車を運転するために欠かせない車検。ディーラーや自動車整備工場などに依頼している方も多いでしょう。ところがこの車検、自身で行うこともできます。これをユーザー車検と言いますが、「自分で車検を行う」というのはどういうことなのでしょうか?
そこで、本記事ではユーザー車検を行うメリット・デメリットや法定点検との違い、ユーザー車検の手続き方法などについてわかりやすく解説します!
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1.ユーザー車検とは?
ユーザー車検とは、車の所有者が自分で行う車検のことです。運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)内の自動車検査場に自分で車を持って行き、車検を受けます。準備も含めてほとんど自分で行うため、車に関する知識が増えたり、業者に依頼する費用を抑えられたりといったメリットがあります。
また、車検とは、車が保安基準に適合しているかどうかを検査・確認する制度のことで、次の3種類があります。
新規検査
新たに自動車を使用するときや、使用中断の手続きをした車を再び使用する際に受ける検査
継続検査
自動車検査証の有効期限が切れた後も、その車を使用し続ける場合に受ける検査
構造等変更検査
自動車の長さ、幅、高さ、最大積載量が変わるような改造をした場合の検査
一般的に車検と言ったときは、定期的に行う継続検査のことを指します。本記事では、普通自動車の継続検査を受ける場合のユーザー車検について解説します。
2.車検と法定点検は違うの?
車の点検には「法定点検」というものがあります。車検と混同されることが多いようですが、内容も目的も異なります。ユーザー車検をする上でも欠かせないものですので、どのように違うのか見てみましょう。
法定点検とは?
法定点検とは定期点検整備のことで、12ヶ月点検と24ヶ月点検があります。車検は保安基準に適合しているかどうかの「検査」なのに対し、法定点検は車が故障せずに安全に走行できるかどうかを定期的に調べる「点検」です。
原則として新車の新規登録後を除き車検の継続検査は2年ごとのため、一般的に24ヶ月点検も車検と同じタイミングで行います。なお、法定点検を実施するのは車検の前でも後でもOKです。
法定点検の重要性・メリット
車検はあくまでも検査時点で基準を満たしているだけで、車検に合格しても車検証の有効期間内に安全に走行できることを保証するものではありません。このため、定期的に点検・検査する法定点検は、安全に運転をする上で重要なものです。法律でも、道路運送車両法 第48条で「自動車の使用者は自動車を点検しなければならない」と義務づけられています。
法定点検を行うことで、「故障を未然に防げる」「メーカー保証を受けられる」「車の査定評価が上がる」といったメリットもあります。
3.ユーザー車検のメリット・デメリット
次に、ユーザー車検を行うメリットやデメリットにはどんなものがあるのか見てみましょう。
ユーザー車検のメリット
検査代行手数料などがかからず費用を抑えられる
ユーザー車検をする場合にかかる費用は、法定費用+部品交換代です。法定費用とは、大きく分けると、自賠責保険料、自動車重量税、検査手数料(印紙代・証紙代)があります。それぞれの金額については、後ほど「必要な書類、費用は?」で紹介しますので、あわせてご覧ください。
一方、業者に依頼した場合、上記の法定費用の他に、定期点検料、検査代行手数料などの車検基本料金が発生します。車検基本料金は車種や依頼する業者などによって異なりますが、たとえば、ディーラーに依頼した場合、目安として4万円〜6万円ほどかかります。ユーザー車検ではこの車検基本料を抑えることができます。
車に関する知識が増える
ユーザー車検では、車が保安基準に適合しているかどうか、様々な検査を行います。このため、検査を通じて車に関することや自分の車の状態などに詳しくなれます。保険や税金に関する知識も学ぶことができます。
1日で終えることが可能
車検を業者に依頼すると2〜3日かかることがあります。ユーザー車検なら検査に合格すれば1日で車検を終えることができます。
ユーザー車検のデメリット
時間と手間がかかる
必要書類の作成や自動車重量税、自賠責保険の支払いなど、様々な手続きを自分でしなければなりません。準備と検査のためにある程度の時間が必要になるでしょう。
検査場に持ち込める時間帯が決まっている
ユーザー車検を受けられるのは、基本的に平日の日中のみです。また、検査の予約が必要ですが、混雑時には希望の日時を予約できないことがあります。
検査でミスをするリスクがある
車検では検査官の指示に従って、車の様々な操作をします。車検に慣れていないと操作ミスをして、車は保安基準に適合していても不合格になってしまう可能性があります。
不具合箇所の整備が必要になることがある
検査の結果、何らかの問題が判明した場合、その箇所を整備しなければなりません。車に詳しい方はその場で対処できることもありますが、整備に慣れていない方は難しい場合があります。複雑な部品の交換などは業者に依頼する必要があるでしょう。
別途、法定点検(定期点検整備)が必要
先ほど解説しましたが、ユーザー車検とは別に法定点検(定期点検整備)を行う必要があります。定期点検整備は専門的な知識や工具が必要なため、業者に依頼するのが一般的です。業者に車検を依頼した場合は、車検基本料金の中に定期点検整備の費用も含まれていることが多いです。
4.ユーザー車検の基本的な流れは?
ここでは、ユーザー車検の基本的な流れを紹介します。
- 定期点検整備(法定点検)をする
自動車点検基準に沿って、車が保安基準に合っているかどうか点検し、不具合があれば整備します。定期点検整備は車検を受ける前と後、どちらでも構いません。 - 点検整備記録簿に記入
定期点検整備を行った場合は、点検整備記録簿に点検・整備の内容を記入します。 - ユーザー車検の予約
ユーザー車検は検査場に検査の予約が必要です。検査場にもよりますが、基本的に車検を受けたい日の2週間前から予約が可能です。普通車のユーザー車検は、国土交通省管轄の 「独立行政法人自動車技術総合機構」が運営する「自動車検査インターネット予約システム」から予約する必要があります。電話予約はできませんので注意しましょう。
アカウントを作成してログインしたら、車両情報、検査を受けたい検査場、日時などを入力します。なお、継続検査の場合、全国どこの検査場でも受けられます。 - 必要書類の準備
車検証など必要な書類を用意します。当日、検査場で受け取る書類もあります。詳細は下記「必要な書類、費用は?」をご覧ください。 - 検査
予約した検査場で車検を受けます。 - 新しい車検証の受取
車検に合格したら継続検査受付窓口に書類を提出し、新しい自動車検査証(車検証)と検査標章(ステッカー)を受け取ります。
5.ユーザー車検に必要な書類、費用は?
ユーザー車検を行うときに必要な書類や車検にかかる費用は以下の通りです。書類に不備があると不合格になりますので、しっかり準備しましょう。
必要な書類・持ち物
「自動車検査証(車検証)」など事前に用意しておく書類と、「自動車重量税納付書」などのように当日、運輸支局(検査場)で受け取るものがあります。
事前に用意するもの
- 自動車検査証(車検証)
- 自動車税納税証明書(継続検査の場合、特定の条件で省略が可能)
- 自賠責保険(共済)証明書
- 点検整備記録簿(定期点検整備が終わっている場合)
- 使用者の認印
当日受け取るもの
運輸支局の窓口で下記の用紙などを受け取ります。
- 自動車重量税納付書、印紙
- 継続検査申請書(3号様式)
- 自動車検査票、手数料納付書、印紙、証紙
自動車重量税納付書、自動車検査票には印紙を貼りつけます。印紙は、窓口で自動車重量税や検査手数料を支払うと発行されます。支払いは現金のみで、クレジットカードは使用できません。また、書類には押印する場所がありますので、認印を忘れないようにしましょう。
ユーザー車検にかかる費用
ユーザー車検の場合、法定費用と検査手数料(印紙代・証紙代)がかかります。金額は車種や車両重量などによって異なります。現在、エコカー減税などが導入されており、自家用乗用車の場合は下記の表の通りです。また、点検して部品の交換が必要になったときは、別途、部品代なども発生します。
自動車重量税
車両重量 | 2年自家用 | ||||
---|---|---|---|---|---|
エコカー | エコカー (本則税率) |
エコカー外 | |||
右以外 | 13年経過 | 18年経過 | |||
0.5トン以下 | 免税 | 5,000円 | 8,200円 | 11,400円 | 12,600円 |
~1 | 10,000円 | 16,400円 | 22,800円 | 25,200円 | |
~1.5 | 15,000円 | 24,600円 | 34,200円 | 37,800円 | |
~2 | 20,000円 | 32,800円 | 45,600円 | 50,400円 | |
~2.5 | 25,000円 | 41,000円 | 57,000円 | 63,000円 | |
~3 | 30,000円 | 49,200円 | 68,400円 | 75,600円 |
※自家用乗用車の場合
※2023/3/29時点
自動車損害賠償責任保険料
20,010円(保険期間24ヶ月)
※自家用乗用車の場合
※2023年3月現在。2023年4月1日以降17,650円に引き下げ予定
検査手数料(継続検査の場合)
車種 | 検査登録印紙 | 自動車審査証紙 | 合計 |
---|---|---|---|
普通自動車 | 500円 | 1,800円 | 2,300円 |
小型自動車 | 500円 | 1,700円 | 2,200円 |
- 出典
- 北海道運輸局ホームページ
6.当日はどんな検査をする?
当日は検査コースを進みながら、検査官の指示や電光掲示板の表示、音声指示に従って検査を受けます。ホイールキャップなどはあらかじめ外しておきましょう。検査は次の項目があります。
同一性の確認
車検証に記載されている内容と車検を受ける車が同じかどうかを確認します。
外回りの検査
ヘッドライトやブレーキランプ、ウインカーなどのライト類や、ワイパー、クラクション、ホイールナットの緩み具合、発煙筒の有効期限などを確認します。
サイドスリップ検査
まっすぐに走れるかどうかを検査し、タイヤの滑り量を測定します。
ブレーキ検査
フットブレーキとサイドブレーキの効き具合をチェックします。検査ではブレーキをしっかり踏み込むことが大切です。
スピードメーター検査
スピードメーターの表示速度と実際の速度の誤差が基準値以内かどうかを確認します。
ヘッドライト検査
ヘッドライトの光量と光軸(照らす方向)、色味が基準を満たしているかを確認します。以前はハイビームが検査対象でしたが、2018年6月1日以降は基本的にロービームが検査対象になっています。
排気ガス検査
マフラーから排出されるガスに含まれる一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)の濃度を測定する検査です。
下回りの検査
検査官が車の下から、ボルトの緩みやブーツ、ゴム部分の破れ、オイル漏れなどを検査します。
不合格の場合は?
書類の不備や整備不良、検査時の運転操作ミスなどによって不合格になることもあります。不合格になった場合は再検査を受ける必要があります。再検査ではすべてやり直すのではなく、不合格になった検査だけを受け直します。どの部分に問題があったのか検査官に確認して、対処してから再検査に挑戦しましょう。
当日は2回まで無料で再検査を受けることができます。3回目の再検査は、検査手数料を再度支払わなければなりません。
また、整備不良が原因で当日対応できない場合などは、「限定自動車検査証」を発行してもらい、後日再検査を受けます。この検査証があれば、車検証の有効期間が残っていて、整備を目的とした運行なら、当日を含めて15日間まで公道を走ることができます。期間内なら不合格の項目だけ再検査を受けられ、検査手数料も1,800円(普通自動車の場合)と少し安くなります。15日間を過ぎてしまうと、最初から受け直しになります。
不合格にならないためには、日頃の点検・整備が大切です。国土交通省のホームページには「日常点検15項目チェックシート」が掲載されています。
普段から点検、整備に慣れておくことで、ユーザー車検にも挑戦しやすくなるかもしれません。ただし、整備が難しいと感じたときは、業者に依頼することも検討しましょう。
7.監修コメント
運輸支局の近くには、「テスター屋」と呼ばれる民間の予備検査場がある場合があります。予備検査場では、運輸支局と同様の検査を受けることができます。法定点検や故障箇所の修理に対応していたり、ユーザー車検を受ける際のアドバイスをしてくれたりすることもあるので、不安な方は事前に予備検査場で検査を受けるとよいでしょう。
ただ、予備検査場で異常が見つからなかったとしても、必ず車検に通るわけではありません。運輸支局での免除もありません。予備検査場を利用する場合は、あくまでも事前の検査であることを心得ておきましょう。