自動車保険や生命保険の書類などを読んでいると目にすることの多い「保障」「保証」「補償」の3つの用語。いずれも「ほしょう」と呼びますが、どんな風に意味が違うのか、いまひとつわかりづらいものです。しかし、保険について考えるときに、非常に重要な用語でもあります。
そこで、本記事では「保障」「保証」「補償」の意味の違いや使い方などを徹底解説!保険の種類や「賠償」「免責」などの保険頻出用語についてもあわせて解説します。
- 目次
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1. 「保障」「保証」「補償」の3つの意味はどう違う?
最初に、3つの用語の一般的な意味の違いや使用例を見てみましょう。
「保障」とは?
保障とは、立場や権利などが損なわれないように保護し、守ることを意味します。
使用例
- 国家の安全を保障する
- 社会保障制度
「保証」とは?
保証とは、間違いがない、大丈夫だと請け合い、人や物に対して責任を持つことを意味します。
使用例
- 製品の品質を保証する
- 保証人
「補償」とは?
補償とは、損失を補って償うことを意味します。とくに財産や健康上の損害が生じたときに金銭で埋め合わせる場合に使用します。
使用例
- 事故による損害を補償する
- 補償金
2. 保険は3つの分野に分けられる
次に、3つの「ほしょう」を保険によってどのように使い分けるのかについて解説する前に、保険にはどんな種類があるのかをご説明します。
保険は、保険業法という法律によって「第一分野」「第二分野」「第三分野」の3つのタイプに分類されています。それぞれの違いを知っておきましょう。
「第一分野」は生命保険
第一分野とは、生命保険のことを指します。生命保険は病気やケガで万一のことが起こったときなど、主に人の生存や死亡に関わるリスクに備える保険です。たとえば、終身保険、定期保険などがあります。また、生命保険の中には、貯蓄の意味合いを持つ商品もあります。例としては、学資保険や個人年金保険などが該当します。いずれも扱うことができるのは生命保険会社のみです。
「第二分野」は損害保険
第二分野とは、損害保険のことを指します。損害保険は主に、偶然の事故で生じたモノや財産への損害に備える保険です。たとえば、自動車保険、火災保険、地震保険、個人賠償責任保険などがあります。扱うことができるのは損害保険会社のみです。
「第三分野」は生保、損保の両方が扱う保険
第三分野とは、生命保険と損害保険のどちらにもあてはまらない保険を指し、生命保険会社と損害保険会社の両方が扱うことができます。たとえば、医療保険、がん保険、傷害保険、介護保険などは第三分野に分けられます。
3. 「保障」「保証」「補償」はどの保険で使われるの?
それでは、3つの分野の中での「保障」「保証」「補償」の使い分けはどのようになっているのでしょうか?それぞれ見てみましょう。
「保障」は生命保険で使用
立場や権利を守る意味合いを持つ「保障」は、主に死亡保険や定期保険など、第一分野の生命保険会社が扱う保険で使われます。死亡などの不測の事態に備えて生命保険に加入しておくことで、万が一のときには保険金を受け取ることができ、家族などの生活を守ることができます。こうしたことから「保障」が使用されています。
「保証」は主に年金保険で使用
間違いがないと約束し、責任を持つ意味がある「保証」は、生命保険会社が扱う保険の中でも、主に年金保険などで使用されます。年金保険は、あらかじめ定めた金額を払うことで、一定期間または一生涯、定められた年金を受け取ることができます。「10年保証期間付終身年金」といった使い方をし、この保険の場合は「保証期間中は被保険者の生死に関係なく年金を受け取れる」と約束されています。
「補償」は損害保険で使用
起こった損失を補って償うという意味がある「補償」は、第二分野の損害保険会社が扱う保険で使われます。自動車保険や火災保険など、あらかじめ定めた事故や災害などによって生じた損失に対して保険金で補うことができるため、「補償」を使用します。
第三分野では「保障」と「補償」が混在している。
一方、第三分野では「保障」と「補償」の両方が使用されています。これは、生命保険会社と損害保険会社の両方が扱える保険のためだと考えられます。たとえば、医療保険の場合、生命保険会社では「保障」、損害保険会社では「補償」を使用することが多いようです。
4. あわせて知っておきたい保険頻出用語
保険には「ほしょう」の他にも様々な用語が登場します。保険で使用する場合、辞書に載っているような一般的な意味とは異なることがあります。ここでは、「ほしょう」に関連して保険によく出てくる用語を解説します。
賠償
賠償とは、他人に与えた損害を償うことを意味します。「補償」も他人に与えた損害を補うという意味ではおなじです。しかし、法令用語としては次の違いがあります。
- 賠償:違法な行為によって他人の権利や利益に損害を与えた時に、その損害を金銭などで支払うこと
- 補償:違法行為ではない適法な行為や天災などによって他人に与えた損害などを金銭などで補い償うこと
たとえば、「個人賠償責任保険」は、本人や家族が他人の身体やモノに損害を与え、法律上の賠償責任を負ったときに保険金が支払われる保険です。
免責
免責とは、保険会社が保険金の支払い義務を負わないことをいいます。たとえば、契約者の故意によって損害などが生じた場合や戦争による被害など、保険の約款などに「免責事項」として記載されています。
保険には「免責金額」という言葉もあります。これは損害が発生しても、あらかじめ定めた金額は被保険者が負担する、というものです。自動車保険では車両保険の免責金額を設定した場合、自己負担金額が発生しますが、保険料が安くなるというメリットがあります。また、免責金額を「なし」に設定できる自動車保険もあります。
5. 監修コメント
補償や賠償などを請求できる権利は、行使しないまま一定期間が過ぎると消滅します。この「消滅時効」という制度は「権利の上に眠るものは保護に値せず」との考えに基づき、法律で定められています。
消滅時効が成立するまでの期間は、損害の種類や発生原因によって異なります。起算点には「行使できることを知った時」などの主観的起算点と「行使できる時」のような客観的起算点があり、早い方に到達した時に消滅時効が成立します。
消滅時効の起算点は、一定の行為によって変えることができます。我々行政書士も催告のための内容証明を作成できますが、相手が要求に応じてくれないような場合は、弁護士や司法書士に相談されることをおすすめします。
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