無免許運転と聞くと、「運転免許を持っていないにもかかわらず、車やバイクを運転すること」と思う方も多いはず。しかし、無免許運転に該当するのはこのケースだけではないので注意が必要です。当記事では、無免許運転に該当するケースや罰則、保険金などについて詳しく解説します。
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1.無免許運転の定義とは?
無免許運転とは、運転免許を受けずに車を運転すること。そのほかにも、免許の有効期限が切れている状態で運転をすることなども無免許運転にあたります。無免許運転は、下記の通り道路交通法で明確に禁止されています。
何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない。(道路交通法 第六十四条より)
法律で禁止されているにもかかわらず、無免許運転は取り締まり件数が非常に多い違反なのです。「令和4年警察白書 統計資料」の「統計5-22 違反種別ごとの交通違反取締り状況(令和2年及び令和3年)」によると、令和3年の無免許運転の取り締まり件数は、18,844件でした。
無免許運転と免許不携帯の違いは?
無免許運転と混同されがちな行為に、「免許不携帯」があります。免許不携帯とは、免許証を携帯せずに運転をすること。無免許運転とは違い、有効な運転免許を取得している状態ではあります。しかし、運転時に免許証を携帯することは道路交通法第九十五条で定められており、免許不携帯は、違反点数はつかないものの3,000円の反則金が科せられます。無免許運転とはまったく異なるものですが、免許不携帯にも注意するようにしましょう。
2.無免許運転に該当するケースとは?
無免許運転=「運転免許を取得していない状態で運転をすること」と思う方が多いでしょう。しかし上述の通り、運転免許の効力が切れた状態で運転をすることや免許対象外の車を運転することなども、無免許運転になってしまうのです。「知らずに、無免許運転をしてしまっていた」とならないためにも、無免許運転に該当するケースをきちんと把握しておきましょう。
運転免許を全く持っていない(純無免)
運転免許を取得していないにもかかわらず、車やバイクの運転をすることは無免許運転に当てはまります。無免許運転と聞いて、真っ先に思い浮かぶのがこのケースかもしれません。また、近年では高齢者の運転免許の自主返納が増加傾向にありますが、返納したにもかかわらず運転をすることも無免許運転です。実際に、自主返納後に運転をして事故を起こすケースも起きています。運転技術がある・運転に慣れているからといって、無免許運転をするのは絶対にやめましょう。
免許対象外の車を運転する(免許外無免)
運転免許を取得しているものの、その運転免許では運転資格のない車両を運転することも無免許運転です。例えば、「普通免許を取得している人が、大型自動車を運転する」「原付免許を取得している人が、普通自動車を運転する」など。
なお、この「免許外無免」と非常によく似た違反行為に、「免許条件違反」というものがあります。免許条件違反とは、公安委員会が運転免許を交付する際に付け加えた条件を違反すること。条件は、運転免許証の表面の中央部分に記載があります。最も一般的な条件といえば、眼鏡やコンタクトレンズ等を付ければ運転が許される「眼鏡等」。このほか、「AT車に限る」という条件が記載されているにもかかわらず、MT車を運転すること、「サポートカー(※)に限る」という条件があるのに、サポートカー以外の車両を運転することも免許条件違反になります。
※サポートカーとは、衝突被害軽減ブレーキおよびペダル踏み間違い時加速抑制装置を備えた自動車、もしくは道路運送車両の保安基準に適合する衝突被害軽減ブレーキを備えた自動車のことです。主に、運転に不安を感じている方や、家族に運転を心配される方などを対象に、自主返納前の選択肢のひとつとして設けられた条件です。
免停中に運転する(免停中無免)
免停期間中は運転免許の効力が停止されており、運転をすることはできません。前歴の回数や、過去3年間の累積違反点数に応じて30日〜180日の停止期間が設けられますが、この免停期間中に運転をすることは無免許運転です。なお免停中に無免許運転をした場合、免許取消となります。
免許の取り消し中に運転する(取消無免)
免許の取消し処分を受けると、過去3年間の前歴と累積違反点数に応じて1年〜10年の欠格期間(免許の再取得ができない期間)が与えられます。この欠格期間中に運転をすることも無免許運転です。再度車の運転をするには、欠格期間後に免許を再取得しなければなりません。
有効期限切れの免許で運転する
3年や5年ごとなど、定期的に訪れる免許の更新をうっかり忘れてしまう人も少なくありません。運転免許が失効した状態で運転をすることも、無免許運転になるので注意しましょう。
3.無免許運転をした人への罰則は?
数ある交通違反のうち、軽微な違反であれば、反則金を納めることで刑事罰が免除されます。一方で、無免許運転は重い違反にあたるため、反則金はなく、行政処分と刑事罰の両方が課されます。行政処分と刑事罰の詳細について紹介します。
無免許運転の行政処分
無免許運転をすると、「違反点数25点」が加算されます。これは、酒酔い運転などの違反点数35点に次ぐ点数で、非常に重い罰だといえます。過去3年間に前歴がない場合でも、違反点数25点がつくと、一発で欠格期間2年の免許取消しの行政処分を受けることになります。なお、過去3年間に前歴が2回あると欠格期間が3年に、3回以上あると欠格期間が4年に延びます。
ただし、欠格期間は累積点数に応じて決定されるため、無免許運転を起こす前に、すでに違反点数がついていた場合は、上記よりもさらに重い処分を受けることもあります。
無免許運転の刑事処分
無免許運転の刑事処分は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。昔は、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」でしたが、無免許運転を抑止する目的で2013年12月に罰則が強化されました。もし初犯で、過去に交通事故などを起こしたことがない場合は、罰金刑で済むことも。ただし、重大な交通事故や人身事故を起こした場合、無免許運転の前歴がある場合、任意の取調べに応じなかった場合などには、逮捕されることもあります。
4.同乗者や車を貸した人への罰則もある?
運転者が無免許であることを知りながら、「運転者に運送を要求・依頼し、同乗すること」「車両を提供すること」は、道路交通法第六十四条の二項と三項で禁止されています。この場合、「無免許運転ほう助行為」とみなされ、同乗者と車の提供者にも罰則が科されます。詳しい罰則は、次項にて解説します。
一方で、運転者が無免許であることを知らずに同乗した/車を提供した場合はどうなのでしょうか。道路交通法第六十四条の三項では、「自動車又は一般原動機付自転車の運転者が第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けていないことを知りながら〜」とあるため、もし運転者が無免許であることを知らなかった場合には罰則が科されない可能性もあります。しかし、無免許であることを知らなかったことを証明するのは難しいもの。同乗する前や車両を提供する前には、運転者が有効な免許を持っているかをきちんと確認するようにしましょう。
同乗者への罰則
運転者が無免許であることを知りながら、その車に同乗した場合、刑事処分として「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」、行政処分として少なくとも「欠格期間2年の免許取り消し」を受けることになります。
車を貸し出した人への罰則
運転者が無免許であることを知りながら、その人に車両を提供した場合、刑事処分として「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」、行政処分として少なくとも「欠格期間2年の免許取り消し」を受けることになります。刑事処分に関しては、同乗者に対する罰則よりも重い罪が科されてしまいます。
5.無免許運転による事故の保険金は?
自身が加害者となった場合
自分が無免許で車を運転し、事故を起こした場合の保険金はどうなるのでしょうか。もし任意保険(自動車保険)に加入していたとしても、自身の怪我や車の破損に対しては保険金を受け取ることはできません。任意保険(自動車保険)では補償の対象外になるものを「免責事項」としてあらかじめ定めており、無免許運転は免責事項となっているからです。
もし、同乗者が怪我をした場合は、同乗者に対して自賠責保険と任意保険の保険金が支払われます。ただし、もし運転者が無免許であることを知っていた場合には、減額か保険金が支払われない可能性もあります。
一方、被害者に関しては、被害者救済の観点から自身が加入している自賠責保険や任意保険(自動車保険)によって、保険金が支払われます。
自身が被害者となった場合(加害者が無免許運転をした)
自分ではなく、相手が無免許運転をして事故を起こした場合、相手方が自賠責保険に加入していれば、相手の自賠責保険で補償されます。また、相手方が任意保険(自動車保険)にも加入していた場合は、その補償も受けられます。ただし、相手方が加入しているのが自賠責保険のみだった場合、自賠責保険の保険金は人身事故による損害に限られます。そのため、事故で車が損傷してしまったとしても、損害車両の損害については補償されません。
なお、もし被害者である自分自身が任意で人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険、車両保険に加入していた場合は、それらの補償も受けることができます。
6.監修コメント
事故の加害者が無免許運転だった場合、被害者が不利益を被ってしまうことが多くあります。そのような事態に陥らないためには、無免許運転と思しき車から距離をとることが重要です。
見るからに乱暴な運転をしている人は、過去に違反経験のあるドライバーかもしれません。左右にふらつくなど不安定な運転をしている人は、自主返納したことを失念している高齢ドライバーである可能性も。そうしたドライバーを刺激すると、事故やトラブルを引き起こしかねません。先を譲ったり、タイミングを見計らって追い越したりするなど、自らの身を守る行動をとるようにしましょう。