ガソリン車がガス欠を起こすように、電気自動車はバッテリー残量が少なくなると「電欠」になる場合があります。
これから電気自動車の購入を検討している方、あるいはすでに電気自動車を保有している方のなかには、「電欠になるとどうなるのだろう」「どのように対処すれば良いのか」と不安を抱えている方もいるかもしれません。
本記事では、電欠がどういった状態なのか、そして電欠のサインや発生状況、対処方法や事前にできる対策を解説します。電気自動車の基本的な情報も紹介しているので、参考にしてください。
- 目次
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1.電気自動車(EV)とは?販売台数はどのくらい?
電気自動車とは、搭載したバッテリーから電動モーターに電流を流し、モーターが回転する力で走行する車のことです。電気自動車を含めた電動車を総称して「EV(Electric Vehicle)」もしくは「xEV」、電気のみを利用する電気自動車を「BEV(Battery Electric Vehicle)」と表記します。
自動車検査登録情報協会の調査によると、2022年3月時点での電気自動車の保有台数は約140,000台です。2019年は約100,000台、2020年は約110,000台、2021年は約120,000台のため、年々増加傾向にあります(※1)。
電気自動車とガソリン車の違いの1つは、燃料の補充方法です。ガソリン車はガソリンスタンドでガソリンを給油するのに対し、電気自動車は自宅駐車場や出先にある充電設備で充電します。電動自動車の充電設備である「充電スポット」には長時間(数時間~半日)かけて充電する普通充電器と、短時間(30分前後)で充電できる急速充電器があります。
経済産業省の調査によると、2022年度末の全国のガソリンスタンドの数が27,963か所(※2)であるのに対し、電気自動車の充電スポットの数は、普通充電器は21,198か所、急速充電機は8,265か所(※3)です。
コンビニや高速道路のサービスエリアやパーキングエリアなどに設置されており、外出時の充電に便利な急速充電スポットの数はガソリンスタンドに比べると少ないものの、2021年6月に経済産業省により策定された「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で、2030年までに充電スポット150,000か所設置が目標とされるなど、電気自動車のさらなる普及のための取り組みが進められています(※4)。
電気自動車のメリットやデメリットなど、より詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
2.電気自動車(EV)の「電欠」とは?
電気自動車の「電欠」とは、バッテリー残量がゼロになり、モーターを駆動させる電力がなくなることです。
電気自動車には、「駆動用バッテリー」と「補機用バッテリー」の2種類のバッテリーが搭載されています。駆動用バッテリーは電気自動車が走るための電力を供給するバッテリーで、補機用バッテリーはスマートキーやオーディオなど、一般電装品を動かすためのエネルギーを供給するバッテリーです。
2種類のバッテリーのどちらか1つでも残量がなくなると、走行できません。
電気自動車(EV)の電欠のサイン
電気自動車の駆動用バッテリーの残量が少なくなると、メーターやディスプレイなどに残量低下を示すインフォメーションが表示されます。
さらに残量が低下すると「出力制限表示灯」が点灯し、出力制限モードへ切り替わる電気自動車もあります。出力制限モードになるとモーターに供給される最大電力が制限され、減速する場合があります。
出力制限モードへの移行は電欠のサインです。出力制限モードへ移行する前にバッテリーを充電しましょう。
3.電気自動車(EV)の電欠の発生件数
電気自動車の普及に伴い、電欠のトラブルは増加傾向にあります。JAF(一般社団法人日本自動車連盟)が発表した電気自動車のロードサービス状況によると、2020年度で要請の多かった救援内容は以下の結果となりました(※3)。
救援要請内容 | 件数(件) | 構成比(%) |
---|---|---|
タイヤの異常 | 1,691 | 29.1 |
過放電バッテリー(補機用のバッテリー上がり) | 1,329 | 22.9 |
駆動用バッテリーの電欠 | 573 | 9.9 |
落輪・落込 | 405 | 7.0 |
事故 | 235 | 4.0 |
そのほか | 1,571 | 27.1 |
合計 | 5,804 | 100.0 |
電気自動車の過放電バッテリー(補機用のバッテリー上がり)のトラブル件数は1,329件と、一般的なエンジン車と同様に多く発生しています。「電欠」での救援件数は573件で、全体の約10%の割合を占めています。また、2022年のJAFでの電欠救援件数は700件を越え、年々増加している様子がうかがえます。
4.電気自動車(EV)の電欠時の対処方法
電気自動車のバッテリー残量が低下し、電欠しそうになった場合は以下の対処をしましょう。
- 安全な場所に移動し停車する
- ロードサービスを依頼する
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
安全な場所に移動し停車する
先述したように電気自動車はバッテリー残量が少なくなると、残量警告灯や出力制限灯が点灯します。近くに充電スポットがあり、充電スポットまで走行できると判断した場合はできるだけ早く充電しましょう。
「バッテリー残量が残り少ない」「充電スポットが見当たらない」などの場合は、直ちに安全な場所に移動してください。一般道路であれば、駐車場や駐停車が可能な路肩・路側帯、高速道路の場合はサービスエリアやパーキングエリアに移動しましょう。
なお、高速道路上は道路交通法により駐停車が禁止されています。危険防止や故障などによりやむを得ない場合は駐停車できますが、路肩や路側帯での停車は追突の危険性もあるのでできるだけ避けましょう。
ロードサービスを依頼する
契約しているJAFや自動車保険会社、メーカーのサポートセンターなどに連絡し、ロードサービスを依頼しましょう。
例えば、SOMPOダイレクトの「おとなの自動車保険」では、ロードアシスタンス特約をセットしている場合、電欠時に最寄りの充電施設までレッカー車等で搬送します。保険期間中の利用回数に制限はなく、何回でも利用可能です(搬送のみが補償の対象です。充電費用やお客さまご自身の交通費は含まれません)。
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5.電気自動車(EV)の電欠対策
電気自動車の電欠を防ぐためには、日頃の準備が大切です。以下、事前に準備できる主な電欠対策を4つ紹介します。
- 充電スポットを調べておく
- 早めの充電を心がける
- 駐車している時間を有効利用する
- ロードサービスが充実した自動車保険に加入する
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
充電スポットを調べておく
充電スポットは全国で約30,000か所あり、電気自動車の普及に伴い充電スポット数は増加しています。
毎日の生活で電気自動車を使う場合は、最寄りの充電スポットを2~3か所程度調べておきましょう。また、旅行などで長距離移動する場合は、目的地までの充電スポットがどこにあるかを調べておくとより安心です。
一般的に、普通充電器は宿泊施設や商業施設、オフィスビルなどの駐車場に、急速充電器はコンビニや高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、公共施設などに設置されていることが多いです。どの施設でも、「CHARGING POINT」マークなどを目印に探しましょう。
なお、普通充電は家庭でも利用されている100Vや200Vの電圧で低出力・長時間で充電し、急速充電は高出力・短時間で充電します。時間をかけられるときの充電は「普通充電」、バッテリー残量が少ないときに素早く行う充電は「急速充電」と使い分けるのがおすすめです。
そのほか、充電スポットの場所は検索サイトやスマホアプリでも調べられます。検索サイトをブックマークしたり、スマホアプリをダウンロードしたりして、万が一充電が必要になった場合に備えましょう。
早めの充電を心がける
電気自動車のバッテリー残量が少なくなったら、早めの充電を心がけましょう。「まだ航続距離(1回の充電で、電気自動車が走行できる距離)が残っているから大丈夫」と油断すると、電欠を招く可能性もあります。その理由はガソリン車と同様で、電気自動車の航続距離は使い方や利用環境によって変動するためです。
渋滞やエアコンの使用、急発進などの運転方法により、バッテリー残量の消耗は大きくなります。夏の暑い時期や冬の寒い時期などは、気温により思ったよりも早くバッテリー残量が少なくなる場合もあるので注意が必要です。
なお、電気自動車の航続距離は車種・型式やバッテリー容量によっても違いがあります。電気自動車を選ぶときは、航続距離も事前にチェックしましょう。
駐車している時間を有効利用する
電気自動車は、駐車している時間に充電できる点がメリットの1つといえます。
例えば充電スポットがあるレジャー施設や商業施設に行ったときは、買い物をしたり遊んだりしている間の時間を利用して充電しておくと、電欠を防ぎやすくなります。
ロードサービスが充実した自動車保険に加入する
電気自動車が電欠になると、通常、ロードサービスを依頼してレッカー車で搬送してもらいます。そのため、万が一の電欠トラブルに備えてロードサービスが充実した自動車保険に加入しておくとより安心です。
6.電気自動車(EV)の電欠を防ぐためにこまめな充電を心がけましょう
電気自動車のバッテリー残量がなくなると、電欠となり走行できません。電気自動車のバッテリー残量はディスプレイで確認できるため、残量表示灯が表示されたらできるだけ早めに充電しましょう。