住民票や電気・ガス・水道、運転免許証など引っ越しに伴う手続きはたくさんありますよね。車に関連した手続きとしては、車庫証明の住所変更もそのうちの1つです。ただし、場合によっては変更手続きをしなくても良いケースもあります。
そこで、本記事では引っ越しによって自動車の車庫証明の住所変更が必要なケースや変更手続きの期限、手続き方法などをまとめて解説します!
- 目次
-
1.車庫証明とは?
車庫証明とは正式には「自動車保管場所証明書」といい、普通自動車などの登録自動車の保管場所(車庫)があることを証明する書類です。「自動車の保管場所の確保等に関する法律」によって、登録自動車の所有者は保管場所を確保し、申請することが定められています。
詳細は下記の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
車庫として認められる場所は決まっている
車庫証明の交付にあたって、保管場所はどこでも良いわけではありません。新しい保管場所が以下の要件を満たしていないと、車庫証明の交付を受けられませんので注意が必要です。
- 保管場所が駐車場、車庫、空き地など、道路以外の場所であること
- 自動車を使用する本拠地(住所)から直線距離で2km以内であること
- 車庫に通じる道が通行禁止ではないこと
- 車庫に通じる道が幅員制限に抵触しないこと
- 車全体が道路にはみ出さずに収容できること
- 他人の土地や建物を借りて保管場所にするときは、保管場所使用承諾証明書を用意すること
2.引っ越したら車庫証明の住所変更は必要?
引っ越しに伴って所有者の住所が変わった時は、車庫証明の住所変更が必要になります。引っ越しても保管場所は変わらない、というケースでも変更手続きが必要ですので注意しましょう。
なお、所有者の住所は変わらず、自動車の保管場所だけが変更になった場合は車庫証明の住所変更は不要です。ただし、変更から15日以内に保管場所の住所を管轄する警察署で「保管場所届出手続」をする必要があります。
また、賃貸アパートやマンションに引っ越しして、専用駐車場や月極駐車場など賃貸の駐車場を使用する場合も変更手続きが必要です。その際、「保管場所使用承諾証明書」という書類が必要になります。これは地主や不動産会社などの署名・捺印が必要で、不動産会社が用意してくれることもありますが、発行手数料が発生する場合もあります。手数料を節約するなら、駐車場の賃貸借契約書のコピーで代用できることもあるため、警察署に確認してみましょう。
車庫証明の住所変更が不要なケースもある
引っ越しで所有者の住所が変わっても、次のような場合は車庫証明の住所変更をする必要がありません。
(1)車庫証明が不要な地域に引っ越した場合
もともと車庫証明は、都市部などで駐車場を確保できず路上駐車が問題になったことを受けて法律が制定されました。そのため、人口の少ない村や村が合併してできた自治体など、路上駐車の問題が起こりにくい地域では車庫証明が不要です。こうした地域を「適用除外地域」と呼び、この地域に引っ越した場合は車庫証明の住所変更手続きは必要ありません。たとえば、東京都では下記の地域が適用除外地域になっています。
【東京都内の適用除外地域】
車の種類 | 適用除外地域 |
---|---|
自動車 | 桧原村、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、青ヶ島村、小笠原村 |
軽自動車 | 福生市、武蔵村山市、羽村市、あきる野市、瑞穂町、日の出町、奥多摩町、大島町、八丈島町、桧原村、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、青ヶ島村、小笠原村 |
- 出典
- 警視庁ホームページ
(2)軽自動車の場合
軽自動車では車庫証明(自動車保管場所証明書)にあたる書類を「自動車保管場所届出書」といいます。このため、軽自動車は引っ越しをした際に車庫証明の変更手続きはありません。その代わり、地域によっては管轄の警察署に車庫の届出(自動車保管場所届出)が求められます。おもに、下記にあてはまる地域は届出が必要です。
- 各都道府県の県庁所在地
- 人口10万人以上の市町村
- 都心部から30km圏内の市町村
しかし、上記にあてはまらなくても届出が必要な地域があります。必ず保管場所を管轄する警察署に確認しましょう。届出が必要な地域は、全国軽自動車協会連合会のホームページで確認することもできます。
全国軽自動車協会連合会車庫証明の住所変更手続きは15日以内
車庫証明の住所変更は、住所の変更があった日から15日以内に行うことが法律で定められています(自動車の保管場所の確保等に関する法律第7条)。後ほど解説しますが、車検証の住所変更をする際に車庫証明が必要になります。こちらも住所の変更後、15日以内に手続きをしなければなりません。新しい車庫証明の交付に7日間ほどかかることもあるため、早めに手続きするようにしましょう。
変更手続きをしないと10万円以下の罰則がある
引っ越し後、車庫証明の住所変更の届出を行わないままでいると、10万円以下の罰金が科せられることになっています(自動車の保管場所の確保等に関する法律第17条3項1号)。
さらに、保管場所を虚偽申請した場合や、申請した保管場所と違う場所に自動車を保管した場合、犯罪として扱われ、20万円以下の罰金などが科せられます。たとえば、単身赴任先に自動車を持っていき使用・保管する場合、一時的であったとしても車庫証明の住所変更をしないといわゆる「車庫飛ばし」となり、罪に問われます。必ず手続きを行いましょう。
3.車庫証明の住所変更手続き方法は?
引っ越しをした際の車庫証明の住所変更手続きは、新しい保管場所を管轄する警察署で行います。必要な書類や費用、手続きの流れを見てみましょう。
必要な書類など
申請に必要な主な書類は以下の通りです。各自治体の警察署で受け取れる他、警察署のホームページからダウンロードして印刷することもできます。
- 自動車保管場所証明申請書(軽自動車の場合は保管場所届出書):2通
- 自動車保管場所標章交付申請書:2通
- 保管場所の所在地・配置図:1通
- 手数料
この他、保管場所が自分の所有する土地の場合は「保管場所使用権原疎明書面(自認書)」、他者が所有する土地を借りる場合は「保管場所使用承諾証明書」を用意します。保管場所使用承諾証明書は駐車場賃貸借契約書のコピーで代用できることもあります。警察署に確認しましょう。
費用
車庫証明の住所変更の際には、申請手数料と標章交付手数料がかかります。金額は自治体によって異なり、たとえば、東京都、大阪府、福岡県の普通自動車の手数料は以下の通りです。
申請手数料 | 標章交付手数料 | |
---|---|---|
東京都 | 2100円 | 500円 |
大阪府 | 2200円 | 500円 |
福岡県 | 2200円 | 550円 |
※2024年1月現在
手続きの流れ
(1)書類の用意
申請に必要な書類を用意します。
(2)書類の提出
保管場所を管轄する警察署窓口に書類を提出し、申請手数料を支払います。申請後、保管場所などの調査が行われます。使用する本拠地から2kmを超えて離れているなど保管場所の条件を満たしていない場合は、車庫証明の交付を受けることができません。その場合も、申請手数料は返還されません。
(3)自動車保管場所証明書の交付
問題なければ、申請からおよそ3〜7日ほどで新しい車庫証明が発行されます。申請した警察署に行き、標章交付手数料を支払って下記の書類を受け取ります。
- 自動車保管場所証明書 :証明日(交付予定日)から1ヶ月以内に運輸支局へ提出します。
- 保管場所標章番号通知書:大切に保管しておきます。
- 保管場所標章:車の後部ガラス等に貼ります。
変更手続きは代行も可能
変更手続きを行う警察署の窓口が開いているのは、基本的に平日のみです。自分で行けない時は、費用はかかりますがカーディーラーや行政書士に代行を依頼することもできます。また、家族などが代理人になることも可能です。
この場合は、上記の必要書類に加えて、使用者の運転免許証や公共料金の領収書など使用者の本拠地を確認できる書類が必要です。また、委任状は必須ではありませんが、委任状を用意しておけば申請の際に書類に不備があっても代理人が訂正することができます。
4.引っ越しで必要な車の住所変更手続き一覧
引っ越しの際に必要な自動車関連の住所変更手続きは、車庫証明の他にもいろいろあります。主なものを一覧で紹介しますので、忘れないように確認しておきましょう。
【手続き一覧表】
内容 | 手続き場所 | 変更期限 |
---|---|---|
運転免許証 | 引っ越し先の住所を管轄する運転免許試験場、運転免許更新センター、警察署 | 明確な期限はないが速やかに行う |
車検証 | 引っ越し先の住所を管轄する運輸支 局(軽自動車は軽自動車検査協会事務所) | 住所変更から15日以内 |
ナンバープレート | 引っ越し先の住所を管轄する運輸支局(軽自動車は軽自動車検査協会事務所) | 車検証の変更と同時 |
自賠責保険 | 契約している保険会社の窓口または郵送 | 期限なし |
運転免許証
運転免許証は、引っ越ししたら新居の住所を管轄する運転免許試験場や運転免許更新センター、警察署のいずれかで住所変更の手続きが必要です。運転免許証の住所変更については下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
車検証
車検証は住所が変更になってから15日以内に手続きすることが法律で定められています。車検証の住所変更には車庫証明が必要になりますので、先に車庫証明の住所変更をしておきましょう。
ナンバープレート
ナンバープレートは運輸支局の管轄内での引っ越しであればそのままで構いません。管轄を超えて引っ越した場合は変更が必要となり、車検証の住所変更と一緒に行うのが一般的です。なお、変更が必要な場合、オンラインサービス「自動車ワンストップサービス(OSS)」から申請すれば、次の車検までナンバープレートの変更の猶予を受けることができます。
自賠責保険
自賠責保険は引っ越しして住所が変わっても、保険期限が切れていなければ事故などの際に補償は有効です。住所変更をしなくても法律違反にもなりません。しかし、住所変更の手続きを行わないと更新の通知が届かない可能性があります。気づかないうちに保険が切れ、万が一の際に保険が下りないという事態になりかねません。
また、自賠責保険が切れたまま車を運転すれば無保険に該当するため、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科されます。さらに交通違反となり違反点数6点、即免許停止処分になります。そういったことが起こらないように、引っ越したら速やかに住所変更の手続きをしましょう。
5.監修コメント
車をローンで購入した場合などは、所有権が留保され、販売店やローン会社が所有者に設定されていることがあります。一括購入した場合も、車の購入時や売却時の手続きをしやすいように、販売店を所有者にしていることがあるようです。
そのような状況でも、車庫証明の申請を主体的に行わなければいけないのは使用者です。引っ越しに伴う車庫証明の住所変更も、使用者が行う必要があります。本稿の「所有者」という部分を「使用者」に置き換えて考えてください。
車の所有者が誰になっているのかは、車検証を見ると分かります。所有者と使用者が異なるのは珍しい話ではないので、これを機に、車検証で愛車の所有者を確認してみてはいかがでしょうか。