火災保険ガイド
モバイルバッテリーが発火したら火災保険は使える?補償範囲やいますぐできる安全対策を解説
最終更新日:2026/9/2
スマートフォンやタブレットの普及に伴って、モバイルバッテリーは日常的に使われる便利なアイテムになっています。一方で、充電中の発火など、モバイルバッテリーを原因とする火災事故も報告されており、扱いには十分な注意が必要です。自宅だけでなく電車内や車内での出火事例もあり、鉄道会社が利用者へ注意喚起を行うケースも見られます。
本記事では、モバイルバッテリーによる火災が発生した場合に火災保険・家財保険・個人賠償責任保険の補償対象となるケース・対象外となるケースをわかりやすく解説しています。発火を防ぐための安全な選び方・使い方・廃棄方法、万が一の際の初期対応手順についても取り上げているため、ぜひ参考にしてください。
モバイルバッテリーの火災は他人事ではない!増加する事故の実態
モバイルバッテリーに使われるリチウムイオン電池は、小型・軽量でありながら高いエネルギーを蓄えられる特性があります。異常が発生すると急激な発熱・発火(熱暴走)に至るリスクがあり、取扱いには注意が必要です。総務省消防庁の調査によると、全国で確認されたリチウムイオン電池などからの火災件数は以下のとおりに推移しており、年々増加傾向にあります。
| 年 | 火災件数 |
|---|---|
| 2022年(1〜12月) | 601件 |
| 2023年(1〜12月) | 739件 |
| 2024年(1〜12月) | 982件 |
| 2025年(1〜12月) | 1,297件 |
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廃棄されたリチウムイオン電池などを回収中の塵芥車およびごみ処理関連施設から出火した火災を除く。
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2025年の1年間に発生したリチウムイオン電池による火災は1,297件で、このうちモバイルバッテリーが原因の火災は482件です。モバイルバッテリー原因の火災は前年比で約7割増加しており、出火原因としては外部からの衝撃や高温環境での使用が上位を占めています。日ごろから正しい取扱いを意識し、安全対策を徹底することが大切です。
【結論】モバイルバッテリー火災で保険金は出る?ケース別に解説
モバイルバッテリーによる火災が発生した場合、どの保険が、どのような損害に対応するかは、被害の状況によって異なります。ここでは、以下のケースをそれぞれ解説します。
自宅の家財や建物が燃えた場合:火災保険・家財保険が適用される
隣家への延焼・賃貸物件の損害:類焼損害補償特約・借家人賠償責任補償で対応可能
電車内・外出先で他人や施設に損害を与えた場合:個人賠償責任保険で対応できる可能性がある
詳しく見ていきましょう。
自宅の家財や建物が燃えた場合:火災保険・家財保険が適用される
モバイルバッテリーが原因で起きた火災は、火災保険・家財保険の補償対象です。火災による焼失だけでなく、消火活動の放水によって家財が水浸しになった損害も「火災」の補償範囲としてカバーされます。(※給排水設備の事故や上の階からの漏水などを補償する「水濡れ」補償とは扱いが異なります)
モバイルバッテリーの経年劣化や自然発火が原因でも、結果として火災による損害が生じていれば、予期せぬ事故として補償対象になるのが一般的です。
ただし、補償されるのは「火災によって生じた損害」に限られます。火元となったモバイルバッテリー自体の損害(経年劣化による破裂の修理費・買替え費用など)は補償対象外となる点に注意が必要です。また、建物のみの契約か家財補償もセットされているかによって補償範囲が異なるため、現在の契約内容を確認しておきましょう。
家財補償の詳細については、以下の記事もあわせてご覧ください。
隣家への延焼・賃貸物件の損害:類焼損害補償特約・借家人賠償責任補償で対応可能
モバイルバッテリーの発火が隣家へ延焼した場合、「失火責任法」により、重大な過失がなければ法律上の賠償責任は発生しません。そのため、一般的なケースでは他人の財物を壊したときに補償される「個人賠償責任保険(特約)」で隣家への被害をカバーすることはできません。
隣家への延焼被害を補償したい場合は「類焼損害補償特約」をセットしておくと安心です。
また、賃貸貸住宅にお住まいの方の場合、ご自身の部屋を焦がしてしまうなど、大家さんへの賠償が必要になった場合「借家人賠償責任補償」が適用されます。大家さんへの賠償は失火責任法の対象外となるため、契約内容にセットされているか必ず確認しておきましょう。
失火責任法の詳細については、以下の記事もあわせてご覧ください。
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SOMPOダイレクトの「じぶんでえらべる火災保険」は、賃貸住宅にお住まいの方はお申込みいただけません。
電車内・外出先で他人や施設に損害を与えた場合:個人賠償責任保険で対応できる可能性がある
電車内でモバイルバッテリーが発火して他人の持ち物を焦がしてしまった場合や、ホテルなどの宿泊施設で客室を損傷させ法律上の賠償責任が生じた場合は、「個人賠償責任保険(特約)」でカバーできます。
ただし、事故の状況(仕事中の事故や、同居家族に対する損害など)によっては、補償の対象外となる場合があります。
また、「個人賠償責任保険(特約)」の補償額に上限が設定されている契約では、高額な賠償事故が発生した際に保険金が不足するおそれがあります。
補償範囲や上限額は契約内容によって異なるため、加入している保険会社への確認が大切です。
個人賠償責任保険(特約)の詳細については、以下の記事もあわせてご覧ください。
あなたの保険は大丈夫?個人賠償責任保険の加入状況を確認する方法
「個人賠償責任保険(特約)」は、火災保険のほか、自動車保険・傷害保険の特約やクレジットカードの付帯保険としてセットされているケースがあります。「個人賠償責任保険(特約)」は実際の損害額を上限に支払われる「実損補償」のため、複数加入していても受け取れる保険金の合計額が損害額を超えることはありません。
気づかないうちに重複加入して無駄な保険料を払っているケースもあるため、以下の方法で現在の加入状況を確認しておきましょう。
火災保険・自動車保険・傷害保険などの保険証券で「個人賠償責任」の項目を確認する
保有するクレジットカードの会員規約・保険案内を確認する
家族が加入している保険にセットされた個人賠償責任保険(特約)で、自分が補償対象になっていないかも確認する
補償額・補償範囲・示談交渉サービスの有無を比較し、不十分な場合は見直しを検討すると安心です。
保険金が支払われない・減額される可能性のあるケース
ご自身の建物・家財を補償する火災保険・家財保険では、著しい不注意や危険な行為があったとみなされると「重大な過失(ほとんど故意に近い著しい注意欠如)」と判断され、保険金が支払われない可能性があります。具体的には、以下のように「危険性をあらかじめ認識できたはずなのに、漫然と放置した」とみなされるようなケースが該当する可能性があります。
製品が異常に発熱していることに気づきながら、熱がこもりやすい布団やカーペットの上で充電したまま放置した
外装が膨らむ、異臭がするなどの明らかな異常・危険サインが出ているのを知りながら使用を続けた
取扱説明書で厳しく禁止されている危険な使い方(分解・改造、非純正品の無理な使用など)を意図的に行った
「重大な過失」に該当するかどうかは個別の事情によって異なるため、不明な点は保険会社へ確認しましょう。
なお、火災時でも火元となったモバイルバッテリー本体の損害は補償の対象外です。また、火災を伴わない経年劣化・自然消耗による破裂・変形は保険の補償対象とならないため、本体の修理費・買替え費用は支払われません。
保険金がおりない理由については、以下の記事もあわせてご覧ください。
モバイルバッテリーの製造メーカーへ損害賠償請求はできる?
火災などの損害がモバイルバッテリーの製品不良によるものであれば、保険会社への請求とは別に、メーカーへの賠償請求という選択肢もあります。「製造物責任法(PL法)」は、製品に欠陥があってメーカーの責任が認められる場合の法的根拠となる法律です。賠償請求が認められるかどうかの判断において、欠陥として問題になりやすいのは次の3点です。
設計上の欠陥:製品の設計や内部構造に起因する発熱・発火のリスク
指示・警告上の欠陥:製品に潜む危険性に対して、使用者への警告や注意喚起が十分でなかった
製造上の欠陥:製造工程の不具合により、製品本来の安全性が保たれていなかった
ただし、欠陥の立証は容易ではありません。専門的な鑑定や調査が必要になることが多く、最終的な判断には弁護士などの専門家への相談が不可欠です。まずはご自身の火災保険で損害をカバーしたうえで、メーカーへの請求を検討するかどうか判断するのが現実的な対応といえます。
今すぐチェック!自分でできるモバイルバッテリー火災の安全対策
発火事故を防ぐためには、製品の選び方・日常の使い方・保管と廃棄の3段階でそれぞれ適切な対応が必要です。以下で詳しく解説します。
【購入編】安全な製品の選び方
安全なモバイルバッテリーを選ぶ際に確認すべきポイントは、以下の3点です。
PSEマークの有無
メーカーの信頼性
リコール情報
詳しく見ていきましょう。
「PSEマーク」は必須!安全の証を確認する
購入時にまず確認すべきは、PSEマークの有無です。PSEマークは電気用品安全法に基づき、国の定めた技術基準を満たした製品にのみ表示が許されるもので、このマークがない製品は安全基準を満たしていない可能性があります。製品本体またはパッケージに表示されているかを必ず確認してから購入してください。
信頼できるメーカーや販売店から購入する
大手メーカーの製品は、過充電・過放電・過熱を防ぐ保護機能を搭載していることが多く、安全面でも信頼できると言えるでしょう。価格の安さだけで選ぶと、保護機能が省かれた製品を購入してしまうリスクがあります。購入前に実際の使用者による発熱の有無や耐久性などのレビューを参考にすることも有効です。
リコール対象製品でないか確認する方法
発火・発煙事故が報告された製品は、メーカーが自主回収(リコール)を行う場合があります。手元の製品が対象になっていないか、消費者庁リコール情報サイトや各メーカーの公式サイトで定期的に確認しておきましょう。リコール対象と確認された場合は、無償交換や返金の対象となるケースがあります。
【使用・充電編】日常に潜む危険と正しい使い方
正しい充電方法や取り扱い方を理解しておくことが、事故を防ぐうえで最も重要な対策です。以下で具体的なポイントを解説します。
適切な充電方法で利用する
充電中の誤った使い方が、発火・劣化の主な原因となります。以下の点に注意してください。
| 注意点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 目の届く範囲で充電する |
|
| 熱がこもる場所を避ける |
|
| 適切な充電器を使う |
|
また、バッテリー残量をゼロの状態で長期間放置すると劣化の原因になります。モバイルバッテリーで充電しながらのスマートフォン操作も発熱につながるため、どちらの行動も避けるようにしましょう。
衝撃・圧力・高温・水濡れを避ける
落下や高温環境での放置など、外部からの物理的なダメージもモバイルバッテリーの発火につながります。日常のちょっとした取扱いが内部の損傷を招くため、以下の点に注意してください。
| 注意点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 落下・強い圧力を避ける |
|
| 高温環境での使用・保管を避ける |
|
| 金属類と接触させない |
|
| 水濡れを避ける |
|
いずれの損傷も、見た目にはわかりにくいまま内部で進行するケースがあります。「落とした」「熱い場所に置いていた」などの心当たりがある場合は、外観に異常がなくても使用を一時中断し、状態を確認することが大切です。
異常サイン(膨張・発熱・異臭)を見逃さない
以下のような異常が見られた場合は、すぐに使用を中止してください。
外装が膨らんでいる・ひび割れや変形がある
充電中や使用中に異常な熱さを感じる
焦げたようなにおいや薬品のにおいがする
異音がする
異常に気づいたら早めに使用を中止することが、大きな事故の予防につながります。
【廃棄編】家庭ごみはNG!正しい廃棄方法
使わなくなったモバイルバッテリーを一般ごみとして捨てることは、大きな火災事故につながる危険な行為です。廃棄の際は以下のポイントを確認してください。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 廃棄方法を確認する |
|
| JBRCマークのある回収ボックスの対象か確認する |
|
| 廃棄前に残量を減らす |
|
| 端子を絶縁する |
|
なお、破損・膨張しているなど製品の状態によっては、回収ボックスを使用できない場合があります。その際は自治体の指示に従って処分してください。
万が一、火災が発生したら?落ち着いて行動するための手順
モバイルバッテリーの発火に気づいた場合は、以下の3つのステップで行動してください。
Step1:初期消火と安全確保(避難)
Step2:消防(119番)への通報
Step3:保険会社への事故報告
それぞれの手順を以下で解説します。
Step1:初期消火と安全確保(避難)
モバイルバッテリーの発火を確認したら、周囲の人に「火事だ!」と大声で知らせたうえで、安全確保を行います。火の勢いが小さく初期消火が可能だと判断できる場合は、消火活動を行いましょう。モバイルバッテリーは、出火してからしばらくすると炎の勢いが弱くなることもあるため、状況に応じて初期消火の対応を検討します。
なお、天井に達するほど炎が大きくなった場合は、消火器での消火は困難であるため直ちに避難することが重要です。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 火が小さく安全が確保できる場合 |
|
| 一旦火が消えた場合 |
|
| 炎が大きい・危険を感じる場合 |
|
なお、リチウムイオン電池による火災は少量の水では消火しにくく、かえって状況が悪化することがあります。水をかける場合は「大量に」かけることがポイントです。
Step2:消防(119番)への通報
周囲に人がいる場合は、消火活動を始める前もしくは周囲の人に依頼して119番通報を行います。通報時には「モバイルバッテリーからの出火であること」を明確に伝えると、消防隊が適切な装備で対応しやすくなります。
Step3:保険会社への事故報告
火災が落ち着いて安全の確認できたら、できるだけ早くご加入の保険会社に連絡してください。報告時に必要な情報と、請求をスムーズに進めるための準備事項は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険会社への連絡 |
|
| 現場の記録(片付け前に実施) |
|
| 必要書類の準備 |
|
連絡が遅れると保険金請求の手続きに影響が生じる可能性があるため、安全が確保され次第、速やかに対応することが大切です。SOMPOダイレクトをはじめ、ほとんどの保険会社では24時間365日、事故受付をしています。
火災保険の請求手順については、以下の記事もあわせてご覧ください。
まとめ:正しい知識と保険で、モバイルバッテリー火災のリスクに備えよう
モバイルバッテリーによる火災は、自宅だけでなく電車内や外出先でも発生する可能性があります。万が一の際の補償は、被害の状況に応じて火災保険・家財保険・個人賠償責任保険(特約)・借家人賠償責任補償がそれぞれ対応します。ただし、重大な過失があると判断された場合は保険金が支払われない可能性があるため、日常的に安全な使い方を心がけることが大切です。
PSEマークのある信頼できる製品を選び、適切な充電・保管・廃棄を実践することが発火事故の予防につながります。また、現在加入している火災保険に個人賠償責任保険(特約)がセットされているか確認し、補償が不十分な場合は見直しを検討することが重要です。
監修コメント
モバイルバッテリーによる火災は、保険で補償される可能性がある一方で、事故の原因や状況によって補償範囲が異なる場合があります。また、火災後は現場を片付ける前に被害状況を写真や動画で記録し、できるだけ早く保険会社へ連絡することが、その後の手続きを円滑に進めるうえで重要です。
保険は万が一の損害を補うための備えですが、事故そのものを防ぐことはできません。日ごろから製品の状態を確認し、異常を感じたら使用を中止するなど「予防」と「万が一への備え」の両方を意識することが、安心してモバイルバッテリーを利用するためのポイントです。
監修者プロフィール
辻本 剛士(つじもと つよし)
神戸で活動中の独立系ファイナンシャルプランナー。大学を卒業後、医薬品及び医療機器の販売会社に就職し、営業として16年間勤務。在職中に独学で1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者に合格し、2023年1月から独立型FPとして開業。個人向けFP相談と金融に関するWEBライター業務をメインに活動中。また、地域でサッカー指導者としての活動にも携わるほか、中学生向けの金融教育にも取り組んでいる。主な所有資格はCFP認定者、FP1級技能士、宅地建物取引士。
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