交通事故の示談を進める際、「示談書とはどのようなもの?」「何を書けばいい?」と疑問に感じる方もいるでしょう。示談書とは、当事者同士が話し合いによってトラブルを解決し、その合意内容を書面にまとめたものです。
この記事では、示談書とは何か、記載する内容や作成時の注意点について解説します。
- 目次
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1.示談書とは?トラブル解決の最終合意を証明する重要書類
示談書の概要や役割
示談書とは、トラブルの当事者間で話し合い、解決した内容を記した文書のことです。示談書は交通事故のほか、民事上のさまざまなトラブルにおいても作成されます。
交通事故における示談書には、事故内容や示談条件、支払い方法などを記載します。双方が内容を確認し、合意したことを証明するもので、当事者間の認識のずれをなくし、後にトラブルが起きるのを防ぐ役割もあります。
トラブルが起きた際、示談ではなく、裁判によって解決する方法もあります。しかし、その場合、示談に比べて解決までに時間がかかったり、訴訟費用や弁護士費用などがかかります。示談は、トラブルを早期に解決できるケースが多く、示談内容も当事者間で柔軟に取り決めることができるといったメリットがあります。
示談書の法的効力
示談は、法律的には民法上の和解契約(民法695条)に該当するとされています。そのため、示談書を取り交わすと、原則としてその内容に従うことになります。原則として一度示談に合意して署名・捺印をすると、その内容を後から変更したり、取り消したりすることは極めて困難です。そのため、内容を十分に納得した上で署名・捺印することが大切です。
示談書と合意書、和解書、公正証書の違いは?
示談書と似た書類に、合意書や和解書、公正証書などがあります。それぞれの意味は、以下のとおりです。
- 合意書...当事者間の合意内容を記載した文書。
- 和解書...当事者間で和解した内容を記載した文書。
- 公正証書...公証人が法律に従って、作成する公文書。
基本的に、示談書、合意書、和解書はいずれも当事者間の合意内容を記載した私文書です。
一方、公正証書は、公証人が作成する公文書である点が、示談書などとの大きな違いです。示談書は、当事者間で内容を決めて作成できますが、公正証書は、公証人が当事者の合意内容を確認した上で作成します。
また、公正証書に一定額の金銭の支払いについて「強制執行認諾文言」を記載しておけば、債務者が支払わない場合に、裁判で判決を得ることなく、財産の差押さえなどの強制執行を申し立てることができます。この点も、示談書などとの大きな違いです。
保険会社から届く「免責証書」とは?示談書との違い
交通事故にあった場合、保険会社や加害者から免責証書が送られてくることがあります。
免責証書とは、示談書の一種で、交通事故の当事者間で合意した内容を記載した文書です。免責証書は、主に被害者側に過失がない事故(もらい事故など)や、人身損害の示談交渉のケースなどで、相手方の保険会社から賠償金を受け取る際によく用いられます。
免責証書には、「被害者が加害者に対して、記載内容以上の損害賠償を請求しない」旨などが記載されます。示談書とは異なり、主に被害者側のみが署名・捺印する点が特徴です。そのため、双方が署名・捺印する示談書に比べ、書類の取り交わしをスムーズに進めやすいというメリットがあります。
2. 示談書の記載内容
示談書に特に決まった形式はありませんが、交通事故の場合に一般的に記載される内容を紹介します。示談書に記載される項目は、大きく分けて以下の3つです。
- 事故の詳細を記載する項目
- 損害賠償額、示談内容を記載する項目
- 当事者の情報、署名・捺印欄
<示談書の例>

事故の詳細を記載する項目
事故日時、事故場所、事故内容を記載します。日時と場所は、交通事故証明書に記載された内容を記載するようにします。交通事故証明書は、警察に事故を届け出た後、各都道府県の自動車安全運転センター窓口などに申請すれば取得できます。
また、加害者(甲)、被害者(乙)の住所、氏名、運転していた車の登録ナンバーも記載します。
損害賠償額、示談内容を記載する項目
示談内容や損害賠償額、賠償金の支払い方法、支払い期限などを記載します。なお、賠償金の支払い方法には、それぞれが支払うべき賠償額を相手側に支払う方法のほか、双方の支払い金額を相殺する方法もあります。ただし、人身損害については相殺が制限される場合があるため、個別の確認が必要です。
当事者の情報、署名・捺印欄
加害者(甲)と被害者(乙)がそれぞれ住所を記載し、署名・捺印をする項目です。
3. 交通事故で示談書を作成するときの注意点
原則として、合意した示談書の内容は変えられない
示談書には契約書としての法的拘束力があるので、原則として一度示談書に署名・捺印をすると、その合意内容を後から変えることはきわめて難しいです。
そのため、交通事故で怪我をした場合、示談の内容を慎重に検討することが大事です。交通事故においては、後になって体に痛みや不調が現れることがあるからです。示談書は、基本的に怪我の治療が終わり、損害の内容が確定した時点で作成するようにしましょう。後遺障害が残った場合は、後遺障害による損害も含めて、示談の内容を検討する必要があります。
清算条項をしっかり確認する
清算条項とは、「示談の成立後、双方は一切金銭の請求をしない」ということを約束する項目のことです。例えば、交通事故の示談成立後に後遺障害が判明した場合でも、清算条項に合意していると、原則として後遺障害による損害について追加で損害賠償を請求することはできません。
ただし、示談書に「示談成立後に後遺障害が発生・判明した場合は別途協議する」などの留保条項を設けることで、後から生じた損害について請求できるようにすることも可能です。そのため、示談書に署名・捺印する前に、清算条項の内容をしっかり確認することが大切です。
4.交通事故の示談はだれがやる?保険会社の示談交渉サービスとは
示談は、トラブルの当事者間で行うことができます。しかし示談では、損害額や過失割合の交渉、示談書の作成、取り決めなどが必要になるため、一般の方がすべて対応するのは負担が大きいでしょう。
示談をスムーズに進めるためには、保険会社の示談交渉サービスや弁護士などの専門家に相談する方法があります。自動車保険に加入している場合は、契約内容によっては付帯されている示談交渉サービスを利用できます。
示談交渉サービスを利用するメリット
示談交渉サービスを利用すると、示談交渉にかかる時間や労力を軽減できるほか、保険会社の専門知識を活かした対応を受けられるといったメリットがあります。示談交渉サービスの主な利点は、以下のとおりです。
- 契約者の労力と時間の削減
- 保険会社の専門知識による適切な対応
- 複雑な法的手続きや交渉のサポート
- 客観的な基準に基づいた適切な損害賠償の受取りを目指せる
示談交渉サービスを利用できるケース
事故被害者の場合
基本的に、被害者自身にも過失があり事故の相手方に対しての賠償責任が生じている場合、「対人賠償責任保険」・「対物賠償責任保険」に加入していれば、付帯されている示談交渉サービスを利用することができます。
ただし、自動車保険にセットできる「車両保険」や「人身傷害補償保険」は、基本的に被保険者自身の損害を補償するための保険であり、これらの保険だけでは示談交渉サービスの対象とはなりません。
事故加害者の場合
加害者が「対人賠償責任保険」・「対物賠償責任保険」に加入している場合は、加害者側の保険会社の示談交渉サービスを利用できることがあります。
交通事故では、加害者側の保険会社から被害者に示談案が提示され、損害額や過失割合などについて交渉が進められるのが一般的です。
示談交渉サービスを利用できないケース
自身に過失がない「もらい事故」などの場合は、法律(弁護士法72条「非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止」)の規定により、示談交渉サービスを利用することができません。
ですので、この場合は、被害者自身が相手方と直接交渉するか、弁護士に示談交渉を依頼することになります。なお、自動車保険に弁護士費用特約を付けている場合は、交通事故の示談交渉などについて、弁護士への相談・依頼にかかる費用をカバーすることができ、心理的・経済的負担を軽減することができます。
関連ページ:弁護士費用特約|おとなの自動車保険
5. 示談交渉の流れと取り交わし方(交通事故を例にした一般的な流れ)
上記のとおり、交通事故の当事者が自動車保険に加入している場合、保険会社に示談交渉を任せられることがあります。ここでは、交通事故を例に、示談書を取り交わすまでの一般的な流れを紹介します。
- 保険会社が示談交渉を開始
- 保険会社が示談書を作成し、被害者へ提示する
- 被害者が示談内容を確認し、合意した上で署名・捺印する
- 加害者も示談内容を確認し、署名・捺印する
- 被害者・加害者それぞれが示談書を1通ずつ保管する
示談書に署名・捺印する前に、損害賠償額や過失割合、支払い方法、清算条項などの内容を十分に確認することが大切です。内容に疑問や納得できない点がある場合は、署名・捺印する前に保険会社などに確認しましょう。
6. 監修コメント
示談では、損害賠償額や過失割合などを踏まえて相手方と交渉し、合意した内容を正確に文書にまとめることのできる能力が必要になります。専門的な知識が求められるため、示談交渉サービスを利用しない場合は、周りにいる法律に詳しい方や交通事故経験者に代理をお願いしたいと思うかもしれません。
しかし、弁護士ではない人が報酬を得る目的で示談交渉や法律事務を代理することは、原則として弁護士法違反となります。ご自身での交渉や文書の作成が難しいと感じたときは、安易に署名・捺印をせず、弁護士に相談することをおすすめします。
