キーを携帯するだけで、車の解錠や施錠ができるスマートキー。このスマートキーとは一体何なのか、特徴や仕組み、従来の「キーレスキー」との違いやメリットについて解説していきます。
また便利な一方で、スマートキーの電波システムを悪用した盗難手口もあるので、盗難防止策をとりながら使用することが大切です。スマートキーを使用する際の注意点についても紹介します。
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スマートキーとは?
「スマートキー」とは、キーをポケットやバッグに入れたまま車のドアの解錠・施錠、エンジンのON/OFFが行えるキーのことです。
スマートキーを所持した状態でドアノブにタッチすれば、鍵を差し込まずとも解錠・施錠が行えます。わざわざポケットからキーを出す必要はありません。また、ほとんどのスマートキーが、正規のキーを車内に持ち込まなければエンジンが始動しない「イモビライザー」という機能を備えています。したがって、スマートキーが車内にあれば、あとはエンジンのスタートボタンを押すだけでエンジンのON/OFFが可能となります。このようなシステムを総じて「スマートキー」と呼びます。
スマートキーは、メーカーによって独自の名称が付けられていることがあります。「スマートキー」と言っても通じますが、念のためお持ちの車のメーカーの名称をおさえておきましょう。
メーカー | スマートキーシステムの名称 |
---|---|
トヨタ | スマートエントリー&スタートシステム |
日産 | インテリジェントキーシステム |
ホンダ | Hondaスマートキーシステム |
スズキ | キーレススタートシステム |
マツダ | アドバンストキーレスエントリー&プッシュボタンスタートシステム |
スバル | キーレスアクセス&プッシュスタートシステム |
三菱 | キーレスオペレーションシステム |
キーレスエントリー(キーレスキー)との違い
スマートキーとは別に、従来の「キーレスキー」と呼ばれるキーがあります。以降で、両者の違いについて解説します。
キーレスキーとは?
「キーレスキー」とは、ボタン操作でドアの解錠・施錠が行えるキーのことです。キーの表面に解錠・施錠のボタンが付いており、ボタンを押すことで離れた場所からでも車のドアの解錠・施錠ができます。名前の由来は、「ドアの鍵穴にキーを刺さない(キーレス)」からきています。
キーレスキーとの機能の違いは?
スマートキー、キーレスキーともに、鍵穴に鍵を差し込まなくてもドアの解錠・施錠が行えます。しかし、キーレスキーの場合、エンジンをかける時には鍵穴に鍵を差し込まなければいけません。一方で、スマートキーは鍵穴に鍵を差し込まなくても、エンジンスタートボタンを押すだけでエンジンをかけることができます。なお、キーレスキーの中にもイモビライザーを備えているものがあります。
スマートキーとキーレスキーの機能の違いは以下の通りです。
スマートキー | キーレスキー | |
---|---|---|
ドアの解錠・施錠方法 | スマートキーを持った状態でドアノブにタッチする | キーレスキーの解錠ボタンor施錠ボタンを押す |
エンジンのON/OFF方法 | 車内にキーを置き、エンジンスタートボタンを押す | 鍵穴にキーを差し込み回す |
※スマートキーにもボタン操作機能が付いています。キーレスキー同様に、手動のボタン操作でドアの解錠・施錠も可能です。
スマートキーの仕組み
スマートキーは、電波を使うことでそのシステムを実現しています。ここでは、スマートキーの仕組みについて解説します。
車とスマートキーは電波で通信している
車とスマートキーは、電波を使って相互に通信をしています。
車とスマートキーの通信の仕組み
- 車側の発信機が常に周囲に微弱な電波を発信することで対象のスマートキーを探す
- スマートキーを持った人が車に近付く
- 車からの電波をスマートキーが受信すると、スマートキーが「近くにいるよ」と返答信号を発信
- 車側の発信機がスマートキーからの信号をキャッチし照合
- 照合された状態でドアノブを触るとドアが解錠
このような仕組みで、スマートエントリーが可能となります。車側の発信機が発信する電波は限定的なので、車にかなり近づかないと反応しないようになっています。
スマートキーの使い方
スマートキーの使い方について、シーン別に解説します。
※車種によっては一部の操作が異なるケースがあります。お使いの車の「取扱説明書」もあわせて確認した上でご利用ください。
スマートキーの使い方「乗車編」
- スマートキーを所持し車に近付く
- 車のドアノブをタッチする(タッチ不要、ドアに近付くだけの車種もあります)
- ドアが解錠する
- ブザーやハザードランプの点滅で解錠を知らせる
- ドアを開けて乗車する
スマートキーの使い方「エンジンON/OFF編」
ONにする場合
- スマートキーを車内に置く
- フットブレーキを踏んだ状態でエンジンスタートボタンを押す(ダイヤル式の場合はダイヤルを回す)
- エンジンが始動
OFFにする場合
- ギアをパーキング(P)に入れ、エンジンスタートボタンを押す(ダイヤル式の場合はダイヤルをエンジンを掛けた時とは逆に回す)
- エンジンが停止
スマートキーは、後部座席など車のどこに置いても問題ありません。ただし車内にあることが条件です。
スマートキーの使い方「降車編」
- スマートキーを所持し降車する
- 車のドアノブをタッチする(タッチ不要、車から離れるだけの車種もあります)
- ドアが施錠される
- ブザーやハザードランプの点滅などで施錠を知らせる
スマートキーのメリット
スマートキーの最大のメリットは、車の乗り降りが非常にスムーズになることです。
毎回、車の前でキーを探し、ボタン操作で解錠・施錠を行う作業は何かと面倒です。特にキーをバッグの中に入れて持ち歩くことの多い方には、メリットは大きいでしょう。
その他、次のようなメリットもあります。
- キーを出し入れする機会が減るので、キー紛失のリスクを抑えられる
- 傘や買い物袋などで手が塞がっていても解錠・施錠ができる
- エンジンON/OFFの作業が簡略化される
また、ドアに鍵穴が付いている従来の車両では、専用の道具を使って開錠し、車内に侵入されるピッキング被害にあう可能性があります。ピッキングにより車上荒らしされる事件は現在でもあります。
しかしスマートキー搭載車は、ドアに鍵穴自体がない車種が多く、ピッキングされて鍵穴が壊されたり、ドアがキズつけられたりするリスクは減ります。
スマートキーを使う際の注意点
スマートキーの仕組みを悪用した車の盗難に注意する
一般社団法人日本損害保険協会が発表した「第24回自動車盗難事故実態調査結果」によると、車両本体盗難件数※は、2020年が2,964件、2021年が2,425件、2022年が2,656件。いまだに多くの盗難被害が発生しています。
※損害保険会社が調査期間中に保険金を支払った事案を対象にしたもの。
盗難被害にあいやすい車種は、ランドクルーザーやプリウス、アルファードなどで、高級車や海外で人気のある車はターゲットになりやすいです。
スマートキーを利用している方は、スマートキーの電波システムを悪用した盗難手口「リレーアタック」や「コードグラバー」に気を付ければなりません。以下に、各盗難手口の詳細と対策をご紹介します。
リレーアタックの手口と対策
リレーアタックとは、スマートキーの電波を増幅させ、第三者が勝手に車の開錠を行う手口です。車の発信機の電波は限定的であり、車のかなり近くにいないとドアは解錠されません。しかし、リレーアタックは距離に関係なく行われる手口です。
リレーアタックは、主に2人組で犯行が行われます。犯人Aが標的となる車に近付き、特殊な装置で車の発信機の電波を読み取り、犯人Bに送信。受信した犯人Bはスマートキーを持っている運転手に近づいてスマートキーからの応答信号を受信し、犯人Aに発信します。それを受信した犯人Aがスマートキーの応答信号を車に送信し、ドアを開錠する手口です。
対策としては、スマートキーが発信している電波を拾われないようにすることです。これには、「電波遮断ポーチ」と呼ばれる製品が有効です。電波遮断ポーチの中にスマートキーを保管しておけば、外部への電波の漏れを遮断できます。また、深夜に自宅の駐車場からリレーアタックで車が盗まれる事案も少なくありません。帰宅したらブリキ缶にスマートキーを入れて保管したり、玄関から離れた場所にスマートキーを置いたりするなど、ちょっとした心掛けでリレーアタックにあうリスクを軽減することができます。車種によっては、電波の発信を一時的に停止できる「節電モード」や「スリープモード」などが搭載されていたり、追加できたりすることもあります。
コードグラバーの手口と対策
「コードグラバー」とは、スマートキーのスペアキーを作成する機器のことをさします。この機器を悪用し、第三者が勝手にスペアキーをつくるというのが、「コードグラパー」と呼ばれる盗難手口です。
コードグラバーは、複数人で行われるリレーアタックと違って単独での犯行が可能です。窃盗犯はまず、ドライバーがドアロックした際の電波をコードグラバーで受信します。電波を受信したコードグラバーはスペアキーとして車に認識されるため、ドアの解錠からエンジン始動までが行えるようになります。窃盗犯はドライバーが車から離れたすきにドアを解錠し、簡単にエンジンをかけて車を持ち去ることができるのです。
コードグラバー対策として有効なのは、追加セキュリティシステムの導入です。例えば、一定以上の機能を有するカーセキュリティをしっかり取り付け、作動させておけば、振動や衝撃などの異常が発生した際に、警告音を発報させることができます。カーセキュリティには、車内への不正な侵入を感知する「超音波センサー」を搭載していたり、イモビライザーを追加できたりするものもあります。スマートキーと連動したカーセキュリティもあるので、車の使い方や保管状況に合わせて選ぶとよいでしょう。
鍵の紛失に気を付ける
スマートキーはあなた本人でなくても利用できますので、紛失すると第三者に悪用されるリスクがあります。またスマートキーは再作成時の費用も高額です。紛失しないよう管理を徹底しましょう。
キーを必ず持ち歩く
たとえば、夫婦二人で外出したとします。車を出発させスマートキーは奥さんのバックの中に。その後、奥さんに急用ができ、車で駅まで送り届け、奥さんはスマートキーの入ったバックを持って降車。このようなケースの場合、エンジンは掛かっていながらキーが無い状況に陥り、その後エンジンを一度止めてしまうと、再始動できなくなります。
スマートキーでは、従来のキーでは起きえなかったこうしたトラブルも発生します。回避するには、キーを必ず自分で持ち歩ことが大切です。安易に他者に預けるのは避けましょう。
電池切れに注意
スマートキーは電池式ですので、使い続けているといずれ電池切れを起こします。ご自身の車の説明書を確認して定期的に電池の交換をしましょう。電池交換の方法は、次項で詳しく解説します。
電波障害に気をつける
スマートキーは電波を用いたシステムのため、電波障害などの影響を受けることがあります。電波の遮断や干渉が起きると、正常に作動しなくなったり、「スマートキーが近くにない」と判断し、車をロックしてしまうことも。
動作不良を感じたら、スマホなどの無線通信機器を一緒に携帯していないか、テレビ塔など強い電波を発する施設が近くにないか等を確認してください。そして、無線通信機器を遠ざけたり、内蔵されているメカニカルキーを使用しましょう(メカニカルキーの使用法は後述します)。
ペースメーカーに配慮する
スマートキーのシステムは、ペースメーカーに影響を与える恐れがあります。ペースメーカーを装着している方を乗車させる場合は、例えば車の発信機のアンテナからペースメーカー等の植込み部位を約22cm以上離す、などの注意が必要です。注意事項の詳細を確認したい場合は、下記リンクを参考にしてください。
スマートキーが反応しない時はどうする?
スマートキーが反応しない原因
スマートキーが反応しない時、原因としてまず考えられるのは「電波障害」。スマートフォンなどの無線通信機や、放送施設、電波塔など強い電波が発生する施設などが近くにあると、それらによって通信が妨げられている可能性があります。スマートフォンをスマートキーから遠ざけたり、場所を少し変えてから、再度試してみましょう。
2つ目に考えられるのは、「半ドア」。安全性を確保するため、車はドアが閉まりきっていない状態ではロックがかかりません。半ドアになっていると、警告音で知らせてくれる車種もありますが、警告音が鳴らない車種もあるので、半ドアに気づかない場合もあるでしょう。いずれにせよ、スマートキーが反応しない場合には「半ドア」の可能性も疑ってください。
3つ目の理由は、「電池切れ」です。スマートキーは電池式のため、電池が切れると使うことができません。スマートキーのランプが点灯していなかったり、反応が悪くなってきたりした場合は、残量が少なくなっている可能性があります。
上記はスマートキー自体に原因があるケースでしたが、そもそもバッテリー上がりやセルモーターが故障している可能性も考えられます。その際は、自分で解決することは難しいので、ディーラーなどに修理の依頼をするようにしましょう。
スマートキーを使わずに解錠・エンジンをかける方法は?
実はスマートキーにはメカニカルキーといわれる鍵が内蔵されています。メカニカルキーを使えば、スマートキーを使わずとも、解錠・施錠ができたり、エンジンをかけることもできます。
以下に、メカニカルキーの使い方の一例を簡単に紹介します。ただし、車種によって方法が異なりますので、お持ちの車の説明書を確認するようにしてください。
メカニカルキーの取り出し方
- スマートキーの側面にある解除ボタンを押す。
- スマートキーのツマミ部分を持ち、メカニカルキーを抜く。
解錠の仕方
メカニカルキーをドアの鍵穴に差し込み、解錠する。
エンジンのかけ方
- シフトが「P」になっていることを確認する。
- ブレーキを踏みながら、エンジンスタートボタンをスマートキーでタッチする。
- ブレーキを踏みながら、エンジンスタートボタンを押して、エンジンをかける。
スマートキーの電池交換の方法は?
いざという時に、「電池切れでスマートキーが使用できなくなった」という事態を防ぐためにも、1年に1回など、定期的に電池交換をしておくといいでしょう。
電池交換は車外で行うのがおすすめです。鍵のかかった車内で電池交換を行い、正しく電池交換が完了しないまま車外に出てしまうとセキュリティアラームが動作して警告音が鳴ってしまう可能性があるので注意しましょう。
以下に、電池交換の方法の一例をご紹介します。
- メカニカルキーを取り出す。
- スマートキーの電池カバーを開ける。
- 古いボタン電池を取り出し、新しいボタン電池を取り付ける。
- 電池カバーを戻す。
電池交換の方法はメーカーや車種によって異なる場合があるため、基本的には取扱説明書を見ながら行うようにしてください。
監修コメント
近年、スマートキーの進化形ともいえる「デジタルキー」に対応した車種が増えています。デジタルキーはスマホと車をペアリングすると、スマホがスマートキーにもなるシステムです。
デジタルキーの規格は車種や自動車メーカーによってさまざまです。インターネットを利用するタイプもあれば、BluetoothやNFCで接続する方式を採用している自動車メーカーもあります。
デジタルキー化できるアイデア商品もあります。そのひとつが、スマホとペアリングしたカップにスマートキーを入れ、車内に置くことで、スマホでのスマートロック/ロック解除を可能にするもの。スマートキーは車内にあるので、エンジンの始動はプッシュボタンを押すだけでOKです。