乗車中の子どもの安全のため、チャイルドシートは6歳になるまでの使用が法律で義務付けられています。また、子どもが6歳を過ぎた後も、安全を考慮しチャイルドシートの使用は継続することが望ましいとされています。そこで当記事では、チャイルドシートを切り替える目安や使い方のポイント、子どもが成長して使い終えた後の注意点を詳しく解説します。
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1. チャイルドシートの使用義務は何歳まで?
チャイルドシートの使用は道路交通法で定められた運転者への義務であり、「6歳未満」の子どもが車に乗る際には必ず使用しなければなりません(第71条の3第3項)。違反した場合には反則金こそないものの、運転者に違反点数が1点加算されるため注意が必要です。
また、車内のシートベルトを安全に使用するためには最低でも150cm程度の身長が必要であることから、子どもの発育状況によっては6歳になった後も引き続きジュニアシートなどを使用することが推奨されます。そのため、チャイルドシートを卒業するタイミングは「子どもによって一人ひとり異なる」と考えるのがよいでしょう。
こうした点を踏まえ、ここからはチャイルドシートを使うことの重要性や、子どもの成長に応じて適切にチャイルドシートを切り替えるための知識を紹介します。
2. 6歳を過ぎてもチャイルドシートはなぜ必要?
チャイルドシートを正しく使用しない場合の危険性
警視庁が令和6年に発表した統計によれば、チャイルドシート不使用の子どもが事故に遭った場合の致死率は、適正に使用していた子どもと比較して約4.7倍にのぼるとされています。
注目すべきは、この場合の「チャイルドシート不使用」にはシートベルト自体は使用していたケースも含まれる点です。まだ身体が十分に発育していない幼児期の子どもにとって、シートベルトはそのままでは適切に被害を軽減できず、逆に凶器となって身体を傷つけてしまうことがあります。
また、仮にチャイルドシートを使用していても、座らせ方や固定方法が適切でない場合には本来の機能が発揮されず、身体が飛び出すなどして子どもに危険が及ぶ可能性があります。そのため、チャイルドシートは説明書等に従い、必ず正しい方法で使用することが大切なのです。
チャイルドシートの使用状況
以上のような安全上の重要性が広く知られていることもあり、令和6年時点での6歳未満児全体でのチャイルドシート使用率は78.2%にのぼっています。
しかし、同年の取付・着座状況に関する調査では、適切に取り付けられているチャイルドシートは全体の69.8%、適切に着座させられていた幼児は全体の55.7%にとどまりました。こうしたデータからは、チャイルドシートの適切な使用方法に関してはいまだ周知が不十分であることがわかります。
- 出典
- https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/childseat.html
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/img/childseat/child_toristuke_chakuza2024.pdf
3. チャイルドシートの選び方・使い方のポイント
ここからは、チャイルドシートを適切に使用するためのポイントを紹介します。購入・取付などの際には以下のような点を意識しましょう。
チャイルドシートの切り替え時期
チャイルドシートは年齢や体格に応じて乳児用(ベビーシート)、幼児用、学童用(ジュニアシート)の三種類に分かれており、子どもの成長とともに切り替える必要があります。
実際のサイズや耐久性は製品によっても異なりますが、切り替えの基準となる対象年齢と適正身長・体重の目安は以下の通りです。
シートの種類 | 乳児用(ベビーシート) | 幼児用 | 学童用(ジュニアシート) |
対象年齢 | 新生児〜1歳頃 | 1歳〜4歳頃 | 4歳〜10歳頃 |
適正身長 | 70cm以下 | 65cm〜100cm | 150cm未満 |
適正体重 | 13kg未満 | 9kg〜18kg | 15kg〜36kg |
車や安全基準との適合性を確認する
チャイルドシートの仕様は製品ごとに多種多様であり、車種によっては取り付けられない製品も存在します。製品ごとの対応車種はメーカーが冊子やWebで公開している「車種別チャイルドシート適合表」などに記載されているため、事前によく確認したうえで購入しましょう。
また、チャイルドシートを選ぶ際には「国の安全基準に適合しているか」も重要なポイントとなります。安全基準に適合している製品には「Eマーク」または「自マーク」と呼ばれる表示があるため、こちらもあわせて確認することをおすすめします。
座席にきちんと固定する
事故の際にチャイルドシートが正しく機能するためには、車の座席に対してチャイルドシートがきちんと固定されている必要があります。3cm以上のぐらつきがないか、定期的にチャイルドシートを前後に揺らして確認しましょう。
市販されているチャイルドシートの設置方式は、「シートベルト固定」と「ISO-FIX(アイソフィックス)固定」の大きく二つのタイプに分けられます。タイプ別の設置手順は以下の記事でも詳しく解説していますが、実際に設置を行う際は必ず製品ごとの説明書に従うことが大切です。
なるべく後部座席で使用する
車の助手席に搭載されているエアバッグは大人用に設計されているため、子どもに対しては強い衝撃でけがをする、チャイルドシートとの間で挟まれるなどの二次被害を生む可能性があります。
こうした理由から、チャイルドシートはなるべく後部座席で使用することが推奨されています。やむを得ず助手席でチャイルドシードを使用する場合は、座席の位置を最大まで後ろに下げましょう。
また、乳幼児は頭が重く首がすわっていないため、体重が10kgを超えるまではチャイルドシートは後ろ向きに、座席に対して45度の角度になるように設置するのが正しい使用方法となります。ただし、運転の妨げになるため、助手席にはチャイルドシートを後ろ向きに設置してはいけません。
4. チャイルドシート卒業後の注意点
子どもが成長してチャイルドシートを卒業した後は、以下のような点に気を付ける必要があります。
シートベルトを正しく着用できているか
チャイルドシートを卒業した子どもは、以後はシートベルトを直接着用することになります。その頃には子どもも自力でベルトを着脱できるようになっているはずですので、まずは親御さんが正しい使い方を教えることが大切です。
シートベルトを適切に着用できているかどうかは、着用時に「ベルトが肩と腰骨にかかっているか」がひとつの目安となります。もしベルトが子どもの首とお腹にかかってしまう場合には、引き続きジュニアシートなどを使用して座高を調整しましょう。
エアバッグの危険性・適切な対応を認識する
前述の通りエアバッグは子どもに対する使用を想定していないため、チャイルドシートを卒業した後も子どもを乗車させる際には注意が必要です。もし子どもを助手席に乗せるのであれば、引き続き座席を後ろに下げておくことをおすすめします。
また、一部の輸入車には助手席のエアバッグの機能をオフにできるスイッチが搭載されています。該当する車の場合にはそちらを使用して切り替えるのもよいですが、大人が乗る際には必ずエアバッグをオンにすることを忘れてはなりません。
5. 監修コメント
2024年9月、JAFはシートベルトの使用目安を身長140cm未満から150cm未満に引き上げました。そう聞いて、心配になった小柄な方も多いのではないでしょうか。
確かに身長が低い大人にも、シートベルトが安全に機能しないリスクがあるといいます。ただ、正しく着用することでリスクを軽減できるといわれています。
シートベルトを正しく着用するために重要なのは姿勢です。背中が座面についた状態で、腰骨のあたりにシートベルトをとめることが推奨されています。大人の場合は、後部座席よりも、角度や高さを調整できる助手席の方が安全ともいわれています。
そうした検証が日々進められているので、不安な方はアンテナを張っておくとよいでしょう。