維持費の安さや運転のしやすさといった利点から、普通自動車よりも車体や排気量が小さい「軽自動車」を選ぶオーナーが年々増加傾向にあります。当記事では、そんな軽自動車と普通自動車の違いや、軽自動車のメリットとデメリットを解説します。
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1. 軽自動車とは
日本の法律では、自動車を特徴に応じて「普通自動車」や「小型自動車」といったいくつかの区分に分類しています。「軽自動車」とは、そのなかでも特に車体がコンパクトで排気量の小さい自動車を指す、海外には存在しない日本独自の区分です。
軽自動車は規格が厳密に決められており、普通自動車と比較して書類手続きが簡素である、自動車税の税額が安い傾向にあるといった特徴があります。令和6年12月時点では、以下の規格を満たす車が軽自動車にあたります。
- 車体:全長3.40m以下×全幅1.48m以下×全高2m以下
- 排気量:660CC以下
ただし、軽自動車の規格はこれまで何度も改定されており、軽自動車に該当するかどうかは車の製造年月日によっても異なります。
軽自動車と普通自動車・小型自動車の違い
普通自動車や小型自動車は、いずれも軽自動車より車体と排気量が大きい車を指す区分です。具体的には、普通自動車は全長12m以下×全幅2.5m以下×全高3.8m以下(排気量は無制限)、小型自動車は全長4.7m×全幅1.7m×全高2m以下で排気量が2000CC以下と規格が決められています。
また、軽自動車とその他の自動車はナンバープレートから見分けることも可能です。普通自動車や小型自動車には、自家用は白、事業用は緑色のナンバーが交付されるのに対し、軽自動車には自家用は黄色地に黒い文字、事業用は黒地に黄色い文字のナンバーが交付されます。
ちなみに、「図柄ナンバープレート」を使用すれば、軽自動車でも例外的に白地のナンバーを装着することが可能です。ただし軽自動車の場合、現在は図柄入りナンバープレートには識別用の黄色い枠がつくため、普通自動車と全く同じ見た目になるわけではない点に注意が必要です。
2. 軽自動車の普及台数
軽自動車は利便性やコストパフォーマンスの高さなどを理由に、オーナーの間でも高い人気を誇っています。一般社団法人全国軽自動車協会連合会の調査では、軽自動車の世帯あたりの普及台数は令和5年12月末時点で100世帯に54.49台と、昨年の54.28台から2年連続で増加を記録しています。
加えて、世帯あたりの普及台数は昭和52年から平成30年まで43年連続で増加しており、世帯数の影響で普及台数がわずかに減った令和元年~令和3年の間も保有台数は増加し続けています。こうした根強い支持を背景に、軽自動車の市場は今後もさらに拡大していくことが予想されます。
3. 軽自動車のメリット
軽自動車が高い人気を有する背景には、以下のようなメリットがあります。
燃費が優れている
燃費とは、一定の距離をどれだけの燃料で走れるかを表す指標です。少ない燃料で走れる車は燃費が良い(低燃費)とされ、給油の頻度やコストが少なく済むといったメリットがあります。
軽自動車は車体が小さい分重量も軽く、排気量も小さいことから消費する燃料が少ない傾向にあります。そのため一度の給油で長い距離を走行でき、ガソリン代を抑えることが可能です。
運転がしやすい
ボディがコンパクトな軽自動車は小回りが利き、運転や駐車がしやすいことも魅力です。幅が狭い路地なども、軽自動車ならスムーズに通行できるでしょう。
こうした点から、軽自動車は主に市街地での買い物や通勤などの用途に適しています。また、免許を取得して間もないドライバーや、運転スキルに自信がないドライバーにも乗りやすい車といえます。
維持費が安い
軽自動車は普通自動車と比べて税制面でも優遇されており、手軽に購入・所有できます。なかでも年1回納税する自動車税(種別割)・軽自動車(種別割)は、普通自動車の場合では排気量が1000CC以下でも原則25,000円がかかるのに対し、軽自動車は排気量に関わらず原則10,800円に設定されています。
車種区分 | 新規検査日が2015年3月31日以前(旧税率) | 新規検査日が2015年4月1日以後(新税率) | 新規検査日から13年経過 | |||
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軽自動車 | 三輪 | 3,100円 | 3,900円 | 4,600円 | ||
四輪 | 乗用 | 営業用 | 5,500円 | 6,900円 | 8,200円 | |
自家用 | 7,200円 | 10,800円 | 12,900円 | |||
貨物 | 営業用 | 3,000円 | 3,800円 | 4,500円 | ||
自家用 | 4,000円 | 5,000円 | 6,000円 |
※2015年3月31日までに新規検査をした車両は、13年経過するまでは旧税率が適用。
加えて、購入や車検の際に発生する自動車重量税も、実際の重量に関係なく一律の税額が適用されます。そのほか、整備のしやすさなどを考慮し、軽自動車は車検の料金や任意保険の保険料なども安く設定されている場合が多いです。
通行料金が安い
軽自動車は道路に与える負荷や占有面積が小さいことを理由に、多くの高速道路で通行料金が20%ほど割引されています。たとえば東京ICから静岡ICまでの場合、普通自動車の料金は4,300円であるのに対し、軽自動車は3,470円となっています。
高速道路の料金は走行距離によって決定されており、割引は1キロ単位で発生するため、走行距離が長いほど金額の差は大きくなります。
登録手続きが簡単
普通自動車の購入時には、国土交通省への登録にあたって印鑑証明が求められます。しかし、軽自動車の場合は手続きが簡略化されており、証明なしで所有することが可能です。
また、車の保管場所を申告する車庫証明の手続きも、軽自動車は不要な場合が多いです。ただし、地域によっては車庫証明が必要なケースもあるため、必ず自治体ごとの指示を確認しましょう。
4. 軽自動車のデメリット
軽自動車には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。軽自動車の購入にあたっては、以下のような点も考慮した上で選択しましょう。
積載量が少ない
軽自動車は車体が小さいため、車内の空間が狭い車種が多いです。さらに、排気量が少ない分重量が増えると燃費が落ちやすいことから、多くの荷物や乗員を載せるのには適していません。
特に乗員は最大で大人4名までと法律で決められており、それ以上の人数を乗せることはできません。安全に運転するためにも、規定人数は必ず守るようにしましょう。
パワーが弱い
軽自動車が搭載している排気量の少ないエンジンは普通自動車に比べてパワーが弱く、山道や急な坂道の走行には不向きです。近年は比較的パワーが強いエンジンを搭載した車種もありますが、メーカー側で64馬力を超えないよう自主規制がなされているため、普通自動車に匹敵するパワーは期待できません。
また、軽自動車は高速道路を走行することは可能ですが、加速性能が低いため思うような速度が出ず、快適に運転できない可能性があります。
安定性・安全性に不安がある
制限の範囲内で車内空間を最大限広くとるために、軽自動車は車高が高く設計されている傾向にあります。加えて重量も軽いため、強風にあおられやすいのが欠点です。
そのほか、車体が小さく軽い軽自動車には、衝突事故などの際に大きく飛ばされてしまいやすいというデメリットもあります。最近の軽自動車は比較的安全性能が高められているものの、やはり普通自動車と比較すると衝撃には弱いため、不安な場合には衝突安全性・予防安全性などの要素を重視して車種を選ぶとよいでしょう。
5. まとめ
軽自動車は多くのメリットを備えた手軽で便利な自動車ですが、一方で苦手とする場面もあり、使い方によっては十分に利点が発揮されない可能性もあります。そのため、購入にあたってはライフスタイルや使用シーンなども考慮した上で選ぶことが大切です。
また、すでに普通自動車を所有している場合には、軽自動車は2台目として購入し、用途に応じて使い分けるのも選択肢のひとつでしょう。
6. 監修コメント
最近の軽自動車は、限られた規格の中で最大限に広い車内空間を追求して設計されています。外寸も規格ぎりぎりで設計されていることが多いです。そこにアフターパーツを追加すると、軽自動車の規格を超える外寸になり、違法改造車両となってしまうことがあります。
外寸が基準値を超えても構造変更手続きをすれば違法改造車になりませんが、そうすると普通自動車となり軽自動車のメリットは得られなくなります。軽自動車にアフターパーツを取り付ける際は、必ず基準値に収まるものを選びましょう。