急な故障や事故などで、車が走行できなくなることがあります。この場合、車を修理工場などに運ぶには、レッカー車にけん引してもらわなければなりません。当記事では、レッカー車の利用料金や手配先、流れなどを解説します。
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1.レッカー車とは
レッカー車とは、故障や交通事故などで自力走行ができなくなった車をけん引するための車両のこと。道路運送車両法施行規則に基づく通達では、「特種用途自動車」という区分に分類されており、構造の条件は以下の通りに定められています。
- 自動車の車輪を吊り上げるための装置及び吊り上げた車輪をその状態に保持して固定し、移動させることができる設備を有すること。
- 物品積載設備を有していないこと。
多くのレッカー車は、車を持ち上げたり吊り上げたりするためのアンダーリフトやクレーンを備えています。これらの装備で、故障車・事故車の前輪もしくは後輪をレッカー車の後部の台車に乗せ、固定した状態でけん引します。
種類
レッカー車は、主に3種類あります。軽自動車や普通自動車をけん引する「小型レッカー車」、小型トラックや中型トラック、大型車をけん引する「中型レッカー車」、大型トラックやバスをけん引する「大型レッカー車」です。
2.レッカー車が必要になるシチュエーション
主なシチュエーション
ドライバーがレッカー車を利用する主なシチュエーションは、タイヤのパンクや車の故障、また交通事故に遭ったことなどにより自力走行ができなくなった時です。
また自力走行できたとしても、「ウインカーが割れている」「フロントガラスにヒビが入っている」など、保安上の問題がある時もレッカー車を呼ぶことがあります。道路交通法第62条では、「整備不良車両の運転の禁止」についての言及があり、整備不良とみなされた車が公道を走行した場合、罰金を科される可能性があるからです。
上記は、一般のドライバーがレッカー車を呼ぶシチュエーションですが、このほか、警察が違反車両を移動させる時にもレッカー車が利用されます。
車検切れの場合は利用できない
車検切れの状態で公道を走行することは、道路運送車両法で禁止されているため、車検切れの車は、基本的にレッカー車によるけん引もできません。レッカー車でけん引を行う時は、前輪か後輪のどちらかを道路上で回転させて移動させますが、これが公道を走っているとみなされるため、法律違反となる可能性があるからです。ただ、JAFでは「放置すると円滑な交通を妨げるなどの、やむを得ない事情がある場合、かつ自賠責保険の期間内の車両」であれば、レッカー車でけん引してもらえることもあります。
もし車検切れの車を整備工場などに移動させたい場合には、仮ナンバーを取得する方法があります。仮ナンバーをつけた状態であれば、最長5日間、臨時で公道の走行やレッカー移動が可能になります。
3.レッカー車を手配する方法
レッカー車の主な手配先としては、JAFと自動車保険に付帯しているロードサービスです。ロードサービスは車のトラブル対応をしてくれるサービスですが、この中にレッカー搬送が含まれています。JAFと自動車保険のロードサービスのそれぞれの特徴について紹介します。
JAF
JAFは、全国24時間365日対応で、交通事故に遭った車や故障した車の救済を行っています。基本的に会員制をとっており、年会費を支払えば回数制限なく、ロードサービスを利用できます。
JAFのサービスの適用対象は、会員本人です。そのため、自分の車を運転している時だけではなく、レンタカーを運転している時や、友人の車に同乗している時でも会員価格でロードサービスを利用することができます。
なお、非会員であってもロードサービスを依頼することは可能ですが、その場合は費用が割高になります。詳しい費用は、次項で紹介します。
自動車保険
一般的に自動車保険には、ロードサービスが付帯しています。ただし、ロードサービスの利用条件や回数、移動距離などは保険会社によって異なります。
JAFは、サービスの適用対象が会員本人であると説明しましたが、自動車保険のサービスの適用対象は契約している「車」です。そのため、レンタカーや友人の車など、契約車以外の車を運転している時には、ロードサービスを利用できません。しかし運転者に制限はないため、友人や知人などが契約車を運転している時はロードサービスを利用できます。
SOMPOダイレクトの「おとなの自動車保険」のロードアシスタンス特約(ロードサービス)は、全国約9,200か所(2022年12月時点)の拠点から24時間・365日対応しています。利用回数に制限はなく、契約期間中であれば何回でも利用できます。なお、ロードサービスを利用したとしても等級は下がりません。
自動車保険とJAFのロードサービスの違いや利用例などは、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
一部のロードサービス業者の料金トラブルに注意
レッカー搬送は、ロードサービス業者に依頼することもできますが、中には悪質な業者もいるので注意が必要です。実際に、「インターネット上の広告とは異なる高額な料金を提示してきた」「広告には記載されていないキャンセル料を請求してきた」などのトラブルが起きています。
レッカー搬送の料金が妥当だと認められない場合、もし契約の車両にレッカー手配が含まれていても、自動車保険では全額が補償されないこともあります。契約している自動車保険にロードサービスが付帯されているかわからない場合でも、こうした料金トラブルを避けるために、まずはご自身が契約している保険会社に問い合わせるようにしましょう。
4.レッカーサービスの料金
JAF
年会費を払ってJAF会員になると、時間帯問わず、20kmまでなら無料でレッカーサービスを利用できます。20kmを超えると、その後1kmごとに830円加算されます。JAFの会員ではなくても、レッカーサービスを依頼することは可能ですが、利用料金は会員価格と異なります。例えば、8〜20時の間に一般道でレッカーサービスを20km利用する場合、44,300円(内訳:基本料15,700円+作業料12,000円+20km分のけん引料16,600円)かかります(※2024年6月時点)。
自動車保険
自動車保険に付帯しているロードサービスは、契約している会社によって料金が異なります。
「おとなの自動車保険」のロードアシスタンス特約の場合、レッカー搬送にかかった費用は15万円まで補償されます。また、契約車がレッカー搬送されたことによって、自身で整備工場や自宅に移動したり、最寄りのホテルなどに宿泊しなければならなくなった場合、その移動や宿泊費用のサポートも受けられます。移動費用は、タクシー代と電車代あわせて1人につき2万円まで、宿泊費用は1人につき1泊1万円まで補償されます。
5.レッカー車手配の流れ
流れ
- ロードサービスに連絡する
- ロードサービスのスタッフが現場に到着
- 現場での応急処置
- 必要に応じて車をレッカー搬送
事故や故障などで自力走行ができなくなったら、ご自身や同乗者、車の安全確保を行った上で、契約している保険会社やJAFなどのロードサービスに連絡をしましょう。ロードサービスは、通常24時間365日・通話料無料で対応していますので、トラブル時も慌てずに連絡してください。
救援を依頼すると、ロードサービスがスタッフを手配し、現場に急行してくれます。到着後、スタッフが応急処置や、必要に応じてレッカーで車を修理工場に運んでくれます。
連絡手段は電話が一般的だが、Webで依頼できることも
ロードサービスを依頼する時の連絡手段は、電話が一般的です。しかし、近年では専用アプリやLINEで救援要請ができるロードサービスも増えています。
「おとなの自動車保険」のロードアシスタンス特約では、WebサイトやLINEからロードサービスを依頼できます。トラブルで動揺していたり、慣れない場所で自身の現在地がわからない場合でも、車の位置情報がスマホから共有されるので安心です。このほか、レッカー車の到着予定時刻や到着までの行程がリアルタイムで確認できるという特長もあります。
6.監修コメント
車の故障には、さまざまなケースがあります。車内にいるときに発生することもあれば、ドアを開けられない場合もあるでしょう。
自動車保険関連の書類を車内に保管している人も多いと思いますが、レッカーサービスやロードサービスを利用できる契約を結んでいても、対応窓口の連絡先が分からないと、後で面倒なことになりかねません。いざというときのために、緊急対応窓口の電話番号やURLなどをスマホに登録しておくようにしましょう。