火災保険ガイド
火災保険の個人賠償責任特約は自転車保険の代わりになる?補償内容や違いについて解説
最終更新日:2024/7/17
通勤、通学、買物など、便利な交通手段として自転車を使っている方も多いと思います。
気軽で便利な反面、どんなに注意をしていても他人にケガを負わせたり、財物を壊したりするなどの大きなリスクを負う可能性も否めません。そのため「被害者の救済」という観点から、「自転車保険の加入」を義務化する自治体が増えています。本記事では、日常的に自転車に乗る方に火災保険の特約「個人賠償責任特約」の補償内容や「自転車保険」との違いについて解説します。
自転車保険とは?
自転車保険とは、自転車を運転していて事故にあった場合に、加入者ご自身のケガなどの損害に対する補償や、事故の相手方への損害賠償に備える補償を受けられる保険です。
加入者ご自身のケガなどの損害に対する補償範囲は、被保険者本人のみ、被保険者本人と配偶者、その他親族までなど、保険商品やプランによって異なります。一方、事故の相手方への損害賠償に備える補償の範囲は、被保険者本人とその家族まで補償されます。
自転車事故によって他人を死傷させた結果、加害者が高額な賠償を命じられる判決も出ています。例えば、「少年が自転車で坂を下っている際に、前方不注意で女性に激突し、被害者が寝たきりの状態になった事故」について、2013年に神戸地方裁判所は保護者に対して約9,500万円の賠償を命じました。
これほどの高額な金額をご自身の預貯金や給料などから捻出するのは、多くの人にとって困難でしょう。ご自身や家族のため、そして、相手方のためにも自転車保険への加入をおすすめします。
2022年4月1日現在、自転車事故における被害者救済の観点から、自治体の「条例」によって自転車保険への加入を「義務化」する動きが広がっています。2022年4月1日時点(※)では、30都府県において自転車保険への加入を義務付ける条例が、9道県において自転車保険の加入を努力義務とする条例が制定されています。
一方で、自転車保険への加入が「任意」または「義務」であるのかは地域によって異なるため、義務化されていない自治体にお住いの方は、「自分の住んでいる市町村では自転車保険への加入が義務化されていないから関係ない」とお考えになるかもしれません。
しかし、通勤や通学、買物などの際に義務化地域を自転車で走行するだけであっても、自転車保険への加入が求められます。義務化されている自治体に居住していない方も加入しなければならない可能性があるので、近隣の自治体の条例もチェックしましょう。
義務化地域で加入を求められる自転車保険の内容は、主に「加害事故を起こした際に、被害者側に補償が行われる保険」とされています。詳細については、各自治体の条例をご確認ください。
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出典:国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」
火災保険には自転車事故での相手方への損害賠償をカバーできる特約もある
火災保険は、「自宅が火事になった際の損害を補償してもらうために加入する保険」というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。
確かに、火災保険の主な目的は「火災の損害を補償すること」です。ただし、多くの保険会社では火災に対する補償だけでなく、「風災」や「雹(ひょう)災」、「雪災」、「水災」などの損害を補償する特約が用意されています。
そして、先述のとおり火災保険には自転車事故による相手方への損害賠償の補償を受けられる特約もあります。特約は、「個人賠償責任特約」や「個人賠償責任補償特約」と呼ばれることが多いですが、なかには「日常生活賠償特約」と呼ぶ保険会社もあります。
なお、これらの特約は自転車事故専用ではなく、日常生活において誤って他人にケガをさせたり他人のモノを壊したりして「法律上の損害賠償責任」を負った場合について、幅広くカバーします。
火災保険の「個人賠償責任特約」とは?
火災保険の個人賠償責任特約とは、日常生活の事故でご自身が加害者となり、損害賠償責任を負った際に補償を受けられる特約です。
例えば、配管からの水漏れで、階下の住人に損害を与えてしまった場合などの住宅の所有・使用・管理に起因する事故のほか、日常生活において他人にケガをさせたり他人の財物に損害を与えたりした場合にも適用されます。
なお、本人だけではなく、その家族も補償を受けることが可能です。SOMPOダイレクトの「じぶんでえらべる火災保険」の場合、補償を受けられる方の範囲は以下のとおりです。
本人(「契約者」または「火災保険の被保険者(保険の対象となる建物または保険の対象となる家財の「所有者」として登録した方)」のいずれか1名)
本人の配偶者
本人または配偶者の同居親族
本人または配偶者の別居の未婚の子
本人が未成年または責任無能力者である場合は、本人の親権者、法定の監督義務者、監督義務者に代わって本人を監督する方(本人の親族に限定)(「本人に関する事故」に限定)
上記に該当する方が責任無能力者である場合は、親権者、法定の監督義務者、監督義務者に代わって責任無能力者を監督する方(責任無能力者の親族に限定)(「責任無能力者に関する事故」に限定)
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上記の内容は、2024年10月1日以降保険始期の個人賠償責任特約を付帯されたご契約に適用されます。
また、個人賠償責任特約によって補償を受けられる事例をいくつか紹介します。
契約者本人が自転車で走行している際に歩行者にぶつかり、ケガをさせたケース(ケガをした被害者の治療費や慰謝料などを補償)
子どもがおもちゃで遊んでいて他人に当たり、ケガをさせたケース(ケガをした被害者の治療費や慰謝料などを補償)
子どもが野球をしていて、誤って他人の家のガラスを割ったケース(壊れたガラスの修理費用などを補償)
配偶者がパーティーで飲み物をこぼし、他人の衣服を汚したケース(汚れた衣服のクリーニング代などを補償)
飼い犬が散歩中に他人を噛んでケガをさせたケース(ケガをした被害者の治療費や慰謝料などを補償)
自転車事故だけではなく、日常生活におけるさまざまなトラブルを広くカバーしているので、万が一に備えて個人賠償責任特約をセットすると安心です。
個人賠償責任特約と自転車保険の違い
個人賠償責任特約と自転車保険は、誰が損害を被った場合に補償を受けられるのかという点に違いがあります。
個人賠償責任特約では、自転車で走行中に事故を起こしてしまい、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償を受けられます。
しかし、加害者側のケガなどの損害については、法律上の損害賠償責任を負うわけではないので、補償を受けられません。
それに対し、自転車保険では、事故の相手方への損害賠償について補償されるだけでなく、加害者側のケガなどの損害(法律上の損害賠償責任を負わないもの)も補償されます。なお、加害者側の補償範囲は、被保険者本人のみ、被保険者本人と配偶者、被保険者本人と配偶者、その他親族までなど、保険商品やプランによって異なります。
基本的に、自治体の条例においては自転車で走行する方が事故を起こして加害者になった際に、事故の相手方への損害賠償をカバーする内容の保険・特約に加入していれば良いとされています。そのため、「自転車保険への加入」でも「火災保険に個人賠償責任特約をセットしておくこと」でも要件を満たします。
自転車保険、または個人賠償責任特約のどちらにするかは、自転車走行中のケガをどのようにカバーしたいか、そしてご自身が他で契約中の保険の補償内容でカバーできるのかなど、現在の状況も踏まえたうえで検討すると良いでしょう。
火災保険に加入すれば自転車の「盗難」も補償される
先述したように、個人賠償責任特約をセットすれば、自転車事故の加害者になった(「自転車に乗っている際に、歩行者に衝突してケガをさせた」「ほかの自転車にぶつかって、相手にケガをさせた」「停車している自動車にぶつかって、破損させた」など、法律上の損害賠償責任を負った)際に、被害者側に対する損害賠償責任に対する補償を受けることができます。
さらに、火災保険の場合、保険会社によっては自転車の「盗難」の補償を受けられる場合があります。盗難に関しては基本補償として自動的に含まれている場合とご自身でセットする必要がある場合もありますので注意しましょう。
SOMPOダイレクトの「じぶんでえらべる火災保険」では、「盗難」に関する特約(補償)をセットしておけば、契約時に設定した建物(玄関や車庫、屋根付きの駐輪場など)に保管している状態で自転車を盗難された場合、補償を受けられます。ただし、契約時に設定した建物以外に保管中の場合や、屋外に持ち出されている場合の盗難被害については補償を受けられないため注意しましょう。
自転車に乗るなら火災保険に個人賠償責任特約をセットしましょう
どんなに注意していても、自転車で走行している際に事故で他人にケガを負わせてしまう場合や、他人の財物に損害を与えてしまう場合があります。万が一に備えて、火災保険の個人賠償責任特約をセットしておきましょう。
ちなみに、個人賠償責任特約は、火災保険だけではなく、ほかの保険(自動車保険など)にセットすることも可能です。また、クレジットカードにあらかじめセットされている保険がカバーしている場合があり、補償が重複している可能性もあるため、契約状況や補償内容を確認しましょう。
火災保険に個人賠償責任特約をセットする前に、ほかの保険の特約や、クレジットカードに付帯している保険の内容をご確認ください。
自転車事故によって他人を死傷させた結果、加害者が高額な賠償を命じられる判決も過去に出ています。万が一に備えて個人賠償責任特約の加入を検討しましょう。
監修者プロフィール
新井 智美
コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)をおこなうと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績は2,000本を超える。 資格情報:CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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