コンテナを載せたトレーラーや大型キャンピングトレーラーなどが公道を走っていくのを見かけることがあります。こうした車両を運転するのに必要なのが牽引免許です。牽引免許を取得することで仕事の幅が広がったり、趣味に活かせたりなど様々なメリットがあります。しかし、車を牽引するときに必ず牽引免許が必要なわけではありません。
そこで、本記事では牽引免許の種類やどんなときに必要になるのか、違反したときの罰則、免許の取得方法や費用などを詳しく解説します!
- 目次
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1.牽引免許ってどんなもの?
牽引免許とは、トレーラーなどの車体を車に連結して牽引するときに必要な免許のことです。牽引する車のことを「牽引車」、牽引される車は「被牽引車」と呼びます。牽引車は大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、大型特殊自動車のいずれかです。
被牽引車は、貨物用のトレーラーやキャンピングトレーラーなどのようにエンジンがなく、自走できない車が一般的です。トラクターやトレーラーヘッドと呼ばれる車両の荷台に接続したり、普通自動車などにヒッチメンバーを使って連結させたりして、牽引される形で走行します。
牽引免許を取得するには、すでにいずれかの運転免許を保有していなければなりません。また、牽引できる車の大きさも保有している運転免許によって決まります。たとえば、大型トレーラーを牽引するには牽引免許の他に大型免許も必要になります。
牽引免許には3種類ある
牽引する車両によって牽引免許は次の3種類に分かれています。
牽引免許(牽引自動車第一種運転免許)
車両を牽引しながら公道を走行するときに必要な免許です。
牽引自動車第二種免許
旅客運送用の車両を牽引する際に必要な免許です。トレーラー式の観光バスなどのように、人を乗せて営利目的で運転する場合に必要になります。
牽引小型トレーラー限定免許
車両総重量が750kg超〜2,000kg以下の車両に限って牽引できる免許です。
2.どんな時に牽引免許が必要になる?
実は、牽引免許がなくても車を牽引できるケースがあります。ここでは、必要になる場合と必要ない場合を解説しましょう。
750kgを超える車の牽引は牽引免許が必要
車両総重量が750kgを超える車を牽引する場合に、牽引免許が必要になります。車両総重量というのは、トレーラーなどの本体車両の重量と最大積載量の合計のことです。
750kg以下の車と故障車は牽引免許が不要
牽引免許がなくても牽引できるのは次のケースです。
- 被牽引車の車両総重量が750kg以下で、牽引車と被牽引車、積載物の全長の合計が12m未満、高さ3.8m未満、全幅2.5m未満の場合
- 故障車をロープなどで牽引する場合
故障して自走できなくなった車を止むを得ず牽引する場合は、牽引免許がなくても牽引して良いとされています。この場合は、重量制限はありませんが、様々なルールが決められています。次に解説しますので、万が一に備えて知っておきましょう。
3.故障車を牽引するときの注意点は?
牽引には通常の運転とは異なる技術が必要になります。不安なときは無理をせず、修理業車に依頼してレッカー車に来てもらうことをおすすめします。自分で牽引するときは、次のポイントに注意して安全な牽引を心がけましょう。
ロープに白い布をつける
まず、牽引車と故障車を牽引用の丈夫なロープでつなぎます。その際、牽引していることを周囲に知らせるため、ロープには0.3m平方以上の白い布をつけるように定められています。
牽引車と故障車は5m以内の間隔を保つ
安全に走行するため、牽引車と故障車の車間は5m以内に保つことになっています。結ぶロープが長くなりすぎないように注意しましょう。また、牽引する際には、故障車にもその車を運転できる免許を持った人が乗る必要があります。牽引車はゆっくりと発進し、故障車側はブレーキ操作をしながらロープがたるまないようにします。
ロープで牽引する時の制限速度は最大時速40km
ロープなどで故障車を牽引するときは、被牽引車の車両総重量などに応じて時速25km、30km、40kmの制限があります。
被牽引車 | 車両総重量が2,000kg以下 | 左の条件以外で自動車が牽引する場合 | 積載物の重量が120kgを超えないリヤカーなど |
---|---|---|---|
牽引車 | 車両総重量が上記の3倍以上 | 小型二輪車や原動機付自転車 | |
法定速度 | 時速40km | 時速30km | 時速25km |
- 出典
- 「道路交通法施行令」
一般道の自動車の法定速度は時速60kmですが、ロープで牽引するときは時速40km以上出してはいけませんので注意しましょう。また、高速道路の最低速度は時速50kmのため、高速道路は通行できません。
なお、牽引装置を備えた牽引車は、高速道路も通行可能です。一般道路での法定速度は時速60km、高速道路では最高速度は時速80km、最低速度は時速50kmと定められています。
牽引できる台数、長さは決まっている
他にも、自動車の牽引については道路交通法第59条で次のように定められています。
- 牽引車、被牽引車の両方に牽引装置などがついていないと牽引できない(故障車の牽引を除く)
- 牽引できる台数は、大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、大型特殊自動車は2台まで、大型自動二輪車、普通自動二輪車、小型特殊自動車は1台のみ
- 牽引する車の前端から牽引される車の後端までの長さが25mを越えるときは牽引できない。牽引する場合は許可証が必要
4.牽引免許を取得するには?
先述の通り、牽引される車の車両総重量が750kgを超える場合は、牽引免許が必要です。牽引免許を取得する方法には、指定自動車教習所で学ぶ方法と運転免許試験場で一発試験を受ける方法があります。免許の取得に必要な条件や、それぞれの取得にかかる費用と所要期間の目安を解説します。
牽引免許の取得に必要な条件
牽引免許を取得する上で必要となる主な条件は次の通りです。
- 二種、大型、中型、準中型、普通、大型特殊免許のいずれかの運転免許を保有している
- 満18歳以上
- 視力が両眼で0.8以上、かつ、一眼でそれぞれ0.5以上(メガネやコンタクトレンズを使用してOK)
- 三桿法の奥行知覚検査器により3回検査(深視力検査)し、その平均誤差が2cm以下
- 赤、青、黄色を識別できる
- 10mの距離で90dBの警音器の音が聞こえる(補聴器を使用してOK)
- 運転に支障を及ぼす恐れのある身体の障害がない
取得方法と取得にかかる費用・所要期間
指定自動車教習所
自動車教習所で取得する場合、以下のような流れになります。
- 指定自動車教習所に入学
- 適性検査、運転適性検査を受ける
- 技能講習を受講(12時間)
- 卒業検定をクリア
- 運転免許試験場で適性試験に合格
- 牽引免許証の交付
教習所の場合、通学する方法と合宿免許を利用する方法があります。免許取得までの期間は人によって異なりますが、合宿の場合なら最短6日間が目安になります。取得にかかる費用は、エリアによっても変わりますが、目安としては12万円〜18万円ほどです。
なお、教習所で牽引免許を取得するときには、「教育訓練給付制度」を利用できることがあります。これは厚生労働省が行っている制度で、雇用保険の加入など一定の条件を満たせば、かかった費用の40%(上限年間20万円)が受講後に支給されるというものです。この制度が利用できる教習所や講座は限定されていますので、適用されるかどうか確認してみると良いでしょう。
なお、教習所を卒業した場合、運転免許試験場で適性試験を受けるための手数料は、東京都では受験料1,750円、免許証交付手数料が2,050円で、合計3,800円となっています。
運転免許試験場の一発試験
いわゆる「一発試験」という方法もあります。これは教習所には通わずに、直接、運転免許試験場で受験する方法です。免許取得までの流れは次の通りです。
- 運転免許試験場で適性試験に合格
- 技能試験に合格
- 牽引免許証の交付
一発試験の場合、手数料は東京都では受験料2,600円、試験車使用料1,450円、免許証交付手数料が2,050円で、合計6,100円となっています。適性試験を受けた当日に技能試験を受けることはできないため、取得にかかる所要期間は最短2日となります。
5.牽引免許で違反した時の罰則は?
牽引に関する違反には、主に「牽引違反」と「牽引自動車本線車道通行帯違反」があります。それぞれの違反点数と反則金は牽引車の大きさによって異なります。
【牽引免許での罰則】
牽引違反(原付牽引違反) | 牽引自動車本線車道通行帯違反 | |||
---|---|---|---|---|
罰則 | 反則金 | 点数 | 反則金 | 点数 |
大型車 | 7.000円 | 1 | 7.000円 | 1 |
普通車 | 6,000円 | 1 | 6,000円 | 1 |
二輪車 | 6,000円 | 1 | ― | ― |
小型特殊車 | 5,000円 | 1 | ― | ― |
原付車 | 3,000円 | 1 | ― | ― |
- 出典
- 警視庁
牽引違反
牽引違反とは、車両を牽引する際に交通ルールを守らなかった場合の交通違反です。「牽引する構造のない車での牽引(故障車の牽引を除く)」「大型自動車で3台以上牽引」などがあてはまります。違反すると大型車なら7,000円、普通車なら6,000円の反則金が課せられることがあります。
牽引自動車本線車道通行帯違反
牽引するための構造や装置を備えた牽引車が高速道路で牽引する場合は、1番左側の車線を走行しなければならないと定められています。これに違反すると、牽引自動車本線車道通行帯違反となります。ただし、標識などで指定されているときはそちらに従います。
6.監修コメント
牽引免許に限った話ではありませんが、自動車教習所には、公認校(指定自動車教習所)と非公認校(届出自動車教習所及び指定外自動車教習所)があります。運転技術に自信があるのなら、非公認校で練習をしてから一発試験に臨むという手もあります
ただ、公認校との違いを知らずに非公認校を選んでしまうと、何度も運転免許試験場に足を運ぶことになりかねません。教習所を選ぶ際は、公認校と非公認校にそれぞれメリットとデメリットがあることを覚えておくとよいでしょう。