皆さんは「止まれ」の標識が意味する「一時停止」について、正しく理解できていますか?一時停止すべき場所や位置、停止時間などの理解が曖昧なまま運転してしまうと、一時停止違反で罰せられる可能性があります。また、自転車の一時停止違反は、実は車より重い罰則が設けられています。
慣れた道ほど、つい一時停止をおろそかにしがちです。車・自転車のどちらにおいても正しく運転できるよう、一時停止の基準や違反した際の罰金・反則点数について、しっかり理解しておきましょう。
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1. 何をすると一時停止違反になる?一時停止の基準とは
定められた場所で一時停止を怠った場合に科せられるのが一時停止違反です。正確な罰則名は「指定場所一時停止等違反」、踏切では「踏切不停止等違反」と言います。指定された交差点や踏切で一時停止を怠った場合はもちろん、適切でない位置での一時停止にも罰則が科せられます。また、この罰則は車だけでなく自転車などの軽車両にも適用されます。
では、一時停止になる基準は何なのでしょうか。一時停止について定められている道路交通法第43条によると、信号機などによる交通整理が行われていない交差点の直前では、道路標識に従って一時停止をしなければなりません。
しかし、停止すべき場所や停止時間については明記されておらず、これが一時停止に対する認識を曖昧にしています。
一時停止違反にならないために意識すべきものは、主に停止位置、停止時間、一時停止の標識の3つです。それぞれ詳しく解説します。
停止位置は厳密に
正しい一時停止位置は、車の先端が停止線を超えない位置です。少しでも停止線を超えてしまうと、交差道路からの右左折車の進路を妨害する恐れがあります。 また、あまりに手前過ぎる位置での停止だと、充分な安全確認を行えないとみなされ、検挙の対象となる恐れがあります。
停止線の直前の位置で車を一度停止させ、見える範囲の安全が確認できてから徐行で前進し、さらに左右を見て広範囲の安全を確認するのが正しい一時停止です。
一時停止の目的は止まることではなく、あくまで安全を確保することです。正確に止まってから安全確認をしっかり行いましょう。
停止時間に規定はない
一時停止を規定している道路交通法第43条では、一時停止の義務は記述されていますが、停止時間に関する記述はありません。明確な基準がないため、警察官が一時停止をしなかったと判断すれば、取締りを受けることになります。
安全確認を十分にした、と判断されるには1秒未満では短すぎるでしょう。少なくとも、数秒間は必要と言えます。
とはいえ、一時停止は取締りを受けるかどうかではなく、交通安全のためのものです。車を完全に停止させ、左右の安全確認ができるかどうかが本質であることを理解しておきましょう。
一時停止の標識
逆三角形で赤地に白文字で書かれた「止まれ」および「STOP」が一時停止の標識です。目立つ赤色かつ鋭角的な三角形の看板により、高い優先度で危険を知らせています。
一方、停止線は法定外表示であり、標識があってはじめて法的拘束力を発揮します。そのため、一時停止の標識がなく停止線のみが道路にある場所は一時停止の義務はありません。しかし、標識がなくとも必要があって停止線が描かれているので、危険回避のために一時停止することが推奨されます。
停止線がなく一時停止標識のみが存在する場合は、交差点に進入する直前で一時停止を行わなければ一時停止違反に問われます。停止線が消えている、もしくは薄くなっている場合もあるため、交差点にさしかかる際は一時停止標識の有無をしっかりと確認しましょう。
2. 一時停止違反の取締り件数と事故件数
一時停止違反は、スピード違反と1、2を争うほど取締り件数が多い違反です。2021年(令和3年)の一時停止違反による取締り件数は1,588,628件にのぼります。そのうち一時停止違反が原因による死亡事故は64件でした。近年は取締り件数や事故件数が減少傾向にありますが、依然として交通事故の中では高い割合を占めています。
また、一時不停止が原因による自転車死亡事故も減少傾向にはあるものの、2021年(令和3年)には26件発生しています。一方で自転車の一時停止違反による取締り件数は年々伸び続けており、自転車の一時停止義務の認知の低さが浮き彫りとなっています。
一時不停止による事故の中で特に多いのは、出会い頭の衝突事故です。一時不停止によって速度が高い状態で交差点に進入することにより適切な安全確認が行えず、相手車両や歩行者などの発見タイミングが遅れて事故につながります。警察官が交差点に張り付いて一時不停止を摘発するのは、それだけ重大な事故が想定されるからです。
3. 一時停止違反になるとどうなる?
一時停止には、「指定場所一時停止等違反」と「踏切不停止等違反」の2つがあります。
「指定場所一時停止等違反」は、信号機などによる交通整理が行われていない交差点の直前で一時停止を怠ることです。
一方、踏切の直前で一時停止を怠ることを「踏切不停止等違反」と言います。ただし、信号機がある踏切かつ信号機に従って通行する踏切では、踏切不停止等違反にはなりません。
指定場所一時停止等違反・踏切不停止等を違反した場合に課される罰則を以下で詳しく解説します。
罰金の支払いと反則点数が科される
「指定場所一時停止等違反」「踏切不停止等違反」をすると、罰金の支払いと反則点数が科されます。反則点数はいずれも2点です。
ただし、過去2年以上無事故・無違反だったドライバーに限り、3点以下の軽微な反則点数は3ヶ月間で失効しますが、違反歴は1回として残ります。
反則金は、車の種類と反則の種類により以下のとおり定められています。
反則名 | 大型車 | 普通車 | 二輪車 | 原動機付自転車 |
---|---|---|---|---|
指定場所一時停止等違反 | 9,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 5,000円 |
踏切不停止等違反 | 12,000円 | 9,000円 | 7,000円 | 6,000円 |
ゴールド免許の場合
ゴールド免許保有者が一時停止違反のような軽微な違反を犯した場合、反則点数は3ヶ月で失効したとしてもゴールド免許は剥奪されます。ただし、違反をした時点でブルー免許に変わるわけではありません。ゴールド免許でなくなるのは、次回の運転免許更新のタイミングです。また、軽微な違反が1回のまま次回運転免許更新を迎えた場合は、免許証の色はブルーになり有効期限5年が維持されます。しかし、重大な違反もしくは2回以上の軽微な違反の場合、免許の有効期限は3年になるので注意してください。
自動車任意保険のゴールド免許割引は保険の開始日(始期日)時点での免許の色が適用されるため、契約期間内はゴールド免許割引が継続されます。
4. 自転車も一時停止違反になるため注意が必要
道路交通法上では自転車は軽車両であるため、標識に従って一時停止して安全確認を行なわなくてはなりません。自転車の「指定場所一時不停止違反」には、車の罰則より重い3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
また、3年間に2回以上違反を起こした場合は、「自転車運転講習」の受講命令が届きます。命令に従わなかった場合には5万円以下の罰金が科せられるため、必ず講習を受けるようにしましょう。自転車運転講習の時間は3時間、受講手数料は6,000円です。
2021年(令和3年)には、全国で自転車乗用中の一時停止違反により26人が死亡しています。自転車乗用中の死亡事故の原因はさまざまですが、一時停止違反が原因の割合は、65歳未満は全体の4.5%なのに対し、65歳以上は全体の8.5%と高くなっています。
自身と他の通行者の命を守るため、安全確認を行うことなくそのままのスピードで交差点に入るなどの行為は避けましょう。
なお、歩行者の場合は道路交通法上の軽車両に該当しないため、一時停止をする義務や罰金はありません。
しかし、歩行者の場合も、安全確認を行わずに交差点に入る、道路を渡るなどの行為が危険であることは間違いありません。
2021年(令和3年)に事故で亡くなった歩行者のうち、横断中に亡くなった方は65歳未満で47.9%、65歳以上では75.2%にものぼります。
「車が停止してくれるだろう」などの思い込みで安全確認を怠ることはせず、車が少ない道でも、必ず左右の確認などを行った上で進みましょう。
5. 安全運転を心がければ一時停止は自然と身につく
一時停止違反とは、信号がない交差点や踏切などの決められた場所で一時停止を怠ることです。一時停止を怠ると、反則点数2点の違反となり罰金が科されます。
車だけでなく自転車にも一時停止が義務付けられているため注意が必要です。
また、日本と海外でも一時停止のルールは異なります。
一時停止の標識について解説しましたが、海外ではほとんどの国が採用している一時停止の標識は八角形です。逆三角形の形状で、白地に赤枠の標識は海外では「譲れ」「非優先道路」を意味しています。
また、海外で運転する場合には、踏切で一時停止をすると危険です。踏切の警報器が鳴っていない、電車が来ないのに止まると後ろから追突される危険性があります。海外ではほとんどの踏切で一時停止が義務付けられていません。その国のルールを確かめて運転しましょう。
一時停止の本質は、一時停止をして安全を確認することです。車・自転車・歩行者にかかわらず、自身の命を守るためにも、安全運転を心がけましょう。