携帯電話を操作したり、カーナビを注視しながら運転すること等を「ながら運転」といいます。運転中に携帯電話等を使用していた場合、死亡事故率が約1.9倍になるというデータが出ており、ながら運転は非常に危険な行為です。
当記事では、ながら運転の定義から交通事故の発生状況、厳罰化された罰則まで詳しく解説します。
- 目次
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1.ながら運転の定義とは?
ながら運転とは、運転中にカーナビの画面を注視したり、スマートフォンの操作をしたりすること。ながら運転は、以下の通り、道路交通法第七十一条五の五項で明確に禁止されている行為です。
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第四号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第一項第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第四号において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。(道路交通法第七十一条五の五項より)
ながら運転に該当する状況
ながら運転に該当する状況は、運転中に「携帯電話(スマートフォン)を持って通話する」「携帯電話(スマートフォン)の画面を注視する」「カーナビの画面を注視する」などです。
そのほかにも、運転中にスマートフォンでゲームをすることやタブレットの画面を注視することも、ながら運転に該当するといえるでしょう。
- 出典
- 政府広報オンライン
2.運転中の食事やハンズフリー通話等はながら運転に該当する?
ながら運転の定義はわかったものの、どこからどこまでが禁止行為なのかつかみきれていない...という方もいるでしょう。運転中の食事やハンズフリー通話、信号待ち中のスマートフォン操作について、ながら運転に該当するのかを解説します。
運転中の食事
時間がない時など、運転中におにぎりやパンを食べたことがある方もいらっしゃるかもしれません。上記で紹介した道路交通法第七十一条五の五項では、食事に関する記述はありませんが、食事をしながらの運転も違反になる可能性があります。なぜなら道路交通法の第七十条では、車両の運転者に対し安全運転の義務が課せられているからです。
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。(道路交通法第七十条より)
食事をしながらの運転はハンドル操作を片手だけに頼ることになり、両手でハンドル操作をしている場合と比べて精度が落ちてしまいます。また、食べ物に意識が向いてしまうことも、運転操作を誤る原因の一つになります。危険を伴いますので、車を停止してから食事をするようにしましょう。
ハンズフリー通話
スマートフォンを手で持たずに通話を行う「ハンズフリー通話」。ハンズフリー通話は、ながら運転に該当するのでしょうか。
道路交通法第七十一条五の五項では、スマートフォンでの通話に関して「その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る」という記述があります。つまり、手で持たずに通話をできるのであれば、違反行為にはあたらないといえます。
しかし、ハンズフリー通話は運転中の注意力を下げ、事故を起こす原因になることから、イギリスやオーストラリア、アメリカの一部の州では、日本よりも厳しく禁止されています。海外では、ながら運転がそれほど危険な行為という認識なのです。
また、運転中にイヤホンを使用することは条例違反になる都道府県もあります。例えば東京都の場合、東京都道路交通規則において、「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと」と定めています。このように、都道府県によっては法規違反になる可能性があるため、ハンズフリー通話をしながらの運転は十分に気をつけるようにしましょう。
信号待ち中のスマホ操作
次に、信号を待っている時のスマートフォン操作について見ていきます。道路交通法第七十一条五の五項では、「当該自動車等が停止しているときを除き」という記述があることから、車が停止している時はスマートフォンの操作やカーナビの注視をしても良いといえます。
ただし、スマートフォンやカーナビの画面に気をとられて青信号に気づかず、発進が遅れることも十分に考えられます。そのため、信号待ち中であってもスマートフォンの操作は控える方が安全です。
3.ながら運転による交通事故の発生状況
ながらスマホ等による交通事故は後を絶たない
近年、スマートフォンやカーナビの画面を注視することによる交通事故件数は増加傾向にありました。平成23年は1,549件でしたが、令和元年は2,645件で、約1.7倍も増加。こうした状況を鑑みて、令和元年12月に改正道路交通法が施行され、携帯電話使用等の罰則が引き上げられました。これにより、令和2年の件数は1,287件に減少。しかし依然として、スマートフォン操作やカーナビ注視などによる交通事故は発生しています。
なお、ながら運転の中で交通事故件数が最も多いのは「カーナビ等の注視」。次いで「スマートフォン等の画像使用目的」、「スマートフォン等の通話使用目的」です。
※令和3年のデータ
- 出典
- 政府広報オンライン
一瞬の操作が命取りに
「ちらっと画面を見るくらいなら」「メッセージを確認するくらいなら大丈夫だろう」といった油断が、重大な事故につながってしまうこともあります。
運転環境にもよりますが、スマートフォンの画像を見ていた運転者が危険を感じる時間は、2秒以上といわれています。この2秒の間に、時速40kmで走っていた車は約22m 、時速60kmであれば約33mも進んでしまうのです。
- 出典
- 政府広報オンライン
スマートフォンやカーナビを注視している数秒の間に、車は思った以上に進みます。その数秒で、交通事故を起こしてしまうこともあるのです。
また、携帯電話等を使用していた場合の死亡率(死傷事故に占める死亡事故の割合)は、していない場合に比べ、死亡事故率が約1.9倍という結果も出ています。
※令和3年のデータ
ながら運転は非常に危険な行為なので、絶対にやめるようにしましょう。
4.ながら運転をした時の罰則は?
携帯電話を保持し、通話/画像注視した場合
スマートフォン(携帯電話)を保持し、通話したり画像を注視した場合、罰則として「6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金」が科されます。また、反則金は18,000円(普通車の場合)、違反点数は3点が加算されます。
携帯電話の使用により、交通の危険を生じさせた場合
スマートフォン(携帯電話)の使用により、交通の危険を生じさせた場合、罰則は「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。非反則行為となり、反則金は適用されず罰則が適用となります。違反点数は6点ですので、一発で免停処分となります。
5.自動運転により、ながら運転の取り締まり基準が緩和される?
テクノロジーの進化と共に、開発が進む自動運転。自動運転とは、運転者ではなくシステムが運転操作を行い、車を走らせることです。自動運転には、運転操作や判断の度合いによってレベルが設けられており、現時点ではレベル3までの車が商用化されています。
対応主体 | レベル | 技術レベル |
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ドライバー | レベル0 | 自動運転化なし 運転者が運転操作を全て行う |
レベル1 | 運転支援 システムが前後または左右の車両制御を行う |
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レベル2 | 部分運転自動化 特定の条件下でシステムが前後・左右の両方の車両制御を行う |
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システム | レベル3 | 条件付運転自動化 限定された条件下において、システムが全ての運転操作を実施する(ただし運転自動化システム作動中であっても、システムからの要請があればドライバーはいつでも運転に戻れる状態である必要がある) |
レベル4 | 高度運転自動化 限定された条件下において、システムが全ての運転操作を実施する・ドライバーが運転席を離れることができる |
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レベル5 | 完全運転自動化 システムがすべての運転操作を実施する |
レベル4の技術レベルは、「限定された条件下において、システムが全ての運転操作を実施し、ドライバーが運転席を離れることができる」です。もし今後、自動運転レベル4の自家用車が普及し、法律が改正されれば、限定された条件下においては、運転中にスマートフォンの操作、テレビの視聴、パソコン操作などのながら運転が認められる可能性もあるでしょう。
6.監修コメント
普段、私が自動運転レベル0の愛車に乗っているからでしょう。最新の自動運転機能を搭載した車を運転すると、ハンドル操作や加減速をする必要がないことに不安を覚え、いつもより疲れを感じてしまいます。自動運転機能を快適に思えるようになるまでには、まだまだ慣れが必要なのでしょう。
そう思うと同時に、自動運転機能に慣れると、周囲に注意を払う意識が希薄になってしまう気がしています。現在の道路交通法で禁止されていることでもあるので、たとえ高度な自動運転機能を搭載した車に乗っていたとしても、ながら運転は絶対にやめましょう。