首都高(首都高速道路)は、構造が複雑だったり合流車線が短かったりと、初心者にとってはハードルが高く感じる道路です。そのため、「首都高は怖い」「流れに乗れるか不安」と苦手意識を持つ方も少なくないでしょう。本記事では、首都高初心者が安全に走行できるポイントや心構えなどをわかりやすく解説します。
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1. 初心者が「首都高は怖い」と感じる理由
構造の複雑さ
首都高が「怖い」といわれる最大の理由は、その構造の複雑さにあります。急なカーブやトンネル、短い合流レーンが多い上、右側からの合流といった通常の高速道路ではあまり見られない構造も見受けられます。また、複数路線が立体交差する道路もあり、迷路のように感じられます。
こうした構造が生まれた背景には、都市部の密集した市街地の中で、一般道の上部などに橋梁で建設されてきたという事情があります。
短い合流車線・右からの合流
首都高の難しさは、合流車線の特徴にもあります。まず一つは、加速車線の短さです。一般的な高速道路では、見通しのよい長めの加速車線があり、余裕を持って本線に合流できますが、首都高では出入口や合流・分岐が密集しているため、加速車線が非常に短いことが多いです。さらに、急カーブの途中で本線に合流するケースも少なくありません。
もう一つの特徴として、右側からの合流がある点が挙げられます。通常、高速道路の右車線は追越し車線であり、追い越し後は左側へ戻るのが原則ですが、首都高では右側にも出入口や合流・分岐が設けられているため、右車線も走行車線として使われることがあります。
路線により制限速度が異なる
前提として、首都高は「高速自動車国道」ではなく「自動車専用道路」に分類され、約8割の区間で制限速度が50~60km/hと、一般道とほぼ同じです。
さらに、路線によっても制限速度が異なり、高速都心環状線(C1)は50km/h、高速中央環状線(C2)は60km/hとばらつきがあります。分岐後には、その路線の制限速度にも注意しながら走行しなければいけません。
2. 首都高の構造を理解しよう

中心に2つの環状線(C1・C2)
首都高には、都心を走る「都心環状線(C1)」と、その外側を囲むように走る「中央環状線(C2)」があります。首都高はこの2つの環状線を中心に、各方面へ放射状に伸びる路線で構成されています。
環状線には、どちらも内回り(反時計回り)と外回り(時計回り)があります。料金所を通らなければ終点がなく、再び同じ場所に戻ってくる構造です。
放射状の路線(1号線~11号線)
首都高では、都心環状線(C1)から放射状に伸びる1号線~11号線を使って、中央環状線(C2)や他の高速道路へ接続します。これらの路線は、基本的に浜崎橋ジャンクションから始まる1号羽田線を起点に時計回りに番号が振られています。また、各線はC1に向かう方向が「上り」、離れる方向が「下り」です。
3. 首都高を走る前の準備
ルートの決定・予習
首都高を使ったドライブでは、まずルートをきちんと決めましょう。その際、時間に余裕を持った計画を立てることが大事です。高速道路というより「信号のない一般道」として時間を見積もるのがポイントです。
ルート検索には、首都高技術の道路交通情報サイト「mew-ti(ミューティー)」が便利で、出入口を指定すれば詳細なルートや所要時間、料金が表示されます。この際、走行予定の路線番号を確認しておくと、標識の案内も理解しやすく、分岐でも落ち着いて運転できます。ジャンクション名も覚えておくとさらに安心です。
ETCカードの準備
料金所をスムーズに通過できるため、首都高を走る際はETCを利用するのがおすすめです。ETC専用レーンやETC/一般共用レーンを使えば、停車せずにスピーディーに通過できます。また、首都高ではETC専用入口の拡大が進んでおり、今後はETCなしでは利用できない入口も増える見込みです。あわせて、目的地までの料金もチェックしておくといいでしょう。
混雑しやすい時間帯を把握
首都高を初めて利用する場合は、混雑する時間帯を避けることがポイントです。特に渋滞が多いのは金曜日で、平日の中でも特に混みやすくなっています。一方、日曜や祝日は比較的空いており、渋滞発生も平日の半分以下です。
時間帯としては、13時〜14時は渋滞が少ない傾向にあります。朝夕のラッシュ時は避け、平日の昼過ぎの時間帯を狙うといいでしょう。ただし、路線によって混雑のピークは異なります。また、出発前に交通情報を確認し、混雑しているルートを避けるといった工夫も大事です。
4. 首都高での運転の7つのコツ
コツ1:合流は「入れてもらう」のではなく「流れに乗る」意識で
首都高で最も緊張するのがジャンクションや入口からの合流です。加速車線が短いため、ためらわず一気に加速し、本線の流れを見ながらウインカーで早めに合流の意思を示しましょう。
右側からの合流では特に視認性が悪いため注意が必要です。恐れて停止してしまうと後続車に危険を及ぼすため、入る位置を瞬時に判断し、車間がない場合は次のチャンスに切り替える柔軟さも大切です。
本線側のドライバーも合流を意識しているため、しっかり意思表示をすれば譲り合いが期待できます。
コツ2:「案内標識」を信じて走る
首都高では、ナビだけでなく、頭上の緑色の案内標識を信じることも大切です。以前は標識が多すぎて混乱する声もありましたが、現在はわかりやすく整理されており、初心者でもルートメモの番号と標識の路線番号を照らし合わせて走行できます。分岐予告や出口予告の標識には、接続路線や出口番号、方向が詳しく表示されているので、これらを確認しながら運転しましょう。
コツ3:車線変更は早めに行う
車線変更は案内標識でジャンクションや出口の方向を確認したら、早めに行いましょう。特に渋滞時は、通常より手前で車線変更するのが安心です。首都高では右側車線も走行車線で、右方向の分岐や出口に向かう場合は、右車線を走っても大丈夫です。
ただ、合流を避けるための頻繁な車線変更は控えましょう。首都高の短い区間では無理に急いでも時間短縮にならず、かえって事故のリスクが高まります。
コツ4:車間距離は長めにとる
追突事故は首都高で最も多い事故の一つです。首都高での追突事故は見通しの悪いカーブやトンネル入口の渋滞末尾で多発しています。
安全走行には前方の車との車間距離を保つことが重要で、交通心理学会の研究や統計的事実により、警察庁などでも「2秒ルール」を推奨しています。
これは、前車が目標地点を通過してから自分が同じ地点を通過するまでの時間を2秒空ける方法で、速度にかかわらず効果的です。車間距離が短すぎると重大事故のリスクが高まるため、ゆとりを持って運転しましょう。
なお、追突事故の多い場所では、注意喚起看板や路面文字が設置されています。注意喚起のサインを見かけたら、前車に注意しながら走行しましょう。
コツ5:目線は「遠く」へ。常に先の情報を得る
首都高はカーブやトンネルが多く、見通しが悪い箇所も少なくありません。カーブを抜けた先で渋滞が発生していることもあるため、運転中は姿勢を正してできるだけ遠くを見渡し、目線を先へ向けるようにしましょう。前方の状況に注意を払うことで、不測の事態を回避し、安全な走行につながります。
コツ6:右側の出口・合流に注意!
首都高では右側にも出口があるため、「右側に出口があります」の看板を見逃さないことが大切です。看板を見つけたら、早めに右車線に車線を変更しましょう。
また、右側からの合流にも注意が必要です。右からの合流がある場合は、合流車両のために前車との車間距離を十分にとります。車線変更してくる車を見つけたら、進路を譲りましょう。
コツ7:困ったら「PA(パーキングエリア)」に逃げ込む
道に迷ったりパニックになりそうな時は、無理せずパーキングエリア(PA)に立ち寄りましょう。首都高にPAがあるイメージは少ないかもしれませんが、横浜や川口などを含め約20ヶ所あります。慣れない首都高の運転は緊張と疲れがたまりやすいので、PAで休憩してリフレッシュするのがおすすめです。
5.首都高でよくあるミスとその対処法
道を間違えた場合
首都高で道を間違えた場合、急な車線変更や急ブレーキなどは絶対にせず、安全を最優先しましょう。環状線は、分岐を間違えたとしても、左車線を走れば一周して元の場所に戻れます。もう一周して、正しい分岐を目指しましょう。
また、都心環状線(C1)で道を間違えた場合、外側を走る中央環状線(C2)に一度出て、本来のルートに戻るという方法もあります。安全を第一に考え、慌てずルートを修正しましょう。
事故や故障が起きた場合
事故や故障が起きた場合は、まずハザードランプを点灯させ、可能なら路肩へ車を停めます。後方の安全を確認しながら、三角停止板などを設置し、後続車に注意を促します。その後、安全な場所に避難し、道路緊急ダイヤル「#9910」に通報しましょう。
万が一に備えてロードサービスの契約を
万が一のトラブル時に頼りになるのがロードサービスです。JAFのほか、多くの自動車保険には24時間365日対応のロードサービスが付帯しており、専門スタッフが迅速に現場へ駆けつけてくれます。急なトラブルに備えて、サービスに加入しておくことをおすすめします。
6. 首都高で走りやすい道は?
湾岸線
湾岸線は、多くの区間で3車線あり、道幅が広いのが特徴です。また、直線的な区間が多いため、急カーブや複雑なジャンクションが少なく、初心者ドライバーにとっても安心して走行できるでしょう。開放的なベイエリアの景色を楽しめるのも魅力の一つです。
7. 首都高で難しいとされる道は?
都心環状線(C1)
都心環状線(C1)は、走行の難しさで知られる路線の一つです。その主な理由は、カーブが多いことや、合流が多いこと、見通しが悪いことなどです。
さらに、都心環状線(C1)は都心部を囲むように走っており、交通量が常に多いため、慢性的な渋滞が発生しやすいのも難しさの一因です。各路線からの合流も頻繁にあるため、車線変更のタイミングを見極めるのが難しく、初めて走行するドライバーには特に緊張を強いられます。
8. 監修コメント
首都高では原則として同乗者の乗降はできませんが、歩行者出入口が設けられている一部のPAでは、徒歩で公道に出入りできる場所もあります。例えば用賀PAは階段で公道とつながっており、徒歩数分の場所に地下鉄の用賀駅があります。
東京駅の八重洲地下街に直結している「八重洲乗客降り口」は、その名の通り、同乗者を降ろす専用の出口です。乗車はできず、八重洲地下街へは首都高側からのみ出入りできるようになっています。首都高を降りずに解散できるので、覚えておくと便利です。
