軽自動車は普通自動車よりも車検費用が安い傾向にありますが、なかにはより費用を抑えるために「ユーザー車検」という方法を選択するオーナーもいます。当記事では、そんなユーザー車検と通常車検の費用の差や、実施にあたっての注意点などを解説します。
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1. 軽自動車のユーザー車検とは
車が保安基準を満たしているか検査する「車検」の実施は、日本ではすべての自動車に対して課せられている義務です。軽自動車を含む自家用乗用車の場合、車検の有効期間は新車登録をする初回は3年、2回目以降は2年と決められており、その車を使い続ける限りは定期的に車検を受け続けなくてはなりません。
車検は車の構造や保安基準についての専門知識が必要な検査のため、ディーラーや整備工場といった業者に依頼するケースが一般的です。しかし、オーナー自身が運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)に車を持ち込み、自分の手で車検を行う「ユーザー車検」という方法も存在します。
ユーザー車検は業者が間に入らない分、通常の車検と比較して費用を抑えられるほか、車検にかかる日数も短縮できるといったメリットがあります。ただし、ユーザー車検の実施にはリスクや注意点も存在するため、正しい知識にもとづいて慎重に選択することが大切です。
軽自動車の車検にかかる費用の内訳
ユーザー車検が安い理由を知るためには、まずは車検費用の内訳を知る必要があります。車検にかかる費用は、大きく「法定費用」と「車検基本料」の2種類に分けられます。
法定費用とは、自動車重量税や自賠責保険料、検査手数料(印紙代)といったあらかじめ法律で決められている費用を指します。法定費用は金額こそ自動車の区分などによって変わるものの、車検の際には必ず発生し、ユーザー車検の場合でも必ず支払わなくてはなりません。
一方で、車検基本料は車検を業者に委託する際の料金のことです。金額は業者自身が決定しており、業者に依頼していない場合は支払う必要はありません。ユーザー車検の費用が業者に依頼する場合よりも安くなるのは、この車検基本料が発生しないことが大きな要因として挙げられます。
2. 通常車検・ユーザー車検の相場
車検にかかる費用の相場は、通常車検とユーザー車検の場合で次のような違いがあります。
通常車検の相場
業者に依頼する場合、軽自動車の車検の相場はおよそ6~12万円程度とされています。内訳としては、法定費用が約2~3万円、車検基本料が約4~9万円であり、車検基本料は車の劣化状況によっては10万円を超えるケースもあります。
ユーザー車検の相場
ユーザー車検では車検基本料は発生しないため、車検費用の総額も基本的に法定費用のみの2~3万円程度に抑えることが可能です。ただし、車検に際して修理や部品の交換が必要なケースもあり、その場合は別途整備代がかかります。
3. 軽自動車のユーザー車検の流れ
軽自動車の場合、ユーザー車検は以下のような流れで実施します。
準備物の用意
ユーザー車検の会場では、以下のものが必要となります。実施の前に用意しておきましょう。
- 自動車検査証(車検証)
- 軽自動車税(種別割)納税証明書
- 自賠責保険(共済)証明書
- 点検整備記録簿
- 使用者の認印
- 継続検査申請書(軽専用第2号様式)
- 自動車重量税納付書
軽自動車税(種別割)納税証明書の提示は、継続検査であれば省略できる場合もあります。また、軽自動車税(種別割)の納付情報は令和5年1月から電子化されており、軽自動車税納付確認システム(軽JINKS)への登録が済んでいる場合には、原則として納税証明書を提示する必要はありません。
車検の予約
ユーザー車検の実施にあたっては、事前の予約が必須です。軽自動車の場合、まずは軽自動車検査協会のサイトで最寄りの事務所や支所を調べ、ユーザー車検を実施する検査場を決めましょう。
お問い合わせ先(全国の事務所一覧)予約は検査場に直接電話で問い合わせるほか、軽自動車検査協会の予約システムから行うことも可能です。予約システムの利用にはアカウントの登録が必要となります。
軽自動車検査予約システム検査の実施
当日は予約した検査場に車を持ち込み、電光掲示板や音声ガイダンス、検査官の指示などにしたがって検査を実施します。スムーズに検査できるよう、ホイールキャップは検査の前にあらかじめ外しておきましょう。詳しい検査の内容は下記の記事で確認できます。
なお、検査では書類の不備や整備不良、運転操作ミスなどにより不合格となることもありますが、その場合は不合格になった検査のみを再び受けることが可能です。ただし、再検査は当日2回までであれば無料で実施できますが、3回目以降は検査手数料が発生するため注意が必要です。
また、当日の再検査が難しい場合には「限定自動車検査証」を発行し、後日再検査を行うこともできます。この限定自動車検査証があれば、車検証の有効期間が残っている間は、整備目的に限り当日を含めて15日間その車を運転することができます。
検査標章の受取
すべての検査に合格すれば、新たな自動車検査証と検査標章が交付されます。いずれも運転に不可欠なものですので、受け取っただけで安心せず、その場で車の適切な場所に備え付けておきましょう。
なかでも検査標章はステッカーとなっており、フロントガラスの指定された位置に貼り付ける必要があります。貼り付ける位置は下記のリンクから確認できます。
4. 軽自動車のユーザー車検の注意点
ユーザー車検にはメリットだけでなく、注意点も数多く存在します。利用するか否かは、以下の点を認識した上で決めるようにしましょう。
検査可能な時間帯は決まっている
軽自動車検査協会では、ユーザー車検は平日の日中の実施のみ受け付けています。また、予約枠にも限りがあり、混雑状況次第では希望の日時に実施できない場合もあります。
こうした理由から、特定の日に必ず車検を実施したい場合にはユーザー車検は不向きです。場合によっては業者に依頼した方が早く済むケースもあるため、状況に応じて判断するようにしましょう。
スムーズな実施には慣れが必要
検査場では指示に沿って検査を進められますが、スムーズな実施には一定の慣れが必要です。特に、ユーザー車検では検査時の車の操作も所有者自身が行うため、車が保安基準を満たしていたとしても操作ミスで不合格になってしまうことがあります。さらに、必要書類の作成や、自動車重量税・自賠責保険の支払いといった手続きも所有者が自ら実施しなくてはなりません。
また、専門業者による車検では保安基準外の内部的な不調が見つかることもありますが、ユーザー車検では知識の不足によりそうした不調を見抜けない可能性があります。車検に合格しても車が万全な状態とは限らないため、定期的に点検・整備を行うとともに高い安全意識を持つことが大切です。
ちなみに、検査場の周囲には民間の予備検査場があることが多く、利用することで実際のユーザー検査と同様の検査を実施することができます。予備検査場での検査はユーザー車検の代わりにはなりませんが、あらかじめユーザー車検の手順に慣れておくという目的での活用は可能です。
そのほか、予備検査場では不備への対応や、検査のアドバイスなども実施している場合があります。利用することで事前に不安を取り除き、その後のユーザー車検をより円滑に行えるでしょう。
不具合対応で手間が増えることも
ユーザー車検を実施した結果、自力で対応が難しい不備が見つかった場合は結果的に業者へ依頼しなくてはならず、追加で費用が発生することになります。
さらに、再検査の実施期限は15日となっており、期限内に合格できなかった場合は再び最初から車検を受けなければならない点にも注意が必要です。
法定点検も忘れずに
車の所有者には、車検のほかに法定点検(定期点検整備)を実施することも義務付けられています。法定点検は故障の危険性などを調べる点検であり、12ヶ月点検と24ヶ月点検の2種類があります。
車検と法定点検は別のものではありますが、業者での車検には多くの場合車検基本料に24ヶ月点検の費用が含まれており、併せて実施されるケースが一般的です。しかし、ユーザー車検には法定点検は含まれていないため、個別に実施しなくてはなりません。
法定点検は車検よりもさらに専門性が高く、業者に依頼するのが一般的です。実施しなかった場合の罰則こそありませんが、事故を防ぐための重要な取り組みですので忘れずに実施しましょう。
5.監修コメント
本稿にもある通り、軽自動車における車検の法定費用に約2~3万円と幅があるのは、対象の車両によって自動車重量税が異なるためです。
自動車重量税は新規検査からの経過年数や環境性能などによって変わってきます。そのため、前回と同額になるとは限りません。
軽自動車が次回車検を受ける際の自動車重量税は、軽自動車検査協会の「次回自動車重量税額照会サービス」で調べることができます。ユーザー車検を受ける前に確認しておくとよいでしょう。