最終更新日:2022/11/30

火災保険の値段の相場とは?どのような仕組みで保険料が決まるのか徹底解説!

「令和3年度版 消防白書」によると2020年の出火件数は3万4,691件であり、日々、どこかで火災が発生しています(※)。

火の取扱いには十分に気をつけて生活していても、さまざまな原因で火事が起こり、家が損害を受ける可能性があるので、万が一に備えて火災保険に加入しておくべきです。ただし、「保険料がいくら程度になるのか」と不安を抱いている方がいるかもしれません。

そこで本記事では、火災保険への加入を検討している方に向けて、保険料の相場や決まり方について徹底解説します。

出典:総務省消防庁「令和3年版 消防白書」

「火災保険」とは?

火災保険とは、一戸建て住宅やマンションなどの建物や、建物内の家財(動産)が火災などで損害を受けた際に補償を受けられる保険です。

火災保険は、建物および家財などの保険の対象ごとに加入する仕組みになっています。

例えば、建物だけに保険をかけている状態で家が火事で燃えた場合、「建物が受けた損害部分」しか保険金を受け取れません。「家財の損害に対する補償」も必要な場合は、火災保険の契約時に家財も保険の対象にしましょう。

ちなみに、「火災保険」という名称ではありますが、火災保険で補償される事故は「火災」だけではありません。

例えば、雷が落ちて電化製品が壊れたなどの「落雷」による損害、台風で瓦が飛んでしまった場合などの「風災」による損害や、洪水で床上浸水した場合などの「水害」などの自然災害による損害や、排水管が詰まり床が水浸しになった場合の「水濡れ」、窓を割られて空き巣に入られたときの「盗難」などの日常生活における事故も補償されます。

補償される事故の種類は商品によって異なりますが、「じぶんでえらべる火災保険」は、「火災、落雷、破裂・爆発」「風災、雹(ひょう)災、雪災」「水濡れ、物体の落下・飛来、騒擾(じょう)等」「盗難」「水災」などの補償を、「保険の対象」ごとに、お客さまに自由にえらんでいただける組立型の火災保険です。

火災保険の値段(保険料)の相場

多くの方が、「火災保険の保険料の相場って、どのくらいなのだろうか」という疑問をお持ちでしょう。

しかしながら、火災保険の保険料は構造区分や所在地などの建物の情報や、保険金額(評価額=再調達価額)、補償内容によって変わるため、見積りシミュレーションをしてみないと、いくら程度と具体的にお答えすることはできません。

ただし、一戸建ての場合とマンションの場合のおおまかな傾向を示すことは可能です。以下、それぞれの場合について詳しく説明します。

「一戸建て」の火災保険の値段(保険料)の傾向

同じ所在地、面積の一戸建てとマンションを比較した場合、一般的にはマンションよりも一戸建てのほうが火災保険の保険料が高い傾向にあります。これは、一戸建ては木造建築が多く、火災などで燃えやすかったり、損壊しやすかったりするリスクが大きいことが原因です。

ただし、これはあくまでも一般的な傾向であり、一戸建てであっても木造建築ではなくコンクリートなどで造られている場合は耐火性に優れているケースもあります。コンクリート造の一戸建ての場合は木造よりも保険料が安くなります。ただし、「コンクリート造なら、マンションでも一戸建てでも完全に同じ」というわけではありません。後述するように、一般的にマンションの場合は「M構造」に分類されるのに対し、コンクリート造の一戸建ては「T構造」に分類されます。

「マンション」の火災保険の値段(保険料)の傾向

マンションは、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造などの耐火性の高い物件が多いため、火が出ると燃え広がるのが早い木造建築が多い一戸建てよりも火災による損壊のリスクが小さい傾向にあります。

そのため、マンションに対する火災保険の保険料は、一戸建てに比べて安い傾向が見受けられます。ただし、マンションよりも低層のアパートは木造建築である場合も多く、出火のリスクが大きいため、その場合は保険料が高くなることを認識しておきましょう。

火災保険の値段(保険料)の決まり方

火災保険の値段(保険料)の決まり方

火災保険の保険料は、建物の情報や保険金額、補償内容といった要素に基づいて決定されます。以下、各要素について詳しく説明します。

建物の情報

建物の情報とは、構造区分(構造級別)や築年数、所在地を指します。「構造級別」は、柱や梁(はり)、外壁、床、屋根などに使われている材料や性能に基づいて定められています。

構造級別は、M構造、T構造、H構造の3種類に分けられます。下表に、構造級別と建物の種類、火災による損害を被るリスク、保険料の対応関係をまとめました。

構造級別 建物の種類 火災による損害を被るリスク 保険料
M構造 コンクリート造のマンションなど 小さい 安い
T構造 コンクリート造の一戸建て、鉄骨造の一戸建て、「省令準耐火建物」に該当する2×4(ツーバイフォー)工法(枠組壁工法)の住宅など

H構造 M構造・T構造以外の建物(木造アパート、木造の一戸建てなど) 大きい 高い
左右にスワイプすることで、表が見られます

そのほか、築年数や所在地によってもリスクが異なるため、保険料は変わります。

例えば、過去の自然災害の発生状況から洪水や津波、崖崩れなどのリスクが大きいと判断されるケースや河川が近い地域などでは、リスクの小さいエリアに比べて保険料が高くなる可能性があります。

各地域の災害発生リスクは、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」で確認することが可能です。

特に、住所に水にちなんだ漢字が使用されている場合は確認しておくことをおすすめします。これは、しばしば地名が自然環境(「川」など)にちなんで命名されているケース(「自然地名」)があるからです。

また、過去に発生した災害(土砂災害、洪水氾濫など)にちなんで命名されているケースもあり、「災害地名」と呼ばれます。そのような地名の地域では自然災害に特に注意したほうが良いでしょう。

保険金額

火災保険の保険料は、火災などで損害を被った際に支払われる保険金額をいくらに設定するかによっても変動します。保険金額が大きくなるほど、保険料が高くなります。

なお、建物に関しては、保険金額を「再調達価額(新価)」と同じ金額に設定するのが基本です。建物の再調達価額を算出する主な方法としては、下表に示す「新築費単価法」と「年次別指数法」の2種類があります。

新築費単価法

建物の所在地や構造等から、1平方メートルあたりの標準的な建築費(新築費単価)を求め、これに建物の延床面積(マンションの場合は専有面積)を乗じて、評価額(再調達価額)を算出する方法

年次別指数法

建物の新築時の建築費に、新築年に応じた指数(建築費倍率)を乗じることで、物価の変動などを反映させて評価額(再調達価額)を算出する方法(新築時の実際の建築費から算出するため、より実態に即した評価が可能)

新築費単価法で評価額を算出する際に、建物の「延床面積」(または「専有面積」)が使用されます。延床面積の広い建物ほど災害時の被害も大きくなる(リスクが大きくなる)ため、保険料が高くなります。

家財の保険金額は、建物と違って再調達価額と同じ金額(100%の復旧を行える金額)に設定しなければならないというわけではありません。生活するうえで必要な家財を新しく買い換え可能な保険金額に設定し、貴金属などの贅沢品に対する補償(特約)はセットしないことで保険料を抑えることも選択肢の1つとしてご検討ください。

「じぶんでえらべる火災保険」の家財の補償は、ニーズに合わせて、100万円から10万円単位で自由に設定可能(再調達価額が限度)です。評価額(再調達価額)の目安となる年齢・家族構成ごとの「家財の簡易評価額・保険料シミュレーション」も提供していますのでご参考ください。

補償内容

火災保険には代理店を経由して契約する「代理店型」と、ネットから契約する「ダイレクト型」があります。代理店型の火災保険はパッケージ型が多いですが、ダイレクト型の火災保険の多くは、基本補償の中に「火災」「落雷」「破裂・爆発」などの補償が含まれており、それら以外にもさまざまな補償を付けるかどうか選択できます。選べる補償の内容は、「水災」「水濡れ」「盗難」「破損・汚損」「風災、雹(ひょう)災、雪災」などが一般的です。

数多くの補償(特約)をセットしてカバーされる範囲・内容が多いほど、保険料も高くなります。お住いの環境、保険料の負担と安心感のバランスを考えて、慎重に取捨選択を行いましょう。例えばマンションの上層階の場合は水災、隣の家との距離が充分に確保できている場合は類焼損害などの補償は外しても良い場合もあります。

ほかの保険に加入している場合は、補償の重複にも注意しましょう。例えば、「個人賠償責任保険(特約)」は、自動車保険や傷害保険などでセットしているケースがあるので、必ずチェックしてください。

火災保険の値段(保険料)に関するQ&A

以下、火災保険の保険料(値段)に関する良くある質問、および、それに対する回答を示します。

「新築」と「中古」で火災保険の値段(保険料)は変わる?

近年は、建物の保険価額を「時価」ではなく「新価(再調達価額)」で設定するのが一般的です。新築でも中古でも建て直しに必要な金額は同じなので、保険料も基本的には変わりません。

ただし、保険会社によっては、新築の場合に保険料を割り引く「新築割引」や、築年数が10年未満の場合に割り引く「築浅割引」などの各種割引制度を用意している場合があります。

「持ち家」と「賃貸」で火災保険の値段(保険料)は変わる?

持ち家の場合は、「建物」と「家財」の両方に対して火災保険をかける必要があります。一方の賃貸物件の場合は、家主や管理会社が「建物」に対する火災保険に加入します。

賃借人が加入する火災保険は「家財」と「家主への損害賠償」が主な補償になるため、持ち家に比べて保険料が安い傾向が見受けられます。

値段(保険料)を抑えるため、地震保険をセットしなくても良い?

火災保険の契約者は、「地震保険」にも加入することが可能です。ただし、地震保険をセットするとその分保険料は増額になるため、セットしなくても良いのではと考える方もいるかもしれません。

しかし、日本は地震大国であり、過去に阪神・淡路大震災や東日本大震災などの巨大地震が発生しているため、万が一大地震が発生した場合に備えて地震保険もセットするほうが安心です。なお、地震保険の保険料は保険会社がどこでも同一です。都道府県や建物の耐震性などで決まります。

火災保険の値段(保険料)は、さまざまな要素に基づいて決まる

火災保険の保険料は、建物の情報や保険金額、補償内容といった要素に基づいて決まります。

一般的に、木造建築が多い一戸建てのほうがリスクは大きく、コンクリート造が多いマンションよりも火災保険の保険料が高い傾向が見受けられます。

ただし、あくまでも一般的な傾向に過ぎず、一戸建てであっても災害リスクの小さい住宅が存在するなどの例外が存在することにご注意ください。「戸建てだから木造だろう」などと決めてかからず、必ず建物構造がわかる資料を確認しましょう。

保険料が知りたい場合は、保険会社に見積りを出してもらいましょう。なお、保険会社によっては、公式サイト上で「シミュレーション機能」を提供しているケースがあります。簡単に保険料を試算できるのでご活用ください。

監修者プロフィール


竹下 昌成

竹下 昌成

竹下FP事務所代表、㈱メディエス代表取締役、TAC専任講師。立教大学卒業後、池田泉州銀行、日本GE、タマホームなどを経て現職。タマホームFPとして600件超のFP相談実績あり。サラリーマン投資家として不動産賃貸業をスタート。現在は大家業をメインに講師や執筆活動をしています。

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