これまで自動車やバイクに導入されていた青切符制度が、2026年4月からは自転車にも導入されます。自転車運転中の、信号無視や傘差し、"ながらスマホ"といった違反行為には青切符が切られ、反則金が科される見込みです。青切符の概要から、取り締まりの対象者、対象となる違反行為・反則金まで詳しく紹介します。
- 目次
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1. 自転車の青切符とは?
自転車の青切符の概要
青切符とは、比較的軽微な交通違反をした際に交付される「交通反則告知書」のことです。この用紙が青色であることから、「青切符」という通称で呼ばれています。
通常、交通違反をすると刑事手続きが行われますが、青切符を受け取った違反者は、反則金を納付することで刑事処分は免れることができます。この仕組みを「交通反則通告制度」といいます。
交通反則通告制度は、刑事手続きを省略することで、警察・違反者・裁判所の負担を軽減することを目的としています。
これまで青切符は自動車の違反にのみ適用されてきましたが、今後は自転車にも適用されることが決定しました。
自転車にも青切符が導入される背景・目的
では、なぜ自転車にも青切符が導入されるのでしょうか。
自転車へ青切符が導入される背景として、警察庁交通局は主に以下の点を挙げています。
- 全交通事故に占める自転車関連事故の割合が増加傾向にあること
- 自転車と歩行者の事故件数が増加傾向にあること
- 自転車乗用中の死亡・重傷事故のうち、約4分の3には自転車側にも法令違反があること
※転車関連事故...自転車が第一当事者(加害者)または第二当事者(被害者)になる事故のこと
自転車の違反の取り締まり件数は近年増加傾向にあります。今回の自転車への青切符導入は、増え続ける自転車関連事故を抑止することを目的としています。
2. 自転車の青切符はいつから始まる?導入時期や対象年齢
導入時期
自転車への青切符は、2026年(令和8年)4月1日から導入されます。
改正道路交通法自体は、2024年(令和6年)5月に成立し、この時点で自転車に青切符が導入されることが決定しました。そして、2026年4月から実際に施行されることになっています。
対象者
自転車の青切符制度は、16歳以上の自転車利用者が対象となります。16歳未満の自転車利用者が違反をした際には、青切符は切られず、指導や警告といった対応が行われます。
ただし、酒酔い運転や酒気帯び運転、妨害運転、携帯電話使用等(交通の危険)などの重大な違反については、そもそも青切符の対象外です。そのため、16歳未満であってもこれらの重大な違反をした際には、刑事事件として扱われることがあります。
3. 青切符の対象となる違反行為と反則金一覧
違反行為と反則金
現時点で青切符の対象として示されているのは、スマホを使用しながら自転車を運転する「ながら運転」や信号無視、二人乗りなど113種類の違反行為です。以下が、青切符の対象となる主な違反行為と反則金の一覧です。
| 違反行為 | 詳細 | 反則金 |
|---|---|---|
| 携帯電話使用等(保持) | 自転車運転中にスマホなどを使用 | 12,000円 |
| 信号無視 | 6,000円 | |
| 車道の右側通行 | 6,000円 | |
| 歩道通行 | 6,000円 | |
| 通行区分違反 | 逆走、歩道通行など | 6,000円 |
| 無灯火 | 夜間、ライトを点灯せずに運転 | 5,000円 |
| 自転車制動装置不良 | ブレーキがきかないなど | 5,000円 |
| 公安委員会遵守事項違反 |
傘差し運転やイヤホンを使用しながらの運転など ※都道府県の公安委員会で定められた遵守事項による |
5,000円 |
| 一時不停止 | 5,000円 | |
| 並進禁止違反 | 他の自転車と横に並んで走行 | 3,000円 |
| 二人乗り | 3,000円 |
青切符は自動車の免許(ゴールド免許)に影響はある?
自転車で青切符を切られた場合でも、自動車の免許およびゴールド免許には影響しません。
例えば、ゴールド免許の条件には、「過去5年間に無事故・無違反であること」が含まれます。ここでの「違反」とは、交通違反のうち、違反点数が付くものを指します。
しかし、自転車の青切符制度では違反点数が付かないため、たとえ青切符を受け取っても、ゴールド免許には影響しないのです。
4. 青切符と赤切符の違いは?
交通違反をした際に渡される書類には、青切符のほかに「赤切符」と呼ばれるものもあります。赤切符は、「道路交通法違反事件迅速処理のための共用書式」を用いて作成され、その用紙が赤色であることから、一般的に「赤切符」と呼ばれています。
青切符が比較的軽微な違反に対して交付されるのに対し、赤切符は酒気帯び運転などの重大な違反に対して交付されます。赤切符を切られた場合には、青切符のように反則金を納めて刑事処分を免れることはできません。行政処分と刑事処分の両方を受けることになり、罰金刑が科された場合は「前科」が付くことになります。
5. 安全運転のための自転車の交通ルール
原則、車道の左側を通行
自転車は、自動車と同じく「車両」の一種です。そのため、車道と歩道が区別されている場所では、原則として自転車も車道の左側を通行しなければなりません。ただし、以下のような場合には、例外的に歩道を通行することが認められています。
- 標識によって「歩道通行可」であることが示されている場合
- 運転者が13歳未満、70歳以上、または身体に障害があり車道通行に支障がある場合
- 車道や交通状況などから見て、安全の確保のためにやむを得ないと認められる場合
ながら運転はしない
上述のとおり、自転車を運転中にスマホで電話をしたり、画面を注視したりする行為は禁止されています。いわゆる「ながらスマホ」は青切符の対象となり、反則金12,000円が科されます。なお、スマホを使用しながら自転車を運転し、交通の危険を生じさせた場合には、赤切符の対象となり、さらに重い罰を受けることになります。
また、都道府県によっては、自転車を運転中、安全運転に必要な音が聞こえない状態でのイヤホン使用を禁止している地域もあります。イヤホンで大音量の音楽を聴きながら自転車を運転すると、青切符の対象となる可能性もあるため、各自治体のルールを確認し、十分に注意しましょう。
夜間はライトを点灯する
夜間、ライトを点灯せずに自転車を運転することも青切符の対象です。なお、ライトが故障しているのを放置したまま運転することも、整備不良として青切符が切られる可能性があります。自転車の運転前には、ライトが点くかきちんと確認をしましょう。
ヘルメットを着用する
2023年(令和4年)4月の道路交通法改正により、すべての自転車利用者にヘルメットの着用が努力義務となりました。東京都の調査によると、自転車死亡事故の約65%が頭部に致命傷を負っています。交通事故から命を守るためにも、自転車運転中にはヘルメットを着用しましょう。
お酒を飲んだ時は自転車を運転しない
飲酒運転は自動車利用者だけでなく、自転車利用者も禁止されています。飲酒運転は重大な違反行為であり、赤切符が交付され、行政処分と刑事処分の対象となります。
酒酔い運転の場合は、「5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」、酒気帯び運転の場合は、「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」といった罰則が科されます。
6. 監修コメント
自転車は歩道を走行できないことが広く知られるようになってから、自転車は路側帯を走行することが一般的になりました。都道府県道はもちろん、歩道通行が認められていない国道などでも、路側帯を走る自転車を目にする機会が増えています。
少しずつ自転車の走行レーンが整備されてきてはいるものの、一般道では自動車やバイク、自転車が混在しているのが実情です。自転車に限らず、バイクや自動車も前後左右の安全を十分に確かめながら走行しましょう。
