ジャッキアップは、ジャッキと呼ばれる道具を用いて車を持ち上げる作業です。
ジャッキアップは、プロの整備士だけでなく、一般ドライバーが日ごろのメンテナンス(タイヤ交換など)として行うこともあります。とはいえ、やり方を間違えると重大な事故につながる可能性もあるため慎重に行う必要があります。
今回は、自分でジャッキアップを行う場合の手順や注意点や、必ず理解しておく必要のある「ジャッキアップポイント」について詳しく解説していきます。
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ジャッキアップとは
「ジャッキアップ」とは、「ジャッキ」と呼ばれる道具を使い、対象を持ち上げる動作・作業を指します。車のジャッキアップでは、ジャッキを車体の下に差し込み、ネジの回転や油圧の力を用いて車体を持ち上げる方法が一般的です。
ジャッキアップは、タイヤ交換やタイヤチェーンの装着など、車体を持ち上げる必要のある作業の一環でおこないます。たとえば「走行中にタイヤがパンクし、現地で直ぐさまスペアタイヤに交換しなければならない」といったような状況下では、ジャッキアップの経験があると役に立ちます。
なおジャッキアップにはさほど力は必要ではなく、ジャッキを使えば、男性はもちろん力の弱い女性や高齢者の方であっても車を持ち上げることが可能です。
ジャッキの種類
ジャッキにはさまざまな種類がありますが、車用のジャッキとして代表的なものは「パンダグラフジャッキ」と「ガレージジャッキ」です。どちらも日常的に使われることの多いジャッキであり、カー用品店やホームセンターでも販売されています。
以降では、この2つのジャッキの特徴や違いについて解説していきます。
パンタグラフジャッキ
「パンダグラフジャッキ」は、コンパクトで持ち運びのしやすいジャッキです。緊急用としてあらかじめ車に付属されているジャッキもこのタイプであり(付属されていない車種もあります。)、別名「車載ジャッキ」とも呼ばれます。主に次のような特徴があります。
- 「ネジ式」のものが多く、ネジをクルクルと回して車体を上げる
- シンプルな構造であり、軽量・コンパクト
- 価格が安い
- 安定性に乏しい
軽量かつコンパクトであるため、車内に常備しておけるサイズですが、その分ジャッキアップした際の安定性に乏しいです。凹凸のある地面などで使うと倒れてしまうこともあるため、使う場所や用途が限られます。基本的にはタイヤ交換用であり、「夏用タイヤから冬用タイヤに交換する」、「パンク時にスペアタイヤに交換する」などの用途で使用するジャッキとなります。
ガレージジャッキ
「ガレージジャッキ」は、パンダグラフジャッキよりも一回り大きいジャッキであり、自宅のガレージなどに保管しておくタイプです。主に次のような特徴があります。
- 「油圧式」のものが多く、レバーを上下に動かし車体を上げる
- 比較的扱いは簡単
- サイズは大きめであり、重量も重め
- 価格がやや高め
- 安定性に優れる
何よりのメリットは、パンダグラフジャッキよりも安定性に優れることです。タイヤ交換はもちろん、オイル交換、マフラー交換、車体下部の点検など、パンダグラフジャッキよりもう一歩踏み込んだ作業が可能です。
リジッドラック
※この画像内の2本の赤い柱がリジッドラック(通称:うま)です。
「リジッドラック」は、ジャッキアップの際に、ジャッキと一緒になって車体を支える道具です。通称「うま」とも呼ばれます。
とくにガレージジャッキを使う場合は、前輪左右2輪(もしくは後輪左右2輪)のタイヤを2本同時に上げることになりますので、ジャッキ本体に掛かる負荷が大きくなります。そのため、リジッドラックを設置し、ジャッキ本体への負荷を分散してあげるのが基本です。リジッドラックの設置場所については、車体のサイドにあるジャッキアップポイント付近に1本ずつ設置するのが一般的です。車種によっては異なる場合がありますので、取扱説明書などを事前に確認してから作業を行いましょう。
なお、ガレージジャッキはメーカーによって設定できる地上高が若干異なります。水平に安定して支えるためにも、同じメーカーのリジッドラックで揃えるようにしましょう。
ジャッキアップポイントとは
「ジャッキアップポイント(ジャッキアップ指定位置)」は、車体下部にあります。車体を持ち上げる際に力を掛けるポイントとなり、車体とジャッキの接触点となります。このジャッキアップポイントにジャッキの先端を合わせて、ジャッキアップを行います。
ジャッキアップポイントは補強されており、車を持ち上げた際にその一点に車重が圧し掛かっても耐えられる造りとなっています。一方、誤ってジャッキアップポイントでない箇所に力を掛けてしまうと、耐えられずに接触面が破損してしまうことがあります。特に「オイルパン(エンジン下部などにあるオイルを溜めておく場所)」など脆い部分に力を掛けてしまうと、大掛かりな修理が必要となることもありますので、ジャッキアップポイントは慎重に見定める必要があります。
ジャッキアップポイントの位置は、車種や駆動方式によって異なります。車の取扱説明書に詳細な場所が記載されていることが多いので、まずは取扱説明書を確認しましょう。取扱説明書で確認できない場合は、ディーラーや販売店などに問い合わせてみて下さい。
なお、「パンタグラフジャッキ用のジャッキアップポイント」と、「ガレージジャッキ用のジャッキアップポイント」はそれぞれ別に用意されています。こちらも詳細な場所はお車の取扱説明書で確認して下さい。
ジャッキアップの手順
ジャッキアップの手順は、パンタグラフジャッキとガレージジャッキどちらを使用するかで異なります。それぞれの手順を以降で解説していきます。
パンタグラフジャッキを使用する場合
- ギアをPに入れ、サイドブレーキをかけ、エンジンを切っておきます。
- 「輪止め」などで、車が動かないように固定します。
- ジャッキアップポイントを確認します。
- パンタグラフジャッキのネジを回し、事前にある程度ジャッキを上げておきます(ジャッキアップポイントの高さになるくらいまで)。
- ジャッキアップポイントに、パンタグラフジャッキの先端を合せる形で設置します。
- ふたたびパンタグラフジャッキのネジを回し、ゆっくりと車体を上げていきます(タイヤが地面から少し離れるくらいまでが目安)。
なお、パンタグラフジャッキの場合は、4本のタイヤのうちどれか1本のみを上げて作業するのが基本です。
※パンタグラフジャッキを使ったジャッキアップ手順については、車の取扱説明書にその車ごとの詳細な手順が記載されています。
ガレージジャッキを使用する場合
※ガレージジャッキを使う場合は、前述した「リジッドラック」をあわせて準備しておきましょう。
- ギアをPに入れ、サイドブレーキをかけ、エンジンを切っておきます。
- 「輪止め」などで、車が動かないように固定します。
- ジャッキアップポイントを確認します。
- ガレージジャッキのレバーを上下に動かし、事前にある程度ジャッキを上げておきます(ジャッキアップポイントの高さになるくらいまで)。
- ジャッキアップポイントに、ガレージジャッキの先端を合せる形で設置します。
- ふたたびガレージジャッキのレバーを上下に動かし、ゆっくりと車体を上げていきます。
- 作業を行う高さまで車体を上げたら、リジッドラック(通称:うま)を車体下部に設置し、ジャッキに掛かる負荷を分散します。リジッドラックの設置場所については、左右サイドにあるジャッキアップポイント付近に1本ずつ設置するのが一般的です。
ジャッキアップをする際の注意点
ジャッキアップは危険の伴う作業であり、注意すべき点がいくつかあります。
ジャッキアップは交通の妨げにならない場所で行う
ジャッキアップは、交通の妨げにならない安全な場所で行います。かつ、水平で固く安定した路面の上で行ってください。凹凸のある路面や未舗装路などで行うと、ジャッキが上手く車体を支えられず倒れる危険性が高まります。ジャッキの上下に物を挟んだりするのも避けましょう。
また急なパンクなどで止むを得ず路肩に車を止めて作業しなければならない場合は、「非常点滅灯」を点滅させ、「停止表示板」を設置した上で作業を行いましょう。
ジャッキアップした車の下には絶対にもぐらない
ジャッキアップした車の下に頭や体をもぐらせて作業することは、非常に危険ですので避けて下さい。もしもジャッキが倒れ車の下敷きになると、死亡事故に繋がる恐れもあります。
車の下にもぐらないとできないような作業は、無理に自力で行おうとせず、ディーラーや整備工場など専門業者に依頼することをおすすめします。
できる限り付属のパンタグラフジャッキで行う
自動車メーカー側は、車両に「付属」されているその車種専用のパンタグラフジャッキで、ジャッキアップ行うことを推奨しています。(付属されているジャッキ以外のジャッキアップを一切禁止しているメーカー・車種もあります)
付属品でない市販のパンタグラフジャッキ、もしくはガレージジャッキで行うと、別途特別な工具が必要となることもあり、時にはかみ合わずに車両が損傷する恐れもあります。どうしても付属のパンタグラフジャッキ以外でジャッキアップする必要がある場合、一度ディーラーや販売店などに相談しておくのが確実です。
まとめ
ジャッキアップはそこまで力を使う作業でもないため、基本的には誰でも行うことができます。とはいえ決して簡単な作業ではなく、危険も伴います。行う場合は、しっかりと準備をして、焦らず冷静に作業を進めて下さい。また、思うようにジャッキアップができない場合は、作業を中断し、無理せず専門業者の助けを借りるようにしましょう。