ロータリーエンジンとは、おむすび型のローター(回転子)が回転することで、動力を生み出すエンジンのことです。マツダが量産化に成功したロータリーエンジンは一度生産が中止されたものの、2023年に発電用エンジンとして復活し、再度注目が集まっています。本記事では、ロータリーエンジンの仕組みや構造、メリット・デメリットなどについて解説します。
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1. ロータリーエンジンとは
ロータリーエンジンとは、おむすび型のローターがまゆ型のハウジング内を回転しながら、吸気・圧縮・燃焼・排気の四工程を行い、その過程で生まれる動力を用いたエンジンを指します。
車のエンジンは、使用される燃料によって、「ガソリンエンジン」や「ディーゼルエンジン」などに分けられます。ロータリーエンジンは、ガソリンを燃料とする「ガソリンエンジン」の一種です。
なお、ロータリーエンジン(Rotary Engine)の頭文字のアルファベットをとって、「RE」と呼ばれることもあります。
2. ロータリーエンジンの仕組みと構造
ロータリーエンジンは、主におむすび型のローターとまゆ型のハウジングの2つで構成されています。ハウジングの内側の壁に、ローターの3つの頂点が接触しており、ハウジング内で3つの空間ができるようになっています。その空間に、燃料と空気を混ぜた混合気を取り込んで燃焼させ、その膨張圧力でローターが回転します。ローターがハウジング内を回転する間に、それぞれの空間で、吸気→圧縮→燃焼→排気の四工程が順に行われます。
3. ピストンエンジン(レシプロエンジン)との違い
ピストンエンジン(レシプロエンジン)は、自動車において最も一般的なエンジンです。なお、ピストンエンジンも、ロータリーエンジンと同様にガソリンエンジンの一種です。
ピストンエンジンとロータリーエンジンの大きな違いは、構造です。ピストンエンジンは、シリンダー内をピストンが上下に動き、その往復運動を回転運動に変換することで動力を得ています。一方、ロータリーエンジンは、ローターの回転運動をそのまま動力として得ているため、ピストンエンジンに比べて構造がシンプルです。
4. ロータリーエンジンのメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 軽量・コンパクト | 燃費が悪く、排気ガス規制に弱い |
| 高出力 | 低速トルクが少ない |
| 騒音や振動が少ない | 部品の摩耗が早くオイルの消費量が多い |
メリット:軽量・コンパクト
ロータリーエンジンは高い精度が求められますが、部品点数が少なく、軽量なのが特徴です。エンジン自体がコンパクトなため、エンジンルームにも無理なく収まります。これにより車両の前後重量配分に優れ、走行性能の向上につながります。
メリット:高出力
ロータリーエンジンは、少ない排気量ながらも高出力を発揮できるのがメリットです。ピストンエンジンは、吸気・圧縮・燃焼・排気の四工程を行うのに、ピストンが二往復する必要があります。
一方、ロータリーエンジンでは、ローターとハウジングの間に形成される3つの空間それぞれで、同時に吸気・圧縮・燃焼・排気の四工程が行われます。さらに出力軸はローターの3倍の速度で回転するため、高回転域までスムーズに回すことができ、高出力特性を実現しています。
メリット:騒音や振動が少ない
ロータリーエンジンは、ピストンエンジンのように往復運動から動力を得るのではなく、回転運動から直接動力を得ています。そのため、振動が少なく、回転が滑らかな特徴があります。
デメリット:燃費が悪く、排気ガス規制に弱い
ロータリーエンジンのデメリットは、燃費が悪いことです。ピストンエンジンに比べると、燃焼室の表面積が大きいために熱損失が多く、燃焼室形状の影響で燃焼効率が低くなりやすいからです。また、未燃焼の炭化水素(HC)が多く排出されやすい特性があり、これも一度ロータリーエンジンが生産終了した理由の一つです。
デメリット:低速トルクが少ない
ロータリーエンジンは高回転域では得意ですが、低回転域では力不足になりやすい点がデメリットです。車を発進・加速させる際にパワー不足を感じたり、低回転域での走行時に不安定さを覚えたりすることがあります。
デメリット:部品の摩耗やオイルの消費量
ローターの三角形の頂点には、燃焼室内での気密を保つために「アペックスシール」という部品が取り付けられています。アペックスシールは摩耗しやすく、劣化したまま走行を続けるとエンジン不調の原因となることがあります。また、アペックスシールの交換にはエンジンの分解が必要なため、メンテナンス費用が高くなる傾向があります。
さらに、ロータリーエンジンではエンジン内の潤滑のために、エンジンオイルを燃焼室に噴射します。そのため、ピストンエンジンと比べてオイルの消費量が多くなりがちです。
5. ロータリーエンジンの歴史
ドイツで発明されたエンジン
ロータリーエンジンは、ドイツ(当時は西ドイツ)のフェリクス・バンケル博士によって発明されたエンジンです。1959年、NSU社(ドイツの自動車メーカー)でロータリーエンジンが公表されると、世界中から注目を集めました。
日本では、マツダが1961年に技術提携を行い、研究・開発を開始しました。当時、ロータリーエンジンには、アペックスシールがハウジングの内壁と接触することで傷(チャターマーク。別名「悪魔の爪痕」)ができるなど、実用化に向けたいくつかの課題がありました。
マツダは、こうした課題を乗り越えて、1967年には2つのローターを搭載した「コスモスポーツ」を発売しました。
2012年に生産終了
マツダはその後も、さまざまなロータリーエンジン搭載車を生産し続けましたが、2012年に新車のロータリーエンジン搭載車の生産を終了しました。その背景には、排ガス規制ユーロ5に適合できなくなり、市場が縮小したことなどが挙げられます。惜しまれながらも生産を終えたロータリーエンジンですが、2023年にはマツダが発電用エンジンとして復活させました。
6. ロータリーエンジンが復活し注目されている理由とは?
新たな役割「発電機」
一度生産を終了したものの、マツダは生産技術やノウハウを継承したいという想いからロータリーエンジンの研究開発を続けてきました。そして、ロータリーエンジンのコンパクトさを活かして、プラグインハイブリッド車の発電用エンジンとして搭載し、復活させています。これにより、ロータリーエンジンには次世代ハイブリッド車や電動車への応用が期待されています。
カーボンニュートラルへの貢献
現在、世界中でカーボンニュートラルへの取り組みが進められています。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を全体でゼロにすることを意味します。こうした背景の中で、電気自動車の開発に加えて、燃焼しても二酸化炭素を排出しない水素を燃料としたエンジンの開発も進められています。
ロータリーエンジンが近年注目されている理由の一つが、水素燃料との相性の良さです。もともと水素はガソリンよりも着火しやすく、燃焼制御が難しいという課題がありました。水素は非常に着火しやすく、バックファイアが起きやすい燃料ですが、吸気系と燃焼室が分離されたロータリーエンジンは逆火が起きにくく、水素燃料と相性がよいとされています。
このように、カーボンニュートラルに貢献するエンジンとして、水素ロータリーエンジンには大きな期待が寄せられています。
7. 監修者コメント
近年、ロータリーエンジン搭載車が再び世界的に注目を集めています。なかでもマツダのRX-7は、アメリカの「25年ルール」の影響により人気が急上昇しています。25年ルールとは、製造から25年以上が経過した車であれば、アメリカの厳しい安全・排ガス基準を満たしていなくても、輸入登録が可能になる制度です。さらに日本のアニメや映画などの影響も重なり、90年代の国産スポーツカーの価値が世界的に高騰しています。
その結果、近年は日本国内で90年代の日本車を狙った盗難被害が増加しています。特にロータリーエンジンを搭載する希少なRX-7は、窃盗団の標的になりやすいので十分な注意が必要です。
