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野生動物と衝突してしまったら?ロードキルの正しい対処法を解説!

更新

2024/03/25

公開

2024/03/25

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山間部などの道路を走行中、野生動物に遭遇したことはないでしょうか。場合によっては、飛び出してきた野生動物を避けきれずに、衝突してしまうこともあります。本記事ではそうした野生動物との交通事故を起こした時の対応や、自動車保険によって補償されるのかについても解説します。

目次

    1. ロードキルとは?

    ロードキルとは、道路上で起こる野生動物などの死亡事故のこと。国土交通省の「高速道路会社の落下物処理件数(令和4年度)」によると、高速道路のロードキルの件数は5.1 万件。調査で対象となった動物は、シカ、クマ、イノシシなどの大型動物、タヌキ、キツネ、イヌ、ネコなどの中型動物、鳥類などの小型動物などですが、その中で最も件数が多かったのは中型動物でした。

    多発するロードキルの発生を防ぐため、野生動物の生息域に接する高速道路では動物侵入防止柵の設置、動物の移動経路「けもの道」の確保などの対策がとられています。また、動物が道路に侵入する可能性のある場所では「動物が飛び出すおそれあり」という警戒標識を設置し、ドライバーへ注意喚起しています。このように様々な対策がとられていますが、それでも全ての事故を防ぐことは難しいのが現状です。

    出典
    落下物処理・動物死骸処理件数(高速道路会社分)(国土交通省)

    2. 運転中、野生動物と接触してしまったら?

    運転中に野生動物と接触した場合、その交通事故は「物損事故」になります。道路交通法第六十七条では、交通事故のことを「車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊」と記載していますが、動物は「物」として区分されているためです。以下より、野生動物と接触した時の対応について解説します。

    警察に報告する

    交通事故を起こしたドライバーには、「警察に交通事故の状況を報告すること」が定められています。交通事故を起こしてしまったら、直ちに警察に報告をしましょう。その際は、野生動物との接触事故であることに加え、交通事故の発生日時、場所、死傷者や負傷者の有無、ガードレールや後続車への損害などについても伝えます。なお、車の損害に任意保険を使用する場合は、警察から発行される事故証明書が必要となりますので、必ず報告するようにしましょう。

    動物を保護する(安全を確保する)

    交通事故を起こした時、「負傷者を救護し、道路における危険を防止する措置をとること」もドライバーの義務です。野生動物が負傷して動けないなどの場合、野生動物を道路上に放置してしまうと、後続車両への二次被害にもつながりかねませんので、きちんと措置をとる必要があります。ただし、野生動物に関しては安易に触ると感染症などの恐れもありますから、動物保護施設や動物病院、一般道であれば市役所や保健所、高速道路であれば管理団体や道路緊急ダイヤル「#9910」に問い合わせて、指示を仰ぐ方が賢明です。

    3. 接触した野生動物が死亡してしまったら?(ロードキルの場合)

    次に、運転中に野生動物と接触し死亡させてしまった場合の対応を解説します。

    警察と道路管理者/役所に連絡する

    上記で紹介した対応と同じく、まずは警察に交通事故の発生を報告します。交通事故の詳細や状況を伝え、任意保険を使う場合は、事故証明書をもらいましょう。また、高速道路では道路管理者、一般道では市役所や町役場へも交通事故の発生を連絡します。死亡した動物は、道路管理者や自治体が対処すると定められているからです。

    動物を移動させる

    ドライバーは、道路における危険を防止しなければいけません。可能であれば、タオルや段ボールを使用するなど素手で触らないようにして、動物を交通の妨げにならない路肩などに移動させられると良いです。ですが上述の通り、野生動物は感染症などの問題があるため、対処に困ったら道路管理者や自治体に指示を仰ぐようにしましょう。

    道路上で死亡した動物を発見した場合も「#9910」に連絡を

    自分が動物を死亡させてしまった場合だけではなく、死亡した動物を道路上で発見した場合も、二次事故を防ぐために道路緊急ダイヤル「#9910」に連絡をしましょう。道路緊急ダイヤル「#9910」は、無料で24時間受け付けています。全国共通の番号ですから、この機会に覚えておくといいでしょう

    4. 野生動物との衝突事故で保険は使える?

    野生動物には飼い主などの所有者がおらず、賠償責任を求める相手がいません。そのため、野生動物と接触した場合の交通事故は「物損事故」扱いになります。自動車保険には、「自賠責保険(強制保険)」と「自動車保険(任意保険)」の2種類ありますが、このうち自賠責保険は、人身事故の被害者救済を目的としたもの。補償範囲は「対人賠償」のみになるため、自賠責保険は使用できません。動物相手の交通事故では、加入中の任意保険を使うことになります。

    車両が破損した場合

    野生動物との衝突によって車両が損害した場合は、ガードレールや電柱等と衝突した場合と同じく、「単独事故(自損事故)」扱いです。自損事故で自身の車が損傷を受けた場合には、「車両保険」で補償を受けることになります。

    車両保険には一般的に、「一般型」とも呼ばれる「フルカバー型」と、「エコノミー型」の2種類があります。基本的には「一般型」(フルカバー型)は補償される範囲が広いため、単独事故や動物との衝突などが補償されることが多いですが、「エコノミー型」ではそれらは補償されないことが多いです。

    ただし、保険会社によって補償範囲は異なるので、詳細はそれぞれの保険会社に確認するようにしましょう。

    運転者や同乗者が負傷した場合

    動物との衝突を避けようとしてガードレールにぶつかったり、大型動物との衝突によって車に乗っている人が負傷してしまうこともあります。野生動物との衝突事故でドライバーである自分自身や同乗者が負傷した場合、補償が受けられるかは加入中の自動車保険の「自損事故に対応する補償」の有無で決まります。

    具体的には、自損事故で自分自身や同乗者が負傷してしまった場合には、「人身傷害保険」および「自損傷害保険」と「搭乗者傷害保険」で自身や同乗者の負傷などが補償されます。なお、一般的な自動車保険では補償範囲が似ている「人身傷害保険」か「自損事故保険」のどちらかひとつをセットさせるのが一般的です。

    詳しくは各保険会社のHPや加入中の保険証券などを確認しましょう。

    自損事故についての詳しい記事はこちら

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    対向車や歩行者に被害を発生させた場合

    動物との交通事故では、その他の車や歩行者などにぶつかってしまうケースもあります。もし対向車やガードレールなどの他物を損害した場合、対物賠償責任保険によって補償されます。怪我をさせてしまうなど人への死傷に関しては、対人賠償保険で補償されます。

    5. ロードキルを防ぐためには?

    野生動物の生息域に接する道路では、野生動物との衝突を防ぐために「動物が飛び出すおそれあり」という警戒標識があります。この警戒標識は、野生動物が飛び出す恐れのある場所の30~200m手前、左側の路端に設置されています。

    この標識を発見したら、速度を落とし、野生動物の出現に十分に注意して走行するようにしましょう。また、夜間は上向きライト(ハイビーム)を使うことも有効です。ライトの光が反射し、動物の目が光ることで、動物を発見しやすくなります。
    なお、ロードキルの多い地域では、衝突事故が起きやすいエリアや道路を自治体などが公開していることもあります。野生動物の生息域が多くある地域にお出かけする前には、事前にこうした情報をチェックし、いつもより安全運転を意識するといったドライバーとしての心がけも大切です。

    6.監修コメント

    予測できないところから飛び出してくる野生動物は、いくら気をつけていても避けられないことがあります。ただ、事故に遭うリスクを減らすことはできます。
    いわゆる「鹿避け笛」をフロント部分に取り付けると、エゾシカなどが嫌がる超音波を発することができるといわれています。ロードキル対策に有効な、高周波音を発生させる電子パーツも販売されています。ロードキルの危険性が高い地域にお住まいの方は、本稿にある対策法とあわせて、それらの使用を検討してみてはいかがでしょうか。

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    井口 豪
    監修
    井口 豪(いのくち たけし)

    特定行政書士、法務ライター。タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。自動車関連、ファッション、スポーツ、ライフスタイル、医療、環境アセスメント、各界インタビューなど、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。約20年にわたりフリーライターとして活動した経験と人脈を生かし、「行政書士いのくち法務事務所」を運営。自動車関連手続き、許認可申請、入管申請取次、補助金申請代行、遺言作成のサポート、相続手続きなど法務のほか、執筆業も手掛ける。

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