バッテリーが上がった場合、他の車から電力を分けてもらうことでエンジンを再始動することができます。この時に必要となるのが、ブースターケーブルです。ただし、ブースターケーブルは正しい手順で使用しないと、ショートや故障につながる恐れもあります。当記事では、ブースターケーブルのつなぎ方や選び方まで紹介します。
- 目次
-
1.ブースターケーブルとは
ライトの消し忘れなどでバッテリーの電力を消費すると、エンジンがかからなくなってしまうことがあります。この時、バッテリー上がりの車(故障車)と他の正常な車(救援車)のバッテリーをつなぎ、一時的に電気を分けてもらうことで、エンジンを始動させる方法があります。これを、「ジャンピングスタート」といいます。この際に、故障車と救援車のバッテリーをつなぐための専用ケーブルがブースターケーブルです。
ブースターケーブルは、バッテリーの+極側をつなぐための赤いコードと、-極側とつなぐための黒いコードの2本で1セットです。各コードは、感電やショート防止のために絶縁カバーで覆われています。コードの先端には、ワニ口クリップが付けられており、このクリップをバッテリーや金属面に挟んで使用します。
バッテリーケーブルは、カー用品店やホームセンターのカー用品コーナー、ネット通販などで販売されており、値段は数千円程度から購入できます。
2.ブースターケーブルの選び方
ブースターケーブルを使ったジャンピングスタートは、やり方を間違えると故障や事故につながる可能性がありますので、基本的にはロードサービスなどのプロに依頼することをおすすめします。ここでは、万が一のトラブルに備えてバッテリーケーブルを用意しておく場合、どのような点に気をつけて選べばよいのかを紹介します。
許容電流値
ブースターケーブルを選ぶ際に最も大事なのが、電流値です。車種によって必要な電流値が異なり、その値よりも許容電流値が小さいケーブルは使用できません。ブースターケーブルを選ぶ際には、自身の車が必要な電流値よりも許容電流値が大きいケーブルを選ぶようにしましょう。車種別の必要な電流値の目安は、以下の通りです。
軽自動車、400cc以下のバイク | 電流値50A以下 |
---|---|
2000cc以下の乗用車、バイク | 電流値80A |
2000cc以上の乗用車、大型乗用車 | 100A |
大型トラック | 120A以上 |
許容電流値は商品パッケージに記載されているので、それを確認するようにしてください。
長さ
ブースターケーブルは、3m〜5mのものが多く売られています。故障車と救援車を近づけられる場合には、短い長さのものでも十分かもしれませんが、状況によっては故障車と救援車が離れた状態で、ジャンピングスタートを行わなければいけないケースもあります。「長さが足りなかった」という事態を防ぐために、故障車と救援車のバッテリーをつなぐのに十分な長さのケーブルを選びましょう。
そのためにも、自身のバッテリーの位置を確認しておくことも大切です。一般的にバッテリーはエンジンルーム内にありますが、車種によっては奥まった場所にあったり、運転席や助手席の下にあったりと位置が異なります。あらかじめ、車の取扱説明書などでバッテリーの位置を確認しておくとよいでしょう。
クリップの形状
ブースターケーブルのクリップの形状も、選ぶ際のポイントです。クリップの先端部分まで絶縁カバーで覆われているケーブルや、持ち手は絶縁カバーで覆われているものの、先端は金属面が剥き出しになっているケーブルなどが売られています。安全面を考えると、クリップの全体が絶縁カバーで覆われているものを選ぶとよいです。バッテリー同士をつなぐ際に、クリップの金属面が他の金属面に当たってしまうとショートする恐れがあるためです。
3.ブースターケーブルの使い方
ブースターケーブルは使用法を誤ると、車両火災につながる場合もあります。危険を伴う作業ですので、無理せずロードサービスなどに救援要請することをおすすめします。しかし、どうしても自身でジャンピングスタートを行わなければならない時のために、注意点や手順について解説します。
救援車の注意点
ジャンピングスタートを行う際には、まず救援車を用意する必要がありますが、救援車は故障車と同じ電圧でなければなりません。多くの場合、バイク、軽自動車、普通車などは12V、トラックやバスなどの大型車は24Vです。
なお、ハイブリッド車の多くは、ハイブリッドシステム等が故障する恐れがあるため、救援車にはなれません。逆に、ガソリン車がハイブリッド車の救援車になることは可能です。ただし、ハイブリッド車や電気自動車はバッテリーを2つ搭載しており、素人ではどちらのバッテリーが上がっているのかの判断が難しいです。ハイブリッド車や電気自動車のバッテリーが上がった場合には、ロードサービスなどのプロに対応をお願いしましょう。
使用前にはケーブルのチェック
ブースターケーブルを使用する前には、しっかりと点検を行いましょう。被膜が劣化してボロボロになっていないか、ケーブルが断線していないか、クリップが壊れていないか等をチェックします。もし破損や故障などが見られたら、そのケーブルは使用しないようにしましょう。
ブースターケーブルのつなぎ方
まずは、故障車と救援車を安全な場所に停めます。路上で作業をする場合には、三角表示板などを設置し、周囲への注意喚起も怠らないようにしましょう。
- 故障車・救援車のエンジンキーをオフにする
故障車はエンジンだけではなく、ヘッドライト、ルームランプ、エアコンなどのスイッチも切っておきます。また、故障車・救援車ともに、AT車であればパーキング、MT車であればニュートラルに入れ、サイドブレーキをかけておきましょう。 - バッテリーをつなぐ
故障車と救援車のバッテリーをつなぎます。手順を間違えると、故障や破損の原因になりますので、以下の手順に沿って行うようにしてください。
①故障車のバッテリーの+端子に、赤いケーブルをつなぐ
②赤いケーブルの反対側を、救援車のバッテリーの+端子につなぐ
③救援車のバッテリーの−端子に、黒いケーブルをつなぐ
④黒いケーブルの反対側を、故障車の金属部分(エンジンやフレームなど)につなぐ - 救援車のエンジンをかける
アクセルを踏みエンジン回転数を高め(1,500〜2,000回転)にしたまま、5分ほど待ちます。この間に、故障車のバッテリーが充電されます。 - 故障車のエンジンをかける
救援車のエンジンをかけて少し経ったら、故障車のエンジンを始動させます。
ブースターケーブルの外し方
無事に故障車のエンジンがかかったら、つないだ時と逆の順番(④→③→②→①)でブースターケーブルを外しましょう。ブースターケーブルを外した後は、故障車のエンジンはすぐに止めず、しばらくかけておきます。バッテリー再始動後は、電圧が低い状態なので一度エンジンを止めてしまうと、またかからなくなってしまう可能性があるからです。
また、ジャンピングスタートはあくまで応急処置です。エンジン再始動後は、すみやかに最寄りの自動車整備工場などに行き、専門家に車を点検してもらうようにしてください。
4.エンジンがかからない!そんな時は?
ジャンピングスタートを試みてもエンジンがかからない場合は、無理せずロードサービスを呼びましょう。依頼先としては、主にJAFと、自動車保険に付帯しているロードサービスがあります。
JAFは会員・非会員ともにロードサービスを依頼できますが、非会員の場合は費用が割高になります。自動車保険は、ご自身の契約にロードサービスが付帯されている場合のみ利用できますが、多くの場合、費用は無料です。もし付帯されているかわからない場合でも、トラブルの際は一度自動車保険会社に問い合わせてみるとよいでしょう。
なお、両者の大きな違いはサービスの適用対象です。自動車保険は「契約している車両」がサービスの適用対象になるので、レンタカーや友人の車などの運転時にはロードサービスを利用できません。一方JAFは、「契約している人」が対象なので、別の車を運転している時でもロードサービスを利用できます。
自動車保険のロードサービスは、バッテリー上がりによって、車移動と帰宅が困難になった時、その際にかかる移動や宿泊費用のサポートを行っている会社もあります。JAFでは、対象施設の宿泊費やレンタカーの割引はあるものの、ロードサービス利用時の移動費用等の補償サービスはありません。
このように両者にはいくつか違いがありますが、詳細は以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
5.監修コメント
バッテリー上がりを起こしても、何人かで車を押せばエンジンを始動させられると聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。それは「押しがけ」といって、ギアをニュートラルに入れて車体を押してもらい、2速か3速に入れてクラッチペダルを踏んで、エンジンを始動させる対処法です。ブースターケーブルも救援車も必要ありません。
ただ、「押しがけ」ができるのはMT車のみです。最近は使える場面がとても少なくなっていますが、バッテリー上がりを起こしているMT車に遭遇したときなどのために、覚えておくとよいかもしれません。