居眠り運転は重大な交通事故につながる極めて危険な行為ですが、車の運転中に眠気に襲われることは決して珍しいことではなく、ドライバーなら誰しも心当たりがあるのではないでしょうか。そこで当記事では、運転中の急な眠気の原因や、眠気覚ましにおすすめの方法を詳しく解説します。
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1. 車に乗ると眠くなるのはなぜ?
運転中の眠気の原因は体質や状況によってもさまざまですが、主に以下のようなケースが多くみられます。慢性的に眠気を感じる場合には、思い当たる要因がないか振り返ってみましょう。
睡眠不足
運転中の場合においても、眠気の原因としてやはり多いのは睡眠不足です。前日にあまり眠れなかったり、眠れない日が続いていたりといった状態では、必然的に身体が睡眠を求めて眠気が生じます。
一般に、人間が日中の間活動するためには平均6~8時間の睡眠が必要とされています。1日の睡眠時間がこれより短ければ、たとえ集中して運転していたとしても眠気を感じることがあるでしょう。
食後の体内の変化
人間は食事をとると、血液中のブドウ糖の量(血糖値)が一時的に大きく上昇します。この働きは、体内のホルモンの分泌や自律神経に影響を与えて眠気の原因になるほか、血糖値の上昇が急激な場合にはその反動で低下も急激になり、より強い眠気を生じることが知られています。
また、「食後は眠くなる」という人が多い要因としては、食べた物の消化のために胃腸に血液が集中し、脳へ送られる血液が少なくなることも挙げられます。そのため、食事の直後はなるべく運転は避け、少し休息をとってから運転することが望ましいでしょう。
服薬の影響
医薬品のなかには眠気につながる作用があることから、運転前には服用を避けた方がよいものが存在します。たとえば、一部の風邪薬や花粉症治療薬には覚醒・興奮作用を抑える「抗ヒスタミン剤」という成分が含まれており、服用後は眠気を感じることがあります。
とはいえ、こうした医薬品はパッケージや添付文書に「服用後は乗り物等の運転はしないでください」といった記載がなされている場合が多いです。誤って服用した状態で運転しないためにも、購入や服用の前には注意事項をしっかりと確認することが大切です。
車内の二酸化炭素濃度
長時間にわたる運転の際には、車内の二酸化炭素濃度にも注意が必要です。というのも、窓を閉め切った車の中といった空気の循環がない空間にいると、室内の二酸化炭素の割合が高くなるとともに血中の酸素濃度が低下し、眠気や倦怠感、頭痛などの症状が表れることがあります。
運転中の車内の二酸化炭素濃度に関して法的な基準はありませんが、二酸化炭素濃度が1,000ppmを超えると身体に影響が表れはじめ、1,500ppmを超えると眠気を覚える可能性がさらに大きく高まるとされています。
健康上の要因(睡眠時無呼吸症候群など)
「きちんと睡眠をとっているのに強い眠気を感じる」といった場合には、何らかの疾患の影響も疑われます。眠気は身体の不調のサインとして表れることもあるため、原因が思い当たらないようであれば病院で診察を受けてみるのもよいでしょう。
なかでも、睡眠中に何度も呼吸が止まるSAS(睡眠時無呼吸症候群)は、眠気の原因として特に多い疾患のひとつです。SASは眠りの質を低下させるほか、体内への酸素の供給も不足させ、その影響が眠気として身体に表れることがあります。
その他生理現象
睡眠は身体にとって必要不可欠な行為であるため、人間には誰しも体内時計にもとづいて一定周期で眠気を感じるメカニズムがあることが知られています。なかでも午前2時~4時、午後2~4時は特に眠気を感じやすい時間帯であり、交通事故の発生率も高いとされています。
ほかには、単調な風景や運転が続く高速道路など、脳への刺激が少ない環境下でも人は眠くなりやすい傾向にあります。このように、運転中の眠気には生理現象が原因のものも多く、たとえ健康で規則正しい生活を送っていたとしても発生する可能性があります。
2. 車の運転中に眠気を感じたら?
居眠り運転による交通事故を防ぐためにも、眠気を感じる場合には極力運転を控えることが何よりの対処法です。とはいえ、運転中に急な眠気に襲われた際などには、以下のような対処法も有効です。
重大事故につながる可能性の自覚
睡眠状態で車を運転する「居眠り運転」は、危険な状況でもブレーキやハンドル操作といった回避行動をとれないことから重大事故につながりやすく、死亡率も高い非常に危険な行為です。居眠り運転を防止するうえでは、まずはこうした行為自体の危険性を正しく認識することが大切です。
ちなみに、居眠り運転自体には直接的な罰則はありませんが、居眠り運転によって事故を起こした場合には、状況に応じて「安全運転義務違反」や「過失運転致死傷罪」などが適用されることがあります。また、事前に十分な睡眠をとれていない状態で車を運転した場合も、「安全運転義務違反」にあたる「過労運転」として罰せられる可能性があります。
いずれの違反も罰則は重く、過労運転が適用された場合は一度で免許取り消しになる可能性もあるため注意が必要です。
安全運転義務違反
反則金:9,000円(普通車の場合)
違反点数:2点
罰則:3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金
過労運転
違反点数:25点(免許取り消し)
罰則:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
休憩や仮眠をとる
車を長時間運転する際は、2時間おきに一度車を停めて休憩をとるとよい眠気覚ましになります。休憩時には車外に出て新鮮な空気を吸い、適度に身体を動かすとより眠気の改善が見込めます。
また、時間的に余裕があるのであれば、車内などで軽く仮眠をとるのも有効です。とはいえ、仮眠が30分以上にわたってしまうと、起きた後に寝ぼけた状態(睡眠慣性)が続きやすく、眠気覚ましとしては逆効果になる可能性があります。
そのため、仮眠をとる際はしっかりと睡眠時間を管理し、もし長時間眠ってしまった場合にはストレッチなどをして完全に眠気がなくなってから運転を再開することをおすすめします。
ガムなどの固い食べ物を噛む
眠気覚ましとして運転中に口にする食べ物には、ガムやグミ、するめといった歯ごたえのある食品が適しています。こうした「噛む」必要のある食品には咀嚼運動によって脳への血流を促進し、眠気を軽減する効果があることが知られています。
なかでも、辛味・酸味が強いものや、ミント味のような刺激が強い味のものであればさらなる覚醒作用が期待できます。
車内の換気を行う
窓を閉め切った状態で長時間にわたって車を運転することは、車内の二酸化炭素濃度を高め、眠気以外にもさまざまな身体の不調の原因となります。
換気は気分的なリフレッシュにもつながるため、運転中は定期的に窓を開けたり、エアコンを外気導入にしたりしてこまめに空気を入れ替えることを心がけましょう。
カフェインを摂取する
カフェインは眠気防止に効果のある代表的な成分であり、主にお茶やコーヒーなどに含まれています。ただし、カフェインは摂取してから効果が表れるまでに15分~30分程度かかります。
また、一日に摂取してよいカフェインの最大量は400 mg(237 ml入りマグカップでコーヒー約3杯分)とされています。健康に悪影響をもたらす可能性があるため、摂りすぎにも注意しましょう。
冷たい水で顔を洗う
冷水での洗顔にも、一時的ではあるものの強い眠気覚まし効果があります。濡らしたタオルや洗顔シートでも同様の効果が得られるため、車内に常備しておくと便利です。
3. 安全運転を心がけましょう!
運転中の眠気は重大な事故を引き起こすこともある大きなリスクですが、その原因は多岐にわたり、たとえ健康状態が万全であっても眠気自体を完全に予防することは困難です。そのため、運転中は常に万が一の事態を想定し、小さな眠気や体調の変化にもしっかりと気を配ることが大切です。
また、近年では自動ブレーキなど、運転をサポートする最新機能を搭載した車も増えつつあります。こうした技術も活用しながら、日頃から安全運転を心がけることも、居眠り運転による事故を減らすうえでは重要な取り組みといえるでしょう。
4. 監修コメント
周囲に居眠り運転をしている車が走っていると、どんなに気をつけていても重大な事故に巻き込まれかねません。私も以前、一般道を法定速度で走行していたにもかかわらず、居眠り運転をした車に後ろから追突された経験があります。そのときはサッカーW杯が開催されていた時期で、どうやら加害者は朝方までテレビを見ていて寝不足だったようです。
世界的なスポーツイベントは、日本時間の深夜や早朝に試合が行われることも少なくありません。自身が寝不足にならないように気をつけるのはもちろん、公道では、ふらつきながら走っている車はいないのかなどにも注意するようにしましょう。