火災保険ガイド
火災保険の詐欺に注意!事例や被害を防ぐためのポイントなどを徹底解説
最終更新日:2025/1/28

「火災保険を使えば、無料で自宅を直せます」。もしもそんな誘いを受けたら、詐欺に巻き込まれているかもしれません。多発している火災保険の詐欺の手口と、詐欺被害を防ぐためのポイントについて解説します。
1.火災保険の詐欺とは?
近年増えている火災保険の詐欺とは、火災保険の不正請求です。昨今、かなり問題視されている詐欺であり、令和6年6月には消費者庁から「火災保険を使って実質的に無料で修理ができる」などとうたい、火災保険金を利用した修理工事契約を締結させる事業者に関する注意喚起が出ています。
うっかり誘いに乗るといつの間にか詐欺に巻き込まれる可能性がありますし、悪意はなくても詐欺に加担すると罪に問われるので注意が必要です。火災保険の詐欺の被害にあわない、加担しないために、詐欺の事例や悪徳業者を見極めるポイントなどをご紹介します。
不正請求と水増し請求とは違う
火災保険の不正請求は、被害の実態はないのに被害があったことに見せかけて、火災保険金を不当に請求することをいいます。たとえば、自然災害が起きたときに便乗して、実際は被害がなかった自宅や家財を被保険者自身が壊して、火災保険金を請求するようなケースです。
不正請求と混同しやすいものに「水増し請求」がありますが、こちらは、被害金額を不当に上乗せして、実際の損害よりも多くの保険金を請求することです。こうした違いはありますが、不正請求も水増し請求も事実と異なる内容を申告して保険金をだまし取ろうとする行為なので、当然のことながら、どちらも認められません。
被保険者自身が、故意による損害を自然災害と偽るケース
火災保険の保険金請求ができるのは所有者である被保険者の方ですが、被保険者自身の故意による不正請求です。火災保険では、被保険者などの故意や重大な過失による損害は補償されません。故意による損害を自然災害によるものと偽って、本人が意図的に不正請求をした場合には、保険契約を解除される可能性があり、当然に保険金も支払われません。仮に保険金が支払われた場合でも、あとから保険金の返還請求や保険契約の解除、損害賠償請求などをされる可能性があります。
業者の勧誘に乗り、保険金詐欺に加担するケース
被保険者が、悪徳な業者の誘いに乗って行う不正請求です。世の中には、火災保険金申請サポート業者を名乗る悪徳業者がいます。電話や訪問営業などで「自宅の無料点検」を騙って近づいてきて、無料点検の結果、雨樋や屋根などの修理を持ちかけます。点検後に、修理の必要性を訴える一方で、住民が「お金がない」と断ると、「火災保険を使えば、負担なく屋根の修理ができる」などといって契約を持ちかけます。
しかし、火災保険は火災や自然災害などでおきた損害を補償するものですから、経年劣化した住宅を火災保険で修理することはできません。また、保険金請求は被保険者本人が行うものなので、請求手続きを丸ごと業者にお任せすることもできません。もしも業者の言うままに、虚偽の火災保険請求を行うと、保険金詐欺に加担することになるので、くれぐれも気を付けましょう。
2.よくある火災保険の詐欺の事例
詐欺の被害にあわないためには、詐欺の手口を知ることが役に立ちます。以下によくある保険金詐欺の事例を5つご紹介しますので参考にしてください。
自分で住宅を壊し、自然災害の被害と偽る
自宅を自分で傷つけて、「強風で物が飛んできてガラスが割れた」「台風で屋根に穴が開いた」など自然災害による損害に見せかけて保険金を請求するケースです。
仮に誰かに勧められた場合でも、自分で住宅を傷つけて自然災害に見せかけることは虚偽の申請ですから、保険金を受け取れないばかりか、損害賠償請求を受ける可能性があります。
保険金申請代行の契約トラブル
火災保険金申請サポート業者は、古くなった家に訪問し、無料点検などをきっかけに火災保険による住宅の改修を持ちかけます。「保険が使える」「無料で診断」「自己負担はいらない」などといって近づいてきますが、作業前に契約を強要したり、ずさんな補修をおこなって高額な改修費用を請求したり、保険金申請のサポート料やコンサルティング料と称して高額な請求をするなど、あの手この手で迫ってきます。
こうした業者にあったら契約をしてはいけません。速やかに保険会社や代理店、相談窓口に連絡をしましょう。
「経年劣化」を補償の対象であると偽る
住宅も家財も年数が経つと自然に古くなりますが、このことを経年劣化といいます。火災保険では、経年劣化した場合の修理費用は補償の対象外としています。経年劣化した自宅を保険で補修できると騙る業者は詐欺の可能性が高いので気を付けましょう。
なお、自然災害で自宅が損壊したときに、それ以外の部分も一緒にリフォームすること自体は問題ありません。その場合、被害にあった部分の費用は火災保険の支払い対象になっても、それ以外の部分に対しては保険金が出ないので自己資金を使うことになります。
高額な代行手数料を請求する
自然災害にあった被保険者は、保険会社に連絡をすれば、保険金の請求に必要な手続きはすべて教えてもらえます。保険金請求に必要な現場の写真撮影などは、改修業者が記録として行うこともあります。保険金の請求手続き自体は、被保険者しかできないため、たとえ高額な手数料を払って代行業者に依頼したとしても、やってもらえることはわずかです。代行業者の誘いに乗らないようにしましょう。
契約解除時の違約金などの高額請求によるトラブル
もしも悪徳な火災保険申請サポート業者と契約したことに後から気付いた場合、契約を解除したくなりますが、着工前に契約解除を申し出る場合にも注意が必要です。業者の中には、違約金として高額の解約金や手数料を請求してくることがあります。一人で悩まずに、保険会社や相談窓口に連絡しましょう。
3.本来の火災保険金の請求の流れ
自然災害などの請求事由に該当したら、保険会社のコールセンターや担当者に早めに連絡を入れましょう。必要な書類が送られるほか、請求に必要な手続きを教えてもらえます。また、SOMPOダイレクトをはじめとした多くの保険会社が24時間365日・年中無休で、電話による事故受付に対応しています。
大まかな保険金請求の流れは以下のようになっています。
- (1)
-
自然災害による損害が発生
- (2)
-
保険会社のコールセンターや代理店の担当者などに連絡を入れる
- (3)
-
保険金請求に必要な書類を受け取る
- (4)
-
必要書類の作成と提出
保険金請求書(被保険者が自書・捺印する)
被害状況を撮影した写真(複数枚)
修理見積書
- (5)
-
保険金支払額確定後、保険金を受け取る
4.詐欺やトラブルに巻き込まれないために

詐欺やトラブルに巻き込まれないためには、必要な知識を身につけて、怪しい業者や誘い文句に乗らないことが大切です。以下では騙されないためのポイントをお伝えします。
「自己負担ゼロ」「無料点検」を鵜吞みにしない
「タダより高いものはない」という言葉がありますが、タダにはそれなりの理由があります。
なぜ無料なのに業者が勧めてくるのか、業者はどこから利益を得ているのかを考えるようにしましょう。
悪徳業者は「保険会社が払ってくれる」と言いますが、火災保険は火災や自然災害などによる損失を補償するためにあるため、経年劣化による故障や破損は補償の対象外です。なにより、経年劣化まですべて補償していたら、保険として成り立たなくなるでしょう。「無料」などの甘い言葉で近づいてくる業者がいたら、鵜吞みにしないように気を付けましょう。
着工を急がせてくる修理業者は避ける
自然災害では、同一地域で同様の被害にあった住宅が多くあることから、復旧工事には時間がかかりやすくなります。災害の規模が大きくなるほど、その傾向は大きくなるでしょう。
そんな状況下で契約や着工を急かす業者がいたら、疑いの目を持ちましょう。保険金を当てにして契約をしても、期待通り保険金を受け取れない可能性もありますし、いたずらに急かす修理業者にはそれなりの思惑があるからです。
口約束ではなく契約書を作成する
災害のあとは何かと慌ただしいものですが、修理業者と契約を結ぶ際には、口約束ではなく必ず契約書を作成し、口頭で説明を受けましょう。不明点があったら遠慮せずに質問することも重要です。特に、違約金や解約料などがあれば注意が必要です。小さな文字で目立たないように書かれていることもあるので、よく確認しておきましょう。
業者に促されても虚偽の報告をしない
悪徳業者は、被保険者に対して不正な保険金申請を求めてくる可能性があります。仮に「みんながやっています」「大丈夫です」と言われても、断ることが大切です。
契約前に必ず会社の概要や窓口の有無確認をする
修理業者を自分で探すとしたら、皆さまはどうしますか。インターネットで会社情報や料金体系を調べたり、複数の会社の口コミ情報を調べたりするのではないでしょうか。友人や知り合いなどにお勧めの業者を聞いて回る方もいるかもしれません。
しかし、自分で探す場合と違って、業者側から近づいてくる際は事前情報がありません。心づもりもないまま「無料ならいいかな」と、相手のこともよく知らないまま話が進むケースが多くなります。
悪徳業者の場合、会社の実態がなく、契約を結んだあとに業者が姿を消すケースがあります。どんなにいい人そうに見えても、契約前には疑いの目を持ち、ホームページなどでまずは会社の実態を確認しましょう。評判がよく実績が豊富な会社であれば、社名で検索すると、その会社の名前や評判が見つかるはずです。問い合わせ窓口の連絡先をしっかり把握するようにしましょう。
火災保険の仕組みを理解して信頼できる業者を選ぶ
騙されないためにも、火災保険の仕組みを理解しましょう。火災保険を含む損害保険は、偶然の事故や災害による損害を補償するためにあります。そのため、火災保険では経年劣化による損傷には保険金を支払いませんし、故意に傷つけた場合にも保険金を支払いません。
信頼できる業者を選ぶには、地域での評判や口コミに注目しましょう。向こうからやってきた場合には、すぐに契約しないで、業者の実態や評判を確かめる必要があります。
保険金で自宅の改修をする場合には、保険金の支払額が確定してから契約、工事へと移りましょう。急いで契約や工事を進めたあとに、保険金が想定外に少なかったのでは困りますから、契約を急かされたときには注意が必要です。
5.火災保険でのトラブルにあいそうな場合は相談窓口へ
詐欺の手口はますます巧妙になっています。気を付けていても火災保険詐欺などのトラブルに巻き込まれる可能性があります。すぐに契約するのではなく、慎重に考える時間を持つことが重要です。
少しでも不安を感じたら、以下の相談窓口に相談しましょう。万が一契約をしてしまった場合でも、一定条件を満たせば、「クーリング・オフ」制度を利用して取り消せる可能性があります。その場合も、相談窓口に相談することをおすすめします。
運営 | 相談先名称 | 電話番号 | 受付時間 |
---|---|---|---|
消費者庁 | 消費者ホットライン | (市外局番なし)188 |
平日9-17時 休日10-16時
|
一般社団法人 日本損害保険協会 | 保険金に関する災害便乗商法相談ダイヤル | 0120-309-444 |
平日9-12時 13-17時
|
【消費者庁】消費者ホットライン「188(いやや!)」
悪徳業者に勧誘された場合などに無料で電話相談できる相談窓口です。市外局番なしで「188(いやや)」にかけると、最寄りの消費生活センターなどにつながる仕組みとなっています。通話料はかかりますが、相談料は不要です。受付時間は、平日は9時から17時まで、土日祝日は10時から16時までとなっています。※年末年始を除いて原則毎日利用可能です。受付時間は相談窓口によって異なる場合があります。
【日本損害保険協会】保険金に関する災害便乗商法相談ダイヤル「0120-309-444(さあ連絡しよう)」
保険申請サポート業者から勧誘を受けた、保険申請サポート業者との契約を解除したいといった方が相談できる「保険金に関する災害便乗商法相談ダイヤル」です。受付時間は、年末年始を除いた平日の9時から12時、13時から17時までとなっています。
6.保険会社を選ぶ際も!会社概要や口コミを確認しよう
火災保険について、日常生活で話題に上ることはあまりないのではないでしょうか。保険会社を選ぶ時にも、保険商品名だけでなく、どんな保険会社が扱っているのかホームページなどで会社概要も確認しましょう。ホームページを見ると、火災保険を見直したばかりの人や、実際に保険金請求をした人の口コミなども見られるので、保険選びの参考になります。
7.火災保険の詐欺をきちんと理解して、トラブルや被害を回避しよう
火災保険の不正請求にまつわる詐欺が増えています。自宅の無料点検などを口実に近づいて、改修費の高額請求をしてくる業者がいますし、経年劣化による破損を自然災害によるものだと偽って、火災保険の不正請求をさせようとする業者もいます。
この記事でまとめた注意点やポイントを押さえ、悪徳業者には近づかないように気を付けて、不安を感じたら相談窓口に連絡しましょう。
監修者プロフィール

氏家 祥美(うじいえ よしみ)
ハートマネー代表
ファイナンシャルプランナー/キャリアコンサルタント
2005年にFP会社設立に参画しFP相談を開始。2010年に独立してFP事務所ハートマネーを設立。「お金」「キャリア」「聴く力」を強みとして、その人らしい人生地図作りをサポート。子育て世代の貯める仕組み作りから、定年前後の世代まで幅広い相談実績を持ち、人生の転機をサポートしている。
よくあるご質問
被害にあわれた場合のご連絡先
通話料無料
年中無休、24時間365日ご連絡を受付けております。
- ※
-
IP電話をご利用の方で上記無料通話回線が繋がらない場合、海外からおかけになる場合は、お手数ですが以下の電話番号におかけください。
050-3786-1024(有料電話)
- ※
-
お電話をいただく際は、おかけ間違いのないよう、十分ご注意ください。