自動車の免許には普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許などの種類があり、それぞれ運転できる車両の総重量や最大積載量、乗車定員などが定められています。どの車を運転したいかによって必要な運転免許も変わってきます。
この記事では中型自動車を運転できる中型免許について取り上げます。運転可能な車のサイズや免許の取得条件、取得費用などをわかりやすく解説します。
- 目次
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1. 中型免許とは?
中型免許の正式名称は「中型自動車第一種運転免許」または「中型自動車第二種運転免許」といいます。第一種は公道で運転するための一般的な免許で、第二種は乗合バスやタクシーなど旅客を有償で運送するための免許を指します。また、普通免許と同様に中型免許にも、第一種・第二種免許を取得したい人が練習などのために公道を運転するときに必要な中型自動車仮運転免許があります。
中型免許は2004年の道路交通法の改正によって新設され、2007年6月2日に施行されました。この免許を取得すれば中型自動車を運転できますが、具体的に何tまでの車に乗れるのかなど、運転できる車について見てみましょう。
2. 中型免許で運転できる車は?
免許の種類によって運転できる車のサイズは異なります。普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許でそれぞれ以下の車を運転可能です。
免許の種類 | 普通免許 | 準中型免許 | 中型免許 | 大型免許 |
---|---|---|---|---|
自動車の種類 | 普通自動車 | 準中型自動車 | 中型自動車 | 大型自動車 |
車両総重量 | 3.5t未満 | 3.5t以上7.5t未満 | 7.5t以上11t未満 | 11t以上 |
最大積載量 | 2t未満 | 2t以上4.5t未満 | 4.5t以上6.5t未満 | 6.5t以上 |
乗員定員 | 10人以下 | 10人以下 | 11人以上29人以下 | 30人以上 |
- 参考
- 警視庁
中型免許は、車両総重量7.5t以上11t未満、最大積載量4.5t以上6.5t未満、乗車定員11人以上29人以下の中型自動車を運転することができます。また、中型免許を取得すれば、普通自動車、準中型自動車、小型特殊自動車、原動機付自転車も運転できます。
中型自動車は、物流業界で多く使用されている4tトラックや6tトラックなどが該当します。他にも、マイクロバス(乗車定員29人以下)も中型免許で運転可能です。たとえば、幼稚園や介護サービスの無償送迎をするマイクロバスのドライバーになることができます。ただし、有償の場合は第二種免許が必要です。
3. 中型免許の取得条件は?
中型免許を取得するためにはいくつか条件があります。基本的な取得条件は次のとおりです。
- 満20歳以上
- 普通、準中型、大型特殊免許のいずれかの運転免許を取得しており、運転免許の取得期間が通算2年以上(免許停止期間を除く)
- 視力が両眼で0.8以上かつ、一眼でそれぞれ0.5以上(眼鏡などの使用可)
- 三桿法の奥行知覚検査器により3回検査し、その平均誤差が2cm以下
- 10mの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえる(補聴器などの使用可)
- 色彩識別能力で赤色・青色・黄色を識別できる
条件を満たせば19歳でも受験可能
2022年5月13日に施行された道路交通法の改正により、19歳でも中型免許の取得が可能になっています。「受験資格特例教習」と呼ばれる制度で、免許取得期間が通算1年以上(免停期間を除く)あれば必要な学科及び技能教習を最大36時間受けることで、満20歳以上、取得期間2年以上の受験資格を引き下げることができます。
法改正以前は、運転経歴が足りない人や高校を卒業したばかりの人は中型免許を取得できませんでした。物流業界や旅客運送業界などのドライバー不足を受け、対策の一環として特例を設けることで、若年層の就労機会を増やす狙いがあります。
受験資格特例教習は2種類あり、年齢が20歳に満たない場合は「年齢課程」、取得期間が2年に満たない場合は「経験課程」を修了すれば、受験資格を引き下げられます。たとえば、現在20歳で免許取得期間が通算1年の人なら、経験過程を受ければ取得期間2年を待たずに中型免許試験を受験可能になります。
ただし、特例で免許を取得した場合、20歳までは「若年運転者期間」となり、この期間に一定以上の違反をすると「若年運転者講習」の受講が義務付けられます。正当な理由なく受講しなかった場合や再度一定以上の違反をした場合、特例による中型免許の取得が取り消されてしまいます。
4. 8t限定中型免許とは?
中型免許の中には「中型車は中型車(8t)に限る」と条件が記載されているものがあります。この限定付きの免許は「8t限定中型免許」と呼ばれています。
中型免許は道路交通法の改正によって2007年6月2日から導入されたとお伝えしましたが、これによって普通免許で運転できる車は車両総重量3.5t未満、最大積載量2t未満になりました。しかし、改正前は普通免許で車両総重量8t未満までの車を運転することができました。
そこで、2007年6月1日以前に取得した普通免許は新たに「8t限定中型免許」に区分され、車両総重量8t未満、最大積載量5t未満、乗車定員10人以下の車を運転できる中型免許となったのです。8t限定については、「中型免許限定解除審査」に合格することで限定を解除できます。具体的な方法は後ほど解説します。
5. 中型免許の取得方法は?
中型免許を取得するには、自動車教習所に通う方法と運転免許試験場で試験を受ける「一発試験」と呼ばれる方法があります。免許取得までの主な流れは次のとおりです。
自動車教習所に通って取得する方法
自動車教習所には指定自動車教習所(指定校)と届出自動車教習所(届出校)があります。指定校の場合、教習所の卒業検定に合格すれば運転免許試験場での技能試験が免除されます。また、保有している免許の区分によって必要な教習時間が変わります。
保有している免許 | 技能教習 | 学科教習 |
---|---|---|
普通免許(AT限定) | 19時限 | 1時限 |
普通免許(MT) | 15時限 | 1時限 |
5t限定準中型免許(AT限定) | 15時限 | 1時限 |
5t限定準中型免許(MT) | 11時限 | 1時限 |
準中型免許 | 9時限 | なし |
指定自動車教習所に通う場合の免許取得までの流れは次のとおりです。
- 指定自動車教習所で第1段階の学科教習・技能教習を受ける
- 指定自動車教習所の修了検定に合格する
- 仮免許の交付
- 第2段階の学科教習・技能教習を受ける
- 指定自動車教習所の卒業検定に合格する
- 運転免許試験場で適性検査に合格する
- 中型免許の交付
適性検査に合格すればその日のうちに免許の交付を受けることが可能です。
一発試験を受けて取得する方法
一発試験とは、自動車教習所に通わずに運転免許試験場で行われる試験を受けることです。教習所の費用がかかりませんが、一発試験は非常に難易度が高くなっています。免許取得までの主な流れは次のとおりです。
- 運転免許試験場で適性検査に合格する
- 運転免許試験場で仮免許試験に合格する
- 仮免許の交付
- 指導員を乗せて路上練習(5日以上)
- 運転免許試験場で本免許試験に合格する
- 自動車教習所で取得時講習を受講
- 中型免許の交付
路上練習の際には練習する車(中型自動車)の前面と後方に「仮免許練習中」の標識を掲げます。助手席に指導員に同乗してもらう必要があり、指導員は次のいずれかの条件を満たしていなければなりません。
- 練習する車を運転できる免許の取得期間が通算3年以上
- 練習する車を運転できる第二種免許を持っている
また、本免許試験に合格した後の取得時講習は、すでに準中型免許または普通免許第二種を取得している方などは免除になります。この場合は、本免許試験に合格した当日に中型免許の交付を受けることができます。
6. 8t限定中型免許の限定解除の方法は?
2007年6月1日以前に普通免許を取得した方は、免許の区分が普通免許ではなく8t限定付き中型免許とみなされます。このため、中型免許を新規に取得するのではなく、中型免許の「限定解除審査」を受けることになります。限定解除をする方法も自動車教習所に通う方法と一発試験の2通りです。
自動車教習所に通って限定解除する方法
自動車教習所に通う場合は、技能教習のみを受けます。技能教習時間は保有している8t限定中型免許がMTなら5時限、ATなら9時限です。学科教習はありません。
- 指定自動車教習所で技能教習を受ける
- 指定自動車教習所の技能審査に合格する
- 運転免許試験場で限定解除審査を受ける
- 限定解除された中型免許の交付
教習所の技能審査に合格すると「技能審査合格証明書」が発行されます。限定解除審査では、この書類と運転免許証を提出して申請すればOKです。技能審査合格証明書は管轄の自治体だけでなく他都道府県で取得したものでも構いません。
一発試験を受けて限定解除する方法
一発試験の場合は運転免許試験場で技能審査を受けます。主な流れは次のとおりです。
- 運転免許試験場で技能検査に合格する
- 限定解除された中型免許の交付
運転免許試験場での技能審査は多くの自治体で予約制になっています。限定解除の一発試験も難易度が高く、不合格だった場合は再度予約して受験費用も支払わなければなりません。
7. 中型免許の取得費用は?
中型免許の取得や8t限定中型免許の限定解除をするには、運転免許試験場に手数料を支払う必要があります。指定自動車教習所を卒業した場合と一発試験の場合の手数料はそれぞれ以下のとおりです。不合格となり再度試験を受けるときはその都度、手数料を支払います。
運転免許試験場での取得費用(手数料)
中型免許取得の手数料 | 8t限定解除の手数料 | ||
---|---|---|---|
指定自動車教習所を卒業 | 一発試験 | 指定自動車教習所を卒業 | 一発試験 |
3,600円(受験料1,550円、免許証交付料2,050円) |
<仮免許試験> <本免許試験> |
1,400円 | 2,850円(受験料1,400円、試験車使用料1,450円) |
自動車教習所に通う場合は別途教習費用がかかりますが、持っている免許や自動車教習所などによって大きく異なります。中型免許を取得する際の教習費用としては、AT限定普通免許を持っている場合は20万〜28万円ほどが目安となります。8t限定解除の教習費用の目安は10万〜14万円ほどです。
一発試験は教習所に通う費用を抑えることができますが、難易度が高く合格率は低くなっています。受験するごとに費用がかかるため、自動車教習所に通うよりも割高になる可能性もあります。一発試験に挑戦するのは、初めて中型免許を取得する方よりも再取得を目指す方のほうが良いでしょう。
教習費用の20〜40%を受給可能な教育訓練給付金制度
受給資格を満たしていれば、中型免許を取得する際に国から給付金を受けることができます。これは「教育訓練給付制度」というもので、雇用保険の被保険者または雇用保険の被保険者だった方が対象になります。
対象となる自動車教習所の教習コースをすべて修了して卒業すれば、ハローワークに申請することで教習費用の20〜40%、最大20万円まで教育訓練給付金を受給可能です。対象となるコースによって受給金額は異なり、事前に受給資格確認が必要なものもあります。厚生労働省の検索システムで教育訓練給付対象コースを用意している自動車教習所を検索することができますので、調べてみるのも良いでしょう。
8. 監修コメント
2024年現在は、中型免許はMTのみとなっています。AT車限定の普通免許を保有している方が中型免許を取得するには、AT車限定も解除する必要があります。
2024年4月、警察庁は、大型免許、中型免許、準中型免許においてもAT車限定を導入する方針を固めました。中型免許と準中型免許のAT車限定は、2026年に導入する計画とのことです。
昨今はトラックやバスでもAT車が増えています。必要に迫られていたり、MT車を運転しなければならなかったりする場合は仕方ありませんが、AT車限定普通免許の保有者が中型免許を取得するのは、もう少し待ってみるのもよいかもしれません。