軽自動車は普通車よりも維持費が安いとされていますが、実際にどの程度の差があるのでしょうか。本記事では、自家用軽自動車の維持費用の内訳や普通車との維持費用の比較、さらに維持費を節約する方法を詳しく解説します。
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1. 軽自動車の維持費は安い傾向にある
車の維持には、税金やメンテナンス費用など様々な費用がかかります。車の維持費用の内訳は、軽自動車も普通車も同じです。しかし、総合的に見ると軽自動車の維持費は普通車よりも安くなる傾向にあります。
その理由の一つは、税金です。軽自動車は普通車に比べて、自動車税や自動車重量税といった税金が安く、その差は数万円になります。
また、軽自動車は普通車よりもサイズが小さく軽いため、交換部品の費用や、車検時の整備費用も抑えられることが多いです。このほか、自動車保険料(任意保険)に関しても、補償内容によりますが、軽自動車の方が普通車よりも保険料が安く設定されている場合が多いのです。
次項から、軽自動車の維持費用の詳細を詳しく紹介します。
2. 軽自動車の維持費用の内訳
税金
① 軽自動車税(種別割)
軽自動車税(種別割)とは、毎年4月1日時点での車の所有者に課せられる税金です。自家用の場合、軽自動車税(種別割)の年間税額は一律10,800円で、2015年3月以前に新規検査された車は一律7,200円となります。ガソリン車の場合、新規検査から13年経つと、税額が年間12,900円に上がります。
一方、自家用乗用車の自動車税(種別割)の税額は、一律ではなく、排気量が大きくなるほど高くなります。たとえば、排気量が少なめのコンパクトカー(2019年10月以降に新規登録)でも、自動車税額は年間30,500円。軽自動車との税額の差は19,700円になります。なお、自家用乗用車のガソリン車の場合も、新規登録から13年経つと、税額が約15%アップします。
② 自動車重量税
自動車重量税とは、主に車の重量に応じて課せられる税金です。軽自動車税(種別割)のように毎年納めるのではなく、車検時(初回は3年、それ以降は2年ごと)に次の車検までの期間分の税金をまとめて納めます。自家用軽自動車の自動車重量税額は、2年分で6,600円です。新規検査から13年経つと8,200円に、18年経つと8,800円に上がります。
自家用乗用車の自動車重量税は、車の重量0.5tあたり4,100円かかります。たとえば、車両重量1.1tの車の場合、自動車重量税は2年分で24,600円です。軽自動車の自動車重量税は6,600円ですから、18,000円も差があります。
なお、自家用乗用車の自動車重量税も、新規登録から13年経過すると、0.5tあたり5,700円、18年以降は0.5tあたり6,300円へと重課されます。
保険料(自賠責保険・自動車保険)
車の保険には、強制加入の自賠責保険と任意加入の自動車保険の2つがあります。税額や支払うタイミングが異なるので、それぞれについて紹介します。
① 自賠責保険
自賠責保険は、全ての車の所有者に加入義務のある保険です。自動車重量税と同じく、車検時(初回は3年、それ以降は2年ごと)に次の車検までの期間分の費用をまとめて支払います。たとえば、軽自動車の24ヶ月分の自賠責保険料は17,540円で、普通車の24ヶ月分の自賠責保険料は17,650円です。自賠責保険料に関しては、軽自動車でも普通自動車でも、そこまで大きな差はありません。
※上記の自賠責保険料は、2024年度適用のもの。また、離島以外の地域(沖縄県を除く)の場合。
② 自動車保険
自動車保険は、任意加入ではありますが、運転者自身の怪我や車両の損害など、自賠責保険でカバーできない範囲を補償できるため、ほとんどのドライバーが加入しています。自動車保険は、年単位での契約が多く、支払方法は月払や年払などから選べます。
自動車保険料は、年齢や等級、加入条件などによって異なりますが、損害保険料率算出機構「2023年度 自動車保険の概況」の調査をもとに算出すると、軽自動車の年間保険料の平均は約50,000円、普通車の自動車保険料は約72,000円となりました。
※出典:損害保険料率算出機構「2023年度 自動車保険の概況」
保険料に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。
車検費用
車検とは、車が保安基準を満たしているかを検査するもので、新車購入から3年後、それ以降は2年ごとに受ける必要があります。車検費用の内訳は、主に「車検基本料金」と「法定費用」の2つで、それぞれ以下の費用が含まれます。なお、上記で紹介した自動車重量税と自賠責保険料は、このタイミングでそのほかの費用とともに支払うことになります。
- 車検基本料金...24ヶ月法定点検料金、保安確認検査料、検査代行手数料など
- 法定費用...自動車重量税、自賠責保険料、印紙代など
車検基本料金は車検を依頼する業者によって異なりますが、普通車より軽自動車の方が金額が安く設定されていることが多いです。法定費用に関しても、すでに説明した通り、自動車重量税、自賠責保険料は、軽自動車の方が安いです。
印紙代に関しては、軽自動車と普通車であまり差はありません。検査の依頼先が指定工場か認証工場か、オンライン申請かなどによって、1,600〜2,300円かかります。
燃料代
車を走らせる上では、ガソリンや電気などの燃料代がかかってきます。軽自動車はサイズが小さいため、燃費が良いと思われがちですが、実際には普通車よりも燃費が悪い軽自動車もあります。そのため、軽自動車の方が燃料代を節約できるとは一概にいえません。
駐車場代
駐車場代は自宅にガレージなどがあればかかりませんが、ない場合には毎月支払う必要があります。駐車場代は、軽自動車だから安くなるということはほぼなく、1スペースにつき1車両分の駐車場代がかかります。駐車場代は、住んでいる地域や立地などによって変わります。
消耗品費用
車を安全に走行するには、日頃のメンテナンスが欠かせません。オイルやタイヤなどの部品および交換費用、車が故障した時の修理代などもかかります。車の走行距離や運転状況によって、部品交換の頻度は異なりますが、一般的に部品代に関しては、軽自動車の方が安い傾向にあります。
その他費用
上記の他にも、高速道路など有料道路を通行する際の料金や、ローンで車を購入した場合にはローン費用もかかります。
3.軽自動車の年間/月額維持費を普通車と比較!
では、実際に軽自動車の維持費が年間と月額でいくらになるのか、また、普通車の維持費用も一緒に見ていきましょう。ただし、維持費用は車の燃費や使用状況などによって変わるほか、以下にはメンテナンス費用などは含んでいませんので、あくまで参考の一つとしてください。
軽自動車 | 普通車(車両重量1.0〜1.5t) | |
---|---|---|
自動車税(種別割) | 10,800円 | 30,600円 |
自動車重量税 | 3,300円 | 12,300円 |
自賠責保険料 | 8,770円 | 8,825円 |
自動車保険料 | 50,000円 | 72,000円 |
車検費用(車検基本料金+印紙代) | 21,000円 | 24,000円 |
燃料代 | 87,500円 | 116,667円 |
駐車場代 | 120,000円 | 120,000円 |
年間 | 301,370円 | 384,392円 |
月額 | 約25,114円 | 約32,032円 |
※自動車税(種別割)・自動車重量税...エコカー以外・新車登録から13年未満の車の場合。
※自賠責保険料...軽自動車17,540円(24ヶ月分)、普通車17,650円(24ヶ月分)を2で割ったもの。
※車検費用...軽自動車約42,000円、普通車約48,000円を2で割ったもの。
※燃料代...軽自動車は20km/L、普通車は15km/Lの車を想定し、レギュラーガソリン1L=175円(2025年1月時点での全国平均)、年間走行距離1万kmとして計算。
※駐車場代...月額10,000円として算出。
4. 軽自動車の維持費を節約するには
自動車保険の契約内容を見直す
自動車保険の契約内容によっては、保険料を抑えられる可能性があります。たとえば、支払方法です。一般的に「月払(分割払)」と「年払(一括払)」の2つの支払方法が設けられていますが、年払(一括払)の方は分割手数料がかからないため、総額が安くなります。
また、インターネットから保険会社と直接契約できる「ネット型自動車保険」は、代理店を介して契約する「代理店型自動車保険」よりも、保険料が抑えられる傾向にあります。
場合によっては、運転者の範囲を見直してみるのも有効です。運転者の範囲は、「記名被保険者本人のみ」「記名被保険者と配偶者、別居の未婚の子ども」などと設定されていますが、これを実際に運転する方に合わせて限定することで、保険料を節約できます。
低燃費のエコカーを検討する
環境性能に優れたエコカーには、その環境性能に応じて自動車にかかる税金が軽減・免税される特例措置があります。具体的には、軽自動車税(種別割)が25〜75%減税される「グリーン化特例」、自動車重量税が25〜100%減税される「エコカー減税」です。このほか、自動車の取得時に納税する軽自動車税(環境性能割)が優遇される「環境性能割」もあります。
また、軽自動車税(種別割)と自動車重量税は新規検査から13年・18年経過すると重課されますが、エコカーは重課の対象外です。エコカーは燃費も良いので、日々のガソリン代節約にもつながるといったメリットもあります。
エコカー減税の概要やグリーン化特例との違い、環境性能割については、それぞれ以下の記事で紹介していますので、チェックしてみてください。
※各特例措置の適用期間について、グリーン化特例は2026年3月31日まで、エコカー減税は2026年4月30日まで、環境性能割は2026年3月31日までの予定です
ユーザー車検を検討する
車検費用を節約する方法が、ユーザー車検です。ユーザー車検とは、ディーラーや車検業者に車検を依頼せず、自分で行う車検のことです。車検費用には、「車検基本料金」と「法定料金」の2つが含まれると解説しましたが、ユーザー車検であれば「車検基本料金」を節約することができます。ただし、自分で必要書類の準備をしたり、車検を受けたりしなければなりません。ユーザー車検に不安を感じる方は、車検業者やディーラーに頼った方が安心です。
自分でメンテナンスを行う
ワイパーゴムやエアコンフィルターの交換、ウィンドウォッシャー液の補充など、比較的簡単なメンテナンスは、自分で行うとメンテナンス費用を節約できます。しかし、エンジンオイルやタイヤ交換などは専門的な知識や相応の経験が必要で、やり方を誤ると怪我や事故につながる可能性も。安全のためにも、難しいメンテナンスはプロに依頼することをおすすめします。
安い駐車場を探す
安い駐車場にするのも維持費の節約方法の一つ。たとえば、屋外の駐車場や、砂利の駐車場、機械式やタワー式の駐車場は駐車場代が安く設定されているケースもあります。近隣の駐車場を調べて、比較検討してみるといいでしょう。
5.監修コメント
私は普通車を使用していますが、商業施設などに行くと、軽自動車ユーザーを羨ましく思うことがよくあります。軽自動車専用の駐車スペースがあったり、軽自動車であればスムーズに駐車ができそうに思えたりすることがあるからです。
月極の駐車場でも、広さの問題で軽自動車でなければ契約できないスペースがある場合があります。そういったスペースは他より料金が安く設定されていることも多いので、軽自動車の購入を検討している方はチェックしてみてはいかがでしょうか。