2021年初頭には140円弱ほどだったガソリン価格はその後値上がりの一途をたどり、2021年末には170円代まで上昇。2022年に入っても依然として上昇傾向が続いています。
ガソリン価格はどこまで値上がりし、いつになったら元に戻るのでしょうか。最近のガソリン価格高騰の原因や今後の見通しについて解説します。
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1.ガソリン価格の決まり方
ガソリンの価格は原油生産量や為替動向、政治背景や需要と供給のバランスなど、さまざまな要素が絡み合って決まります。ガソリンスタンドで販売される小売価格は「原油価格+精製費+輸送費+企業利益+税金」の合計です。その中でも原油価格と税金は大きな割合を占めています。
ガソリン価格のほとんどは原油価格と税金
ガソリンには、ガソリン税と石油税の2つの税金がかかっています。また、ガソリン税は揮発油税と地方揮発油税を合算したものです。1Lあたりのガソリン税28.7円。そこに暫定税率25.1円が加えられ、さらに石油税2.8円がプラスされます。そして、そのそれぞれに消費税10%がかかります。
ガソリン価格に最も大きな影響を与えるのが原油価格です。ガソリンの原料である原油価格は先物取引価格と為替レートによって決まり、これらは世界的な需要と供給のバランスと各国の政策が影響します。また、地方の山間部や島は輸送費が高くつくため価格が上がる傾向にあります。
レギュラーとハイオクの価格差
高性能エンジン向けの高オクタン価ガソリンであるハイオクガソリンの価格も、レギュラーガソリンと同じ基準で価格が決まります。ただし、ハイオクガソリンにはオクタン価を高めるための添加剤と添加物により発生する燃えカスを洗浄するための薬剤が加えられているため、レギュラーガソリンよりも1Lあたり10円程度高くなります。
2.ガソリンの値上がりはなぜ起こる?
多くの要素が絡み合って決まるガソリンの価格は、わずかなきっかけで値上がりすることがあります。そのきっかけを具体的に見ていきましょう。
高騰は主な要因は原油生産量と需要量のバランスの悪さ
2021年から始まったガソリン価格の高騰は、複数の要因が重なって引き起こされています。第一の要因は、新型コロナウイルスの感染拡大から回復しつつある世界経済で原油需要が高まっているのに対し、原油産出国で組織される石油輸出国機構(OPEC)が需要の再下落を懸念して増産を見送っていることです。こうした影響で先物取引価格が上昇していることに加え、アメリカの長期金利政策の影響による円安ドル高も原油調達価格を引き上げる要因となっています。
その他の要因も重なっている
2021年8月にアメリカを襲ったハリケーン「アイダ」による石油施設被害の復旧の遅れも要因の一つです。また、今後は不安定なウクライナ情勢に端を発する原油輸出量世界第3位のロシアからの輸入規制により、価格はさらに上昇することが予想されます。
原油の調達価格が高騰すれば日本の石油元売会社も卸売価格を引き上げるため、小売店であるガソリンスタンドも店頭価格を上げざるを得なくなります。また、燃料価格が上がると運搬コストにも影響するため、連鎖的に販売価格が上昇します。
3.ガソリン価格の推移
- 出典
- 総務省統計局「小売物価統計調査」
現在のガソリン価格がどれだけ高いかを知るために、総務省統計局「小売物価統計調査」のデータからガソリン価格の推移を見てみましょう。
現在の高騰はオイルショック時並
1978年に始まった第二次オイルショック時、東京都区部の1Lあたりのガソリン価格は177円でした。オイルショック回復後は97円まで低下しましたが、ブラジル、インド、中国など中進国に加え、一部の発展途上国が著しく経済成長を遂げたことで原油需要が高まり、1999年5月を境にガソリン価格が上昇に転じました。2007年には、アメリカのサブプライムローン問題発覚により投資資金が債権から原油市場に流れ込んだことで過去最高価となる182円まで上昇。しかし、翌年のリーマンショックの影響で100円台まで急降下しました。
昔に比べて乱高下が激しくなっている
リーマンショック後は再び上昇したガソリン価格ですが、2015年にはアメリカが40年ぶりに原油輸出を解禁したことで109円まで低下。再び上昇したのち、コロナの影響による原油需要低下で126円に下落しました。現在は、前述の通り経済回復による原油需要と原油生産が噛み合わず、2022年4月時点で172円まで上昇しています。このように、社会情勢や政治・経済政策により近年のガソリン価格は激しく乱高下しています。
4.ガソリン価格は今後どうなる?
OPECの原油増産見送りや不安定なウクライナ情勢、円安ドル高などにより、原油価格の先行きは不透明です。政府は現在、石油元売り会社に補助金を拠出して価格抑制を要請したうえでガソリン基準価格を引き下げ、消費者への影響を最小限に抑えるための施策を講じています。しかし、依然緊迫する世界情勢の影響などからガソリン価格は今後も高止まりが続く可能性もあります。
トリガー条項の凍結解除をすればガソリン税が安くなる?
ガソリン価格を抑える奥の手として、ガソリン税の一部を廃止する「トリガー条項」の凍結解除があります。トリガー条項とは、レギュラーガソリンの価格が3ヵ月連続で160円を超えたことを引き金(トリガー)に、ガソリン税に上乗せされている25.1円の暫定税率を撤廃するものです。
東日本大震災からの復興に向けた財源確保で凍結されていたトリガー条項を発動させれば、ガソリン価格は単純に25.1円安くなります。しかし政府は、トリガー条項の凍結解除による大幅減税ではなく、石油元売会社への補助と基準価格を保つことで価格維持を狙う方針を固めており、凍結解除について検討はするものの当面は先送りする旨を発表しています。
5.ガソリンを少し安く給油する方法
前述したように価格の高騰が続いているガソリンですが、少しでも安く給油する方法はあります。
まずは、セルフサービスのガソリンスタンドを利用する方法です。給油時にスタッフが給油や接客をしてくれる店では人件費がガソリン代に上乗せされていることがあります。このため、セルフスタンドの方が若干安く給油できる傾向にあります。また、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアにあるガソリンスタンドは一般道よりも単価が5円~10円ほど高く、満タンまで給油すると500円程度も差がついてしまうことがあります。高速道路に入る前は忘れずに給油しておきましょう。
6.ガソリンの消費を抑えるためのコツ
また、ガソリンは、「エコドライブ」を心掛けることで消費を抑えることができます。エコドライブの指標となるのは車の燃費です。燃費は車に装備されている燃費計やエコドライブナビゲーションなどで確認することができます。
燃費は穏やかな走行を心がけることでアップします。発進時の最初の5秒で時速20km程度の穏やかな発進を心がけると、10%程度の燃費改善が期待できるといわれています。一方、車間距離を詰めた加速・減速の多い運転は燃費を悪化させる原因になるため注意しましょう。
車内環境を整えておくことも重要です。車の積載量が多ければ多いほど、車を動かすための燃料が必要になります。車内の無駄な荷物は降ろしておくことで、無駄な燃料を使わずに済みます。また、暖房のみを使用する際にはエアコンのスイッチを切っておくことも方法の一つです。車内の温度設定が外気と同じであっても、エアコンのスイッチをONにしたままだと燃費が悪化します。また、ガソリンスタンドなどで定期的にタイヤの空気圧が不足していないか確認することも燃費悪化を防げます。
7.まとめ
記事内で説明している通り、現在のガソリン価格の高騰は複数の要因が重なって起きています。政府はその対応として、石油元売会社に補助金を交付するなどの施策を講じて価格維持を図っています。
ガソリン価格がどれだけ上がったとしても、「生活の足」である車に乗らないという選択肢はなかなか選べるものではありません。燃料節約のために小型車や電気自動車に乗り換えることも選択肢の一つですが、車両購入に多額の費用がかかることになるため、慎重な検討が必要でしょう。
省燃費運転や保険内容の見直しなど、新たな費用が掛からない方法で維持費を節約し、この燃料価格高騰期を乗り切りましょう。近所の移動なら徒歩や自転車を利用するなど、車を使う頻度を減らすことも燃料代の節約には有効です。