自動車を所有していると毎年税金の支払いが発生します。なかでも自動車税・軽自動車税は毎年4月1日時点の所有者が支払うことになる、排気量に応じて課税される仕組みの税金です。
自動車に関する税金は2019年の10月に大幅に改定され、それまでの「自動車税」は「自動車税種別割」へ、「軽自動車税」は「軽自動車税種別割」に名称が変更されました。本記事ではわかりやすく「自動車税」「軽自動車税」と表記します。自動車税・軽自動車税について、課税の仕組みや支払い方法、節約のポイントについて解説します。
- 目次
-
1.車にかかる税金の種類
自動車を所有していると、課される税金にはどんなものがあるのでしょうか。毎年通知が届いてから納付する自動車税・軽自動車税、新規登録や車検時に収める自動車重量税などを含め、2019年に税制が大幅に改定されてから、車を所有する際にかかる税金は以下の4種類となりました。
- 自動車税/軽自動車税
- 自動車重量税
- 環境性能割
- 消費税
「自動車税・軽自動車税」は1年に1回、自動車の排気量に応じて課税される地方税です。「自動車重量税」は新規登録時なら3年分、以降の車検の際に2年分と、自動車の重量に応じて車検の有効期間分をまとめて納付します。
「環境性能割」については、2019年の改定で今までの「自動車取得税」が廃止され、新たに自動車の環境性能に応じて課税される税金として導入されました。環境性能割は、燃費基準の達成度合いに応じて税額が決定し、普通車の場合、新車、中古車を問わず、取得価格の+0.5%〜+3%および非課税までの幅で変動します。軽自動車は新車、中古車を問わず、+2%が上限です。
ただし、取得価額が50万円以下の車と燃費基準を高いレベルで満たす車は非課税です。クリーンエネルギー自動車と呼ばれる電気自動車やプラグインハイブリッドカー、クリーンディーゼル車などは、燃費基準にかかわらず原則非課税となります。また、「消費税」については付属品を含む本体価格の10%が課税されます。
2.自動車税・軽自動車税とは
自動車税・軽自動車税とは、車の所有者に義務付けられている税金で、4月1日の時点で所有している自動車の総排気量に応じて課税されます。1年間分の税額を毎年支払うため、5月中に車検証に記載された住所へ宛てて納付書が送付され、金融機関やコンビニなどで支払うことができます。また、近年は電子決済で支払い手続きができる都道府県や市区町村も増えています。
3.自動車税・軽自動車税はいつ払う?
次に、自動車税と軽自動車税の納付期限について解説します。
納付期限は、自動車税・軽自動車税ともに、原則として5月31日です。ただし、5月31日が土日祝などにあたる場合は、6月上旬まで延長が可能です(例外的に青森県と秋田県のみ、6月末が納付期限になります)。
納税通知書はいつ届く?
自動車税の納税通知書が届くのは5月初め頃となります。車検証に記載されている住所宛に納付書が郵送で送られて来ますので、その時期になったら注意しておくようにしましょう。
もし、住所が変わった場合はすみやかに住所変更登録をしましょう。この手続きを忘れてしまうと、納付書が届かないなどの事態に見舞われてしまいますので注意しましょう。
また車を譲渡した場合や、廃車とした場合は管轄の運輸支局又は自動車検査登録事務所にその旨を登録し、住所変更や名義変更の申告が必要です。正しく届け出をしない場合、引き続き課税されてしまうことがありますので、確認するようにしましょう。
運輸支局で名義変更や住所変更を行う場合、申告の期限が15日以内と定められています。手順や必要な書類等、詳しくは下記の記事で紹介しています。
4.自動車税・軽自動車税の税額一覧
自動車税の納付額は車の排気量に応じて設定されていますが、車の新車登録時期や新車登録からの経過年数、用途区分によっても納付額が大きく異なります。自家用乗用車の税額の仕組みについて解説します。自動車税の納付額は、エンジン排気量が0.5L増えるにしたがって累進的に上乗せされる仕組みです。エンジン排気量が0.66L以下の軽自動車は一律10,800円と定められています。
排気量 | 2019年9月30日以前に 新車登録された車の基本納付額 |
2019年10月1日以降に 新車登録された車の基本納付額 |
---|---|---|
軽自動車 | 10,800円 | 10,800円 |
660cc超~1,000cc以下 | 29,500円 | 25,000円 |
1,000cc超~1,500cc以下 | 34,500円 | 30,500円 |
1,500cc超~2,000cc以下 | 39,500円 | 36,000円 |
2,000cc超~2,500cc以下 | 45,000円 | 43,500円 |
2,500cc超~3,000cc以下 | 51,000円 | 50,000円 |
3,000cc超~3,500cc以下 | 58,000円 | 57,000円 |
3,500cc超~4,000cc以下 | 66,500円 | 65,500円 |
4,000cc超~4,500cc以下 | 76,500円 | 75,500円 |
4,500cc超~6,000cc以下 | 88,000円 | 87,000円 |
6,000cc超 | 111,000円 | 110,000円 |
年数が経過した車は重課対象になる
1台の車を長期に渡って乗り続けることは、課税項目が増える懸念があります。新車登録から13年が経過した車は、自動車税種別割・軽自動車税種別割がおよそ15%増額されるためです。また、自動車重量税も引き上がるため維持費の負担が増えることを踏まえ、車に関わる税金を抑えるには、ある程度経過した車は買い換えるのがおすすめです。
ただし、ハイブリッドカーは13年が経過しても重課対象になりません。自動車税種別割を抑えるなら、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、クリーンディーゼル車などのエコカーへ乗り替えるのも視野にいれてみてはいかがでしょう。
5.自動車税・軽自動車税を節税する方法
自動車税・軽自動車税は、車の保有期間や購入時期、用途区分によっても変動します。ここでは、自動車に関連する税金の節税方法を解説します。
グリーン化特例を活用する
グリーン化特例とは、電気自動車やハイブリッド車など環境性能の良い車を購入した場合、新車登録の翌年度分の税額が減税される特例措置です。2023年3月31日までに新車登録を行った際に燃費基準の達成基準の度合いによっておおむね75%の減税となっていました。
グリーン化特例が適用される車両 | 軽減率 |
---|---|
電気自動車 燃料電池自動車 プラグインハイブリット車 天然ガス自動車 |
75% |
2026年3月31日まで |
このグリーン化特例も時限立法として2023年3月31日が期限とされていましたが、2022年12月に3年間の延長が決定し、2026年3月31日までとなりました。
一方で、環境に負担がかかると判断される一定要件を満たす車には、税金の上乗せが行われます。例えば自動車税の場合、新規新車登録等から13年以上が経過したガソリン車とLPG車は、基本納付額に約15%上乗せされた自動車税が課税されます。
軽自動車も同様にグリーン化特例が適用されますが、適用条件は適用期間中に初めて車両番号の指定を受ける減税対象車を取得した場合に限ります。
ただし、グリーン化特例が適用されるのは、普通車の場合は新車登録の翌年度分から、軽自動車の場合は減税対象車を取得した翌年度分からとなる点に注意しましょう。
また、東京都では独自に「ZEV 導入促進税制」という課税免除制度を導入しています。
電気自動車、燃料電池自動車(水素を燃料とするもの)、プラグインハイブリッド自動車などを対象に、初回新規登録時の自動車税(月割)及び翌年度からの5年度分の自動車税が減税されます。
購入時期を考慮する
車を購入する時期によっても自動車税や軽自動車税は変動します。
自動車税は、毎年4月1日時点の所有者に課せられます。ただし車の購入が年度途中であれば、課税期間は新車登録の翌月から翌年3月31日までの月割りとなるため、例えば、10月に新車を登録した場合、自動車税は翌11月から翌年の3月までの5ヶ月分が課税対象期間となります。
つまり、毎月の初日である1日に購入すれば、購入当月分、1ヶ月分の税金を節約できます。
一方、軽自動車税の場合は、年度途中に購入すると翌年4月まで課税されません。4月2日以降のできるだけ早いタイミングで車を買えば、それだけ多くの軽自動車税を軽減できます。
年度途中に自動車や軽自動車を買い替える予定がある場合は、車の売却と購入の適切なタイミングを検討しましょう。
障害をお持ちの方は減免されることも
お住まいの地域によっては、障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳など)をお持ちの方を対象に、自動車税や軽自動車税を減免されることもあります。
例えば東京都の場合、上限45,000円の減免を受けることができ、上限を超えた部分を納税することになります。
自動車税は都道府県、軽自動車税は市区町村が管轄するため、地域や車種により減免制度の有無や内容が異なります。詳しくはお住まいの地域の自治体へご確認ください。
6.自動車税の支払い方法
自動車税の支払い方法には、いくつかの種類があります。それらの支払い方法について解説します。
スマートフォンのアプリ決済
近年、自動車税の支払い方法として人気なのがスマートフォンのアプリ決済です。
スマートフォンのアプリ決済による納付のメリットは、24時間いつでも好きなタイミングで支払えることです。納付書に記載されたバーコードを読み取るだけで、簡単に支払いが完了します。また、同じオンライン決済でも、クレジットカードのように決済手数料がかかりません。
ただし、自動車税をスマートフォンのアプリ決済で支払うと、原則として納税証明書(領収書)が発行されません。納税証明書が必要なときには、都道府県事務所や金融機関、コンビニなどに納付書を持参し、現金で支払ったその場で納税証明書を受け取るようにしましょう。
現金支払い
現金支払いの場合には、郵送で届いた納付書を使って支払いを行います。納付書を各窓口やコンビニのレジに提出するだけで支払いができる、最も一般的な支払い方法です。
納付書での支払いが可能な場所は、銀行・信託銀行・信用金庫などの各金融機関、郵便局やゆうちょ銀行、コンビニや都道府県税事務所などが挙げられます。納付可能な場所については、納付書の裏面などにも記載があるので、確認しましょう。
口座振替
自動車税の口座振替は、預金口座からの自動引き落としによる納付となります。手数料がかからず、納付期限内に自動で引き落とされるため、納付し忘れる心配がありません。
口座振替をするためには、事前に役所や銀行での申し込み手続きが必要です。その際には、預金通帳や口座届け出印などが必要となります。
ペイジー
自動車税はペイジーでの支払いにも対応しています。ネット銀行やATMからの支払いが可能で、手数料も不要です。
ネット銀行のアプリからログインして支払いができますので、スマートフォンがあればいつでもどこでも納付が可能なのが魅力。今後利用者が増加していくことが予想されます。
クレジットカード
クレジットカード決済での納付も可能です。主要クレジットカード会社はすべて対応しており、東京都ではペイジーと同じくパソコンやスマートフォンからの支払いもできます。
クレジットカードで自動車税を納付する際にはクレジットカードの決済手数料が別途必要になりますので、そちらを理解したうえで納付しましょう。
7.自動車税の納税証明書は保管するべき?
自動車税の納税証明書とは、自動車税を支払い、滞納がないことを証明するもので、納税通知書の右端に付いています。原則として保管が必要とされる書類ですが、取り巻く環境は少しずつ変化してきています。そこで納税証明書の保管について解説します。
納税証明書が発行されるタイミング
納税証明書は、都道府県税事務所や金融機関、コンビニなど、いずれかの窓口で自動車税を支払ったときに、納税通知書の該当箇所に収納押印されることで発行されたものとみなされます。
ただし、注意しなければならないのが、窓口以外で自動車税を納付する場合です。口座振替やクレジットカード、スマートフォンのアプリ決済などを利用すると、原則として領収書は発行されません。そのため、納税証明書を発行するために、自治体へ依頼することになるうえ、1週間程度の時間がかかります。
納税証明書が必要になるのはいつ?
以前は車検時に自動車税の納税証明書が必要でしたが、2015年4月1日から、陸運局ならびに都道府県税事務所でオンラインによる納税確認ができるようになったため、納税証明書の提出は不要となりました。
ただし、オンラインで納税確認できるようになるまで2~4週間ほどかかるので、車検の時期が近づいたら自動車税の支払いは計画的に行うようにしましょう。
車検以外にも車の売却などで納税証明書を求められることがあるので、手元にある証明書は保管しておきましょう。
軽自動車や小型二輪自動車(125cc超250cc以下)の車検では納税証明書を省略できないので、これまでどおり納税証明書を入手しなくてはなりません。オンライン決済などを利用して納税証明書が手元にない場合には、早めに発行手続きを行うようにしましょう。
8.自動車税を滞納してしまった時のリスク
もしうっかり忘れてしまったり、やむを得ぬ事情により自動車税を滞納してしまった場合、いったいどうなるのでしょうか。
自動車税種別割を滞納した場合には、まず延滞金の発生・コンビニ支払いの停止などのペナルティーがあります。その状態でさらに延滞が続くと、車検が通らなかったり、資産が差し押さえられたりするなどのリスクがあります。
それらのリスクについて、項目ごとに紹介します。
延滞金の発生
自動車税を滞納すると、延滞金が発生します。2022年1月1日〜2024年12 月31日までの延滞金利率は、1ヶ月までの滞納であれば納付額の2.4%、1ヶ月以上になると一気に8.7%に引き上がります。
なお、延滞金は1,000円未満が切り捨てとなり、999円までは延滞金はかかりません。また、1,000円以上は100円未満が切り捨てになります。例えば自動車税の納付金額が29,500円で、年8.7%の延滞金が加算された場合、延滞金が1,000円を超えるのは11月以降ということになります。
コンビニ支払いができなくなる
自動車税を滞納した場合、一定期間を過ぎるとコンビニでの支払いができなくなる場合があります。支払う際には、各金融機関や各都道府県の税事務所などにまで出向かなければいけません。
車検が通らない
滞納している状態では車検を受けることができないため、車検の有効期間が更新できず、その状態で運転すると「無車検運行」となってしまいます。無車検での走行は道路交通法違反に当たる行為ですので、免許の取り消しや処罰の対象にもなります。
資産の差し押さえ
自動車税を滞納し、延滞金が加算された納付書が届いた以降も支払わないままでいると、財産の差し押さえ通知が届き、給与や銀行口座の差し押さえが行われます。
給与の差し押さえの際には勤務先の会社に通知が届きますので、会社の同僚や社長にまで自動車税を滞納していることがわかってしまうなど、信用を大きく損なうことにつながってしまいます。
9.自動車税を滞納した場合の支払い方法
自動車税を滞納した際の支払いは、納付期限内・納付期限外・催促状が届いた場合で異なります。それらの支払い方法について解説をします。
納付期限内の場合
自動車税を滞納した際の支払いを納付期限内に行う場合は、納付書にコンビニでの取り扱い期限が記載されていますので、その期限内に支払えば問題ありません。
納付期限を過ぎた場合
支払いの納付期限を過ぎた後は、納付書に書かれている連絡先に連絡をして、納付書の再送をしてもらうのが一般的です。
ただし、対応は自治体によって異なる場合があります。再送が難しい場合には直接出向いての支払いとなりますので、電話で事前に確認することをおすすめします。
督促状が届いた場合
督促状が届いた後に行う方法もあります。この督促状は、納付期限日を過ぎてから数回届きます。
督促状に気づかず、支払いができていない場合には、差押通知書が送付され、給与などを差し押さえられてしまう可能性がありますので、すみやかに支払いを済ませましょう。
10.監修者コメント
自動車税は、1年に1回、翌3月までの分を前払いで納めます。普通車を廃車にした場合は、3月までの月割分が還付金として戻ってきます。お持ちの車が古い普通車であるために不便や不安を感じているのなら、3月まで待たずに廃車にするのも悪くないと思います。
廃車にせずに売却する場合は自動車税の還付はありませんが、買い取り額に相当分を上乗せしてもらえることがあります。自動車税を納めたばかりの時期は上乗せ額が大きくなることも多いので、売却や下取りに出す際は交渉してみるとよいでしょう。