「カーデパートミズタニ」は、京都府京都市に店舗を構える福祉車両専門店です。購入、レンタル、サブスクリプションとさまざまな形態で福祉車両の利用を提案しています。
今回は株式会社ミズタニ代表取締役社長の水谷匡さんと、法人営業部課長の齋藤一行さんに、福祉車両による外出のメリット、福祉車両コンシェルジュサービスなどについてお話を伺いました。
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1.車椅子ユーザーが外出を楽しめるように
― よろしくお願いします。まず御社の事業内容について教えてください。
水谷社長:当社は1939年創業の自動車販売店で、現在は福祉車両を専門としています。福祉車両を扱うようになった背景は、私の父が不慮の事故で下肢不自由の車椅子ユーザーになったことでした。
父は当時40代半ばだったのですが、事故の後は下半身が麻痺しているため、手だけで操作できる自操式の福祉車両に改造しました。
その頃、大手買取専門店が店舗数を拡大していき、最近ではテレビCMも放映しているような大手の中古車販売店が登場し、値段では勝てないとも感じていました。
そのため、父も車椅子を利用していますし、私たちは専門性で勝負していこうということで福祉車両を本格的に扱い始めたのです。当時はまだまだ福祉車両専門店が少ない状況でした。
日本では団塊世代がこれから後期高齢者となり、超高齢社会に突入します。車椅子を利用される方も増えていくでしょう。
移動弱者となりやすい車椅子ユーザーが、福祉車両の購入、1日単位のレンタル、月単位のサブスクリプション利用を通して外出を楽しめるようにと考えています。
2.手軽でプライベートな空間をつくれる福祉レンタカー
― 福祉車両のレンタルはいつ頃から開始されたのでしょうか。
齋藤さん:一昨年(2021年)の2月から開始しています。当初は新型コロナウイルス感染症の影響もあって需要が少なかったですが、最近は徐々にご利用が増えてきました。
― どのような目的で利用されていますか?
齋藤さん:例えば春は福祉施設の方々が花見に行かれる際、車椅子ユーザーの方を乗せられる車両が足りなくてレンタルされるケースが多いですね。
あとは旅行目的も多いです。先日、京都観光をしたい方のご依頼で伊丹空港まで配車しました。昨日も、横浜から新幹線で京都に来られた方がご家族と一緒に観光をするため、1日レンタルされました。
あとはご家族の病院の送迎や転院のために利用される方も多いです。
― 福祉車両をレンタルするメリットも教えてください。
齋藤さん:福祉レンタカーのメリットは、ご家族のよりプライベートな空間がつくれる点だと思います。介護タクシーを利用することもできますが、第三者の方が同じ空間にいるという点が福祉レンタカーとの違いですね。
1日のレンタル料金も手頃ですし、ちょっとした寄り道がしやすいのも便利ではないでしょうか。ご家族のどなたかが運転する必要はありますが、外出時に融通がきくのもメリットです。
― どのようなレンタカーを貸し出されているのでしょうか。
齋藤さん:小回りがきく軽自動車のニッサン・NV100クリッパーと、施設の送迎で使うような10人乗りハイエースの2種類をご用意しています。
軽自動車はスロープタイプで、車両の後ろから車椅子を引き上げて乗せるタイプとなっています。ハイエースの福祉レンタカーはリフトタイプといって、乗降用のリフト装置を備えているものです。車椅子やストレッチャーに乗ったまま乗り降りできます。
3.家族の大切な時間や車椅子利用での観光も
― 福祉レンタカーご利用者について、ほかにも例をお聞かせください。
齋藤さん:これからレンタルの予定がある方で、娘さんの結婚式に出席したいためレンタルするという方がいらっしゃいます。
また、弔事で利用されるケースもあります。あるお客さまは「怪我で入院中だけど、お父さんの葬儀はどうしても列席したい」ということで、旦那さまの葬儀場まで福祉レンタカーで行かれました。おめでたいときにも、大切な人とのお別れのときにも活躍するのが福祉レンタカーです。
遠方にあるご家族の故郷に連れていってあげたいというお話や、親孝行したいというお話もありました。
滋賀県に車椅子ごと入れる温泉施設があり、娘さん2人とお母さんの3人で楽しまれたようです。こうしたご家族のはからいに福祉レンタカーを利用いただけるのはうれしいですね。
― そうしたドライブ先は、皆さんどうやって見つけられているのでしょうか?
齋藤さん:京都ではバリアフリーの旅行企画や宿泊施設等の情報を「バリアフリーツーリズム京都」さんがご案内されています。
例えば坂の上にある清水寺は、インターフォンで車椅子参拝の旨を伝えると、境内付近まで車でアクセスできます。
昨年(2022年)5月に、車椅子のバリアフリー活動家・高橋尚子さんを京都にお招きして観光地巡りをしたのですが、その際も車両で入山後、車椅子ユーザーも参拝しやすい順路でお参りができました。
バリアフリーツーリズム京都のような機関も利用して、事前に少し調べてみられると良いかもしれません。
4.最適な乗り方を提案する「福祉車両コンシェルジュ」
― 「福祉車両コンシェルジュ」についてもご紹介ください。
齋藤さん:福祉車両コンシェルジュは、福祉車両を必要とする全てのユーザー様に、最適な乗り方を提案するサービスです。
どのくらいの頻度や期間で福祉車両を使われるか、スロープタイプとリフトタイプのどちらが良いかなどをお聞きして、お客さまに合った乗り方をご提案します。
例えば月に一度しか乗らないのであればレンタカー、怪我などが理由で定期的かつ数ヶ月間使われるのであればサブスクリプションをご提案するといったイメージです。さらに長期間のご利用であれば、新車や中古車の購入をご提案することもあります。
メンテナンスも承っており、福祉車両のプロとしてなんでもやらせていただくという体制です。
5.乗り比べ可能。ユーザー本人が乗りやすいのが一番
― 福祉車両コンシェルジュのお客さまが、相談によって車両の利用内容を変える場合もあるのでしょうか。
齋藤さん:ありますよ。先日、車椅子の中古車を買いに来られた方が「やはり新車にしたい」とおっしゃったのですが、 新車だと納品までに時間がかかります。
でもその期間も車は必要ですから、こちらからはサブスクリプションを提案しました。新車が納車されるまでサブスクリプションを利用いただくという方法です。
車の購入を迷っていらっしゃるということであれば、1日単位で手軽に借りられるレンタカーをおすすめしています。そうすれば外出のシミュレーションができますから。
また、中古車は40台ほど店に並べていますので、いろいろな車をお試しいただけるのが当社の特徴です。
― そんなにたくさんの車が用意されているのですね。
齋藤さん:これだけ車両を用意しているのは、関西でも当社ぐらいではないでしょうか。
やはりご自身に合う車を選んでいただくのが一番です。ご家族だけでご来店されて「この車にする」とおっしゃることもあるのですが、いざ購入して、ユーザーさんご本人が乗りにくかったら本末転倒ですよね。
ご本人が、ご来店いただき、納得の上でお選びいただくことをおすすめしています。
利用されている車椅子の種類も、お客さまによって違うんですよ。バギータイプという、リクライニングができるタイプはとても大きくて、体が完全にホールドされます。
ユーザーさんのなかには、まだまだ成長される年齢のお子さんもいらっしゃいます。重度の障害をお持ちの方によっては、車椅子から飛び跳ねる方もいらっしゃるのですが、体が大きくなると車の天井にぶつかるかもしれません。
そうしたユーザーさんの状況を念頭に考える必要がありますので、入院中で来られないといった場合以外は、可能であればできるだけ一緒にご来店いただいています。
購入された福祉車両が必要なくなったら、当社で買い取りも可能です。急に入院が必要になった場合などは、売却も気軽にご相談いただけたらとお伝えしています。
6.福祉車両のプロとして、事故を減らすための取り組みも
― 「福祉車輌取扱士」の方が福祉車両コンシェルジュを担当されているそうですが、どのような資格なのでしょうか。
齋藤さん:福祉車輌取扱士は、日本福祉車輌協会の認定資格です。私も保有していまして、福祉施設の車を運転される方、福祉車両を携わる方に運転の仕方や車の死角について座学や実車講習でレクチャーすることができますので、今後力を入れていく予定です。
狭い道を走らざるを得ない場合も多いと思いますが、街中で見かける福祉施設の車があちこち傷んでいたら、ご本人もご家族も心配になりますよね。
当社も福祉車両のプロとして、事故を減らしたいですし、施設で車両メンテナンスのご提案などもしています。
7.車椅子ユーザーの「ここに行きたい」を支えられるように
― 最後に、今後の目標や読者へのメッセージをお願いします。
水谷社長:高齢で足腰が弱くなったために車椅子を利用されている場合、デイサービス施設の送迎車や介護タクシーを利用される方が多いと思います。
でも福祉レンタカーであれば、運転する方は必要であるものの、病院のついでの買い物や旅行もしやすくなります。
福祉車両の存在すらもまだ知らない方や送迎用の大きな福祉車両しかないと思っていらっしゃる方が多いと思いますので、今後も広報活動を進めていきたいですね。車椅子ユーザーの「ここに行きたい」に活用していただけたらと思います。
齋藤さん:初めて福祉車両に乗られた方が「便利!」と感動されたり、購入後に喜んでいただけたりしたときは、私たちも非常にうれしいです。
不慮の事故などで障害を持った方も、「家の中に閉じこもらないで大丈夫ですよ」とお伝えしたいですね。体のどこかが使えなくても、運転できるように改造することもできます。
日本福祉車輌協会に加盟しているプロは全国にたくさんいますので、必要になったらいつでもご相談なさってください。
私たちも日本一のサービスを提供できるよう、たくさんの福祉車両を用意してお待ちしております。
― 本日はご紹介いただき、ありがとうございました。
- 株式会社ミズタニ 福祉車両コンシェルジュ
- 京都府京都市の福祉車両専門店。スロープタイプ・リフトアップシートタイプ・リフトタイプ等、常時40台以上の福祉車両を展示している。自動車整備工場併設のため、車検や鈑金、修理までニーズに合わせた対応を展開中。最適な乗り方を提案する「福祉車両コンシェルジュ」も個人・法人ともに利用可能。