ニュースなどで耳にする「リコール」という言葉について、「リコールとは具体的に何なのか」と疑問に思ったことはないでしょうか。自分の車がリコールの対象になった時に備えて、意味や制度の仕組みを正しく理解しておくことは重要です。本記事では、自動車のリコールの意味やリコール対象になった場合の対応法、そして負担費用の有無について、わかりやすく解説します。
- 目次
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1. リコールとは?
リコールの意味
リコールとは、欠陥のある商品を事業者が自主回収し、無償で修理や交換を行うことです。リコールの対象となる商品は、食品や日用品、家電製品、自動車などさまざまです。いずれも、故障や不具合、設計上の欠陥などにより、ユーザーの安全性に影響を及ぼす可能性のあるものがリコールの対象になります。
リコール情報は、消費者庁や経済産業省、各事業者のウェブサイトで公表されています。自動車のリコール情報に関しては、国土交通省のウェブサイトでも確認することができます。
自動車におけるリコールとは
自動車におけるリコールとは、簡単に言うと「車に不具合が見つかった場合に、事業者が回収・修理を行う制度」です。
より詳しく説明すると、リコールの対象となるのは、設計や製造過程に問題があり、保安基準に適合していない・適合しなくなる恐れがある自動車です。リコール制度の目的は、そうした欠陥によって発生する事故や故障、公害を未然に防ぐことにあります。
自動車のリコールには大きく分けて2つのパターンがあります。ひとつは、自動車メーカーが自らの判断で行うもの。もうひとつは、国土交通省からの勧告・命令・公表などを受けて実施されるものです。基本的には、前者の自動車メーカーが自主的に行うリコールが主流です。
自動車メーカーが自らの判断でリコールを行う場合、あらかじめ国土交通大臣に届出を提出し、対象車両の自主回収・修理を進めます。なお、自動車メーカーが虚偽報告や、届出の義務違反、リコール命令に従わないなどの行為があった場合には、罰則(懲役1年以下、罰金300万円以下、法人罰金2億円以下)が科せられます。
「リコール」「改善対策」「サービスキャンペーン」の違い
リコールと同じような不具合の改善措置に、「改善対策」「サービスキャンペーン」があります。混同しやすいですが、この3つは明確に異なり、それぞれ以下のような意味があります。
不具合の内容 | 不具合の原因 | |
---|---|---|
リコール | 保安基準に適合しない(しなくなる恐れのある)不具合 | 設計または製作過程 |
改善対策 | 保安基準には適合するものの、安全や環境の保全に影響する可能性がある不具合 | 設計または製作過程 |
サービスキャンペーン | 上記に該当しないような不具合 | - |
リコールと改善対策、サービスキャンペーンの違いのひとつは、保安基準に適合するか・しないかです。保安基準に適合しない場合、車検に通らなくなるため公道を走ることができません。
とはいえ、保安基準に適合している改善対策であっても、安全性に影響を及ぼす可能性があります。リコールと改善対策の対象となった場合には、すみやかに修理を受けるようにしてください。
2. リコールの発生件数や例
リコールの発生件数
実際に、自動車のリコールはどれくらい発生しているのでしょうか。国土交通省の発表資料によると、令和4年度は383件、令和5年度は349件、令和6年度は337件でした。令和6年度の発生件数は前年より減っているものの、対象台数は前年に比べて約1.7倍に増加しました。
令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 | |
---|---|---|---|
発生件数 | 383 | 349 | 337 |
対象台数 | 464万9,433 | 810万4,217 | 756万4,968 |
リコールの事例
車の装置別に見ると、令和5年度では原動機の不具合が最も多く、全体の15%を占めました。次いで多かったのは、灯火装置14%、電気装置 12.9%です。
令和5年度の代表的な事例としては、ホンダの「N-BOX」など計25車種、約113万8,000台を対象としたリコールが挙げられます。不具合の原因は、低圧燃料ポンプのインペラ(樹脂製羽根車)がポンプカバーと接触し、作動不良を引き起こす恐れがあるというものでした。
また、同年にはトヨタの「ヤリス」など計3車種において、ロアアームのボールジョイント取付部の耐久性が不十分であることが判明し、約79万台がリコールの対象となりました。
不具合を早期に発見する取り組みも
自動車の不具合は、事故につながる可能性もあるため、早期に発見することが重要です。そのために、国土交通省では、「自動車の不具合情報ホットライン」を設置しています。
このホットラインとは、インターネットや電話を通じて、車の不具合に関する情報を自動車ユーザーから収集する仕組みのことです。寄せられた情報は、不具合情報としてウェブサイトに掲載されます。また、この情報をもとに、国道交通省は自動車メーカーに調査を行うよう指示し、リコールに該当すると判断された場合には、リコールの実施に進みます。
「自分の車に不具合があるか確認したい」「不具合情報を提供したい」といった場合には、以下の自動車不具合情報ホットラインを活用してください。
3. リコールが発生した場合の流れ・対応方法
自動車メーカーなどから通知の受け取り(ハガキ、電話、メールなど)
リコールが発生した場合、自動車メーカーや販売店からダイレクトメール(ハガキや手紙)、電話、メールなどで通知が届きます。この通知には、自身の車がリコール対象であることや、改善措置の案内が記載されています。
無償修理の流れ
通知を受け取ったら、自動車メーカーや販売店に連絡をして来店予約を取りましょう。リコールの通知がユーザーに届き始めると、回線が混み合い、予約が順次埋まっていきますから、通知が届いた時点で連絡することをおすすめします。
予約日時になったら店舗に来店し、点検・修理を受けます。修理にかかる時間は不具合の内容によって異なります。すぐに終わるものもあれば、場合によっては数日店舗に車を預けることもあります。
なお、リコールにおける点検・修理は無料です。
4. リコールに関するQ&A
リコールの期限はいつまで?
基本的に、リコールに関する期限は設けられていません。安全の観点から、リコール発表から時間が経ったとしても、メーカーや販売店は修理に応じることが一般的です。
通知に対応しなかった場合どうなる?
自動車のリコールに対しては、自動車ユーザー側も適切に対応する責任があります。道路運送車両法により、自動車の所有者には、自身の車が道路運送車両の保安基準を満たすよう維持する義務があるからです。
もしリコールの対象であるにもかかわらず対応しなかった場合、ユーザー自身に責任を問われることもあります。そのため、リコールの通知が届いた際にはすみやかに点検・修理を受けるようにしましょう。
通知が来なかったらどうする?
リコールの通知がなかなか届かず、自分の車がリコール対象なのかわからないというケースもあります。しかし通知が届かなくても、自身の車がリコール対象なのかは、自動車メーカーや国土交通省のウェブサイトで調べることができます。
一般的に、リコールが公表されているウェブサイトには「車名」「型式」「車台番号」「製作期間」などが記載されています。車検証と照らし合わせながら、対象かどうかを確認しましょう。
なお、リコールの通知はダイレクトメールで行われることが多いです。通知を確実に受け取るためにも、引っ越しなどで住所が変わった際は、車検証の住所変更を忘れずに行うことが大切です。
中古車もリコールの対象?
基本的には、中古車であってもリコールの対象となります。ただし、リコール通知を送るには、現在の所有者を特定する必要があるため、新車に比べて通知が届くまでに時間がかかることがあります。そのため、通知の時期が遅れる可能性があることを理解しておきましょう。
5. 監修コメント
2023年秋に私の愛車がリコールの対象になり、封書で通知がありました。愛車は輸入車ですが、購入した店舗とは別の正規ディーラーで点検を受けることができました。修理や部品交換の対象にはなりませんでしたが、その後も安心して乗り続けることができています。
輸入車であってもリコールの通知が受けられたのは、国内で正規販売されている車種だったからだといえます。いわゆる並行輸入車の場合は、リコール制度による点検や修理が受けられないことがあります。特に個人で輸入した場合はリコールの通知を受けられないこともあるので、日頃からオーナー自らが愛車に関する情報を収集しておく必要があります。