トラックやバスなどの大型自動車の運転に必要な「大型免許」にはいくつかの取得方法があり、それぞれ取得にかかる費用や日数が大きく異なります。当記事では、そんな大型免許の取得要件や取得までの流れ、費用の相場、取得を支援する公的制度などを紹介します。
- 目次
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1. 大型免許とは?運転できる車の種類
大型免許(大型自動車免許)とは、車両総重量11t以上・最大積載量6.5t以上・乗車定員30人以上のいずれかの条件に当てはまる「大型自動車」を公道で運転するために必要な免許です。
大型自動車に該当する主な車の種類としては、トラックやダンプカー、ミキサー車、バスなどが挙げられます。ただし、大型免許にも第一種免許と第二種免許が存在しており、運賃を受け取って旅客を乗せて運転する場合には第二種免許が必要となります。
そのほか、大型免許を保有していれば、大型自動車以外に以下の車両も運転することが可能です。
- 普通自動車
- 原動機付自転車
- 小型特殊自動車
- 準中型自動車
- 中型自動車
大型免許の取得要件
第一種・第二種を問わず、大型免許の取得には普通自動車免許・準中型免許・中型免許・大型特殊免許のいずれかを取得してから通算3年以上経過している必要があります(免許停止期間がある場合はその期間を除く)。そのため、大型免許を取得できる年齢はこれまで21歳からとされてきました。
しかし、2022年施行の改正法により、新設された「受検資格特例教習」を修了することで19歳・免許保有1年からでも大型免許の取得が可能になりました。
また、大型免許の取得試験では視力・深視力・色彩識別能力・聴力などの検査も実施されます。なかでも視力は両眼で0.8以上、かつ片眼で0.5以上が取得の要件とされています。
2. 大型免許の取得方法
大型免許の取得方法は、「自動車教習所に通所」「合宿免許に参加」「運転免許試験場で受験」の大きく三つに分けられます。取得までの流れは以下のとおりです。

上記の流れを踏まえたうえで、ここからは各取得方法の特徴とメリット・デメリットを紹介します。
自動車教習所に通所
自動車教習所への通所は取得までの日数こそかかるものの、自分のペースで通うことができ、手厚い教習を受けた上で大型免許を取得できる点がメリットです。
大型免許の教習は技能教習が中心で、学科教習は必須のものが限定的です。修了までに必要な教習時間は「現在保有している免許の種類」に応じて変動します。保有免許ごとの標準的な教習時間は以下のとおりです。
大型免許(第一種)の取得に必要な教習時間 ※1時限=50分
| 保有している免許 | 技能教習 | 学科教習 |
|---|---|---|
| 普通自動車免許(AT限定) | 34時限 | 1時限(危険予測など) |
| 普通自動車免許(MT) | 30時限 | 1時限(危険予測など) |
| 準中型免許 5t限定(AT限定) | 30時限 | 1時限(危険予測など) |
| 準中型免許 5t限定(MT) | 26時限 | 1時限(危険予測など) |
| 準中型免許 | 23時限 | なし |
| 8t限定中型免許(AT限定) | 24時限 | なし |
| 8t限定中型免許(MT) | 20時限 | なし |
| 中型免許(MT) | 14時限 | なし |
また、指定自動車教習所を卒業している場合、普通免許と同様に運転免許試験場での技能試験は免除されます。大型免許の場合、すでにほかの免許(原付、小型特殊を除く)を保有しているため、運転免許試験場での学科試験も免除されます。そのため、運転免許試験場では視力などの適性検査に合格するだけで取得が可能です。
合宿免許に参加
合宿免許は宿泊をともなう形で自動車教習所を利用し、集中的に教習課程を進める取得方法です。取得までの期間は保有免許によっても変わりますが、普通免許のみ保有している場合でも2週間程度で大型免許を取得できるケースが一般的です。
多くの場合、合宿免許の料金には宿泊費用も含まれていますが、料金の総額は通所の場合とそれほど変わりません。短期間で確実に大型免許を取得したい場合に適した方法といえます。
運転免許試験場で受験(一発受験)
大型免許は自動車教習所を利用せず、運転免許試験場で技能・学科・適性試験を直接受験して取得することも可能です。こうした取得方法は「一発受験」と呼ばれます。
ただし、本試験を受験するためには「仮免許試験に合格し、5日以上路上教習を行っている」という条件を満たす必要があり、受験時には仮運転免許証と路上練習申告書の持参が求められます。
また、免除される条件に当てはまらない場合は、合格後に指定された自動車教習所にて「取得時講習」を受ける必要があります。取得時講習は4時間の大型車講習と3時間の応急救護講習で構成されており、受講には別途費用がかかります。
ほかの取得方法と比較すると、一発受験はかかる費用が非常に安く、合格できれば最短の日数で取得が可能です。とはいえ、技能試験は運転免許試験場の慣れないコースで行うことになるため、合格の難度は極めて高いとされています。
受験資格特例教習はどこで受講できる?
早期の受験を可能にする受験資格特例教習は、対応している自動車教習所および合宿免許で受講できます。ただし、受講にあたっては大型免許の教習とは別に費用がかかります。
受験資格特例教習の内容は、各種免許の取得年数が3年に満たない場合に受講する「経験課程」と、年齢が21歳に満たない場合に受講する「年齢課程」に分けられます。どちらの条件にも満たない場合は両方の受講が必要です。
3. 大型免許の取得費用の相場と内訳
大型免許の取得にかかる費用は、取得方法や現在保有している免許の種類に応じて異なります。
自動車教習所・合宿免許を利用する場合
自動車教習所・合宿免許の利用料金の相場は、普通免許(AT)のみ保有の場合にはいずれも35万円~45万円程度です。中型免許を保有している場合には20万円~30万円程度まで安くなります。
加えて、自動車教習所・合宿免許を卒業して学科・技能試験を免除されている場合でも、本試験の受験にあたっては受験料と免許証交付料が別途かかります。東京都の場合、受験料は1,650円、免許証交付料は2,350円(2025年11月時点/警視庁サイトより抜粋)となっていますが、金額は都道府県によって異なり、改定されることもあるため詳しくは各都道府県警察のサイト等を確認しましょう。
また、受験資格特例講習の受講費用は、年齢課程は10万円前後、経験課程は20万円前後が相場とされています。
運転免許試験場で受験する場合
一発受験の場合には、仮免許試験と本免許試験の受験にそれぞれ受験料、試験車使用料、免許証交付の手数料がかかります。手数料の金額は都道府県や免許の保有形態(通常の免許証・マイナ免許証・二枚保有)に応じて異なりますが、東京都かつ通常の免許証のみ保有の場合は以下のとおりです。
第一種大型免許の一発受験での取得にかかる手数料(2025年11月時点/警視庁サイトより抜粋)
| 発生する費用 | 仮免許試験 | 本免許試験 |
|---|---|---|
| 受験料 | 2,950円 | 3,900円 |
| 試験車使用料 | 1,750円 | 3,000円 |
| 免許証交付手数料 | 1,100円 | 2,350円 |
上記の費用うち、受験料と試験車使用料は再受験の際にも支払う必要がありますが、免許証交付手数料は合格した場合にのみ発生します。
そのほか、本免許試験合格後の取得時講習にも受講料24,150円(2025年11月時点/警視庁サイトより抜粋)がかかるため、すべて1回で合格できた場合の費用は合計39,200円となります。
費用を抑えるなら教育訓練給付金制度の活用がおすすめ
教育訓練給付制度とは、雇用安定に向けた能力開発を支援する国の制度であり、大型免許の取得教習も「特定一般教育訓練」として給付対象に含まれています。同制度を利用すれば、受講費用の総額の40%に相当する額(上限20万円)が受講者に給付されます。
ただし、利用できるのは国の認定を受けた施設での教習に限られており、その数はまだ多いとはいえません。また、給付を受けるには雇用保険への加入期間などの要件を満たす必要があるため、利用を検討する際は厚生労働省の公式サイトやハローワークなどで詳細を確認することをおすすめします。
4. 失敗しない自動車教習所の選び方
通所または合宿免許で大型免許を取得する場合は、「どの自動車教習所を利用するか」も費用や日数に影響を与えます。自動車教習所を選ぶ際には、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。
教習所までの通いやすさ
通所の場合は卒業までの間繰り返し通うことになるため、立地やアクセスが重要となります。公共交通機関の利用が難しい場合は、自前で送迎バスを運行している教習所を選ぶのも一つの手です。
料金プランと支払い方法
教習の受講料は、金額だけでなく支払い方法も教習所ごとに異なります。また、大型免許以外にも同時に取得したい免許がある場合は、お得なセットプランがある教習所も選択肢に入るでしょう。
予約の取りやすさと教習スケジュール
最短の日数でスムーズに取得を進めたいのであれば、教習所の混雑度や卒業までのスケジュールも重要なポイントとなります。特に、2月~3月の年度末の時期は教習所が学生で混雑し、予約が取りにくくなる傾向にあるため注意が必要です。
教育訓練給付金制度の対象かどうか
教育訓練給付金は国の認定を受けた施設の教習のみが対象であるため、受給を検討している場合は必ず認定教習所を選びましょう。認定の有無は自動車教習所の公式サイトなどで確認できます。
5. 大型免許についてのQ&A
ここからは、大型免許に関するよくある疑問にお答えします。
Q. 大型免許で大型特殊自動車やけん引車も運転できる?( 小見出し)
ブルドーザーやクレーン車などの大型特殊自動車やけん引車、フォークリフトなどは操作や運転に専門的な技能が必要であり、大型免許では運転することができません。これらの車両を運転するためには、個別に大型特殊免許やけん引免許の取得、フォークリフト運転技能講習の修了が必要です。
ただし、自動車教習所や合宿免許によっては、そうした特殊な車両の免許と大型免許の教習をセットで受けられるプランを提供している場合もあります。
Q. 一発試験の合格率はどのくらい?( 小見出し)
大型免許の場合、一発受験の合格率は30%程度であり、そのなかでもたった一度の受験で合格したケースは10%に満たないとされています。一度で合格できた事例としては、中型以下のトラックを長年運転してきた人などが多いようです。
実際に、警察庁が発表した「運転免許統計 令和5年版」には、令和5年の第一種大型免許試験合格者57,850人のうち、指定自動車教習所の卒業を根拠として学科試験および技能試験が免除されて合格した者が51,282人にのぼるとのデータがあります。つまり、教習所を卒業していない一発受験の合格者は6,568人(約11.3%)であり、実に9割近い合格者が教習所を利用しているのです。
一般的に費用が安いとされる一発受験ですが、実際には合格まで何度も受験することで当初の想定以上にコストがかかることも多いため、よく検討した上で選択することが大切です。
Q. 大型免許の有効期限や更新手続きは普通免許と違う?( 小見出し)
大型免許もその他の運転免許と同様に、保有し続けるためには定期的な更新が必要です。有効期限や更新方法は、基本的に普通免許と変わりません。
新規取得時の有効期限は3年であり、初回の更新後は年齢や交通違反の有無に応じて3年~5年ごとに更新が求められます。忘れずに更新を行いましょう。
6. 監修コメント
近年、物流業界を中心に大型免許保有者の需要が高まっており、国や自治体、運送会社、業界団体などが免許取得を支援する取り組みを進めています。全日本トラック協会および各都道府県トラック協会では「若年ドライバー等確保のための運転免許取得支援助成事業」を実施しており、大型免許の取得にかかる費用の一部について助成を受けられる場合があります。採用後に大型免許の取得費用を全額負担したり、教習所費用の一部を補助したりするなど、独自の支援制度を設けている運送会社もあります。
大型免許の取得を検討している方は、事前に支給制度の対象となるのかを確認しておくとよいでしょう。
