火災保険ガイド
火災保険で風災・雹(ひょう)災はどこまで補償される?補償範囲や注意点を解説
最終更新日:2025/1/28

台風による被害は、火災保険の水災では備えられないことをご存じですか?台風による損害は火災保険の「風災」で備えます。台風や竜巻、突風、ひょうのもたらすリスクと、それらによる被害に備える火災保険の「風災」「ひょう災」についてお伝えします。
1.風災、ひょう災にはどのような場合がある?
自然災害によってもたらされる災害はいろいろあります。今回は、風による「風災」、ひょうによる「ひょう災」について、被害の詳細や備え方を解説します。
風災
風災は、強い風によってもたらされる損害のことで、台風や突風、竜巻などによる建物や家財への被害が該当します。台風の暴風雨によって、屋根が吹き飛ばされたり、窓が割れたり、破損した箇所から入った雨で室内が水浸しになったりすることがありますが、これらはいずれも水災ではなく、風災に該当します。台風など雨水の吹きつけによる被害は風災、床上浸水のように下から水につかる被害は水災として区別しましょう。
風災の保険の請求件数は台風のあとに多くなります。台風被害が心配な場合には、風災の備えをしておきましょう。
暴風で屋根の瓦が飛ばされた
台風や暴風で飛来物が屋根にぶつかり、瓦が飛ばされることがあります。そのまま放置すると屋根全体に影響を与え、雨漏りの原因になりやすくなります。台風や暴風が原因の瓦屋根の破損は、火災保険の風災にあたり補償の対象となります。ただし、古い物件でもともと経年劣化していると、風災とみなされずに保険金が下りない場合もあります。
小石などの飛来物で住宅の一部にひびが入った
強風に飛ばされた飛来物が住宅の一部を傷つけることがあります。例えば、飛んできた小石によって壁の一部にひびが入れば、それは風災とみなされます。住宅の窓や屋根、壁などはもちろん、車庫や物置、塀などの被害も火災保険の風災で備えられます。
飛来物がガラスを突き破り家具を傷つけた
台風や突風では、思わぬものが飛んでくることがあります。飛来物が自宅のガラスを突き破って室内にある家具を傷つけた場合にも、火災保険の風災で備えられます。
ひょう災
ひょう災は、ひょうによってもたらされる損害です。ひょうは空から降ってくる氷の粒です。直径5ミリ未満のあられに対して、直径5ミリ以上あるものがひょうです。大きいときには5センチほどのひょうが降ることがあり、住宅の窓ガラスや屋根、カーポートなどの住宅設備や家財が損害を負うことがあります。
ひょうが窓のガラスに当たり破損
ひょうによって住宅の窓ガラスが割れた場合、窓ガラスの交換や、割れた窓ガラスから吹き込んだひょうによって生じた損害が火災保険のひょう災補償の対象になります。
ひょうで屋根の瓦が割れた・穴が開いた
大きなひょうの塊が降ってくると、屋根瓦が割れたり、穴が空いたりすることがあり、それが原因で空いた穴から雨が吹き込み、部屋が水浸しになることがあります。火災保険にひょう災の補償が付いていれば、こうした被害についても火災保険の補償対象となります。
ひょうが太陽光発電のソーラーパネルに当たり破損した
屋根のうえに設置されたソーラーパネルにひょうがあたって破損した場合、建物にひょう災の補償が付いていて、太陽光パネルが補償対象に含まれていれば、補償される可能性があります。なお、既存住宅にあとから太陽光パネルを付けた場合には、火災保険の補償対象に含まれていない可能性があります。気になる方は、早めに保険会社に確認しましょう。
2.火災保険で補償される範囲とは
火災保険の補償は、風災や水災のような補償内容と、補償範囲の組み合わせで考えます。補償範囲は、「建物のみ」「家財のみ」「建物+家財」に分けられます。
火災保険の補償の対象は「建物」と「家財」の2つ
火災保険の補償の対象には「建物」と「家財」の2つがあります。火災保険に加入するときには、補償の対象を「建物のみ」「家財のみ」「建物+家財」のいずれかを選択します。
たとえば、ひょうで窓や屋根が破損した場合、火災保険に「ひょう災」の補償を付けていることが補償を受ける前提になります。そのうえで、「建物のみ」もしくは「建物+家財」を選んでいれば、ひょうで破損した窓や屋根の修理費用が補償されます。「家財のみ」もしくは「建物+家財」を選んでいれば、ひょうによって破損した場所からの吹込みで被害を受けた家具や家電など家財の補償が受けられます。
建物
「建物」は、壁や屋根、窓やドアなどの建物本体だけでなく、「建物についていて動かせないもの」も含まれます。例えば、敷地を囲む塀や門、敷地内にある物置や車庫、建物に設置された浴槽や流し台、ガス台、エアコンやアンテナなども含まれます。どこまでを建物に含むかは、保険会社に確認しておきましょう。
家財
家財は「建物の中にある動かせるもので、日常生活に使うもの」です。テーブル・椅子・ソファ・タンスなどの家具、テレビや洗濯機、冷蔵庫、パソコン、オーディオなどの家電製品、洋服・かばん・おもちゃなど、挙げてみるといろいろあります。建物内にある自転車や125cc以下の原動機付自転車も家財にあたります。
なお、「30万円を超える貴金属や宝石、美術品など」は家財には含まれません。これらの補償が欲しい場合は、通常の家財とは別に「高級な貴金属、美術品などの補償」を付けることになります。また、旅行中に持ち歩いているものを壊したり、外出中に携行品を壊したりしても、それは建物外にあるので、家財には該当しません。
こちらは、風災、ひょう災それぞれの損害例と、建物・家財のどちらに該当するか補償対象を示しています。
【風災の場合】
損害例 | 補償の対象 |
---|---|
暴風で屋根の瓦が飛ばされた | 建物 |
小石などの飛来物で住宅の一部にひびが入った | 建物 |
飛来物がガラスを突き破り家具を傷つけた | 窓ガラス:建物 家具:家財 |
強風で屋根瓦が飛び、雨により家具がぬれた | 屋根瓦:建物 家具:家財 |
【ひょう災の場合】
損害例 | 補償の対象 |
---|---|
ひょうが窓のガラスに当たり破損 | 建物 |
ひょうで割れた窓からの吹込みで、パソコンやテレビが使えなくなった | 建物 家財 |
ひょうで屋根の瓦が割れた・穴が開いた | 建物 |
ひょうが太陽光発電のソーラーパネルに当たり破損した | 建物 |
火災保険として補償を受ける際の注意点
火災保険として補償を受けるときには、いくつかの注意点があります。
免責金額がある
火災保険では、契約時に免責金額を設定します。免責金額は、保険の契約者が自己負担する金額です。契約者が損害額の一部を自己負担することで、保険料負担を抑える効果があります。免責金額を高めにすれば保険料を抑えられ、免責金額を低めにすれば事故が起きたときの自己負担を軽減できます。
火災保険の免責金額には、「免責方式」と「フランチャイズ方式」の2種類があります。免責方式は、損害額からあらかじめ決めた免責額を差し引いた金額が保険金として支払われる方式です。公式で表すと、「保険金=損害額-免責金額」となります。
フランチャイズ方式は、損害額が免責金額以上になれば、保険金額を上限に全額が支払われるというものです。一昔前の火災保険では、免責金額が20万円で設定されたフランチャイズ方式が採用されていました。
免責金額が20万円と同条件でも、加入している火災保険がどちらの方式をとっているかで、保険金額や自己負担額に差が出てきます。契約内容などをよく確認しておきましょう。
免責金額が20万円の場合
損害額 | 保険 | |
---|---|---|
免責方式 | フランチャイズ方式 | |
5万円 | 0円 (5万円-20万円) |
0円 (5万<20万円) |
10万円 | 0円 (10万円-20万円) |
0円 (10万<20万円) |
20万円 | 0円 (20万円-20万円) |
20万円 (20万=20万円) |
免責方式は、損害額が免責金額を上回るときにその差額(超過分)を受け取れます。一方のフランチャイズ方式は、設定された免責金額に達するまで保険金は0円です。
このように、免責方式では損害額にかかわらず自己負担が生じます。
フランチャイズ方式は、損害額が免責金額以上となれば、その損害額に応じた保険金を自己負担なしで受け取れます。一方で、免責金額は20万円など、免責方式と比較して設定可能な免責金額が高額なことが多く、比較的大きな損害でないと保険金を受け取ることができません。
なお、火災保険の多くは免責方式を採用している場合が多いです。
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SOMPOダイレクトの「じぶんでえらべる火災保険」も免責方式を採用しています。
自動車は家財に含まれない
建物の中にある自転車や原付バイクは家財に含まれますが、自動車は家財には含まれません。自動車が台風や強風で傷ついたり、ひょうが降ってきて窓ガラスが割れたりしても、火災保険では補償されないので注意が必要です。自動車の補償は自動車保険で備えます。心配な方は、自動車保険の補償内容を確認しておきましょう。
保険金の請求は被害発生時から3年以内
保険金の請求期限は、保険金の支払事由が発生してから3年以内と保険法で決められています。請求を忘れて3年間が過ぎると、請求する権利がなくなる可能性があるため早目に請求しておきましょう。
経年劣化による破損は補償が出ない
家屋の一部が破損して保険金の請求をしても、被害状況の写真や請求書類に書かれた状況から判定した結果、建物の経年劣化による破損とみなされれば保険金は下りません。
3.火災保険から支払われる保険金はどのぐらい?

続いて、実際にあった風災、ひょう災の支払い事例をいくつか見ていきましょう。
例1)ひょうが降り、1階と2階の窓ガラスが割れた
(被害)窓ガラスの交換にかかった費用:13万5,000円
(保険金支払い)損害保険金13万5,000円+臨時費用1万3,500円(損害保険金の10%)=14万8,500円
このケースでは免責金額無しの契約だったため、窓ガラスの交換にかかった費用が全額支払われました。また、事故後の片づけなどに要するさまざまな費用を補償するための「諸費用補償特約」を付けていたため、臨時費用として臨時費用1万3,500円(損害保険金の10%)が支払われていることから、実際の被害額よりも多い金額を受け取っています。
例2)台風の強風でアンテナが倒れ、ひさしに穴が開いた
(被害)ベランダひさし張替え・テレビ用アンテナ設置工事費用:9万8,000円
(保険金支払い)損害保険金9万8,000円+臨時費用9,800円(保険金額の10%)=10万7,800円
このケースでは免責無しの契約だったため、工事費用が全額支払われています。また、諸費用補償保障特約を付けていたため臨時費用が支払われたことから、実際の被害額よりも多くの保険金を受け取っています。
4.保険の対象に合わせた「じぶんでえらべる火災保険」
暮らしの状況は一人ひとり違うため、備えたい補償も備えたい金額も一人ひとり異なります。ハザードマップなどを参考にして、どのような被害が起こりうるのか、被害にどの程度備えたいのかを考えましょう。
最初からセットされた保険よりも多少の手間はかかりますが、自分で火災保険の補償を選ぶと不要な補償が省けるため、補償内容や保険料に対して納得感が生まれます。
一戸建てとマンションのそれぞれで必要になる対策とは?
一戸建てとマンションでは必要な補償は異なります。マンションは専有部分のみを考えることになりますが、一戸建ては建物全体の維持管理を考えて幅広く備えておく必要があります。
一戸建ての風災・ひょう災で必要となる対策
一戸建ての場合、室内だけでなく、建物全体や敷地内のすべてを所有者が自分自身で維持管理することになるため、自然災害に備える必要性が大きくなります。
火災保険の補償内容は火災だけに限られません。風災・ひょう災・雪災・水災などのさまざまな自然災害に備えられるほか、水漏れや盗難の補償なども選べます。今一度、加入している火災保険の補償内容を確認しておきましょう。
マンションの風災・ひょう災で必要となる対策
マンションの場合、高層階にお住まいの場合は、洪水などの水災リスクは比較的低いといえます。また、風災による飛来物が個人が利用する専有部(部屋)に飛んできづらいため、「風災」のリスクも高くはないといえるでしょう。
一方で、低層階の場合は戸建と同様に注意が必要です。河川が近い場合は「水災」の補償を検討しましょう。
集合住宅であるマンションの場合、水漏れなどで上下左右の家にも損害を与えてしまう可能性があります。誰にでも起こりうることだからこそ、個人賠償責任の補償も備えておきたいところです。
5.万が一の際に後悔しないために、万全の対策を
自然災害への備えが気になったら、補償を再確認するタイミングです。いつ来るかわからない自然災害に向けて、現在の補償内容に過不足がないか確認しておきましょう。
近年、自然災害は増加傾向にあり、大きな台風も頻発しています。どのようなリスクが起こりうるのか、考えながら保険の見積りをすることが、備えの第一歩につながります。
監修者プロフィール

氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ハートマネー代表
ファイナンシャルプランナー/キャリアコンサルタント
2005年にFP会社設立に参画しFP相談を開始。2010年に独立してFP事務所ハートマネーを設立。「お金」「キャリア」「聴く力」を強みとして、その人らしい人生地図作りをサポート。子育て世代の貯める仕組み作りから、定年前後の世代まで幅広い相談実績を持ち、人生の転機をサポートしている。
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