車内で寝泊まりする「車中泊」は、ホテルなどに宿泊するよりも手軽で自由度が高く、近年ではアウトドア愛好家を中心に新しい旅の形として人気を集めています。
とはいえ、車中泊にはエコノミークラス症候群などのリスクもあり、安全かつ快適に過ごすには適切な環境や方法で行うことが大切です。そこで本記事では、車中泊に適した車種や場所、あると便利なグッズ、車中泊にあたっての注意点などを解説します。
- 目次
-
1. 車中泊をしてみたいと思ったら
昨今、宿泊費の節約や時間に縛られないといった利点から、車での移動時の宿泊手段として車中泊を選択する人が増えています。車中泊の主な使い方としては、旅行におけるホテルの代わりや、キャンプの際のテントのいらない宿泊場所としての利用が多いようです。
また、中には車内で一夜を過ごすという、非日常的な体験そのものを楽しむために車中泊をする人もいます。車中泊をしたい場合には、まずはこうした利用の目的や楽しみ方をはっきりとさせ、イメージを具体化することからスタートしてみると良いでしょう。
2.車中泊に適した場所は?
車中泊は場所の自由度が高いことも大きな魅力ですが、実際にはどこでもして良いわけではない点に注意が必要です。安全や防犯のためにも、必ず許可・推奨されている場所で行うことを心がけましょう。
中でも車中泊におすすめの場所としては、RVパークが挙げられます。RVパークとは、日本RV協会が『快適に安心して車中泊ができる場所』を提供するために定めた条件を満たす、車中泊に適した施設のことです。最近ではコンビニの駐車場をRVパークとして運用する実証実験も行われており、施設数は今後も拡大が見込まれています。
RVパークは場所によっては無料の場合もあり、料金もさまざまです。特に、人気の施設や観光地、設備が充実している場所は混雑が予想されるため、利用にあたっては事前の予約をおすすめします。その他の場所でも、観光シーズンや土日、祝日に利用する際は念のため予約しておくと安心です。
【関連リンク】日本RV協会認定車中泊施設 RVパークまた、道の駅は休憩施設であるため車中泊は基本的に禁止されていますが、中には車中泊を歓迎している道の駅もあります。道の駅を車中泊の場所として利用したい場合は、事前にホームページなどで車中泊が可能かどうか調べておくことをおすすめします。
3.車中泊におすすめの車(車中泊ができる車)
車には用途に応じてさまざまな車種が存在しており、すべての車種が車中泊に向いているわけではありません。車中泊のためにこれから車を購入する場合や、レンタカーを借りて車中泊を行いたい場合には、適した車種を選ぶことを意識しましょう。
車中泊に向いている車種の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- シートをフラットにできる
- 車内の空間が広い(大人が横になれる)
- ボディが大きく、車内高が高い
逆に室内が狭い車は動きづらく、長時間同じ姿勢で過ごすことになり、エコノミークラス症候群を発症する可能性が高まってしまいます。
また、軽自動車のスーパーハイトワゴンやミニバン、SUV、ステーションワゴン、コンパクトカーなどのシートアレンジが可能な車も車中泊に向いています。ただし、車によってはシートの形状やアレンジの方法が寝るのに適さない場合もあるため、事前に仕様を調べておくことが大切です。
また、最近では車中泊を前提とした車を借りられるレンタカーショップもあります。店舗によっては豊富な種類の中から車を選べるため、近くにショップがある場合はおすすめです。
メーカー別のおすすめ車種としては、それぞれ以下のような車種が挙げられます。
- ホンダ:ステップワゴン/フリード/N-BOX
- ダイハツ:ウェイク
- 日産:セレナ/NV200バネットワゴン
- スズキ:ソリオ/エブリィワゴン
- トヨタ:ノア/ボクシー/シエンタ
- 三菱:アウトランダーPHEV/エクリプスクロスPHEV
- ルノー:カングー
4.車中泊初心者におすすめのグッズ5選
車中泊をするにあたってそろえておくべきグッズとしては、主に以下のようなものが挙げられます。
- マット
- 寝袋(シュラフ)
- まくら
- シェード
- LEDランタン
それぞれのグッズについて、詳しく説明します。
マット
シートがフラットになる車でも、多少の凹凸が気になる場合があります。インフレータブルマットやエアマットを使うことで、凹凸が気にならなくなり快適に寝られるようになるでしょう。
マットが大きすぎると車内に入らず、逆に小さすぎると寝心地が良くないこともあるので、事前にサイズを確認したうえで購入することが重要です。
寝袋(シュラフ)
夏場に寒さの心配をする必要はありませんが、それ以外の季節は夜に冷え込むこともあります。そのため、寝袋(シュラフ)があったほうが快適に寝られる可能性が高いです。寝袋(シュラフ)にはそれぞれ「快適使用温度・使用可能温度(限界使用温度)」が決められているので、選ぶ際の参考にすると良いでしょう。
快適使用温度は、これくらいの温度での使用であれば温かく快適に寝られるだろう、という温度を指します。一方の限界使用温度は、これくらいの温度での使用は基本的にはおすすめしないものの、工夫次第では使えないこともない、という温度を指します。
まくら
快適に寝ることを考えると、まくらも当然あったほうが良いです。クッション兼用のタイプであれば、寝るとき以外にも車内で利用することができます。
空気を入れて膨らませるようなタイプのものであれば、使わないときはコンパクトにまとめられるので便利です。硬さ・柔らかさに関しては、個人の好みで選ぶと良いでしょう。
シェード
車中泊をする場所によっては、車外からの視線や朝起きたときの日差しが気になる場合もあるため、窓を覆うシェードがあると便利です。車種専用品を選べば、窓の形状にぴったりとフィットしてしっかりと遮光してくれるでしょう。断熱効果があるものを選べば、夏の暑さや冬の寒さを軽減してくれるので、夏冬に車中泊をする場合には特におすすめです。
LEDランタン
夜は暗くなるので電気を付けたいですが、車のルームランプを使うとバッテリーが上がる可能性があります。そのため、電気はルームランプではなくランタンを利用するのがおすすめです。
電池やバッテリー式のLEDランタンで、明かりが全体に広がるものがおすすめで、光量調節機能が付いているものだとなお良いでしょう。
そのほか
網戸のような機能を持ったグッズもおすすめです。外気温が快適な温度なら窓を開けたいところですが、夏は蚊が入ってきて大変なことになってしまうでしょう。そこで網戸機能を設けておくと、車内を快適にすることができます。
また、グッズからは少し逸れますが、車内電源も適宜利用しましょう。最近のBEV(電気自動車)、FC(燃料電池車)、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)には、100V電源のコンセントが車内に装備された車種も増えました。家庭用の電器製品を1500Wまで使えるので車中泊で便利に使えるでしょう。
スマホの充電用などのために用意されているUSBポートなども、ちょっとした灯り用に使えます。
5.車中泊をする際の注意点
車中泊をする際の注意点としては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 街灯や人気がない場所での車中泊は避ける
- 車中泊が認められている適切な場所で行う
- ほかの利用者も快適に過ごせるようにマナーを守る
- 健康面のリスクがある
それぞれの注意点について、詳しく説明します。
街灯や人気がない場所での車中泊は避ける
車中泊を行える場所はいくつかありますが、場所を選べる場合は街灯や人気がない場所は避け、なるべく人の多い場所を選びましょう。
街灯や人気がない場所は犯罪が起こりやすく、車中泊をする場所としては危険です。万が一のことが起きた場合でも、人気がある場所の方が周囲に助けを求めやすいでしょう。もしも人気がない場所で車中泊を行う場合は、周囲にどのような施設があるかを事前に把握することが重要です。
車中泊に適さない、避けるべき場所の特徴は以下のとおりです。
- 街灯がない暗い場所
- 人通りが少なすぎる場所
- 周辺に店舗や施設がない場所
- 携帯電話の電波が届かない場所
そのため、車中泊初心者の方は以下のポイントを意識して場所を選ぶと良いでしょう。
- 適度な人通りがあるか
- 周囲に街灯や照明があるか
- 緊急時の連絡手段、携帯電話の電波があるか
- 近隣施設、コンビニ、病院、交番などの位置
車中泊が認められている適切な場所で行う
車中泊を検討している場合は、利用予定の施設で車中泊ができるかどうかを事前に確認し、必ず認められている場所で行いましょう。また、道の駅などで車中泊をする場合は、ほかの利用者の方や施設に迷惑となることもあるので、連泊などの長時間利用はなるべく避けることを心がけましょう。また、道の駅の駐車場などを利用する場合はスペースに注意し、広く占有しないように注意する必要があります。
RVパークや道の駅以外で車中泊をする場合は、傾斜のあるところや道路に近いところなどは避けましょう。傾斜のあるところだと快適に眠りにくく、何かの拍子で車が動き出してしまうかもしれません。道路に近いところだと、道路を走っている車が何らかの理由でこちらに突っ込んでくる可能性も考えられます。安心・安全に車中泊ができそうな場所を選びましょう。
ほかの利用者も快適に過ごせるようにマナーを守る
基本的に車中泊は、公共のスペースに車を停めて行うことになるので、周囲にはほかに車中泊を行っている方もいるはずです。利用者全員が快適に車中泊を行えるように、最低限のマナーは守らなければなりません。
- ご自身のゴミは持ち帰るか指定箇所に捨てる
- BBQなどの駐車場での迷惑行為はしない
- ドアの開閉する音やエンジン音などの騒音で迷惑をかけない
- 盗電をしない
- 夜間は消灯する
などのマナーは守りましょう。
健康面のリスクがある
車中泊に潜む健康面のリスクとしては、主に以下のようなことが考えられます。
- エコノミークラス症候群
- エンジンのかけっぱなしによる一酸化炭素中毒
- 夏場の熱中症や冬場の凍死
こういったリスクを回避するためには、それぞれ以下のようなことを意識すると良いでしょう。
リスク | 対策 |
---|---|
エコノミークラス症候群 | 車内が広い車、ゆったりした服装を選び、車内でも無理のない体勢でいられるようにする(足をあげて寝るとなお良い) |
エンジンのかけっぱなしによる一酸化炭素中毒 | 就寝時はエンジンを切る |
夏場の熱中症や冬場の凍死 | 熱中症対策には車内の換気やこまめな水分補給、凍死対策には厚手の服や寝袋(シュラフ)を持っていくことを心がける |
中でも、季節によっては日中と朝晩の寒暖差が大きくなることから、車内の温度管理には注意が必要です。特に複数人で車中泊をする場合には、各々が快適に感じる温度は必ずしも同じではないため、薄手の服と厚手の服を両方持参して個人で温度調節ができるようにしておくと良いでしょう。
6.車中泊は事前準備をしたうえで行いましょう
車中泊は、RVパークや一部の道の駅などで行うことができます。快適な車中泊を楽しむためには、マットや寝袋(シュラフ)、LEDランタンなどを準備しておくのがおすすめです。防犯対策もしっかりと行ったうえで、周囲に迷惑をかけずに楽しみましょう。
なお、車中泊は楽しむだけでなく災害時の選択肢にもなりえます。災害が起きた「後」の選択肢として車中泊は把握しておくべきですが、災害が起きる「前」にきちんと備えておくことも重要です。
7. 監修コメント
車中泊にあると断然便利なアイテムがポータブル電源です。ポータブル電源があると、エンジンを切った状態でも電化製品を使用できるので、ガソリンやバッテリーの消費を抑えることができます。太陽光充電パネルがセットになったタイプもあります。
ポータブル電源は容量が大きいほど活用の幅が広がりますが、1泊分の暑さ・寒さ対策には700〜1000Whが適しているといえます。スマホの充電やLEDランタンなどはもちろん、夏は扇風機やサーキュレーター、冬は電気毛布や電気あんかなどが使えるので、快適に睡眠をとることができるでしょう。災害時の備えとしてもおすすめです。