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あおり運転とは?罰則内容、あおり運転をされたときの対処法や回避方法も解説

更新

2025/08/25

公開

2020/09/09

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悪質・危険な運転によって、周囲のドライバーを脅かし、重大な交通事故の発生にもつながるあおり運転は、2020年6月30日に施行された改正道路交通法にて厳格な取締りの対象となりました。
本記事では、あおり運転の罰則内容を解説するとともに、被害にあわないための回避方法や被害にあった際の対処法などを紹介します。

目次

    1.あおり運転とは?(定義について)

    あおり運転とは、後方や左右から極端に車間距離を詰めて異常接近する、追い回す、前方を走っていながら突然急停止して車両の運転を妨げるなど、故意に特定の車両の運転を妨害する危険な行為のことをいいます。

    また、理由のないパッシングや執拗にクラクションを鳴らす、ハイビームを使った運転の妨害、相手に罵声を浴びせるなど、相手を威嚇したり、嫌がらせしたりするなどの迷惑行為もあおり運転に該当します。

    近年は、大きな社会問題として取り上げられることも多いあおり運転。一般道路はもちろん、高速道路でのあおり運転は特に危険であり、重傷事故や死亡事故も発生しています。

    2.あおり運転の罰則

    あおり運転を行った場合、「妨害運転罪」として罰則が科せられます。妨害運転罪の対象となる行為や刑事罰、行政罰は以下の通りです。

    対象となる行為 刑事罰 行政罰
    交通の危険の恐れがあるあおり運転 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
    • 違反点数25点
    • 運転免許取り消し
    • 2年間免許取得不可
    著しい交通の危険を生じさせた場合 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
    • 違反点数35点
    • 運転免許取り消し
    • 3年間免許取得不可

    交通の危険の恐れがあるあおり運転を行ったとして処罰された場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。違反点数25点が加算されるため運転免許は取り消しとなり、その後2年は免許を取得することができません。

    また、高速道路上で相手車両を停車させるなど、著しい交通の危険を生じさせた場合は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。違反点数35点が加算され、運転免許取り消しのうえ、その後3年は免許を取得することができなくなります。

    加えて、あおり運転により人身事故が起きた場合は「危険運転致死傷罪」が適用され、人を負傷させた場合は懲役15年以下、死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役に処されます。これら以外にも、暴行罪や傷害罪、脅迫罪などの罪に問われることもあります。

    3. あおり運転の具体的な例(10類型)

    上記で紹介した、「交通の危険の恐れがあるあおり運転」とは、具体的に以下のような行為をさします。

    違反行為 具体例
    通行区分違反 対向車線からの接近や逆走
    急ブレーキ禁止違反 不要な急ブレーキ
    車間距離不保持違反 車間距離を詰めて接近
    進路変更禁止違反 急な進路変更
    追越し違反 左車線からの追い越しや無理な追い越し
    減光等義務違反 ハイビームの不必要な継続
    警音器使用制限違反 クラクションの不必要な反復
    安全運転義務違反 急な加減速や幅寄せ
    最低速度違反(高速自動車国道) 高速道路などの本線車道での低速走行
    高速自動車国道等駐停車違反 高速道路などにおける駐停車

    これらの行為は妨害運転罪の対象となる可能性があるほか、妨害運転罪とみなされなかった場合でも、各行為には違反点数と反則金が科されます。以下より、各行為の詳細について紹介します。

    1.対向車線からの接近や逆走・蛇行運転(通行区分違反)

    対向車線から他の車に接近したり、センターラインをまたいで対向車線を逆走する行為もあおり運転の対象です。また、後続車の通行を妨げる蛇行運転は、危険な運転であることはもちろん、受ける側に恐怖心や不安感を抱かせる行為としてあおり運転とみなされます。
    「通行区分違反」としては、違反点数2点がつき、反則金は普通車・二輪車が6,000円、大型車が7,000円といった罰則が科せられます。

    2.不要な急ブレーキ(急ブレーキ禁止違反)

    他のドライバーへの嫌がらせとして、急ブレーキを踏む行為は急ブレーキ禁止違反にあたり、あおり運転の対象になります。なお、危険回避のためにやむをえない場合を除き、急ブレーキをかけることも「急ブレーキ禁止違反」とされ、違反点数2点、反則金7,000円の罰則が科せられます。

    3. 車間距離を詰めて接近(車間距離不保持違反)

    適切な車間距離の保持は道路交通法第26条で規定されています。前方を走る車の後ろに車間距離を詰めて接近したり、ぴったりと速度を合わせて走行したりといった危険行為はあおり運転とみなされる場合があります。
    あおり運転とみなされずとも、「車間距離不保持違反」に問われると、一般道の場合は違反点数1点、反則金は普通車・二輪車が6,000円、原付が5,000円、大型車が7,000円です。高速道路などの場合は、違反点数2点、反則金は普通車・二輪車が9,000円、原付が7,000円、大型車が12,000円です。

    4. 急な進路変更(進路変更禁止違反)

    後続車や並走車の前で急に進路を変えることは非常に危険です。道路交通法第26条の2では、進路変更について「車両は、みだりにその進路を変更してはならない」と定められています。
    「進路変更禁止違反」の罰則としては、違反点数1点、反則金は普通車・二輪車が6,000円、大型車が7,000円です。

    5. 左車線からの追い越しや無理な追い越し(追越し違反)

    追い越し禁止の道路での車の追い越しや、十分な車間距離が保てない状況での無理な追い越しもあおり運転とみなされる場合があります。「追越し違反」は、違反点数2点、反則金は普通車が9,000円、二輪車が7,000円、原付・小型特殊車が6,000円、大型車が12,000円です

    6.ハイビームの不必要な継続(減光等義務違反)

    嫌がらせなどの目的により、ハイビームで走行することもあおり運転の対象になります。
    なお、夜間やトンネルなどの暗い場所ではハイビームで走行することが原則ですが、対向車や前走車がいる場合には、ロービームに切り替えなければいけません。これを怠った場合、「減光等義務違反」として違反点数1点、反則金6,000円が科されます。

    7.クラクションの不必要な反復(警音器使用制限違反)

    クラクションは、標識などで定められている場所と危険防止などやむをえない場合にのみ認められています(道路交通法第54条)。クラクションの不必要な反復もあおり運転に該当します。
    「警音器使用制限違反」とみなされた場合は、違反点数はありませんが、反則金3,000円の罰則です。

    8. 急な加減速や幅寄せ(安全運転義務違反)

    ドライバーは事故を起こさないよう、状況に応じてハンドルやブレーキなどを確実に操作することが義務付けられています(道路交通法第70条)。そのため、他の車への嫌がらせや威圧のために、急にスピードを落としたり加速したり、幅寄せしたりする行為はあおり運転とみなされることがあります。
    「安全運転義務違反」の罰則としては、違反点数2点、反則金は普通自動車が9,000円、原付が6,000円、大型車が12,000円となります。

    9.高速道路などの本線車道での低速走行(最低速度違反<高速自動車国道>)

    高速道路の最低速度は時速50kmですが、故意に時速50km以下で本線車道を低速走行し後続車に嫌がらせをする行為もあおり運転とみなされます。
    あおり運転ではなくとも、「最低速度違反」に問われた場合、違反点数1点、反則金6,000円が科せられます。

    10.    高速道路などにおける駐停車(高速自動車国道等駐停車違反)

    道路交通法第75条の8により高速道路では原則として駐停車が禁止されています。そのため、あおり運転を行ったドライバーが自身の車を停車したり、被害者を強引に停車させるといった行為もあおり運転とみなされます。

    4. あおり運転されるのを回避するためにできること

    どれだけ細心の注意を払って運転をしていても、危険な運転をする車に遭遇してしまうことはあると思います。そんなときに大事なのは、できるだけ自ら回避すること。あおり運転への予防法としては、以下の点が挙げられます。

    • 複数車線の道路では一番左側の車線を走る
    • 車線変更する際は、車間距離を十分にとって行う
    • 車間距離をとった運転を心がける
    • 後ろの車が急いでいそうであれば道を譲る

    片側2車線以上の道路ではどの車線を走ってよいか迷うこともあるかもしれません。基本的に一番右側の車線は追い越し車線になるため、一番右側を走行し続けることはルール違反です。走行中はこまめに後方を確認し、道を譲るようにすると、あおられるリスクを減らせます。

    もちろん、あおり運転はしている側に原因がありますが、相手を刺激したり、イライラさせたりする運転や行動を避けることも大切です。周囲のドライバーを不快にさせず、自分があおり運転にあわないためにも、思いやりや譲り合いの気持ちを常に忘れず、心にも時間にも余裕をもった運転をすることが大切です。

    日頃安全運転をしている人でも、焦りや疲れ、悩みごとなどが原因で感情的な運転をしてしまうこともあるかもしれません。しかし、あなたのそうした運転が、周囲の車のドライバーに威圧感を与えてしまう可能性があるのです。

    あおり運転の加害者にも被害者にもならないよう、「追い越し車線を走り続けない(違反行為となります)」「追いつかれたら道を譲る」「車間距離を十分にとる」「急発進、急停車、急な割り込みなど<急>がつく運転はしない」といった基本的なルールを常に念頭においた運転を心がけましょう。

    5. あおり運転に遭遇してしまったときの対処方法

    車線の道路ではいつも通りの運転をし、路肩や空きスペースへ停車する

    後続車両からあおられたからといって自分も速度を上げたり、後ろにばかり気を取られていると、ハンドル操作を誤ったり注意力が散漫になったりして、事故につながる恐れがあります。

    一般道の場合はまずは安全運転に集中し、空きスペースなどを見つけたらそこに停車するなどしましょう。車から降りるよう恫喝してくる場合もあれば、気が済んで走り去ることもありますが、いったん走行するのをやめて路肩に停車をして相手の様子を確認しましょう。

    ただし、高速道路を走行中の場合は、本線道路はもちろん路肩であっても駐停車は非常に危険ですので、サービスエリアやパーキングエリアなど安全な場所まで移動してから停車しましょう。

    車のドアをすべてロックして110番通報をする

    あおり運転をしてきた相手に対しての苛立ちから、自ら対処しようとしたり相手に向かっていったりしてしまう人もいますが、そうした対処は絶対にせず、110番通報をして警察を呼びましょう。その際には、まず必ず車のドアをすべてロックして、車外から直接的な危害を加えられない状態を確保し、自分や同乗者の安全を確保してから通報してください。後々の物的証拠になりますので、乗っている車を蹴ったり傷つけたりしているところも撮影しておくと、より効果的な証拠となるでしょう。

    6. あおり運転から自分を守るためにはドライブレコーダーがおすすめ

    あおり運転をされたと警察に通報をしても、物的証拠がなければ証拠不十分となり、事件として取り扱うことが難しくなる場合があります。そんなときの状況証拠となるドライブレコーダーの設置は非常に効果的といえます。

    昨今では、単にうさ晴らしであおり運転をするような悪質なケースも多く、意図的にあおることで事故を起こし、慰謝料や賠償金を請求してくることもあります。
    そのような場合でも、ドライブレコーダーが設置してあれば、あおってきた一部始終が証拠として保存されるため、設置を検討するドライバーが近年急増しています。

    購入される際は、前方だけでなく、後方の映像も記録できる前後2タイプカメラがおすすめです。後方専用のドライブレコーダーを設置すれば、後方から当て逃げや追突の被害にあった場合にも証拠を残せます。

    7. あおり運転が厳罰化された背景

    あおり運転の社会問題化により、その防止策として、2020年6月30日に道路交通法が改正され、あおり運転に対する罰則が定められました。これにより、あおり運転は「妨害運転罪」として取締り対象に位置づけられ、罰則も厳格化されることとなりました。

    厳罰化の背景

    あおり運転を巡るトラブルは以前から問題視されており、厳罰化が強く望まれていました。その直接的な契機となったのは、2017年6月に起きたあおり運転を発端とした悲惨な死亡事故です。

    神奈川県内の東名高速道路下り線において、執拗に追跡し、進路を塞ぐなどの妨害行為を繰り返したうえ、車を強引に停止させたことにより、被害者の車に後続のトラックが追突。停止させられた自動車に乗車していた一家4名を死傷させた事件の裁判では、あおり運転や車を強引に停止させる行為に対して、直接「危険運転致死傷罪」が適用できるか否かが争われました。一審・横浜地裁、二審・東京高裁のいずれも「危険運転致死傷罪」の成立を認めましたが、東京高裁は一審の訴訟手続きに違法な点があったとして横浜地裁に審理を差し戻します。2022年6月6日に差し戻し前の一審と同じ懲役18年の判決が加害者に言い渡されたものの、いまだに多くの問題を残しています。

    また、その後の2019年にも、常磐自動車道でのあおり運転の末、運転手に暴行を加える事件が発生しました。これらの事件を契機の1つとして、ようやく2020年6月2日に、あおり運転に対する厳罰化などを規定した改正道路交通法が国会で可決・成立し、同年6月30日に施行されました。

    改正後の変更点

    道路交通法改正によって、妨害運転罪が創設され、あおり運転を行ったドライバーに対する罰則が強化されるようになりました。

    実際に事故を起こさなかった場合でも、他車の交通を妨害する目的での急ブレーキや、執拗なクラクション、パッシングなど、あおり運転に該当する行為は取締りの対象になります。それだけでなく、他の車の通行を妨害する目的で、著しい危険を生じさせる行為をした場合は、飲酒運転と同等の罰則が科せられます。

    また、「危険運転致死傷罪」の対象となる類型に、車の通行を妨害する目的で「走行中の車の前方で停止したり、走行中の車に著しく接近したりする」「高速道路や自動車専用道路で走行中の車を停止または徐行させる」の2点が追加されました。

    8. 監修コメント

    コロナ禍前、あおり運転による事件や事故が相次いで報道されました。その影響から、ドライブレコーダーが一気に普及しました。社会問題化したことで、法整備も進みました。
    それでもなお、今もあおり運転に関するニュースを目にすることがあります。
    あおり運転は、加害者の歪んだ正義感によって引き起こされることも珍しくありません。被害者の単なる運転操作ミスであっても、加害者にとっては譲れない重大な問題となっていることが考えられます。
    相手が激昂しているような場合は、まず身の安全を確保してください。そのうえで、110番通報することを強く推奨します。

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    井口 豪
    監修
    井口 豪(いのくち たけし)

    特定行政書士、法務ライター®︎。タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。自動車関連、ファッション、スポーツ、ライフスタイル、医療、環境アセスメント、各界インタビューなど、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。20年以上にわたりフリーライターとして活動した経験と人脈を生かし、「行政書士いのくち法務事務所」を運営。許認可申請、入管申請取次、遺言書作成サポートなど法務のほか、記事監修や執筆業も多数手掛ける。自動車業務に熟達した行政書士だけが登録を認められる、ナンバープレートの出張封印が可能な「丁種会員」でもある。

    HP https://inokuchi.pro/

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