突然の雹(ひょう)によって自動車が損害を受けると、高額な修理費用ががかかる場合があります。しかし車両保険を契約していれば、修理費用が補償される可能性があります。
当記事では、雹(ひょう)による自動車の損害に対して車両保険が利用可能かどうかに加え、補償金額の目安や保険を利用する際の注意点などを詳しく解説します。
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1. 雹(ひょう)とはどんな現象?車や建物に与える被害とは
雹(ひょう)とは、積乱雲の中でつくられる氷の塊で、5〜6月などの初夏や10月頃に多く見られます。雷雨を伴って降ることが多く、5mm以下の物は「霰(あられ)」、5mm以上の物は「雹(ひょう)」と一般的に区分されます。
雹(ひょう)は、ゴルフボールほどの大きさになったり、時速100kmを超える速度で落下したりすることもあります。ボンネットやバンパーに多数のへこみができたり、フロントガラスが割れたりするなど、自動車に大きな損害を与えるケースも少なくありません。
実際に、2024年4月には兵庫県を中心に大規模な雹害(ひょうがい)が発生し、自動車保険や火災保険の支払保険金は500億円を超えました。
2. 雹(ひょう)で車が傷ついたときの修理費用はいくら?
雹(ひょう)による自動車の損傷については、損害の程度によっては、高額の修理費用が発生するケースもあります。
雹(ひょう)による損傷の修理方法は、主に以下の3つです。
- デントリペア
- 板金塗装
- パーツ交換
デントリペアは、専用の工具を使ってパネルの裏側からへこみを少しずつ押し出し、元の状態に戻す修理方法です。塗装を必要としない小規模なへこみができた場合に適しており、一般的に数万円程度で修理ができます。
板金塗装は、損傷部を叩いて形を整えた後に再塗装する方法で、広範囲のへこみや傷にも対応できるのが特徴です。デントリペアより費用が高くなる傾向があり、損傷の範囲や車種によっては10万円以上かかることもあります。
損害が車両全体に及ぶ場合、部分的な補修では済まず、パーツの交換が必要になるケースもあります。交換する箇所や車種によっては、数十万円〜100万円以上の費用がかかることもあるでしょう。
3. 雹(ひょう)による損害に車両保険は利用される?
雹(ひょう)による自動車の損害は、一般的に「車両保険」で補償されます。車両保険とは、自動車が事故や自然災害などで損傷を受けたときに、修理費用などを補償する保険です。
車両保険は、車と車の事故だけではなく、単独事故や当て逃げなども補償する「フルカバー型」と、より補償範囲を絞った「エコノミー型」の2種類に分けられます。
フルカバー型 | エコノミー型 | |
お車同士の衝突 | 〇 | 〇 |
火災・爆発 | 〇 | 〇 |
台風・竜巻 | 〇 | 〇 |
飛来中・落下中の他物との衝突 | 〇 | 〇 |
落書き・いたずら | 〇 | 〇 |
盗難 | 〇 | 〇 |
転覆・転落 | 〇 | × |
単独事故 | 〇 | × |
当て逃げ | 〇 | × |
地震・噴火・津波 | × | × |
雹(ひょう)による損害は、車両保険の「飛来中・落下中の他物との衝突」などの項目で補償されることが多く、フルカバー型・エコノミー型のどちらでも補償対象になる場合がほとんどです。ただし、補償内容は保険会社によって異なるため、詳しい内容はそれぞれの保険会社に確認しておきましょう。
なお、「おとなの自動車保険」では、車両保険の補償が細分化されており、ニーズにあわせて必要な補償を選べるようになっています。「火災・落書き・台風」がセットされている場合、雹(ひょう)による損害も車両保険の補償対象です。
4. 雹(ひょう)による損害は車両保険でいくら補償される?
雹(ひょう)によって発生した修理費用が車両保険の保険金額を下回る場合「修理費から免責金額を差し引いた金額」が保険金として支払われます。
免責金額とは、車両保険の契約時に設定する自己負担金額です。免責金額を低めに設定すると補償は手厚くなりますが、その分保険料は高くなります。反対に、免責金額が高いほど保険料は安くなります。
「おとなの自動車保険」では、免責金額を以下の7パターンから選択可能です。
例えば、車両保険の保険金額が200万円、修理費用が30万円だった場合、「5万円-10万円」のプランを選ぶと、1回目の修理では5万円を自己負担し、25万円(=30万円-5万円)が保険金として支払われます。
一方、修理費用が車両保険の保険金額を上回った場合は「全損扱い」となり、免責金額は差し引かれることなく、満額の保険金が支払われます。例えば、車両保険の保険金額200万円に対し、250万円の修理費用が発生するようなケースです。
ただし、年式が古い車の場合は、設定できる車両保険金額が低くなりがちです。実際にかかる修理費用が車両保険金額を大きく上回り、修理に必要な金額をカバーしきれないこともあります。そんなときに役立つのが「車両全損修理時特約※」です。
車両全損修理時特約をセットしておくと、修理費用が車両保険の保険金額を上回った場合でも「車両保険金額+50万円」を上限に保険金が支払われます。
※保険始期日時点で、ご契約のお車の初度登録年月の翌月から起算して25か月を超えている場合に特約をセットすることが可能となります。
5. 雹害(ひょうがい)で自動車保険を利用する際の注意点
雹害(ひょうがい)が自動車保険の補償対象になっていたとしても、必ずしも保険を利用したほうがよいとは限りません。また、自動車保険では補償されない損害もあるため、事前に補償内容を確認しておきましょう。
車両保険を利用すると1等級ダウンする
雹(ひょう)による損害で車両保険を利用すると、原則として翌年の等級が1つ下がり、保険料の割引率も下がります。
自動車保険には「ノンフリート等級別料率制度」があり、事故の有無によって、翌保険期間の保険料の割増引率が変わります。1等級〜20等級まであり、等級が上がるほど割引率は高く、等級が下がるほど割引率は低くなる仕組みです。
また、等級ごとに割引率は「無事故」と「事故有」に分かれています。たとえ同じ等級でも、過去に事故歴がある場合は「事故有」の係数が利用されるため、「無事故」と比べて保険料の割引率が低くなります。
無事故係数(割増引率※) | 事故有係数(割増引率) | |
1等級 | 108% | |
2等級 | 63% | |
3等級 | 38% | |
4等級 | 7% | |
5等級 | -2% | |
6等級 | -13% | |
7等級 | -27% | -14% |
8等級 | -38% | -15% |
9等級 | -44% | -18% |
10等級 | -46% | -19% |
11等級 | -48% | -20% |
12等級 | -50% | -22% |
13等級 | -51% | -24% |
14等級 | -52% | -25% |
15等級 | -53% | -28% |
16等級 | -54% | -32% |
17等級 | -55% | -44% |
18等級 | -56% | -46% |
19等級 | -57% | -50% |
20等級 | -63% | -51% |
6等級 | 3% |
7等級 | -38% |
※割引の場合はマイナス表示、割増の場合はプラス表示
- ※引用
- 損害保険料率算出機構ホームページ
事故は大きく以下の3種類に分けられ、雹(ひょう)による車両保険の利用は「1等級ダウン事故」に該当します。
- 3等級ダウン事故
- 1等級ダウン事故
- ノーカウント事故
事故の種類については以下のページで詳しく解説しています。
例えば18等級の方が雹(ひょう)で車両保険を利用した場合、翌年は17等級に下がります。この場合「事故有」の割引率が利用されるため、無事故で16等級から17等級に上がった場合よりも一般的に保険料は高くなります。
保険料が高くなることを考えると、修理費が少額の場合は、保険を使わず自費で対応した方が結果的に安く済むケースもあります。例えば、修理費が10万円、免責金額が5万円の場合、実際に受け取れる保険金は5万円です。しかし、翌年以降の保険料が5万円以上高くなるのであれば、保険を利用しない方が経済的といえるでしょう。
なお、保険を使うべきか判断に迷った場合は、保険会社や代理店に相談すると将来の保険料シミュレーションなどを含めたアドバイスを受けられることがあります。
雹(ひょう)による車内の人・物への損害は車両保険では補償されない
車両保険は、契約車両そのものに生じた損害を補償する保険です。雹(ひょう)で車内の人がケガをしたり、荷物が壊れたりしても、基本的に補償されません。
ただし、雹(ひょう)による車内の人への損害は「人身傷害保険」を契約していれば補償されます。人身傷害保険とは、契約車両の運転者や同乗者がケガをしたり、死亡したりした場合の損害(治療費・休業損害・過失利益・葬儀費など)を補償する保険です。
また、雹(ひょう)によって車内に置いていた物への損害は「車両身の回り品補償」でカバーできる場合があります。車両身の回り品補償は契約車両の車内やトランク、ルーフキャリア内の物に損害が生じた場合に保険金を支払う補償です。
6. 雹害(ひょうがい)を未然に防ぐ!愛車を守る3つの対策
雹(ひょう)は突然発生することが多いため、損害を完全に防ぐのは難しい面もあります。しかし、日頃から対策を講じておくことで損害を抑えることは可能です。
雹(ひょう)による損害を防ぐために有効な3つの方法を紹介します。
ガレージや屋根付き駐車場を利用する
車をガレージや屋根付きの駐車場に停めておくことで、雹(ひょう)の損害を抑えられる可能性があります。
自宅にこうした設備がない場合は、カーポートの設置も検討してみましょう。初期費用はかかりますが、雹(ひょう)だけでなく強風や落下物などへの対策としても役立ちます。
カーポートの設置費用は一般的に20〜50万円程度が目安です。ただし、雹(ひょう)の衝撃は強いため、強度の高いスチール製やアルミ製のカーポートを選びましょう。
急な雹(ひょう)には毛布や専用カバーで応急防御する
急な雹(ひょう)に見舞われた場合でも、毛布や専用カーカバーで車を覆うことで、損害を軽減できる可能性があります。
特に外出先などで屋根のある場所に避難できない場合は、厚手の毛布や布団をかぶせて一時的にでも車体を保護しましょう。大粒の雹(ひょう)が屋根を突き破るケースがあるため、屋根がある場所でも念のため車を覆っておくと安心です。
カバーを使用する際は、薄手の物ではなく、厚みのあるタイプを選ぶか、二重・三重に覆うようにしましょう。
雹(ひょう)のリスクが高い日は外出を避ける
雹(ひょう)のリスクが高まっている日は、車での外出を控えることで雹害(ひょうがい)にあう確率を下げられるでしょう。
最新の天候を確認したい場合、気象庁が公開している「ナウキャスト」を活用する方法があります。ナウキャストは、大雨・雷・竜巻などの発生を1時間先まで予測できるツールです。
ナウキャスト自体は雹(ひょう)の発生を直接予測するシステムではありませんが、局地的な大雨や雷・竜巻注意報などが出ている場合は雹(ひょう)が降りやすい傾向にあるため、出発前にチェックしておきましょう。
7. 雹害(ひょうがい)の発生直後にやるべきこと
雹(ひょう)による損害を受けた直後は冷静に状況を確認し、以下の手順で対応しましょう。
- 車を安全な場所に移動する
- 傷の状況を確認する
- 保険会社に連絡する
車を安全な場所に移動する
走行中に急に雹(ひょう)が降ってきた場合は、まず自身の安全を確保し、車を安全な場所に避難させることが重要です。
可能であれば、立体駐車場や地下駐車場など屋根のある駐車場へ速やかに移動しましょう。慌てて運転操作を誤ったり、周囲の状況確認を怠ったりすると事故につながる危険性があるため、自身の安全を最優先に、落ち着いて運転してください。
もしフロントガラスが割れたり、視界が悪くなったりして安全に運転できない状況であれば、無理に走行を続けるのは危険です。周囲の交通状況を確認しながらハザードランプを点灯させて路肩に停車し、雹(ひょう)が止むまで待機しましょう。
大きな雹(ひょう)が降っている場合は、衝撃で窓ガラスが割れる危険性も考慮し、できるだけ窓から離れた位置で、頭部を守るような姿勢で待機してください。
傷の状況を確認する
雹(ひょう)が止んだら、ボンネットやルーフ、ガラスなどにへこみやひび割れがないか、車の状態をできるだけ早く確認しましょう。小さな傷でも放置すると雨水が入りサビの原因になることもあるため、ガムテープなどを使い、応急処置をしておくのが大切です。
どう対応してよいか分からない場合は、保険会社の事故受付窓口やJAFなどのロードサービスに連絡しましょう。おとなの自動車保険なら「ALSOK事故現場安心サポート」が無料で利用できます。事故現場にALSOKの隊員がかけつけてくれるため、事故後の対応に不安がある場合も安心です。
保険会社に連絡する
損傷箇所の確認を終えたら、保険会社に連絡し、ロードサービスの手配や保険金の請求手続きを進めましょう。
例えば、雹(ひょう)の影響でドアミラーが破損し、自走が困難な場合でも、ロードサービスを利用すれば修理工場などへ安全に車を移動できます。ロードサービスを利用しても等級には影響しないため、安心して利用してください。
「おとなの自動車保険」のロードアシスタンス特約をセットしていた場合、現場での応急処置とあわせて15万円以内のレッカー搬送費用が補償対象です。車がレッカー搬送されたことに伴い、走行不能となった場所から帰宅できない場合は、宿泊費や交通費といった移動費用も補償されます。
雹害(ひょうがい)の際は近隣の修理工場も入庫待ちが発生したりします。損害の状況を正確に確認するためにも、損害が発生した場合は出来るだけ早く保険会社に連絡するようにしましょう。
なお、保険金請求の期限は、保険法によって事故発生日から3年以内と決められています。
8. 雹害(ひょうがい)リスクに備えて安心して愛車に乗ろう
車両保険を契約しておくと、雹害(ひょうがい)によって修理費用が高額になるケースに備えられます。「おとなの自動車保険」では、車両保険の補償内容を細かく選べる仕組みになっており、「火災・落書き・台風」がセットされていれば雹害(ひょうがい)も補償対象です。
ただし、車両保険を利用すると等級が1つ下がり、翌年以降の保険料が上がる可能性もあります。修理費用と保険料のバランスを考慮したうえで、請求すべきか迷った際には保険会社に相談しましょう。
9. 監修コメント
近年は気象変動の影響で、従来雹(ひょう)が少なかった地域でも雹害(ひょうがい)が発生するケースが増えています。車両全体に被害が及び、修理費用が高額になるケースもあるため、この機会に補償内容の見直しをしておきましょう。
一般的に雹害(ひょうがい)は車両保険のフルカバー型・エコノミー型のどちらでも補償されますが、損害を受けた際に自己判断で修理を進めてしまうと、事実関係の確認ができず保険金が支払われない場合があります。修理をする前に、必ず保険会社へ連絡しましょう。