車を購入するにあたって、一般的なガソリン車だけでなくハイブリッド車も並行して検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、ハイブリッド車の仕組みや通常の車との違いを把握していなければ、ハイブリッド車を購入すべきかどうかを判断するのは難しいでしょう。
本記事では、ハイブリッド車とはどのような車か、ハイブリッド車のメリット・デメリット、ハイブリッド車の選び方などについて説明します。
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1.ハイブリッド車とは?
ハイブリッド(hybrid)とは、異種のものの組み合わせや掛け合わせによって生み出されるモノを意味する言葉で、ハイブリッド車は、エンジンと電気モーターといった異なる複数の動力源を搭載した車を指します。
例えば1997年にトヨタが発表した「プリウス」では、ガソリンで動くエンジン(内燃機関)と、電気で動くモーター(電動機)の2つの動力が採用されています。ハイブリッド車は、エンジンとモーターをそれぞれ効率の良い条件で使用する「良いとこ取り」のパワーユニットといえます。
ハイブリッド車は走行中でもエンジンを頻繁に停止することが可能なので、その分燃料の使用を抑えられ燃費が良くなると考えればわかりやすいでしょう。
2.ハイブリッド車の仕組み
ハイブリッド車の駆動方式は、エンジンとモーターをどのように組み合わせるかにより、「シリーズ方式」「パラレル方式」「スプリット方式(シリーズ・パラレル複合方式)」の3つの方式に分類されます。
シリーズ方式ではエンジンは専ら発電のために使用し、駆動用の動力源としてモーターを使用します。発電機を搭載した電気自動車(EV)と考えると分かりやすいでしょう。バッテリーEV(BEV)に対して、ハイブリッドEV(HEV)という呼び方もあります。
パラレル方式ではエンジンを主体にしつつ、発進時や加速時などの大きな駆動力が必要となる場合には、モーターを併用します。2つの動力源が併用されることから、「パラレル」方式と呼ばれます。低速時はモーター、高速走行時にはエンジンと駆動力を使い分けることで、エネルギー効率を向上させます。
パラレル方式のうち、2つの動力源の使い分けを細かく制御するものを、特にスプリット方式(シリーズ・パラレル複合方式)と呼びます。
ハイブリッドEVの中でも一番バッテリーEVに近いのが、充電ができるプラグインハイブリッド車(PHEV)です。最新のプラグインハイブリッド車では、搭載しているバッテリーを使って80kmほどEVモードで走ることができる車種が増えてきました。WLTCモード燃費の場合は飛躍的に燃費が良くなり、CO2排出量も少ないのが特徴といえます。
また、通常のハイブリッドEVよりライトな感じなのがマイルドハイブリッド車(MHEV)です。48Vや12Vで駆動するモーター(発電機を兼ねる)を備えて、本格的なハイブリッドEVほどではないものの、燃費の良い車といえます。
3.ハイブリッド車のメリット
ハイブリッド車のメリットとしては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 燃費が良い
- 減税や補助金などの優遇措置が多い
- 寿命が長い
- 走行音が静か
- 走行中の環境汚染への影響を抑えられる
それぞれのメリットについて、詳しく説明します。
燃費が良い
車を所有し使用するためのランニングコストの中で、ガソリン代は大きな割合を占めます。2022年後半のガソリン1Lあたりの小売価格が、レギュラーで166円~170円という高値で推移しているため、車を利用する機会が多い方にとって、ガソリン代は頭を悩ませる材料の1つでしょう。ハイブリッド車はエンジンとモーターの組み合わせで駆動しているため、燃費が良いのが大きな特徴です。
トヨタの「シエンタ」を例に挙げて、ガソリン車とハイブリッド車の燃費を比較してみましょう。シエンタのハイブリッド車である「ハイブリッドZ」の実燃費は22.6km/L、ガソリン車である「Z」の実燃費は14.6km/Lです。レギュラーガソリンの価格を170円/L、年間走行距離を10,000kmとすると、ハイブリッド車とガソリン車それぞれでの1年間でのガソリン代は以下のように算出されます。
シエンタ ハイブリッドZ(ハイブリッド車)
10,000(km)÷22.6(km/L)≒442.5(L)
442.5(L)×170(円/L)=75,225円
シエンタ Z(ガソリン車)
10,000(km)÷14.6(km/L)≒684.9(L)
684.9(L)×170(円/L)=116,433円
上式からも分かるように、ハイブリッド車とガソリン車では1年間でのガソリン代に約4万円もの差が生じることになります。ガソリン価格の高騰がさらに進めばこの差はより大きなものになるため、燃費の良さはハイブリッド車の大きな魅力の1つです。
燃費が良い分、給油の回数が少なくて済むことも、手間という面で考えればメリットといえるでしょう。
減税や補助金などの優遇措置が多い
ハイブリッド車は、自動車取得税がエコカー減税、自動車税がグリーン化特例、自動車重量税が環境性能割の対象になっています。
- エコカー減税:排出ガス性能および燃費性能に優れた自動車に対して、それらの性能に応じて、自動車重量税を免税・軽減
- グリーン化特例:排出ガス性能および燃費性能に優れた自動車に対して、それらの性能に応じて自動車税・軽自動車税を軽減するとともに、新車新規登録等から一定年数を経過した自動車に対して自動車税・軽自動車税を重課
- 環境性能割:車両を取得した場合に、車両の取得価額に対して環境性能に応じた税率を課税
また、クリーンエネルギー自動車(CEV)を購入した場合に国から交付される補助金である、「CEV補助金」を利用することも可能です。自治体によっては、独自の補助金を設けていることもあるので、よりお得に購入できる可能性もあります。
寿命が長い
ハイブリッド車ではエンジンと電気モーターを併用しているため、ガソリン車に比べてエンジンを稼働させる頻度が下がり、負担が減少します。発進や加速、巡行時にモーターのアシストが入ることもエンジンの劣化を抑えることにつながるので、エンジンの寿命が長くなります。
ガソリン車の場合、一般的に10年もしくは10万kmの利用・走行でエンジン性能に低下が見られますが、ハイブリッド車であれば10万km以上も安心して走行が可能です。
走行音が静か
ハイブリッド車は、ガソリン車に比べて走行音が静かな点も大きな特徴の1つです。ハイブリッド車ではセルモーターを回してエンジンに点火するわけではなく、車種によっては始動時もハイブリッドシステムを始動するだけのものもあるので、非常に静かにエンジンがかかります。
車の走行音はご近所トラブルにつながりやすい要素の1つですが、住宅街で早朝や深夜などに車を利用することが多い場合でも安心して利用できるのは、大きなメリットといえるでしょう。
走行中の環境汚染への影響を抑えられる
ガソリン車を利用することで排出されるCO2は温室効果ガスともいわれ、温暖化や大気汚染の原因になります。ハイブリッド車は、バッテリーに蓄えられた電気を使って走行している間は、CO2などの温室効果ガスの排出量を燃費が良くなる分だけ抑えることが可能です。
昨今はSDGsが叫ばれるようになってきており、商品やサービスの利用においても環境負担という観点が重要視されていますが、その点においてもハイブリッド車は非常に優秀な存在といえます。
4.ハイブリッド車のデメリット
反対にハイブリッド車のデメリットとしては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 車両価格が高い傾向にある
- 走行音が静かなので歩行者に気付かれにくい可能性がある
- 車内の空間が若干狭い傾向にある
それぞれのデメリットについて、詳しく説明します。
車両価格が高い傾向にある
ハイブリッド車は、ガソリン車に比べて車両本体価格が高く設定されている場合があります。上述したように、エコカー減税やグリーン化特例といった優遇措置は利用できるものの、車両価格の高さをネックに感じることは考えられるでしょう。
ガソリン車と比べると給油を行う頻度が減るため、ランニングコストを抑えられる可能性が高いですが、初期費用の高さをどこまで許容できるかは、事前にしっかりと検討しておかなければなりません。年間の走行距離が多い方ほど、初期費用の高さをランニングコストで吸収できるため、ガソリン価格が高いほどハイブリッド車の魅力が大きくなるともいえます。
走行音が静かなので歩行者に気付かれにくい可能性がある
走行音が静かなことはメリットではありますが、「静かすぎる」ことがデメリットになりうるケースもあります。それは、車が走っていることに歩行者が気付かない可能性があるからです。
最近のハイブリッド車は、低速時に意図的に音を出す「車両接近通報装置」が標準装備となっているなどの対策がとられています。車両接近通報装置は、発進から24km/hまでとスピードが落ちてきた場合には21km/h以下で作動します。しかし、運転する側としては歩行者に気付かれにくいことを常に意識しながら、運転することを心がけるべきでしょう。
車内の空間が若干狭い傾向にある
ハイブリッド車は通常のガソリン車の装備に加えて、電気モーターやバッテリーなどのハイブリッド車用の装備も必要になります。そういった設備は座席の下に設けられていることが多いため、車内の空間は必然的に狭くなりやすいです。
車内の広さは実際に乗っている間の快適さに直結します。パンフレットなどの数値を見ただけで判断すると、想像していたより狭くて窮屈という可能性もあるので、できれば試乗して広さを体感すると良いでしょう。
車種によっては、これまでデッドスペースとして使われていなかったところをうまく活用している場合があり、通常のガソリン車とハイブリッド車の差がわからないモデルも増えています。
5.おすすめのハイブリッド車の選び方
ハイブリッド車を選ぶ際は、主に燃費性能や駆動方式、乗り心地、乗車人数で選ぶと良いでしょう。
それぞれの選び方について、詳しく説明します。
燃費性能で選ぶ
燃費の良さに惹かれて、ハイブリッド車を検討する方も多いと思います。燃費性能の測定方法には、「JC08モード燃費」と「WLTCモード燃費」の2つがあります。
JC08モード燃費は、1Lのガソリンに対して何km走行できるのか(km/L)を表したものです。日本独自の測定方法なので、海外で販売されている車の燃費基準とは少し異なることもあります。
WLTCモード燃費とは、「市街地」「郊外」「高速道路」の3つの走行モードごとの平均的な使用時間配分で構成された、国際的な試験法によって算出された燃費のことを指し、こちらも基本はkm/Lで表示されます。走行スピードも速く、JC08モード燃費よりも実燃費に近いといわれています。
特に「JC08モード燃費」の数値は、減税対象の判別にも関わるので注意しましょう。
国土交通省の発表資料(※)をもとに、普通・小型自動車部門と軽自動車部門それぞれで燃費の良い車(令和3年末時点)のランキングを、以下に表でまとめました。
普通・小型自動車部門
順位 | 車名 | 通称名 | WLTCモード燃費値(km/L) |
---|---|---|---|
1 | トヨタ | ヤリス | 36.0 |
2 | トヨタ | アクア | 35.8 |
3 | トヨタ | プリウス | 32.1 |
4 | トヨタ | ヤリス クロス | 30.8 |
5 | トヨタ | カローラ スポーツ | 30.0 |
6 | ニッサン | ノート | 29.5 |
7 | ホンダ | フィット | 29.4 |
8 | トヨタ | カローラ | 29.0 |
〃 | トヨタ | カローラ ツーリング | 29.0 |
10 | ホンダ | インサイト | 28.4 |
軽自動車部門
順位 | 車名 | 通称名 | WLTCモード燃費値(km/L) |
---|---|---|---|
1 | スズキ | アルト | 25.8 |
〃 | マツダ | キャロル | 25.8 |
3 | スズキ | アルト ラパン | 25.2 |
〃 | スズキ | ワゴンR | 25.2 |
〃 | マツダ | フレア | 25.2 |
6 | スズキ | ワゴンR スマイル | 25.1 |
7 | スバル | プレオ プラス | 25.0 |
〃 | ダイハツ | ミラ イース | 25.0 |
〃 | トヨタ | ピクシス エポック | 25.0 |
〃 | スズキ | ハスラー | 25.0 |
〃 | マツダ | フレア クロスオーバー | 25.0 |
駆動方式で選ぶ
駆動方式には上述したように、「シリーズ方式」「パラレル方式」「スプリット方式(シリーズ・パラレル複合方式)」の3つがあります。
シリーズ方式ではエンジンは基本的に発電のために使用し、駆動用の動力源としてモーターを使用します。静粛性が高いのが、シリーズ方式の大きな特徴です。
パラレル方式ではエンジンを主体にしつつ、発進時や加速時などの大きな駆動力が必要となる場合には、モーターを併用します。モーターのサポートにより燃費を抑えることが可能です。パラレル方式のうち、2つの動力源の使い分けを細かく制御するもののことを、特にスプリット方式(シリーズ・パラレル複合方式)と呼び、燃費効率の良い走りができるのが魅力です。
同じハイブリッド車でも駆動方式によって特徴は異なるので、燃費や静粛性など何を重視するのかを踏まえたうえで選ぶと良いでしょう。
乗り心地や乗車人数で選ぶ
ガソリン車からハイブリッド車に乗り換えると、乗り心地が大きく変わることもあります。乗り心地はパンフレットなどからは判断できない要素なので、実際に試乗して確認するのがおすすめです。
大人数で利用する機会が多い場合は、乗車人数も重要なポイントです。乗車する方の体格によっては、乗車人数ギリギリの人数で乗車すると少し窮屈さを感じる場合もあります。
こちらも乗り心地同様に試乗しないと分からない部分なので、なるべく試乗してから判断するのが賢明といえるでしょう。
6.ハイブリッド車のメリット・デメリットを理解して購入を検討しましょう
ハイブリッド車は、エンジンと電気モーターといった異なる複数の動力源で動く車を指します。燃費が良く、当然CO2の排出量も少なく、カーボンニュートラルに向かって進めるなどのメリットがあるほか、エコカー減税などを利用できる点も家計にとっては嬉しいポイントです。
しかし、車体価格が高めで車内の空間が狭いなどの点は、考慮する必要がありますが、最新モデルではデメリットが少なくなっています。ご自身のライフスタイルの中で車をどう使うかを当てはめ、メリット・デメリットを踏まえたうえでハイブリッド車を購入・利用するかどうかを判断しましょう。