最終更新日:2023/6/28

たこ足配線が危険な理由とは?火災の被害を防ぐために知っておきたいことも紹介

たこ足配線は電気火災につながる可能性があり、危険を伴います。自宅のコンセントの数や位置などの状況によっては、やむを得ず1つのコンセントに複数の電気機器をつなぐ場合もあり、どうすれば良いか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

本記事では、たこ足配線が危険な理由を解説します。さらに、電源タップを使ってたこ足配線をするときの注意点や、予期せぬ電気火災の被害を防ぐ方法も紹介するので参考にしてください。

たこ足配線が危険な理由

たこ足配線とは、電源タップや三角タップなどを使って1つのコンセントに多数の電気機器をつないでいる状態のことです。まるで蛸(たこ)の足のようにコンセントからケーブルが伸びている様子から、「たこ足配線」と呼ばれます。

コンセント不足のときに役立つたこ足配線ですが、使用時にはいくつかの危険が伴います。以下、たこ足配線が危険な理由を解説します。

定格電流を上回ると発火する危険がある

たこ足配線が危険な理由の1つは、コンセントの定格容量を上回る可能性がある点です。コンセントは同時に使用できる電流に制限(定格電流)があり、定格電流を超える(過電流)とコンセントや電源タップが発熱し、発火する恐れがあります。

一般的なコンセントや電源タップの定格電流は、15Aです。例えば、冷蔵庫(415ℓ)の目安は1.5A、全自動洗濯機(5.0kg)の目安は4.2Aで、1つのコンセントに1つの電気機器をつなぐ状態であれば、コンセントの定格電流を超えることはあまりありません。

しかし、たこ足配線で多くの電気機器をつなぐ場合は状況が異なります。1つのコンセントで4~5つ、またはそれ以上の電気機器をつなぐと、コンセントの定格電流を超える危険性があり注意が必要です。

トラッキング現象を引き起こす恐れがある

トラッキング現象とは、ほこりや水分により電気のとおり道(トラック)ができて、異常発熱や火花放電が生じる現象です。

コンセントや電源タップに長期間電源プラグを差し込んでいると、プラグの周辺にほこりが溜まりやすくなります。ほこりが溜まったプラグに水滴や湿気などの水分が加わった場合、電流が流れて発熱や発火が起こるリスクがあり危険です。

特に、たこ足配線は多くの電化製品の電源プラグが集まっている分、トラッキング現象が生じやすい側面があります。

電源コードを束ねた箇所からの発火のリスクがある

たこ足配線は、電源コードを束ねた箇所から発熱や発火のリスクもあります。

電源コードを束ねて使用すると、放熱が妨げられて電源コードが過熱する危険が高まります。たこ足配線では多くの電気機器の電源コードが集まっているので、電源コードを束ねて整理することもあるかもしれませんが、熱がたまりやすくなり危険です。

また、たこ足配線では多くの電気機器をつなぐため、電源コードは熱をもちやすい状況にあります。そのため、電気コードを束ねる使い方はより注意が必要です。

電源コードなどの劣化によるショートや発火の可能性がある

たこ足配線は、過電流やトラッキング現象などにより、電源コードやプラグなどが発熱しやすい傾向があります。

電源コードやプラグなどが熱により劣化すると、配線が直接結ばれてしまう「ショート」が生じ、発火するリスクがあるので注意しましょう。

たこ足配線による火災を含む「電気火災」の発生件数は?

東京消防庁管内の電気火災の発生件数は、毎年増加傾向にあります。2017年から2021年の5年間における東京消防庁管内の全火災件数と電気火災件数の推移は、次のとおりです。

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
全火災件数 4,204件 3,972件 4,085件 3,693件 3,935件
電気火災件数 1,152件 1,205件 1,283件 1,163件 1,399件
電気火災の割合 27.4% 30.3% 31.4% 31.5% 35.6%
左右にスワイプすることで、表が見られます

出典:東京消防庁「身近な家庭電気製品の火災発生状況」

上表のように、2021年に都内で発生した火災3,935件のうち電気火災(電気設備機器などによる火災)は1,399件にのぼり、全火災件数の35.6%を占めています。

電気火災数のうち、一定数は電源プラグやコンセント、電源コードが原因です。たこ足配線など危険性のある使い方を防ぐことは、電気火災の防止につながります。

たこ足配線をするときの注意点

たこ足配線をするときの注意点

たこ足配線の使用はできるだけ避けたいとはいえ、状況によっては1つのコンセントに電源タップや三角タップを使って複数の電化製品をつなぐ場合があるでしょう。

以下では、複数の電化製品を1つのコンセントにつなぐときに知っておきたいことを紹介します。

コンセントなどの定格電流を超えないように注意する

たこ足配線での発熱・発火を防ぐためには、コンセントや電源タップ、電源コードの定格電流を超えないことが大切です。電気機器のアンペア(A)の目安は以下のとおりです。

電子機器 アンペア(A)
冷蔵庫(415ℓ) 1.5A
全自動洗濯機(5.0kg) 4.2A
電子レンジ 10~12A
テレビ 1.3A
ドライヤー 5~12A
アイロン 10A
ホットプレート 13A
炊飯器 5.7~8A

一般的なコンセントの定格電流は15Aであるため、つないでいる電気機器のアンペアが定格電流を超えないように注意しましょう。

なお、上表は目安の値です。コンセントや電源タップ、電源コードには定格電流が15Aを下回る製品があり、冷蔵庫やドライヤーなど電気機器も製品により使用される電流は異なります。

多くの電気機器を1つのコンセントにつなぐときは、実際に利用しているコンセントや電源タップの定格電流、電気機器のアンペアを確認しましょう。

ほこりが溜まらないようにこまめに掃除する

コンセントや電源タップに付着するほこりは、ほこりの湿気により発生する火災やトラッキング現象の原因となり得るため、こまめに掃除しましょう。

掃除するときは、水分やアルコールを付着させないことがポイントです。ハンディモップやマイクロファイバークロスなどを利用すると、ほこりを簡単に取り除けます。

また、コンセントやプラグに緩みなどがあると、接触抵抗が増して発熱・発火の原因となります。掃除するときは、コンセントにプラグがしっかりと差しこんでいるかも確認してください。

電源コードを束ねて使用しない

見栄えを良くする、整頓をするなどの目的で、電源コードを束ねるケースがあるかもしれません。しかし、電源コードを束ねておくと放熱が妨げられて発熱・発火の原因となる場合があります。

放熱がしやすいように、電源コードは束ねずに使用しましょう。

なお、電源コードの折れ曲がりやねじれにも注意が必要です。特に、家具などの下敷きになっていると、電源コードが断線して発火の原因となります。

安全機能を備えた電源タップを使用する

近年、安全機能を備えた電源タップが市販されています。具体的には、以下のような機能を備えています。

  • 定格電流を超えて過電流が発生すると自動で電気回路を遮断するブレーカー機能

  • ショートや漏電のときに電気を遮断する機能

  • 防水機能

  • ほこりを防ぐカバー機能

例えば、ブレーカー機能のある電源タップを使用すると、過電流となった場合に電気を遮断します。また防水機能のある電源タップは、キッチンや水回りで使用するときに便利です。

このような安全機能のある電源タップも上手に利用しましょう。

予期せぬ電気火災へ備えるための方法

予期せぬ電気火災へ備えるための方法

使い方を工夫していても、自然災害などが原因で予想していない電気火災が起こる場合もあります。ここでは、万が一の電気火災に備える方法を3つ紹介します。

  • ブレーカーの位置を確認しておく

  • 住宅用消火器や消火スプレーを準備しておく

  • 火災保険に加入しておく

電気火災の初期消火では電気の遮断が必要なため、「発火しているタップや電源コードのプラグを抜く」「ブレーカーをオフにする」ことが重要です。そのため、普段から自宅のブレーカーの位置を確認しておき、火災が発生したときに速やかに対応できるようにしましょう。

また、住宅用消火器や消火スプレーがあると、万が一発火したときに役立ちます。なお、住宅用消火器や消火スプレーには適応火災があるので、ラベルの絵表示などを参考に選びましょう。例えば、電気火災に適応可能の住宅用消火器や消化スプレーには、青い丸の中に雷のようなマークが描かれています。

火災保険に未加入の場合は万一に備えて火災保険に加入しましょう。火災保険の加入に法的な義務はありませんが、火災保険に加入していると契約内容に基づいて損害保険金を受け取れるので、もしものときにも安心です。

たこ足配線の使用時は定格電流を超えないよう注意しましょう

たこ足配線は、過電流やトラッキング現象により火災が生じる恐れがあり危険です。電気火災の原因にもなるので、できるだけ使用しないようにしましょう。ただし、自宅のコンセントの状況によっては、やむを得ずたこ足配線をしなければならないこともあるかもしれません。

電源タップを使ってたこ足配線をするときは、定格電流を超えない範囲で使用するように注意しましょう。また、コンセントや電源タップ周りをこまめに掃除しておくと、トラッキング現象の原因となるほこりを取り除けます。

なお、予期せぬ電気火災に備えるためには、日ごろの準備が大切です。特に火災保険は不測かつ突発的な事故で生じた損害があった場合、契約内容にしたがって保険金が支払われます。この機会に、加入している火災保険の見直しや新規加入を検討してはいかがでしょうか。

監修者プロフィール


おりえ

おりえ

総合危機管理アドバイザー
防犯・防災、護身術の講演会やセミナー、イベント、メディア対応など幅広く活動。日本一非常食を食べていると自負する非常食マイスターでもある。総合防犯設備士、危機管理士、防災士、世界硬式空手道連盟顧問。

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