の中にあるさまざまな電子機器に電力を供給している装置です。バッテリーによって動いている電子機器の中には、エンジンを始動する際に使用する「セルモーター(スターターモーター)」も含まれています。
そのため、バッテリーが上がる=セルモーターを動かすことができず、エンジンを始動することができません。バッテリーは自動車に欠かすことのできない装置と言えます。
こんな症状が出たらバッテリー上がりに注意!
それでは、どんな症状が出たら注意が必要なのでしょうか?バッテリー上がりが起こりそうになると、バッテリー電圧の低下により以下のような特定の症状が現れることがあります。
- ライトが暗い
- エンジンがかかりにくい
- アイドリングストップしない
- パワーウィンドウの開閉が遅い
すぐにバッテリー上がりに陥るとは限りませんが、車にこれらの症状が確認されたら整備工場などで早めにバッテリーの状態をチェックしてもらいましょう。
バッテリーが上がる原因
バッテリーが上がる原因の多くは、バッテリーを使用する機器の消し忘れにあります。また、バッテリーは何もしなくても自然に放電するため、日頃から走行して充電しなければいずれ空になります。特に、3年ほど使用したバッテリーは劣化し、容量が低下して上がりやすくなってしまいます。
バッテリーが上がるとどうなる?
バッテリーが上がると車内外のすべての電装品が動かなくなる他、リモコンキーが反応しなくなるためドアが開かなくなることもあります。エンジンだけがかからないといった場合にはセルモーターの故障やガス欠の可能性もありますが、他の部品も動かない場合はバッテリー上がりを疑いましょう。
2.バッテリーが上がったとき、やってはいけないこと
バッテリー上がりに際して間違った行動をしてしまうと、事故やさらなる故障など、より大きなトラブルにつながる恐れがあります。以下、バッテリーが上がったときにやってはいけないことを解説します。
無理に自分で対処しようとする
バッテリー上がりの正しい対処方法がわからないときは、無理に自分で対処しないことが大切です。車の電装系に触れると感電の危険があります。また、バッテリー上がりの基本的な対処方法の1つにジャンプスタートが挙げられるものの、配線をつなぐ場所や手順を間違えると別の箇所が故障する場合もあります。理由や対処法がわからない場合は無理をせず、後述するバッテリーが上がってしまったときの対処法を参考に対処しましょう。
何度もエンジンスタートを試す
セルモーターの始動は大量の電力を消費するため、エンジンスタートを試みるほどエンジンがかかりづらい状態に陥ります。一般的なバッテリーは、一定電圧まで下がるとたとえ新品でも急激に劣化を起こし、バッテリー交換が必要になります。過度なセルモーターの使用はバッテリーの劣化を著しく促進させるため、数度始動を試してエンジンがかかる気配がなければ、それ以上のエンジンスタートは諦めましょう。
長時間放置する
バッテリー上がりを起こした状態で長時間放置することも厳禁です。ただでさえ低下している電圧が自然放電によりさらに低下するため、時間経過と共にバッテリーの劣化が進行します。劣化が進んだバッテリーは絶対的な蓄電量が減り、充電しても完全に元の状態に戻ることはありません。同時に、その状態だと再びバッテリーが上がりやすくなっているため、速やかなバッテリー交換が必要になります。
3.バッテリーが上がってしまったときの対処法
バッテリーが上がってしまった場合の対処法を解説します。出先でバッテリー上がりを起こした際に取れる復旧の手段は主に以下の3つです。
ロードサービスを呼ぶ
バッテリー上がりに対処できない場合はJAFや加入している保険会社のロードサービスに連絡をしましょう。料金や細かなサービス内容は利用するロードサービスにより異なるものの、電話やメールで場所を伝えれば30分から1時間程度で現地まで駆けつけてバッテリー上がりに対処※してくれます。ロードサービスの連絡先を登録したうえで、携帯電話が使えない場合に備えて、連絡先を書いたメモも車内に常備しておきましょう。
※交通事情や気象状況により、サービスカーの到着に時間がかかる場合や、サービスカーが運行できずロードサービスを提供できない場合があります。(離島については、ロードアシスタンス対象外となる地域があります)
カーバッテリーを充電する
バッテリーが上がってしまった車を再び動かしたい場合には、市販のバッテリー用充電器やジャンプスターターと呼ばれる小型バッテリーが便利です。中でもジャンプスターターは、エンジンの始動に必要な電気を直接供給できるため、救援車がなくてもバッテリー上がりからの復旧が可能です。
充電器やジャンプスターターは、安価なものであればカー用品店などで数千円程度で購入できます。ただし、これらの製品はいずれも対応する電圧の車にしか使用できません。一般に普通車のバッテリーは12V程度が多いですが、車によっては電圧が異なる場合もあるため注意が必要です。
ジャンピングスタート
ジャンピングスタートとは、バッテリー上がりを起こした車と他車のバッテリーをブースターケーブルでつなぎ、必要な電力を分けてもらうことでエンジンを始動させる方法です。乗っている車に応じた許容電流値のケーブルであれば、1,000円〜2,000円程度の安価なもので構いません。ジャンピングスタートの具体的な方法は、後述する手順を参照してください。
電気自動車、プラグインハイブリッドカーの場合は?
電気自動車やプラグインハイブリッドカーには、駆動用と補機用の2種類のバッテリーが搭載されています。上がったバッテリーが補機用であれば、ジャンプスターターの使用やジャンピングスタートなどの方法で自ら対処することが可能です。
しかし、電気モーターを駆動させる駆動用バッテリーは、電圧が非常に高く危険なため、一般の方は点検や整備を行えないことになっています。駆動用バッテリーが上がった場合は、必ずロードサービスなどに対応を依頼しましょう。
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4.ジャンピングスタート前に準備するもの
ジャンピングスタートをするときに準備するものは以下の通りです。
救援車(正常な他の車)
救援車は故障車と同じ電圧である必要があります。一般的な自動車には12V車と24V車がありますので、車のマニュアルを見て確認しましょう。特に、自動車とトラックは電圧が異なるため、組み合わせてジャンピングスタートを行うことはできません。
また、ハイブリッド車は救援時に流れる電流によって電気回路が故障してしまうおそれがあるため、救援車として使用することはできません。なお、ガソリン車がハイブリッド車の救援車になることはできます。
その他、ジャンピングスタートができる乗用車の組み合わせは以下の表の通りです。
故障車 | 救援車 | ジャンプスタートの可否 |
---|---|---|
ガソリン車 | ガソリン車 | 可 |
ガソリン車 | ハイブリッド車 | 不可 |
ハイブリッド車 | ガソリン車 | 可 |
ハイブリッド車 | ハイブリッド車 | 可 |
ガソリン車 | トラック | 不可 |
ブースターケーブル
ブースターケーブルは、2台の車のバッテリーをつなぐためのケーブルです。バッテリーのプラス端子をつなぐ赤いケーブルと、マイナス端子をつなぐ黒いケーブルの2本セットになっています。ケーブルの先端は洗濯バサミのような、端子をしっかりつかめるワニ口のクリップになっています。ケーブルは車種によって種類が異なりますので、確認してから用意しましょう。ブースターケーブルはホームセンターやカー用品店、インターネット通販などで購入できます。
ゴム手袋
ジャンピングスタートをするときは、感電防止のため、ゴム手袋をつけて作業しましょう。
5.ジャンピングスタートの手順
ジャンピングスタートは手順を間違えると故障の原因になります。次の手順で進めましょう。
- ブースターケーブルの点検
ケーブルの断線や、被膜・クリップの破損などの異常がないか点検します。 - 車を近づける
故障車と救援車のバッテリーの位置を確認し、作業しやすく安全な場所に2台の車を近づけて停車します。両車のボンネットも開けておきます。 - エンジンキーをオフにする
故障車と救援車のエンジンキーをオフにし、ヘッドライトやルームランプ、エアコンなどのスイッチがオフになっていることを確認します。オフにしておくことで、電気が流れた際に故障を引き起こさないようにします。 - バッテリーをつなぐ
故障車と救援車のバッテリーをブースターケーブルでつなぎます。順番やつなぐ場所を間違えると、火花が飛び散ったり、バッテリーが破損したりするなど非常に危険です。バッテリーの位置やつなぎ方は車種によって異なるため、車のマニュアルを見てしっかり確認しましょう。 - 救援車のエンジンをかける
救援車のみエンジンをかけ、アクセルを踏んでエンジン回転数を1,500~2,000回転ほどに高く保ったまま5分ほど待ちます。故障車のバッテリーが少し充電されます。このとき、救援車がAT車ならパーキング、MT車ならニュートラルに入れて、必ずサイドブレーキをかけてください。 -
故障車のエンジンをかける
次に、故障車のエンジンをかけて始動すればジャンピングスタート成功です。 -
ブースターケーブルを外す
つないだときと逆の順番でケーブルを外していきます。
バッテリーをつなぐ手順
ブースターケーブルは以下のような手順でつなぎます。ジャンピングスタートが終わったら、つないだときと逆の順序で外してください。
- 赤のケーブルを上がったバッテリーのプラス端子につなぐ
- 赤のケーブルの反対側を救援車のバッテリーのプラス端子につなぐ
- 黒のケーブルを救援車のマイナス端子につなぐ
- 黒のケーブルの反対側をバッテリーが上がった車の金属部分(エンジンンやフレームなど)につなぐ
6.ジャンピングスタートはあくまでも臨時対応
ジャンピングスタートはバッテリー上がりの基本対処法ではあるものの、救援車がいなければできません。ジャンプスターターも、本体に十分な電力が蓄えられていなければ必要なときに使えません。また前述したように、どちらの作業も感電や故障などの危険が伴うため、ジャンピングスタートやジャンプスターターはあくまで臨時対応と考えましょう。
バッテリー上がりへの対処は、専門家が現場まで復旧に駆けつけてくれるロードサービスの利用が便利です。ロードサービスには種類があり、それぞれサービス内容や費用、利用条件などが異なります。各ロードサービスを利用した際の費用の相場は以下になります。
民間のロードサービスの場合
民間のロードサービスの多くは会員制を採用しています。中でも代表的なロードサービスであるJAFは、1,500~2,000円の入会費と4,000円の年会費を支払うことで、バッテリー上がりなどの軽微なトラブルの際に無償で救援してくれます。会員でない場合も対応してくれますが、バッテリー上がりの救援は一般道だと22,000〜26,000円程度、高速道路だと27,000〜46,000円程度の費用が発生します。
自動車保険に付帯できるロードアシスタント特約(ロードサービス)の場合
自動車保険にロードアシスタント特約(ロードサービス)を付帯している場合は、バッテリー上がりのような軽微なトラブルであれば、高速道路料金や部品代などの実費が発生しない限り救援の費用がかかりません。また、利用しても翌年の等級などに影響しません。ただし、1回あたりの救援に費用上限が設けられている場合や、作業内容によっては使用できる回数に制限が設けられている場合もあるため、確認しておきましょう。
カー用品店の場合
ロードサービスはカー用品店でも実施している場合があり、民間のロードサービスと同様にトラブルに対処してくれます。年会費も民間ロードサービスと同じ2,000円〜4,000円程度です。
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7.バッテリー上がり復旧後の注意点
ロードサービスやジャンピングスタートなどでエンジンが始動できたからといっても安心はできません。バッテリー上がりからの復旧直後はバッテリー電圧が低いままであるため、エンジンが停止してしまえば再びエンジンがかからない状態に陥ります。バッテリー上がりから復旧した後は、可能な限り電装品を使わずに30分から1時間ほど走行し、バッテリーが十分に充電できるまでエンジンを停止しないようにしましょう。
エンジンが始動できないほどの電圧低下を起こすと、バッテリーはそれにより確実に劣化します。1度でもバッテリー上がりを起こしたら、新品のバッテリーであってもディーラーや整備工場などの専門店で状態をチェックしてもらうようにしましょう。また、寿命を迎えてしまったバッテリーは交換が必要です。
バッテリー交換のタイミングや手順はこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
8.バッテリー上がりを防ぐための対策
バッテリー上がりを回避するには、バッテリーの特性を知り、日頃から定期的に点検やメンテナンスを行うことが大切です。ここではバッテリー上がりを防ぐための対策法を解説します。
こまめに走行・アイドリングする
エンジンを駆動させている間、車の中ではオルタネーターという発電機がバッテリーに絶えず電気を供給します。そのため、車を走行させることはそれ自体がバッテリーの充電を兼ねています。
また、定期的に30分程度エンジンをかけ、走行せずにアイドリングを行うことでもバッテリー上がりは防止できますが、発電効率はそれほど高くはありません。効率よく充電を行いたいのであれば、エンジンの回転数を2,000回転程度に保ち、時速約50キロメートルの速度で20分以上走行するのがよいとされています。
定期的にバッテリーを交換する
バッテリーは消耗品なので交換が必要です。寿命は2~4年程度と言われていますが、実際の耐用年数は環境や使い方によって大きく差が生じます。バッテリーが上がってから交換すると、ジャンピングスタートのための救援車のお願いをしたり、ロードサービスに来てもらったりすることになり、余計に手間やコストがかかります。そうした事態を防ぐためにも、バッテリーは余裕を持って交換しておきましょう。
充電器で充電しておく
バッテリー上がりはバッテリー自体の大幅な劣化につながるため、充電量が不安な場合には早めに充電器を使用することが大切です。特に、長らく動かしていなかった車を運転する際には、エンジンをかける前にあらかじめ充電しておくことでバッテリー上がりを予防できます。
カー用品店などでは、バッテリーに直接電気を供給する専用の充電器が販売されています。多くの充電器はバッテリーとプラス極同士を赤いケーブルで、マイナス極同士を黒いケーブルでつなぐことで手軽に充電が可能です。
ただし、過度な充電はバッテリーの劣化を招くため、充電はバッテリーの最大容量の90%程度で止めておくことが大切です。充電器の操作方法や電圧は製品によっても異なるため、使用する際には必ず付属の取扱説明書を確認してください。
業者にメンテナンスを依頼する
何らかの不具合でバッテリーの充電が上手くいかない場合や、操作に不安を感じる場合には専門家を頼ることをおすすめします。近くの整備工場やディーラーに問い合わせ、バッテリーの充電やメンテナンスを依頼しましょう。
特に、すでに一度バッテリーが上がってしまっている場合には、バッテリーの劣化が予想されることから、状態を確かめるためにも点検が必要です。
9.監修コメント
カー用品店では、さまざまなタイプのバッテリーが販売されています。それだけ、車によって適合するバッテリーは違うということです。
特にアイドリングストップ車用のバッテリーは、通常車用と性能に大きな違いがあります。アイドリングストップ車に通常車用のバッテリーを使用すると、バッテリーの寿命が極端に短くなったり、アイドリングストップ機能に異常が発生したりするなどのリスクがあります。
アイドリングストップ車用のバッテリーは通常車用よりも高額ですが、必ずメーカーが推奨するタイプを使用するようにしましょう。