車のワイパーは降雪・凍結によって思わぬ不具合や劣化が生じるリスクがあるため、寒冷地では冬用ワイパーへの交換が推奨されます。そんな冬用ワイパーについて、本記事では通常のワイパーとの適切な使い分け方や製品選びのポイント、使用上の注意点などを解説します。
- 目次
-
1. 冬用ワイパー(スノーワイパー)とは?なぜ必要?
車のガラス表面についた雨や汚れを除去する「ワイパー」は、基本的にどの製品も季節や天候を問わずあらゆる場面で使用が可能です。しかし、なかには冬場の使用に特化した、冬用ワイパー(スノーワイパー)と呼ばれる製品も存在します。
気温が低く降雪量が多い環境下では、ワイパーは雪の重さや凍結によって性能が低下したり、製品自体が劣化したりする恐れがあります。そうしたリスクに備える手段として、冬用ワイパーは主に寒冷地で車を運転するドライバーから人気を集めています。
一般的なワイパーとの違い
冬用ワイパーの特徴としては、金具部分が樹脂製カバーで覆われていたり、関節部が減らされていたりといった、凍結や積雪の影響を防ぐ設計がなされていることが挙げられます。ワイパー自体の材質にも、耐久性が高く錆びにくい素材が使われているケースが多いです。
また、ワイパーを動かすモーターの負荷を減らすため、冬用ワイパーは一般的なワイパーと比較して若干ブレード部分が短い傾向にあります。さらに一部の製品では拭き取り部のゴムにも加工がなされており、拭くことでガラスに雪や氷が付着しにくくなるものなども存在します。
こうした特殊な仕様の影響もあり、冬用ワイパーの価格は通常のワイパーの3~4倍程度と割高です。そのため、購入にあたっては性能や必要性をよく吟味して判断することが重要となります。
2. 通常のワイパーと冬用ワイパーの使い分け方
冬用ワイパーは実際には冬以外も使用できるため、一年中装着したままでも問題はありません。とはいえ、連続して使い続けるとその分劣化も早まるため、長持ちさせるためには以下の点を踏まえて通常のワイパーと使い分けることが推奨されます。
冬用ワイパーが必要な場面
冬用ワイパーは主に雪や凍結への対策を目的とした設備のため、積雪の少ない温暖な地域であれば、冬であっても必ずしも装着する必要はありません。
とはいえ、スキーなどのウィンターレジャーや、寒冷地を通過する長距離ドライブの予定がある場合は冬用ワイパーに交換しておくと安心です。
交換の目安となる時期
降雪などの自然現象は予測がしにくく、気温が低下してからでは間に合わない可能性もあるため、冬用ワイパーへの交換は早めに行うことが大切です。例年の気候などを参考にしつつ、ほぼ同時期に必要となるスタッドレスタイヤと一緒に交換するとよいでしょう。
通常のワイパーに戻す際も、交換時期はタイヤと同様です。強い日差しや気温の上昇はワイパーが劣化する原因となるため、遅くとも夏までには交換を済ませることをおすすめします。
3. 冬用ワイパーの選び方のポイント
冬用ワイパーと一口に言っても、その材質や形状は製品によって異なります。ここからは、自分に合った製品を選ぶためのポイントを解説します。
ゴムの種類
冬用ワイパーに使用されているゴムは、大きく三つのタイプに分けることができます。それぞれ強みが異なるため、求める性能に応じて選択しましょう。
- ノーマルタイプ
一般的なゴムを使用しているタイプです。他のタイプと比較して手頃な価格で購入できます。 - グラファイトタイプ
炭素でコーティングされたゴムを使用しています。ガラスとの摩擦が小さく、拭きムラや摩擦音が生まれにくい点が強みです。 - 撥水加工タイプ
ゴムに水を弾くような特殊な加工がなされています。拭くことによって被膜が生まれ、ガラス表面にも撥水性が生じます。
ワイパーの形状
ワイパーには形状にも「トーナメント」「デザイン」「フラット」という三つの種類が存在します。なかでもトーナメント形状とデザイン形状のワイパーには、凍結や積雪の影響を受けやすい関節部があるため、そこがゴムカバーなどで覆われている製品を選ぶことをおすすめします。
一方、フラット形状のワイパーはブレードと拭き取り部が一体となっており、関節部もないためガラスとの間に隙間が生まれにくいのが特徴です。冬用ワイパーとしても適した形状であるため、より安心して選ぶことができるでしょう。
サイズ・規格
冬用ワイパーにはさまざまなサイズや規格の製品があり、車の車種や型式によっては使用できないものもあります。購入にあたっては、販売店やメーカーなどが公開している適合表を事前に必ず確認しましょう。不安な場合には、販売店のスタッフに相談するのもひとつの手です。
ちなみに、車種によってはリアウインドウのワイパー取付部の形状がフロントウインドウとは異なっており、共通の製品を使用できない場合もあります。リアウインドウに使用するワイパーは、なるべくリアウインドウ専用の製品を選ぶようにすると安心です。
4. 冬用ワイパーの取付・交換方法
冬用ワイパーの取付・交換作業は素人でも自力で行えるほか、業者に依頼する方法もあります。
自力で行う場合
冬用ワイパーへの交換作業は基本的にゴムだけでなくブレードごとの交換となりますが、手順自体はそれほど難しくはありません。大まかな流れは以下のとおりです。
- ガラス表面にタオルなどを敷いて保護する
(アームがガラスにぶつかると傷が付くことがあるため) - アームとワイパーブレードをつなぐ部分を押し、ブレードをスライドさせて外す
- 取付けたい冬用ワイパーのブレードの連結部をアームの先端に引っかける
- ブレードをしっかりとアームにはめ込んで固定し、ワイパーを元の位置に戻す
業者に依頼する場合
販売店などで実施しているワイパーの取付・交換サービスは、利用にあたり多くの場合数百円程度の料金が発生します。とはいえ、専門知識を持つスタッフがワンストップで対応してくれるため、手間を減らしたい場合には検討してみるのもよいでしょう。
5. 冬用ワイパーの使用上のQ&A
冬用ワイパーの性能を長く保つため、使用にあたっては以下のような知識も把握しておきましょう。
冬用ワイパーの消耗のサインは?
ワイパーは消耗品であり、使い続けるといずれ性能が低下するため定期的な交換が必要となります。使用環境や走行距離によって変わりますが、基本的にブレードは1年、ゴムは半年が交換時期の目安とされています。
使用中にわかる消耗のサインとしては、ブレードは使用時の拭きムラや摩擦音が大きくなったら、ゴムは本体が裂けるか、拭いた跡が筋状になるようであれば交換が必要です。
冬用ワイパーはどうすれば長持ちする?
冬用ワイパーは耐久性が高いものが多いとはいえ、使い方を誤ると消耗が早まる可能性があります。なかでも手入れは細心の注意を払い、説明書に沿って正しい方法で行うことが大切です。
たとえば、車のガラスを掃除する際に使用されるガラスクリーナーやアルコール類は、ワイパーに付着してしまうとゴムが劣化することがあります。また、グラファイトタイプの冬用ワイパーは、水拭きすると加工がはがれてしまうことがあるため注意が必要です。
そのほか、降雪が予想される際には、ワイパーを持ち上げてガラス表面から離した状態にしておくと凍結のリスクを減らせるでしょう。
冬用ワイパーにもウォッシャー液は必要?
ウォッシャー液とはガラス表面の汚れを落とす薬剤であり、ワイパーの使用前に噴射することで汚れによるワイパーゴムの消耗を抑えることができます。
特に、冬用のワイパーはゴムが柔らかく傷つきやすいものが多い傾向にあるため、ガラス表面に汚れが見られる場合はなるべくウォッシャー液を噴射してからワイパーを動かすことを心がけましょう。
ただし、通常のウォッシャー液は気温の低い冬場には凍結してしまう恐れもあります。冬用ワイパーを使用する際は、ウォッシャー液も凍結しにくい冬用のものを併用することをおすすめします。
もしもワイパーが凍結してしまったら?
ワイパーが凍結してしまった際には、すぐには動かさず溶けるのを待つのが正しい対処法です。凍結したワイパーを無理に動かすと、ブレードやゴムだけでなくワイパーを動かす車側のモーターなどを損傷する恐れがあります。
また、即座に解凍したい場合でも、ワイパーに熱湯をかけたり強い力を加えたりしてはいけません。解凍にはカーエアコンのデフロスターや市販の解氷スプレーなどを使用し、解凍したワイパーに劣化が見られる場合はすぐに新しいものに交換しましょう。
6. 監修コメント
一般的な雨用ワイパーは、車種ごとで異なるガラスの形状やアームの構造に合わせて設計された製品が多く、フィット性に優れています。一方で、冬用ワイパーは雪や氷への耐性を重視した構造のため、汎用タイプが中心です。長さが合えば取り付けられる場合が多いですが、性能を十分に発揮させるためにも、購入前にメーカーや販売店が公開している適合表を確認しておくとよいでしょう。
冬用ワイパーは冬以外の季節も使用できますが、ガラス面への密着性や雨の拭き取り性能は、車種に適合した雨用ワイパーの方が優れています。冬場以外は、車種に合った雨用ワイパーを使用することをおすすめします。
