雪道や砂地、ぬかるみなどを走行中、車が突然動かなくなってしまう「スタック」。自力での脱出が難しく、焦ってしまう人も多いでしょう。本記事では、スタックとは何かという基本的な知識から、状況別の脱出方法、予防策や便利グッズまでわかりやすく解説します。
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1. そもそも車の「スタック」とは?脱輪との違い
車のスタックの意味
スタックとは、雪道やぬかるみ、砂地などに車のタイヤがはまり、動けなくなってしまう状態のことです。アクセルを踏んでもタイヤが空転し、前にも後ろにも進めなくなります。
誤った操作をすると状況がさらに悪化する恐れがあるため、スタックした際は、まず落ち着いて状況を冷静に判断することが大切です。
脱輪との違い
車のトラブルの一つに、「側溝にタイヤが落ちる」「縁石に乗り上げる」といった脱輪があります。脱輪とは、車のタイヤが道路から外れて走行不能になる状態を指します。
雪道や砂地などでタイヤがハマってしまう「スタック状態」も、広い意味では脱輪と呼ばれることがあります。しかし、タイヤが完全に道路から外れる脱輪と、雪などにタイヤがハマってしまうスタックは、厳密には異なる現象です。
車がスタックしやすい場所と原因
車がスタックしてしまう主な原因は、雪道やぬかるみ、砂地といった軟弱な路面です。こうした路面ではタイヤのグリップ力が低下するため、空転して前後どちらにも進めなくなってしまうのです。
2. ケース別・スタックから自力で脱出する方法
スリップした場合・新雪にはまった場合
STEP1:車をゆっくりと前後に動かし、周辺の雪を押し固める
スコップやシャベルを持っている場合は、タイヤ周辺の雪を取り除きましょう。道具を持っていない場合は、足で雪を踏み固めるのも有効です。
STEP2:ゆっくりと発進し、脱出を試みる
アクセルをゆっくり踏み込みながら、脱出を試みましょう。
STEP3:脱出できない場合は、脱出ラダーや砂箱の砂を使用する
脱出できない場合は、脱出ラダーやチェーンなどをスタックしているタイヤと路面の間に差し込み、再度ゆっくり発進してみてください。
また、豪雪地帯では道路に砂箱が設置されている場合があります。この砂をタイヤの周りに振りかけることで、タイヤのグリップ力が高まり、脱出できる可能性があります。
このような方法を試しても脱出できない場合は、同乗者や近くの通行人に援助を依頼し、後ろから車を押してもらいましょう。
雪の塊に乗り上げてスタックした場合
STEP1:タイヤが浮いている場合、スコップで雪をかき出す
大きな雪の塊に乗り上げてタイヤが浮いている場合は、スコップなどで雪をかき出し、タイヤを路面に設置させましょう。
STEP2:車をゆっくりと前後に動かし、周辺の雪を踏み固める
車をゆっくりと前後に動かし、タイヤ周辺の雪を押し固めます。
STEP3:脱出できない場合は、けん引を依頼
それでも脱出できない場合は、他の車にけん引をしてもらいましょう。
砂地に埋まった場合
STEP1:砂に水をかけたり、脱出用ラダーを使用する
砂地でスタックした場合、タイヤの下の砂に水をかけて地面を固めたり、タイヤと接地面の間に脱出用ラダーを挟んだりすることで、グリップ力を高めることができます。なお、砂地でアクセルを強く踏んでタイヤを空転させ続けると、かえってタイヤが深く沈み込んでしまうため注意しておきましょう。
STEP2:ゆっくりと発進し、脱出を試みる
ゆっくりと車を動かし、脱出をしましょう。
側溝などに脱輪した場合
側溝などに脱輪した際に、自力で脱出しようとして強くアクセルを踏むと、車が勢いよく道路に飛び出し、事故や怪我につながる恐れがあります。無理に自力で脱出しようとせず、ロードサービスなどに救援を依頼するようにしましょう。
3. 車がスタックした時のNG行動
車がスタックした時、焦って強くアクセルを踏んでしまうことがありますが、雪道ではタイヤとの摩擦によって雪が溶け、タイヤがさらに深くはまり込んでしまうことがあります。
砂地でも同様に、アクセルを強く踏むことで砂を掘り起こし、状況を悪化させてしまう恐れがあります。まずは落ち着いて、現在の状況を冷静に把握し、適切な対処法を取りましょう。
また、脱出の際には車が突然動き出すこともあるため、周囲に人や障害物がないかを確認しながら、アクセルはゆっくりと踏むようにしてください。
4. 持っていると安心!スタックに備える便利グッズ
タイヤチェーン
タイヤチェーンを装着すると、雪道や凍結した路面でもスタックしにくくなります。チェーン規制時にも備えて、雪道を走行する際にはタイヤチェーンを搭載しておくことが大事です。
スコップやシャベル
車がスタックした時に、タイヤ周辺の雪をかき出すのに使えます。
脱出用ラダー
車がスタックした時、タイヤと接地面の間に挟むことで、脱出を助けてくれます。折りたたみ式のものであればコンパクトなので、持ち運びもしやすいです。
けん引ロープ
自力での脱出ができない場合は、他の車にけん引してもらうことで、スタック状態から抜け出すことができます。ロープが太く、頑丈な造りのものがおすすめです。
防寒具や軍手などの作業道具
作業時に役立つ軍手やゴム手袋、長靴も準備しておきましょう。夜間での作業に備えて、懐中電灯も持っておくと安心です。また、雪国の場合は寒さ対策のために、カイロや防寒具も忘れないようにしてください。
5. 車のスタックを未然に防ぐための予防策
危険なルートを避ける
雪道を走行する際は、事前にルートの状況をしっかりチェックすることが重要です。目的地までの道のりに積雪や凍結の可能性があるかどうか、天気予報や道路情報を確認しましょう。特に積雪や凍結が予想される場合は、無理にそのルートを通らず、より安全な別の道を選ぶことでスタックのリスクを減らせます。
丁寧な運転を心がける
雪道では、普段よりも慎重かつ丁寧な運転が求められます。特に急ブレーキや急発進は避け、タイヤがスリップしやすいことを念頭に置いて、アクセルやブレーキはゆっくりと操作しましょう。また、雪道では制動距離が通常より長くなるため、車間距離を十分に取ることも大切です。
季節や路面に合ったタイヤを装着する
ノーマルタイヤ(夏用タイヤ)は雪道走行を想定していないため、冬場に使うと制動距離が長くなり、事故の原因にもなります。さらに、沖縄県を除くほとんどの都道府県では、積雪や凍結をしている道路をノーマルタイヤのままで走行すると、道路交通法違反に問われる場合があります。冬場の雪道では、スタッドレスタイヤに履き替えて走行しましょう。
6. どうしても脱出できない!助けを呼ぶ方法
JAFなどのロードサービスを呼ぶ
車がスタックした時、無理に脱出を試みると、さらに事態が悪化するケースもあります。そのような場合には無理せず、JAFなどのロードサービスに救援を要請しましょう。電話番号は全国共通「0570-00-8139」もしくは「#8139」で、365日24時間受け付けています。
自動車保険のロードサービスを利用する
自動車保険の契約内容によっては、ロードサービスが付帯している場合があります。365日24時間対応で、急なトラブルが起きた時も専門スタッフが迅速に対応してくれます。
車のトラブルはいつ起こるかわかりません。ロードサービスが付帯した自動車保険に加入しておくことで、安心して快適なカーライフを送ることができるでしょう。
なお、自動車保険によっては、スタックがロードサービスの対象外になることもあるので、事前に契約内容を確認しておくことをおすすめします。
7. 監修コメント
車がスタックした際には、厚手のタオルや毛布などをタイヤと路面の間に挟むことで、グリップ力が高まり、脱出できる場合があります。タイヤの進行方向側にタオルなどを差し込み、アクセルをゆっくり踏み込みながら発進してみましょう。
ただし、この方法は他に手段がない場合の応急措置に過ぎません。操作などを誤ると、タオルがタイヤに巻き込まれる恐れがあるので、周囲の協力を得ながら慎重に行いましょう。
