高速道路の最高速度といえば、100km/hと答える方が多いかもしれません。しかし、必ずしもそうとは限りません。これは、最高速度には法定速度と指定速度という2種類があるためです。この2つの違いは何か?また、一般道路の最高速度は?最低速度も定められている?スピード違反した場合の罰則は?こんな疑問の数々に一挙にお答えします!
- 目次
-
1.最高速度とは
最高速度は、道路交通法第22条で下記のように定められています。
第22条 車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。
つまり、道路によって2種類の最高速度があることがわかります。1つは「40km/h」など道路標識や道路標示で指定されている最高速度です。これは「指定速度」または「制限速度」と呼ばれています。
もう1つは、道路標識や道路表示がない道路において政令で定められた最高速度です。これは「法定速度(法定最高速度)」と呼ばれています。
2.高速道路の最高速度は何km?
高速道路では、速度が指定されていない区間での最高速度、つまり法定速度は普通乗用車の場合100km/hと定められています。大型貨物やトレーラー、牽引している車などの法定速度は80km/hでしたが、物流の停滞が懸念される「2024年問題」への対策の一環で、総重量8t以上の中型・大型トラックは2024年4月1日から法定速度が90km/hに引き上げられることになりました(トレーラーや牽引している車などの法定速度は80km/hから変更なし)。
法定速度よりも指定速度が優先
普通乗用車の高速道路の法定速度はほとんどの場合100km/hですが、道路標識などで「80km/h」など最高速度が指定されていることがあります。この場合は、法定速度の100km/hではなく指定速度が優先されます。たとえば、新東名高速や東北自動車道などの一部区間では、最高速度が120km/hに指定されおり、法定速度を上回っています。
なお、消防車や救急車などの緊急車両は指定速度よりも法定速度が優先されます。また、スピード違反を取り締まるパトカーは法定速度の100km/hを超えてもスピード違反にならないことが道路交通法で定められています。
3.一般道路の最高速度は何km/h?
一般道路では、普通乗用車の法定速度は60km/hです。また、道路標識や道路表示で「40km/h」など最高速度が指定されている場合は、高速道路と同様に法定速度よりも指定速度が優先されます。ただし、原動機付自転車や電動キックボードなどは指定速度が法定速度以上であっても、法定速度が優先されます。
最高速度30km/hの速度規制「ゾーン30」
一般道路では「ゾーン30」と呼ばれる速度規制が設けられていることがあります。ゾーン30とは、生活道路を含む定められたゾーン(区域)内は最高速度を30km/hに制限するとともに、抜け道としての通行の抑制などの安全対策を行うものです。これは、生活道路における歩行者や自転車の安全な通行を確保することを目的として導入されました。
また、「ゾーン30プラス」と呼ばれるものもあります。これは最高速度30km/hの制限に加えて、ポールやハンプ(道路上に設けられた凹凸)などの物理的デバイスを設置することによって侵入抑止や速度抑制、注意を促す安全対策です。ゾーンの入口には区域規制の標識や路面表示などでゾーン30であることが明示されていますので、スピード違反をしないように注意しましょう。
最高速度内の走行でも違反になることがある
他にも、道路交通法第70条には、安全運転義務として「道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定められています。
この安全運転義務違反に該当する行為の中には、安全速度違反もあります。交差点や横断歩道、見通しの悪い住宅街などの道路を徐行や減速をせずに、危険と判断される速度で走行するなどした場合は、最高速度内であっても「安全運転義務違反」とみなされることがあります。この場合、普通乗用車であれば違反点数2点・反則金9,000円などの処分となります。
4.最低速度も定められている
速度規制というと最高速度のイメージが強いかもしれませんが、安全で円滑な走行を守るため、最低速度も定められています。下図のように赤い円の中に青い数字と青い下線が引いてある道路標識は最低速度を示します。
- 出典
- 国土交通省
高速道路の最低速度
高速道路には「高速自動車国道」と「自動車専用道路」があります。高速自動車国道では対面通行区間でない本線車道の法定最低速度は50km/hと定められています(道路交通法施行令第27条の3)。また、道路標識や道路表示によって最低速度が指定されている場合は、法定速度よりも指定速度が優先されます。
一方、自動車専用道路では道路交通法によるに法定最低速度は定められていません。しかし、神戸淡路鳴門自動車道、伊勢湾岸道路、三陸自動車道などのように一部の自動車専用道路では最低速度50km/hの制限がかけられています。
一般道路の最低速度
一般道路は、道路交通法による法定最低速度は定められていません。ただし、渋滞の緩和など各都道府県公安委員会が必要と判断した場合には最低速度を指定することができます。警察庁の「交通規制基準」によると最低速度規制を実施する際の基準は次のようになっています。
- 橋梁部、観光地、名勝史跡等を通過する自動車の低速走行により、一般交通に著しく支障を及ぼす区間に限定して行うこと
- 最低速度の指定は、原則として50キロメートル毎時とすること
- 昼間の時間帯に恒常的な渋滞のある区間等では、原則として実施しないこと
5.スピード違反した時の罰則は?
場合は、超加速度や違反した道路、車両によって罰則が異なります。最高速度違反と最低速度違反それぞれの罰則を見てみましょう。
最高速度違反(速度超過)の罰則
反則金/罰金 | 違反点数 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
超過速度(km/h) | 一般道路 | 高速道路 | 一般道路 | 高速道路 | ||||||
大型車 | 普通車 | 二輪車 | 小型特殊車・原付車 | 大型車 | 普通車 | 二輪車 | 小型特殊車・原付車 | |||
1〜14 | 12,000円 | 9,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 12,000円 | 9,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 1点 | |
15〜19 | 15,000円 | 12,000円 | 9,000円 | 7,000円 | 15,000円 | 12,000円 | 9,000円 | 7,000円 | 1点 | |
20〜24 | 20,000円 | 15,000円 | 12,000円 | 10,000円 | 20,000円 | 15,000円 | 12,000円 | 10,000円 | 2点 | |
25〜29 | 25,000円 | 18,000円 | 15,000円 | 12,000円 | 25,000円 | 18,000円 | 15,000円 | 12,000円 | 3点 | |
30〜34 | 6ヵ月以下の懲役、または10万円以下の罰金 | 30,000円 | 25,000円 | 20,000円 | 15,000円 | 6点 | 3点 | |||
35〜39 | 40,000円 | 35,000円 | 30,000円 | 20,000円 | 3点 | |||||
40〜49 | 6ヵ月以下の懲役、または10万円以下の罰金 | 6点 | ||||||||
50〜 | 12点 |
一般道路では30km/h以上、高速道路では40km/h以上のスピード違反をすると、刑事処分となり、罰金または懲役が科せられ、前科がつくことになります。違反点数も6点以上つき、免許停止処分となります。
最高速度違反については下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
最低速度違反の罰則
車両の種類 | 反則金 | 違反点数 |
---|---|---|
大型車 | 7,000円 | 1点 |
普通車 | 6,000円 | |
二輪車 | 6,000円 | |
小型特殊車 | 5,000円 |
最低速度については、渋滞時や危険回避のためにスピードを落としたなど、やむを得ない場合は違反には問われません。しかし、意図的なノロノロ運転などは円滑な交通の妨げになり、スピード違反になることを知っておきましょう。
6.監修コメント
高速道路を走行しているときは速度超過ばかりを気にしがちですが、知らず知らずのうちに減速してしまうことにも注意が必要です。とくに気をつけなければいけないのが上り坂です。
軽自動車や国産のコンパクトカーなどには、エンジンの出力が弱く、上り坂で加速しにくい型式が多くあります。乗員する人数や積載物が多いときは、上り坂で速度が低下しがちです。
そのようなときは無理をせず、登板車線や左側の車線を走行するようにしましょう。