家族や知人から車を譲り受けた場合や、販売店やオークションで中古車を購入した場合は、名義変更手続きを行わなくてはなりません。ここでは、自分で名義変更する場合と業者に頼む場合、それぞれの手順と必要な書類について解説します。また、自動車保険の名義変更についても触れます。
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自動車の名義変更とは
名義変更とは、車の所有者が変わった際に行う手続きであり、正式には「移転登録」といいます。販売店で中古車を購入した場合は、販売店側で手配などをしてくれる場合がほとんどのため、一般的には馴染みが薄い手続きです。
しかし、家族や知人から車を譲り受けた場合や、ネットオークションなどで車を購入した場合には、必ず名義変更手続きをして車の所有者登録情報を変更する必要があります。名義変更がされていない状態では、車を使用することはできるものの、車検や廃車の手続きをすることができません。
名義変更手続きの方法・流れ
名義変更手続きは、新たに車を使用する住所を管轄する運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)に必要書類を提出する必要があります。手続きの流れは以下の通りです。
- 必要書類の準備
- 新所有者の管轄地域の陸運局(軽自動車検査協会)へ行く(ナンバー変更が必要な場合は車も必要)
- 窓口で手数料納付書・申請書を入手
- 手数料分の印紙を購入
- 申請書を作成
- 申請書を提出
- 新しい車検証の交付
- 自動車税・自動車取得税の申告
- 交付窓口に古いナンバープレートと新しい車検証を渡す(管轄地域が変わる場合のみ)
- 新しいナンバープレート受取・封印(管轄地域が変わる場合のみ)
- 手続き終了
名義変更手続きに必要な書類のなかには、発行までに1週間ほどかかる書類もあるため、事前に書類の準備をしておかなくてはなりません。そのうえ、名義変更手続きは受け渡しがあった日から15日以内に行うように定められており、自分で名義変更をする場合はスケジュール管理が大変です。
さらに、運輸支局は平日しか開庁していないうえ、車庫証明を受けるための警察署窓口も平日しか受付しておらず、平日の日中に仕事をしている方には手続きをするのが難しい現状があります。
もし平日に自分で名義変更することが難しい場合は、「OSS申請」か、自動車販売店や行政書士などに相談するとよいでしょう。OSS申請とは「ワンストップサービス」の略称であり、インターネット上で名義変更などの自動車保有関係手続きができるサービスです。車庫証明書の申請や、運輸支局での書類作成、手数料の支払い、納税などの煩雑な手続きをオンライン上で行うことができます。一部地域を除く多くの都道府県で利用できるため、自分で名義変更をするのであれば上手に活用しましょう。
名義変更に必要な書類
普通車の名義変更に必要な書類はすべて実印が必要であるため、実印確認のための印鑑証明書を役所などで発行してもらう必要があります。ただし、軽自動車の場合は認印の使用が認められているため、印鑑証明書は必要ありません。また一部地域を除き車庫証明も不要であるため、手続きや書類が簡略化されます。
また、所有者以外が名義変更手続きをする際は、実印が押された委任状が必要になります。旧所有者が代行業者に手続きを委託する場合や、旧所有者が新所有者に手続きを委託する場合でも委任状が必要です。
自分で名義変更する場合
自分で名義変更をする場合は下記の必要書類を揃え、新所有者の管轄地域の陸運局で手続きを行います。
【普通自動車の名義変更に必要な書類】
必要書類 | 当日現地で入手できるもの | |
---|---|---|
旧所有者が準備するもの | 譲渡証明書(旧所有者の実印の押印があるもの) | |
印鑑登録証明書(発行日後3ヵ月以内) | ||
車検証(車検が切れていないこと) | ||
住民票など ※旧所有者の氏名または名称、もしくは住所に変更がある場合 |
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委任状(旧所有者の実印の押印があるもの) ※旧所有者以外が手続きする場合 |
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ナンバープレート ※管轄地域が変わる場合。なければ車両番号標未処分理由書 |
||
新所有者が準備するもの | 新所有者の印鑑登録証明書(発行日後3ヵ月以内) | |
新使用者の車庫証明書(発行日後おおよそ1ヵ月以内) | ||
手数料納付書 | ◯ | |
自動車税・自動車取得税申告書 | ◯ | |
申請書(第1号様式) | ◯ |
なお、車庫証明書(自動車保管場所証明書)は、名義が変わっても、同じ住所の敷地内に車を保管するのであれば不要になります。たとえば、「同居している家族から車を譲渡された」「会社の寮などで同じマンションに住んでいる友人から譲渡された」といったケースでは使用の本拠(保管場所)が変わらないため、基本的に車庫証明書は必要ありません。
【軽自動車の名義変更に必要な書類】
必要書類 | 当日現地で入手できるもの | |
---|---|---|
旧所有者が準備するもの | 申請依頼書(旧所有者の認印の押印があるもの) ※新所有者が申請する場合 |
|
車検証(車検が切れていないこと) | ||
ナンバープレート ※管轄地域が変わる場合 |
||
新所有者が準備するもの | 新使用者の住所を証する書面の写し(マイナンバーが記載されていない住民票など/発行後3ヵ月以内) | |
自動車検査証記入申請書(軽第1号様式) | ◯ | |
軽自動車税(種別割)申告書 | ◯ | |
軽自動車税(環境性能割)申告書 | ◯ |
上記の他に車庫証明書(自動車保管場所届出書)が必要な地域では、名義変更が終わった後、管轄の警察署へ届出が必要なこともあります。また、車検証と印鑑登録証明書で記載された住所・氏名が異なっている場合や、旧所有者が亡くなっている場合は、戸籍謄本など他の書類が必要になることがあります。
販売店や行政書士に依頼する場合
販売店で車を購入する場合は、販売店に名義変更手続きの手配などを依頼することができます。また、名義変更を請け負っている行政書士事務所もあります。販売店や行政書士に依頼する場合に必要な書類は下記の通りです。
【普通自動車の名義変更を販売店や行政書士に依頼する場合に必要な書類】
必要書類 | |
---|---|
旧所有者が準備するもの | 譲渡証明書(旧所有者の実印の押印があるもの) |
印鑑証明書(発行日後3ヵ月以内) | |
車検証(車検が切れていないこと) | |
申請依頼書(旧所有者の実印の押印があるもの) | |
ナンバープレート ※管轄地域が変わる場合。なければ車両番号標未処分理由書 |
|
新所有者が準備するもの | 新所有者の印鑑証明書(発行日後3ヵ月以内) |
新使用者の車庫証明書(発行日後おおよそ1ヵ月以内) | |
申請依頼書(新所有者の実印の押印があるもの) |
【軽自動車の名義変更を販売店や行政書士に依頼する場合に必要な書類】
必要書類 | |
---|---|
旧所有者が準備するもの | 申請依頼書(旧所有者の認印の押印があるもの) |
車検証(車検が切れていないこと) | |
ナンバープレート ※管轄地域が変わる場合 |
|
新所有者が準備するもの | 申請依頼書(新所有者の認印の押印があるもの) |
新使用者の住所を証する書面の写し(マイナンバーが記載されていない住民票など/発行後3ヵ月以内) |
自分で名義変更するときと同様に、車検証と印鑑登録証明書で記載された住所・氏名が異なっている場合や、旧所有者が亡くなっている場合は、戸籍謄本など他の書類が必要になることがあります。
名義変更にかかる費用
普通車の名義変更手続きを自分で行った場合の事務費用は、合計で4,000~5,000円程度です。内訳は、移転登録手数料(印紙代)が500円、車庫証明書の取得費用が2,000円前後、車を使用する管轄地域が変わる場合は、ナンバープレート代として1,500円前後がかかります。軽自動車の場合は事務手数料が無料のため、必要なのはナンバープレート代の1,500円前後のみです。ただし、地域によっては車庫証明書の取得費用がかかります。
行政書士に名義変更書類の作成を代行してもらう場合は、上記の諸費用に加え、代行手数料がかかります。車庫証明を含めて代行してもらう場合や、運輸支局手続きだけを代行してもらう場合など、代行範囲によって請求金額は上下します。
車の取得価格に応じて環境性能割(旧自動車取得税)も納める
名義変更の事務費用に加えて、手続きの際には「自動車取得税」から仕組みと名称が変更された「環境性能割」を収める必要があります。中古車の環境性能割の税額は、車種や年式、環境への負荷度合いによって決まるため、名義変更をした車に応じて税額が変動します。ただし、車の残存価額が50万円以下の場合は課税されません。
車の名義変更をする場合の注意点
車自体の名義変更は運輸支局で行えますが、自動車保険の名義変更や内容変更は保険会社での手続きが必要です。自賠責保険と任意保険の名義変更に関する注意点を解説します。
自賠責保険の名義を変更する
自賠責保険は車自体にかけられる保険であるため、車検期間が残っている状態であれば補償されます。しかし、事故の際の手続きに手違いが起こる場合があるため、車の名義変更手続きと同じタイミングで自賠責保険の手続きも行いましょう。名義変更手数料はかかりません。
必要書類
- 自賠責保険(共済)証明書
- 自賠責保険(共済)承認請求書(保険会社で用意。譲渡人と譲受人両方の押印があること)
- 譲渡意思の確認ができる書類
- 保険契約者(譲渡人)の実印と印鑑証明書
- 本人確認書類(免許証・保険証など)
自動車任意保険の名義を変更する
任意保険は車両や搭乗者、モノ(対物)にかけられる保険です。名義変更をして車を手に入れた場合は、新規加入および車両入替手続きが必要です。手続きには、新しい車検証に記載された「登録番号(ナンバープレート番号)」「初度登録年月(軽自動車の場合は初度検査年月)」「型式」「車台番号」「車両所有者」などの情報が必要です。
※電子車検証の場合、所有者の情報はICタグに格納されています。詳しくは「電子車検証の見方について教えてください。」をご確認ください。
等級の引継ぎをする
同居している家族や配偶者から車を譲り受けた場合は、名義変更をすることで任意保険の等級引継ぎができます。夫から妻や、親から同居している子へ車を譲渡する際などには、その車を使用していた方の等級がそのまま引き継がれるため、保険料が安く済む場合があります。新しい保険内容を決定したら、等級を引き継いだ場合と、等級を引き継がない場合の保険料を比べてみましょう。
車庫証明書(自動車保管場所証明書)は早めに申請する
車庫証明書は正式には「自動車保管場所証明書」といいます。名義変更によって駐車場所が変わる場合に必要になります。申請、取得は新所有者の管轄の警察署で行います。発行まで1週間ほどかかることがありますので、先に手続きをしておきましょう。
車庫証明書については下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
監修コメント
行政書士法第19条は、他の法令に定めがある場合を除き、行政書士でない者は他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類の作成を業として行うことができないと定めています。これに違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。これらの規定が広く知られるようになり、自動車関連手続きにおいては、以前まで後を絶たなかった悪質なブローカーを排除できているといいます。
車庫証明や名義変更の書類作成も、行政書士でない者が手数料などを受け取って代行していたら行政書士法違反になります。料金を支払って書類の作成を依頼する場合は、必ず行政書士へお願いします。