自動車に関する税金は多岐に渡ります。現在は、自動車税種別割(軽自動車税種別割)、自動車重量税、環境性能割(旧自動車取得税)、消費税の4つに分類されています。
一方で、これらに対する免税などの優遇措置を受けられる制度も多く存在します。
なかでも、環境性能の高い自動車を所有した際に受けられる優遇措置を「エコカー減税」と呼び、自動車重量税が排出ガス性能や燃費性能に応じて免税されます。
ここでは、エコカー減税の減税率や対象となる車、終了期限やグリーン化特例との違いなどをわかりやすく解説していきます。
- 目次
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1.エコカー減税とは
エコカー減税とは、排出ガス性能や燃費性能に優れた車を所有した際に受けられる優遇措置です。エコカーに該当するのは国土交通省が定める環境基準を満たす車であり、対象車を購入すれば自動車重量税が環境性能の高さに応じて減税されます。
グリーン化特例との違い
エコカー減税が自動車重量税に関わる税制なのに対して、グリーン化特例は自動車税種別割に関わる税制です。グリーン化特例とは、適用期間内に新車の新規登録などを行った車を対象として、初年度と翌年度の自動車税種別割が環境性能の高さに応じて25%・50%・75%のいずれかの割引率で減税される特例措置です。
一方で、新車新規登録から一定年数がたった自動車に対しては自動車税種別割が重課されます。
環境性能割との違い
環境性能割(旧・自動車取得税)も環境性能が高い車を購入した際に適用される制度ですが、これは50万円以上の車を購入および譲り受けた場合に、自動車の燃費性能等に応じて課税される税金です。税額は「車両取得価格×環境性能割の税率」で計算されます。
新車の場合、価格のおよそ9割にあたる課税標準基準額にオプション装備などの価格を加えたものが車両取得価額となります。環境性能割の税額は、この車両取得価額に環境性能に応じた税率をかけることで求められます。
中古車の場合は新車の場合と異なり、「(課税標準基準額×残価率)×環境性能割の税率」で計算されます。残価率とは中古車の経過年数によって掛け率が下がっていく仕組みで、自家用車においては経過年数1年の場合0.681、1.5年で0.561に、2年で0.464と下がっていき、6年以上を経過したものは一律で0.1となっています。
なお、軽自動車の中古車でもまた残価率が異なり、経過年数1年の場合0.562、1.5年で0.422に、2年で0.316と下がっていき、4年から0.1になります。
2.エコカー減税の期間が延長に
2022年12月に政府から発表された「令和5年度税制改正大綱」により、2023年4月30日に期限を迎える予定だったエコカー減税の期間が段階的に延長されました。
半導体不足による影響で新車購入から納車までに時間を要していることなどを理由に、2023年12月31日までは現行基準がそのまま期間延長として適用されます。その後は、減税対象とする車の燃費基準が段階的に引き上げられ、2026年4月30日までを期限とすることが発表されています。
3.エコカー減税の対象になる車
エコカー減税の対象となる車は、CEV(クリーンエネルギービークル)と呼ばれる電気自動車・プラグインハイブリッド自動車・燃料電池自動車・クリーンディーゼル乗用車や、低公害な天然ガス自動車に加え、ハイブリッド自動車や環境性能に優れた一部のガソリン自動車です。
エコカー減税およびグリーン化特例の対象車は車種の他にグレード毎でも減税率が異なるため、ハイブリッドグレードとガソリンエンジングレードの2つが用意されている車種であれば、より環境性能に優れるハイブリッドグレードの車種のほうが減税率は高くなります。また、中古車でも環境基準を満たす車であれば減税措置が受けられます。
さらに次の通り、2024年1月1日以降に新車登録をする際は、順次対象車に求められる環境性能の基準が厳しくなります。
現行の基準:2023年4月1日~2023年12月31日(2022年5月1日~2023年4月30日の期間に適用される特例措置を据え置き)
対象・要件等 | 特例措置の内容 | |||
---|---|---|---|---|
|
免税 | |||
|
免税 | |||
令和12年度燃費基準 | ||||
60% | 75% | 90% | 120% | |
|
25%軽減 | 50%軽減 | 免税 | 免税 |
適用期間:2024年1月1日~2025年4月30日
対象・要件等 | 特例措置の内容 | |||
---|---|---|---|---|
|
免税 | |||
令和12年度燃費基準 | ||||
70% | 80% | 90% | 120% | |
|
25%軽減 | 50%軽減 | 免税 | 免税 |
|
適用期間:2025年5月1日~2026年4月30日
対象・要件等 | 特例措置の内容 | |||
---|---|---|---|---|
|
免税 | |||
令和12年度燃費基準 | ||||
80% | 90% | 100% | 125% | |
|
25%軽減 | 50%軽減 | 免税 | 免税 |
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※1平成30年排出ガス規制50%低減
※2平成30年排出ガス規制適合
※表は国土交通省「令和5年度税制改正結果概要(車体課税関係)」を元に作成(2023年3月現在)
4.自動車重量税の課税の仕組み
エコカー減税による減税額を把握するためには、減税対象となる車と各種税金の基本額を知っておく必要があります。自動車重量税は新車登録時と、継続車検時に支払うように定められています。それぞれについて、区分ごとに説明します。
自動車重量税の税額
自動車重量税は車の重量にかかる税金であり、新規登録の際や車検の際に車の区分や重量、経過年数に応じて課税されます。基準となる税額は車両重量が0.5t増えるごとに上がります。自動車重量税の基準額から環境性能に応じた減税率を割り引いた金額が実際に収める税額です。ただし、軽自動車の場合、重量税の基準税額は車両重量にかかわらず一律です。
2021年5月1日からの自動車重量税(乗用車、3年自家用、新車新規登録等時)
車両重量 | 3年自家用(新車新規登録等時) | |||
---|---|---|---|---|
エコカー | エコカー (本則税率から軽減) |
エコカー外 | ||
50%減 | 25%減 | 軽減なし | ||
0.5t以下 | 免税 | 3,700円 | 5,600円 | 12,300円 |
~1t | 免税 | 7,500円 | 11,200円 | 24,600円 |
~1.5t | 免税 | 11,200円 | 16,800円 | 36,900円 |
~2t | 免税 | 15,000円 | 22,500円 | 49,200円 |
~2.5t | 免税 | 18,700円 | 28,100円 | 61,500円 |
~3t | 免税 | 22,500円 | 33,700円 | 73,800円 |
2021年5月1日からの自動車重量税(乗用車、2年自家用、新車新規登録等時)
車両重量 | 2年自家用(新車新規登録等時) | |||
---|---|---|---|---|
エコカー | エコカー (本則税率から軽減) |
エコカー外 | ||
50%減 | 25%減 | 軽減なし | ||
0.5t以下 | 免税 | 2,500円 | 3,700円 | 8,200円 |
~1t | 免税 | 5,000円 | 7,500円 | 16,400円 |
~1.5t | 免税 | 7,500円 | 11,200円 | 24,600円 |
~2t | 免税 | 10,000円 | 15,000円 | 32,800円 |
~2.5t | 免税 | 12,500円 | 18,700円 | 41,000円 |
~3t | 免税 | 15,000円 | 22,500円 | 49,200円 |
※2023/4/12時点
5.節税のためにエコカーを購入する際のポイント
エコカー減税のメリットをより多く受けるなら、電気自動車やプラグインハイブリッドなどのCEVを購入するのがもっともお得です。ただし、CEVは補助金が活用できるものの、車両価格が高くなりがちです。また、電気自動車は自宅や周辺に充電設備があるかどうかで使い勝手が大きく変わります。
その点、万能に使えるのはハイブリッドカーです。特にコンパクトハイブリッドカーは車種が豊富で燃費性能も高く、車両価格と減税率のバランスがもっとも優れた車だと言えます。
いずれの車を選ぶにしても、エコカー選びのポイントは「小型・新型・小排気量」。新しく小さな車ほど環境性能や燃費性能が高く、エコカー減税やグリーン化特例も優遇される傾向にあります。
6.監修コメント
年間走行距離が短いガソリン車ユーザーはそもそも燃料の消費量が少ないので、エコカーに乗り換えたとしても、ランニングコスト上のメリットはあまり大きくならないといえます。EV車やハイブリッド車は発進時や低速域の加速性能に優れている分、ガソリン車よりも早くタイヤが磨耗します。エコカーへの乗り換えによるメリットを考える際は、減税や補助金などの優遇措置だけでなく、燃料費や消耗部品の交換サイクルにも目を向けてみることをおすすめします。
エコカー減税の一番の目的は環境保全です。どんな車に乗るにしても、急加速を控えるなど、環境に優しい運転を心掛けることが何よりも大切だと思います。