火災保険ガイド
マンションに火災保険はいらない?必要性や補償内容の選び方などポイントを解説!
最終更新日:2023/1/25
木造がメインの戸建て住宅とは異なり、鉄筋コンクリート造など耐火性能に優れた構造の多いマンションには、火災保険は不要だと考える方もいるかもしれません。しかし、集合住宅であるマンションこそ、火災保険の重要性や加入の恩恵が大きいともいわれます。
本記事では、マンションにおける火災保険の必要性や補償内容の選び方などをわかりやすく解説します。
マンションにおける火災保険の必要性
火災保険は、対象の建物・家財、もしくは両方に対して、基本補償である火災、落雷、破裂・爆発などによる損害のほか、オプションで選べる風災、雹(ひょう)災、雪災、水濡れ、水災、盗難などの幅広い損害を補償する保険です。
もし火災にあえば住まいが大きく損傷し、回復させるのに大きな経済的ダメージを負います。こうした損失リスクに備えられる火災保険は、住む建物に関わらず、重要な保険といえます。
もう1つ注意しておきたいのが、失火責任法です。日本では火災が起こったとき、重大な過失が原因ではない限り、出火元に賠償責任が生じません。そのため、火災保険には、もらい火による火災損害を自衛する意味もあるのです。
マンション特有の事情としては、戸建て住宅とは違って、壁で仕切られた集合住宅である点が大きいでしょう。何らかの災害が発生すれば、自室だけではなく上下左右の部屋にも、影響を及ぼす可能性があります。つまり、誰もが加害者・被害者となりやすい環境なのです。
火災などの災害による損失が広範囲に及ぶリスクを考えれば、戸建て住宅以上に火災保険の必要性は高いといえるかもしれません。
なお、マンションで火災保険(建物)を契約する場合、補償の対象となるのは所有者が住まいとして個人が利用する専有部のみとなります。エントランスや廊下などの共用部は、通常、管理責任を持つマンションの管理組合や管理会社が保険をかけています。
共用部のエントランスガラスが強風による飛来物で割れれば、管理組合が保険で補償してくれます。しかし、集合住宅は損害と隣り合わせです。この場合だと、例えば飛び散ったガラスで専有部にあたるドアに傷がついても、対象が共用部ではない以上、修繕は自己負担になってしまいます。
このように、ご自身や家族に原因はなくても起こりうる損害リスクに備え、火災保険に加入しておきましょう。
分譲マンションの場合
火災保険を契約できるのは、原則として、建物の所有者です。そのため、分譲マンションを購入された方は、建物と家財の両方に保険をかけられます。
隣家からのもらい火によって壁や床、家財が損害を受けても、重過失がなければ、加害者に弁償してもらえません。そのため、ご自身の建物や家財はご自身で守る意識が大切です。
また、隣家が出火元であれば、被害者から賠償請求を請求されることはないものの、集合住宅での近所づきあいに影響を及ぼすでしょう。また、失火原因が重過失によるものと認定されれば、高額な損害賠償を支払う可能性もあります。
今後、長く暮らす予定で分譲マンションを購入される方は多いはずです。加害者側、被害者側、どちらの立場のリスクにも備えられるよう、火災保険に加入しておくのがおすすめです。
新築の分譲マンション
新築の分譲マンションは、購入時に多くの方が住宅ローンを組みます。その際、金融機関からローン契約の前提条件として、火災保険への加入をあげられることがほとんどです。
住宅ローンを組むのに火災保険の加入が求められる理由は、主に2つあります。
まず、金融機関は対象物件を担保として高額な融資を実施します。そのため、ローン返済中、火災などの損害から物件の担保価値を守る目的があります。次に、損害の修繕費が膨らみ、ローンが返済不能に陥るのを回避するための手段でもあります。
新築の分譲マンションには最新の耐火性能や防火設備が備えられていますが、それでも、火災の可能性はゼロではありません。オール電化のマンションであっても、漏電による火災が起こることもあります。
もし火災で部屋が全焼してしまうと、ローンの返済を続けながら、新たな住まいや家財の準備にもお金をかけることになります。火災保険に加入していれば、こうした経済的ダメージを最小限に食い止めることができるでしょう。
中古の分譲マンション
購入したのが中古の分譲マンションであっても、住宅ローンを利用するなら、新築と同様、金融機関から火災保険への加入を求められる場合が多いようです。
ただし最近は、購入金額や頭金(自己資金)の割合などを考慮し、火災保険の加入を必須としない場合もあります。先述のとおり、火災保険に法的な加入義務はありませんから、その時点で加入するかどうかは、ご自身の判断によります。
ただし、マンションは設備の劣化から火災に至るリスクも高まるため、火災保険へ加入しておくことをおすすめします。
マンションの火災保険の相場はどれくらい?
マンションの火災保険の保険料は、建物の構造(耐火性能)や築年数、建物の所在地、補償内容や保険金額、地震保険の有無など、さまざまな要素が影響するため、相場を一概に言うことはできません。
例えば、建物の構造であれば、耐火性能の高いM構造(コンクリート造のマンション等)は保険料が安く、耐火性能の低いH構造(木造戸建て等)はM構造より保険料が高くなります。マンションのほとんどはM構造ですが、耐火建築物に該当しない場合には、分類が変わる可能性があります。
また、まったく同じ構造・築年数のマンションであっても、所在地によって災害リスクが変わるため保険料も変動します。
マンションにおける火災保険の補償内容の選び方のポイント
最後に、マンションの火災保険を選ぶときに押さえておくべきポイントを解説します。
希望する補償があるか
火災保険は、金融機関や不動産会社から基本的な補償内容がセットになったパッケージ商品を紹介されることも多いですが、住まいの状況に合わせて補償内容をカスタマイズするのがおすすめです。
高層階か低層階か、築年数はどれくらいか、所在地の災害リスクが高いか低いかなどにより、住まいに必要な補償は異なります。保険商品により提供される補償や特約は少しずつ異なるため、ご自身が希望する補償を提供する火災保険を選ぶことが大切です。
マンションで想定されるリスクには、火災・爆発、自然災害(台風・落雷・風水害・雪災・雹災)、地震、漏水、盗難、破損・汚損、損害賠償などがあります。各地域の災害発生リスクは、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」で確認することが可能です。
また、マンションならではのリスクとして対処しておきたいのが、水漏れリスクです。上階からの漏水で被害を受けるリスク、逆に下の階へ被害を与えるリスクは、低層階・高層階でも同じです。
すぐ隣で暮らす方が、加害者あるいは被害者になりうるので、考えられる補償はできるだけつけておくと安心です。
補償の対象をどうするか
火災保険は、建物と家財の両方、建物だけ、家財だけのように、建物の所有者が補償対象を選べます。先述のとおり、建物の所有者が異なる賃貸物件の場合、加入者本人への補償がなされる対象は家財のみです。
建物と家財、それぞれの補償の範囲は以下のとおりです。
補償の範囲 | |
---|---|
建物 | 住居に付属する壁や床、お風呂やキッチン、ドアや窓、設置済みのエアコンなど |
家財 | 家具や家電、衣類など日常生活に関わる動産 |
ただし、家財には、業務に使う動産、動植物、有価証券、プリペイドカードなど対象外の物品もあります。現金や通帳も家財の補償の対象外ではありますが、盗難の場合は一定の範囲内で補償されます。
なお、1個1組あたり30万円を超える貴金属や骨とう品などの高級品は、通常、補償の対象外ですが、特約を付帯することで補償される場合があります。
特約が充実しているか
火災や水災といった基本的な補償のほか、マンションの火災保険にはいくつかおすすめの特約があります。
例えば、火災保険の特約のひとつに「類焼損害補償特約」があります。これは契約している建物から出火し、近隣の住宅に飛び火したことで損傷した場合、近隣の方が加入している火災保険からの補償が十分でない場合などに保険金が支払われます。
日本では失火責任法(失火の責任に関する法律)により、故意や重過失でない限り法律上の損害賠償責任は負いません。しかし、法律上の賠償責任がなくても、被害に遭われた方やご自身の今後のために特約のセットを検討すると良いでしょう。
保険料をいかに安く抑えられるか
マンションの火災保険では、隣人との距離の近さから、いざというときのために手厚い補償をつけておきたいと考える方が多いかもしれません。そのため、希望する補償を減らすことなく、保険料をできるだけ抑える方法を選ぶこともポイントとなります。
保険料を抑える方法はいくつかあります。
例えば、火災保険の保険期間を長くする複数年契約にすれば、1年契約より割引になることがほとんどです。一括払いにすれば、さらに節約につながります。また、免責金額(自己負担額)を増やしても、保険料は下がります。
また最近は、代理店をはさまないネットから契約する「ダイレクト型」の火災保険も増えています。契約手続きにかかるコストを抑えたネット保険なら、同じ補償内容でもより手頃な保険料に抑えられる可能性があります。
隣人との距離が近いマンションにこそ火災保険への加入がおすすめ
火災保険は、火災だけではなく、さまざまな自然災害や不測かつ突発的な事故への備えとなります。マンションの場合は隣人との距離が近く、十分な補償がなければ、いざというときの心理的負担も心配です。また、地震保険の加入の前提ともなるため、火災保険は加入しておきましょう。
ネット保険を使用するなど、保険料を抑えながら、必要な補償を選ぶのがおすすめです。
監修者プロフィール
新井 智美
コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)をおこなうと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績は2,000本を超える。 資格情報:CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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