夏場、車に乗り込んだ時、その車内の暑さに息苦しさを感じたことはないでしょうか。炎天下で駐車していると、数十分の間にも車内が高温になるため、熱中症のリスクが高まります。しかし、駐車時や乗車前のちょっとした工夫で車内温度の上昇を抑えることができます。当記事では、夏の暑い車内温度を下げる方法を紹介します。
- 目次
-
1. 夏の車内は何度になる?
JAFが行ったテストによると、外気温35℃という状況下で、車内温度25℃の車(黒色のボディ)を駐車したところ、約30分で車内温度は約45℃に。3時間後には55℃にまで上昇しました。また、熱を吸収しやすいダッシュボードは80℃近くにまで達しました。このように夏場の車内では、熱中症だけではなく、ダッシュボードに触れて火傷を負ってしまう危険性もあるということがわかります。
- 出典
- JAF/2012年8月「真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)」より
夏の車内が暑い理由
炎天下で駐車していると、外気温よりも車内温度が高くなってしまうのはなぜなのでしょうか。これは、フロントガラスなどのガラス類が太陽光は通しやすいものの、空気は通しにくい性質を持っているからです。
フロントガラスやサイドガラスを通った太陽光は、ダッシュボードやシートなどに当たり、車内を温めます。特に、樹脂素材でできているダッシュボードやハンドルは熱を吸収しやすい性質を持っているため、熱を溜め込みます。しかし車内の熱気は外に逃げず、内にこもるため、車内温度がどんどん上昇してしまうのです。
2. 炎天下の駐車で気をつけること
ダッシュボードに物を置かない
上述の通り、夏の炎天下ではダッシュボードが熱くなりやすく、約80℃にまで達する場合があります。スマホをダッシュボードに置いたままにしていると、「高音注意」という警告が表示され、故障につながることも。スマホをカーナビ代わりに使用する方もいますが、炎天下ではダッシュボードに置かないようにしましょう。
このほか、モバイルバッテリーやスプレー缶、ライターなどは特に注意が必要です。高温の場所に放置していると、破裂や発火、発煙の恐れがあります。ダッシュボードのみならず、車内に放置するのも避けた方が良いです。
短時間でも車内に子どもや高齢者を放置しない
夏の車内で最も注意したいのは、熱中症です。炎天下で駐車していると、車内温度はどんどん上昇し、30分で45℃にまで達することがあるため、車内に留まるのは危険です。
なお「エアコンをつけていれば大丈夫」と思う方もいるかもしれません。もちろん、エアコンをつけたままにしていれば車内温度の上昇を抑えることができますが、故障などで突然止まってしまう可能性もあります。JAFのテストでは、エアコン停止から5分で車内温度が約5℃上がり、15分後には熱中症指数が「危険レベル」に達しました。
大人ももちろん注意が必要ですが、特に体温調節機能が未発達な子どもを車内に留まらせるのは非常に危険です。また加齢により身体の機能が低下している高齢者、ペットも車内に留まらせるのは避けましょう。
- 出典
- JAF/2012年8月「真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)」より
3. 車内の温度を上げないための駐車時の対策
車を駐車する時にちょっとした工夫をすることで、車内温度の上昇を多少抑えることができます。すぐにできる工夫や、車内の暑さを抑えるグッズを紹介します。
日陰に駐車する
日なたよりも日陰に駐車した方が、車内温度の上昇は抑えられます。JAFが行った実験によると、日なたに駐車した車は駐車後20分で車内温度が40℃に達しましたが、日陰に駐車した車は34℃でした。直射日光が当たるか当たらないかで、6℃も差が出るのです。
このように、日陰の駐車スペースがあればそこに停めた方が暑さは抑えられるでしょう。しかし、日陰に駐車した車も30分後には35℃を超えたため、熱中症への注意は必要です。
- 出典
- JAF/2016年8月「「日なた」と「日陰」の車内温度【JAFユーザーテスト】」より
駐車時、窓を少し開けておく
窓を2〜3cm(大人の手が入らない程度)開けておくことで、車内の熱気が外に逃げやすくなります。JAFが実施したテストでは、窓を3cm開けた場合と閉めた場合では、エンジン停止30分後の車内温度が5℃違うということがわかっています。ただし、防犯の観点から、自宅の車庫などの安全な状況下で行うようにしましょう。
- 出典
- JAF/2012年8月「真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)」より
車内の暑さを抑えるグッズを使う
サンシェード
サンシェードをフロントガラスやリアガラスに設置することで、太陽光を遮り、ダッシュボードやハンドルなどが高温になるのを防ぐことができます。サンシェードには、サンバイザーで押さえて簡単に取り付けられるものや、コンパクトに折りたためるポップアップ式など、さまざまな商品があります。暑さ対策としては、遮熱率が高いものを選ぶといいでしょう。
断熱フィルム
断熱フィルムは、フロントガラスなどに直接貼り、赤外線や紫外線を遮るアイテムです。透明タイプであれば、クリアな視界が保たれるので運転中も安心です。ただし、フロントガラス、運転席側の窓、助手席側の窓に貼る場合は、可視光線透過率が70%以上のものでなければ車検に通らないので、保安基準を満たす商品を選ぶようにしましょう。
車用カーテン
サイドガラスに取り付けられる、遮光生地の車用カーテンを使うのも一つの手です。フロントガラスには取り付けられないので、フロントガラスには別途対策をする必要があります。また、車検の際にもカーテンを取り付けていると検査に通らない可能性があるので注意しましょう。
ハンドルカバー・シートカバー
意外と熱を溜め込みやすいハンドルとシート。ハンドルカバーは、ハンドルに被せて使うグッズです。暑さ対策の場合は、太陽光を反射するアルミ素材のものを選ぶと良いです。夏用のシートカバーは、通気性の良いメッシュ素材が主流です。シートの前面にカバーをかけて固定するだけなので、設置も簡単です。
4. 車内の温度を素早く下げる方法
車に乗り込む前
リモコンエンジンスターターでエアコンをつけておく
リモコンエンジンスターターとは、離れた場所からでも遠隔操作で車のエンジンやエアコンをかけられるアイテムです。あらかじめエアコンをつけて、車内を冷やしておくことができるので夏場は特に活躍します。自分で取り付けることもできますが、車種に合っていないものを選ぶと使えないこともありますから、少しでも不安がある場合は業者に依頼した方が安心です。
助手席の窓を開け、運転席のドアを数回開閉する
助手席の窓を全開にして、運転席のドアを数回開け閉めする方法です。運転席から外の空気を送り込み、助手席の窓から車内の熱気を逃すことで、車内の暑さを和らげることができます。JAFのテストでは、この方法を行うことで、約30秒で車内温度を55℃から47.5℃に下げることができたそうです。
走行時
窓を全開にして、エアコンを使う
車内温度を最も素早く下げる方法が、全ての窓を全開にして、エアコンをつけたまま走行する方法です。具体的な方法は以下の通りです。
- 車の全ての窓を全開にする。
- エアコンを「外気導入モード」にして、走行する。
- 数分後、「内気循環モード」に切り替える。
JAFのテストでは、走行後たった5分で車内温度が55℃から28℃にまで下がりました。ポイントは、「外気導入モード」と「内気循環モード」を途中で切り替えること。外気導入モードは、外の空気を取り込み、車内を換気してくれるので、車内の熱気を外に逃す効果があります。熱気が車外に出た時点で、「内気循環モード」に切り替えることで、車内の温度をさらに下げることができます。
- 出典
- JAF/2016年6月「夏の駐車時、車内温度を最も早く下げる方法は?(JAFユーザーテスト)」より
車内用扇風機とエアコンを併用する
クリップなどで車内に取り付けられ、エアコンの風が届きづらい後部座席にも直接風をあてられる車内用扇風機。単独で使うのはもちろん、エアコンと併用すれば車内の空気を循環し、効率的に車内温度を下げることができます。
5. 監修コメント
最近は改善されてきているようですが、輸入車は国産車よりも夏場にエアコンのトラブルが発生しやすいことで有名です。実は仏車に乗る私も、昨年8月にエアコンのトラブルに見舞われ、大変な思いをしました。
漏れなどでエアコンガスが不足したり、コンプレッサーが故障したりすると、エアコンをONにしていると温風が出てきてしまいます。冷房が入っているはずなのに冷たい風を感じられない場合は、エアコンをOFFにして、すべての窓を開けて外気を取り込むことをおすすめします。