自転車をはじめとしたエンジンを持たない「軽車両」は、交通ルールが自動車とは一部異なるため、運転にあたっては注意が必要です。そこで当記事では、軽車両の定義や種類、気をつけるべきポイントについて詳しく解説します。
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1.軽車両とは
軽車両とは、車両の中でもエンジンを持たず、レールを使わずに走行するものを指します。道路交通法によって定められた日本独自の区分であり、主に自転車や馬車などが該当します。
軽車両はあくまで車両の一種ではありますが、免許がなくても運転ができるなど、自動車やバイクといったその他の車両とは法律上の扱いや交通ルールが一部異なります。ちなみに、軽車両は動力源を持たないことが要件のため、原付(原動機付自転車)や軽自動車は含まれません。
2.軽車両の特徴
軽車両に該当する車両には、以下のような特徴が見られます。
エンジンを持たない
軽車両はエンジンを持たないため単独では動くことができず、人間や動物、他の車両などの力を借りることで走行します。ただし、身体障害者用の車椅子やベビーカーといった、歩行が難しい人の補助を目的とした乗り物は軽車両ではなく歩行者とみなされます。
構造がシンプル
自力で動くための仕組みを必要としない分、軽車両は主に車体と車輪のみで構成された、シンプルな構造のものが多い傾向にあります。そのため、自動車やバイクなどと比較して運転・整備もしやすく、手軽に扱える点を強みとしています。
用途が多様
運転に免許がいらないこともあり、軽車両は通勤や運搬、観光などさまざまな用途で使用されています。特に、一部の道路では軽車両に限って通行や逆走などを認めている場合があり、その他の車両よりも柔軟に動くことが可能です。
3.軽車両の主な種類
代表的な軽車両としては、以下のような種類が挙げられます。
自転車
自転車は内閣府令の定めた要件を満たす「普通自転車」とそれ以外に分けられ、例外的な歩道の走行は普通自転車にのみ認められています。普通自転車の要件は以下の通りです。
- 長さ190センチメートル以内、幅60センチメートル以内
- 四輪以下で、側車をつけていない(補助輪は除く)
- 運転者席以外の乗車装置がない(幼児用の乗車装置を除く)
- 制動装置(ブレーキ)が走行中容易に操作できる場所にある
- 歩行者に危害を及ぼす恐れのある鋭利な突出部がない
上記の条件を満たす普通自転車のほかにも、二つ以上の乗車装置とペダルを備えたタンデム自転車などの特殊な自転車があり、いずれも軽車両にあたります。
ちなみに、原則として自転車は人が押して歩いている間は歩行者とみなされ、普通自転車に該当しない自転車であっても歩道の通行が可能となります。とはいえ、牽引している自転車や側車付きの自転車は、人が乗っていない場合でも車両扱いとなるため注意が必要です。
電動アシスト自転車(駆動補助機付自転車)
漕ぐ力を補助するためのモーターを搭載した、電動アシスト自転車も軽車両として扱われます。ただし、漕がずにモーターだけで走行する機能のある電動自転車は、いわゆるバイクの一種とされており、ペダルによる走行が可能であっても軽車両とは認められません。
馬車・牛車・犬ぞり
動物によって牽引される車やそりは、動物の種類に関わらず軽車両に該当します。牛と馬に関しては、単体でも軽車両とみなされます。
人力車・荷車
軽車両には、人間の力で動かす人力車やお祭りの山車、動力を他の車両に依存するリヤカーや店舗の屋台なども含まれます。
4.軽車両の交通ルール
軽車両に関して、道路交通法では以下のような規制やルールが設けられています。
通行できる道路の制限
道路交通法では、軽車両はあくまで車両として位置付けられており、基本的に歩道は通行できません。加えて、道路を通行する際は「車両通行止め」「車両進入禁止」といった、車両に対する道路標識や交通規制にも従う必要があります。
一方で、「軽車両を除く」という補助標識がある場合には、例外的に軽車両は規制が適用されません。「自転車を除く」といった標識であれば、自転車には適用されません。
乗車する人数・方法の制限
軽車両の乗員人数は車両の種類によってさまざまであり、一律に規制する法律はありません。例外として、自転車は運転者以外の乗車が原則禁止されています。
ただし、16歳以上の運転者は一般の自転車の場合、補助席を用いて小学校就学の始期に達するまでの幼児を1名同乗させるか、または4歳児未満の幼児1名をひもなどで背負って運転することが認められています。一方、「幼児2人同乗用自転車」の基準を満たした自転車であれば、補助席を使用するかひもで背負うことで最大2名まで幼児の同乗が可能です。
また、道路交通法の一部改正により、令和5年4月1日から自転車への乗車時にはヘルメットの着用が努力義務となっています。そのほか、軽車両の乗車方法には車種や地域ごとに異なる規制が存在する場合もあるため、乗車の際は事前の確認が大切です。
軽車両の通行の仕方
軽車両はやむを得ない場合を除き、車道を通行しなくてはなりません。例外的に、以下のようなケースでは歩道の通行が認められます。
加えて、軽車両は車道では左側を通行することが定められています。そのため、交差点の進行方向の指定にも従う必要はなく、仮に車道の左端が左折レーンの場合でも直進や右折が可能です。
ただし、軽車両が交差点を右折する際には一度交差点の向こう側まで直進し、方向転換してから再び直進する二段階右折と呼ばれる方法をとることが求められます。
軽車両の最高速度
一般道における最高速度は、自動車は60キロメートル毎時、原付は30キロメートル毎時と道路交通法で定められているものの、軽車両に関しては明確な規定はありません。
とはいえ、軽車両は車両である以上、走行時には道路ごとの速度規制が適用されます。そのため、自動車の最高速度を超えるスピードで走行することはできないといえます。
5.法令に違反した際の罰則
各種法令に違反した際に受ける罰則は、軽車両であってもその他の車両のケースと変わりません。たとえば、車両が車道を走ることを定めた道路交通法17条第1項に違反した場合には、5万円以下の罰金または3ヶ月以下の懲役が課せられます。
現在は悪質な違反に限られますが、2024年5月17日に可決・成立した改正道路交通法では、車やオートバイと同様に、自転車の交通違反に対しても反則金を課す「青切符」による取締りの導入が盛り込まれました。
同法は2年以内の施行を予定しており、青切符の対象は16歳以上の運転者による113の違反行為、反則金は5000円~1万2000円程度が見込まれています。とはいえ、青切符の導入後も、悪質な違反には従来通りの罰則(赤切符)が課される点に注意が必要です。
6.監修コメント
とても身勝手な話ですが、私自身、車を運転している時は自転車を、自転車に乗っている時は車を煩わしく思ってしまいます。もっというと、歩いている時は、車も自転車も細い道に入ってこないでほしいと考えてしまします。
特にそう強く思う状況を振り返ってみると、急いでいるなど、余裕がない時が多い気がします。もしかしたら、自分が煩わしく思っている相手も、同じように考えているのかもしれません。トラブルや事故のリスクを軽減するためにも、移動の際は時間に余裕を持って行動しましょう。