クルマ

準中型自動車を運転するには?制度や免許の取得方法を徹底解説!

更新

2024/07/29

公開

2024/07/29

  • Twitterで共有する
  • Facebookでシェアする
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

2017年に新たな区分として導入された準中型自動車。準中型免許を取得すれば運転できますが、具体的にはどんな車に乗れるのでしょうか?また、準中型免許は普通免許や中型免許とどのように違うのでしょうか?

この記事では、準中型自動車が導入された背景や免許の取得方法など、準中型免許にまつわる疑問にまとめてお答えします。

目次

    1.準中型自動車とは?

    道路交通法の改正によって、2017年3月12日から普通自動車と中型自動車の間に新しく準中型自動車の区分が設けられました。準中型自動車とは、車両総重量3.5t以上7.5t未満、最大積載量2t以上4.5t未満の自動車を指します。準中型自動車の新設に伴って準中型免許も設けられています。

    準中型自動車が新設された背景

    準中型自動車の区分が新設され、準中型免許制度がスタートした背景には、物流業界のドライバー不足問題があります。

    近年、集配などで使用されるトラックは、いわゆる2tトラックや3tトラックが主流ですが、保冷設備の架装などによって車両総重量が5tを超えるものが多くなりました。改正前までは5tを超えるトラックを運転するには中型免許が必要でした。

    しかし、中型免許の取得には「20歳以上、普通免許の取得期間が2年以上」という条件がつけられていました。このため、高校卒業後すぐにトラックドライバーとして働きたくても、最短でも20歳までは中型免許を取得できないという問題があったのです。

    そこで、18歳以上なら普通免許の取得経験がない人でも取得できる準中型免許が新設され、18歳でも車両総重量7.5t未満までの車を運転できるようになりました。これによって運送会社などへの若手の就労機会の拡大、ドライバー不足の解消につながると考えられています。

    また、準中型免許の取得時に準中型自動車(貨物自動車)を使用した技能教習・試験を行うことで、貨物自動車による交通事故の削減も期待されています。

    2.準中型免許で運転できる車は?

    それでは、準中型免許で運転できる車にはどんなものがあるのでしょうか?普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許の4つを比較すると次のようになります。

    免許の種類 普通免許 準中型免許 中型免許 大型免許
    自動車の種類 普通自動車 準中型自動車 中型自動車 大型自動車
    車両総重量 3.5t未満 3.5t以上7.5t未満 7.5t以上11t未満 11t以上
    最大積載量 2t未満 2t以上4.5t未満 4.5t以上6.5t未満 6.5t以上
    乗員定員 10人以下 10人以下 11人以上29人以下 30人以上
    参考
    警視庁

    準中型免許では、車両総重量7.5t未満、最大積載量4.5t未満、乗員定員10人以下の準中型自動車を運転することができます。具体的には、コンビニ配送や宅配便、引っ越し業者などで主流となっているバン型小型トラックや保冷車、平ボディ小型トラックなどのいわゆる2tトラックです。他にも、2tトラックにクレーンを搭載している2tユニック車、高所作業車、2tゴミ収集車(パッカー車)なども運転できます。また、準中型免許を取得すれば、普通自動車、小型特殊自動車、原動機付自転車も運転可能です。

    ただし、2tトラックでも中型免許が必要なものもあります。運転前に準中型免許で運転可能かどうか必ず確認しましょう。また、いわゆる4tトラックは車両総重量が8tほどのものが多く、中型免許を取得しないと運転できません。

    準中型免許は初心者マークが必要

    普通免許または準中型免許を取得してからの期間が通算1年未満(免許停止期間を除く)のドライバーは、運転する際に初心者マーク(初心運転者標識)を車に表示することが義務付けられています。ただし、普通免許を取得してから通算2年以上たってから準中型免許を取得した場合は、表示の義務はありません。

    以前は、準中型免許の場合、普通自動車を運転するときは初心者マークの表示義務がありませんでした。道路交通法の改正により、2020年12月1日以降に準中型免許を取得した人は、取得後1年未満の期間は、準中型自動車だけでなく普通自動車を運転するときも初心者マークの表示が義務付けられていますので注意しましょう。

    表示せずに運転した場合、「初心運転者標識表示義務違反」となり、違反点数1点、反則金が普通自動車6,000円、大型車(中型、準中型含む)7,000円となります。

    3.準中型免許の取得方法は?

    次に、準中型免許の取得方法を見てみましょう。すでに保有している免許の有無や種類によって必要な教習時間や費用が変わってきます。

    準中型免許の取得条件

    準中型免許を取得するには、下記の条件を満たしている必要があります。

    • 満18歳以上
    • 視力が両眼で0.8以上かつ、一眼でそれぞれ0.5以上(眼鏡などの使用可)
    • 三桿法の奥行知覚検査器により3回検査し、その平均誤差が2cm以下
    • 色彩識別能力で赤色・青色・黄色を識別できる
    • 10mの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえる(補聴器などの使用可)

      この条件を満たさない場合も特定後写鏡(ワイドミラーなど)の取り付けや聴覚障害者標識を表示することで取得可能

    準中型免許の取得方法、所要時間

    取得するためには、自動車教習所に通う方法と運転免許試験場で直接試験を受けるいわゆる「一発試験」の方法があります。教習所に通う場合、保有している免許によって教習時間が次のように異なります。

    保有している免許 技能教習 学科教習
    免許なし、原付免許 41時限 27時限
    普通自動二輪 39時限 3時限
    普通免許(AT限定) 17時限 1時限
    普通免許(MT) 13時限 1時限

    免許取得までの主な流れと費用は次のとおりです。

    【指定自動車教習所に通う場合】

    <主な流れ>

    1. 指定自動車教習所に入校・運転適性検査を受ける
    2. 指定自動車教習所で第1段階の学科教習・技能教習を受ける
    3. 指定教習所の修了検定に合格する
    4. 仮免許の交付
    5. 第2段階の学科教習・技能教習を受ける
    6. 指定自動車教習所の卒業検定に合格
    7. 運転免許試験場で適性試験・学科試験に合格
    8. 準中型免許の交付

    運転免許試験場での学科試験は95問出題され、90点以上で合格です。適性検査・学科試験に合格すればその日のうちに免許の交付を受けることが可能です。すでに他の免許(普通・大特・二輪)を持っている方は学科試験が免除になります。

    <費用>

    教習費用は持っている免許の有無や地域、自動車教習所によって大きく異なります。下記は目安として参考にしてください。

    • 教習費用
      通学する場合で、免許を何も持っていない方は35万〜40万円、普通免許(AT限定)保有で18万〜20万円、普通免許(MT)保有で16万〜20万円ほどが目安です。
    • 手数料 
      運転免許試験場に支払う手数料です。不合格の場合は再受験の際に改めて支払います。
      3,600円(受験料1,550円、免許証交付料2,050円)

    【一発試験を受ける場合】

    <主な流れ>

    1. 運転免許試験場で適性検査に合格
    2. 運転免許試験場で仮免許試験に合格
    3. 仮免許の交付
    4. 指導員を乗せて路上練習(5日以上)
    5. 運転免許試験場で本免許試験(学科試験・技能試験)に合格
    6. 自動車教習所で取得時講習を受講
    7. 準中型免許の交付

    すでに普通・大特・二輪のいずれかの免許を持っている方は学科試験が免除になります。

    <費用>

    • 仮免許試験手数料
      5,500円(受験料2,900円、試験車使用料1,450円、仮免許証交付料1,150円)
    • 本免許試験手数料
      8,650円(受験料4,100円、試験車使用料2,500円、免許証交付料2,050円)
      ※別途、取得時講習受講料(普通免許あり:17,800円、普通免許なし:32,200円)

    学科試験や技能試験は予約制になっている自治体が多いため、事前に確認しておきましょう。一発試験は教習所に通う費用を浮かせられるものの、難易度が高く合格率は非常に低くなっています。

    4.5t限定準中型免許とは?

    「5t限定準中型免許」「8t限定中型免許」という言葉を聞いたことがある方もいることでしょう。これらは道路交通法の改正で、免許の取得タイミングによって運転可能な車両の範囲に食い違いが生まれてしまうことを解消するために設けられたものです。

    たとえば、2007年6月2日に中型免許が新設されたことによって、普通免許で運転できる車は車両総重量5t未満、最大積載量3t未満に縮小されました。これにともなって、2007年6月1日以前に取得した普通免許は「8t限定中型免許」に区分され、限定付きの中型免許に変わりました。

    続いて、2017年3月12日に準中型免許が新設されると、普通免許で運転できる車のサイズはさらに小さくなり、車両総重量3.5t未満および最大積載量2t未満になりました。この際、2017年3月11日以前に取得した普通免許は「5t限定準中型免許」として限定付きの準中型免許になりました。免許証に「準中型車は準中型車(5t)に限る」と条件が記載されているものは5t限定準中型免許です。

    5t限定準中型免許は限定解除できる

    5t限定が付いている準中型免許は「限定解除審査」を受けることで、限定解除できます。解除するには指定自動車教習所に通う方法と、直接、運転免許試験場で「一発試験」を受ける方法があります。

    【指定自動車教習所に通う場合】

    教習所に通う場合は、技能教習を受講した後、技能審査を受けます。技能教習は保有している5t限定準中型免許がMTなら4時限、ATなら8時限です。学科教習はありません。技能審査に合格すると「技能審査合格証明書」が発行されます。これと免許証を運転免許試験場に持参し、手続きすればその場で限定解除された準中型免許を受け取ることができます。費用は教習所の受講費用の他、運転免許試験場で手数料として1,400円を支払います。

    【一発試験を受ける場合】

    一発試験の場合は、運転免許試験場で技能検査を受け、合格すれば限定解除となります。技能検査は多くの自治体で予約制になっています。また、手数料として受験料1,400円、試験車使用料1,450円の合計2,850円を支払います。一発試験は非常に難易度が高く、不合格だった場合は予約し直し、受験料も改めて支払わなければなりません。

    5.監修コメント

    乗用車に多い5ナンバー車の全長は4.7m以下とされています。それに対して、2tロングトラックの全長は約6mもあります。
    8t限定中型免許の保有者である私も2tロングトラックを運転した経験がありますが、最初は感覚の違いに戸惑ったものです。特に右左折時は助手席に座る同乗者にも確認してもらい、慎重に操作をしました。
    自動車教習所には、いつもと違う車を運転する人に向けた練習プランを用意しているところもあります。8t限定中型免許や5t限定準中型免許の保有者が2tトラックなどを運転しなければならなくなった場合は、事前にそうしたサービスを利用することもおすすめです。

    おとなの自動車保険はこちら

    井口 豪
    監修
    井口 豪(いのくち たけし)

    特定行政書士、法務ライター。タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。自動車関連、ファッション、スポーツ、ライフスタイル、医療、環境アセスメント、各界インタビューなど、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。約20年にわたりフリーライターとして活動した経験と人脈を生かし、「行政書士いのくち法務事務所」を運営。自動車関連手続き、許認可申請、入管申請取次、補助金申請代行、遺言作成のサポート、相続手続きなど法務のほか、執筆業も手掛ける。

    • Twitterで共有する
    • Facebookでシェアする
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • LINEで送る