排気量が大きいエンジンとは具体的にどういうエンジンなのでしょうか。大きくパワフルなエンジンであることに間違いはありませんが、排気量は大きければ良いというものでもありません。
ここでは、車の排気量の計算方法や排気量の大きさによるメリットとデメリットなどを解説します。
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1.排気量とは?
排気量とは、燃焼に用いられるシリンダー容積の合計のことです。一般的な車に搭載されているレシプロエンジンの内部は注射器のようなシリンダーとピストンで構成されており、複数のピストンが燃焼シリンダー内で上下動し、その動きを回転運動に変換してタイヤを回転させます。
燃焼シリンダー内でピストンが一番下まで下がった状態のシリンダー容積の合計がエンジンの総排気量になります。排気量の単位には、容積を表すcc(シー・シー)もしくはL(リットル)が用いられます。
マフラーから排出される量=排気量ではない?
排気ガスは排気量が大きいほど増えますが、排出ガス量=排気量ではありません。マフラーから排出される排気ガスは、燃焼シリンダーから発生した燃焼ガスが連続して排出されています。排気量にかかわらず、エンジン回転数を上げるほど単位時間あたりの排出ガス量は増えるため、排出ガス量=排気量と定めることはできません。
2.排気量の計算方法
エンジン排気量は車検証で確認することができます。また、自動車メーカーのパンフレットや車の仕様書である「諸元表」にも記載されています。「2,000cc」とされているエンジンでも、諸元表に記載される数値や実際の排気量は「1,986cc」のようにやや少ないのが一般的です。
また、エンジンの総排気量は「シリンダー内径面積×ピストン行程×気筒数」の計算で求められます。「シリンダー内径(ボア)」とはエンジンシリンダーの直径、「ピストン行程(ストローク)」とはエンジンピストンの移動量、「気筒数」とはエンジンの燃焼シリンダー個数を意味します。
シリンダーボア80.5mm、ピストンストローク97.6mmの4気筒エンジンの総排気量を算出するには「ボア半径×ボア半径×3.14(円周率)×ストローク」の式で1気筒あたりのシリンダー容積を求めてから、気筒数を乗算することで求められます。
計算例
(80.5mm÷2)×(80.5mm÷2)×3.14×97.6mm×4気筒=1,985,963.336㎣≒1986cc
排気量と馬力は関係する?
排気量が大きい車ほど多くの燃料を使用し、より多くの馬力を発生させることができます。馬力とはエンジンが発揮できる出力の単位で、1馬力は重量75kgの物体を1秒間に1m持ち上げる力に相当します。
ただし、馬力の算出にはエンジン回転数も関わるため、排気量と馬力は直接的な比例関係にはなりません。排気量が大きいほどエンジンを回す力(軸トルク)が強くなるのが正確な関係です。
3.車の排気量で何が変わる?
車の排気量が大きいほど、エンジンを回す力(軸トルク)が強くなります。結果として、以下のような要素に影響します。
- 加速力
- 快適性能
- 静粛性
- 排気ガス量
- 燃費
- 維持費
そのため、排気量が大きい車が一概に優れている、というわけではありません。用途や求める性能に合った排気量の車を選ぶことが重要です。
4.排気量が大きいとどうなる?
メリット | デメリット |
---|---|
・優れた加速力や登板力を発揮する ・車内の静粛性が高い |
・より多くの燃料を消費する ・メンテナンス費用がかさむ |
排気量が大きな車の代表はバスやトラックです。重い荷物を積む車や大きく重い車体ほど加速させるのにより大きな力が必要になるため、大型車になるほど大排気量エンジンが必要になります。車体重量が大きい大型乗用車や急な傾斜などの走行を想定した大型SUVなどにも大排気量エンジンが搭載されます。
排気量が大きいほどより大きな軸トルクを発揮できるため、より優れた加速力や登坂力を発揮します。また、エンジン回転数を低く保ったままでも走行できるため、車内の静粛性が高いメリットもあります。
一方で、排気量が大きいエンジンほど大量の燃料を消費し、より多くの排気ガスを排出するため環境汚染に繋がります。また、気筒数が多い大排気量エンジンは、エンジン自体が大型化かつ複雑化するため、メンテナンス費用がかさむデメリットがあります。
長距離運転や高速道路を走行するドライバーにとっては、優れた加速性能と静粛性が備わる大排気量車のほうが快適に長距離移動できるでしょう。また大量の荷物を積載する場合やキャンピングトレーラーなどを牽引する場合にも大排気量車が適しています。
5.排気量が小さいとどうなる?
メリット | デメリット |
---|---|
・狭い都市部でも扱いやすい ・環境に優しく、燃費性能に優れる ・税金や維持費が安価 |
・加速性能や快適性能には劣る ・高速走行時の車内の静粛性を保つのが難しい |
排気量が小さな車の代表は、軽自動車やコンパクトカーです。最低限の人員や荷物を載せた短距離の移動に適しています。車体が小さいため都市部でも扱いやすいのが特徴です。
また、少ない燃料で移動できるため環境に優しく、燃費性能に優れるのが最も大きなメリットです。
短距離走行が多いドライバーや大きな車の運転が苦手なドライバーに適していると言えるでしょう。維持費が安価であるため車に関わる出費を抑えたい方にもおすすめです。
一方で、小排気量車は加速性能や快適性能には劣ります。
急勾配では失速してしまう場合があり、高速走行では高いエンジン回転数を維持する必要があるうえ、エンジンノイズにより車内の静粛性を保つのが難しいなどのデメリットがあります。
6.排気量によって自動車税は決まる
排気量は車の維持費に大きく関わります。排気量が増えるほど税額が上がる自動車税および軽自動車税はその最たるものです。自動車税および軽自動車税は毎年4月1日時点での車の所有者に課税される税金であり、新車登録から13年が経過したガソリン車は環境に負荷をかけるものとして税額がおよそ20%増額されます。
軽自動車の場合
排気量660cc以下の軽自動車の自動車税は軽自動車税種別割と呼ばれ、各市区町村が管轄しています。自家用軽自動車の軽自動車税種別割額は登録初年度によって一律7,200円もしくは10,800円です。
排気量 | 2015年3月31日以前に新車登録された車の自動車税 | 2015年4月1日以降に新車登録された車の自動車税 |
---|---|---|
660cc以下 | 7,200円 | 10,800円 |
小型自動車の場合
5ナンバー車とも呼ばれる小型自動車は排気量2,000cc以下、ボディサイズが全長4,700mm×全幅1,700mm×全高2,000mm以下の車であり、一般的に小排気量車に区分されます。乗用小型自動車の自動車税種別割額は以下の表のとおりです。
排気量 | 2019年9月30日以前に新車登録された車の自動車税 | 2019年10月1日以降に新車登録された車の自動車税 |
---|---|---|
660cc超〜1,000cc以下 | 29,500円 | 25,000円 |
1,000cc超〜1,500cc以下 | 34,500円 | 30,500円 |
1,500cc超〜2,000cc以下 | 39,500円 | 36,000円 |
普通自動車の場合
3ナンバーに該当する普通自動車は、排気量が2,000cc超、もしくはボディサイズが全長4,700mm×全幅1,700mm×全高2,000mm超の車です。エンジンの小排気量化が進む現代では2,500cc超のエンジンを搭載する3ナンバー車は大排気量車と呼んでも差し支えないでしょう。乗用普通自動車の自動車税種別割額は以下の表のとおりです。
排気量 | 2019年9月30日以前に新車登録された車の自動車税 | 2019年10月1日以降に新車登録された車の自動車税 |
---|---|---|
1,500cc超〜2,000cc以下 | 39,500円 | 36,000円 |
2,000cc超〜2,500cc以下 | 45,000円 | 43,500円 |
2,500cc超〜3,000cc以下 | 51,000円 | 50,000円 |
3,000cc超〜3,500cc以下 | 58,000円 | 57,000円 |
3,500cc超〜4,000cc以下 | 66,500円 | 65,500円 |
4,000cc超〜4,500cc以下 | 76,500円 | 75,500円 |
4,500cc超〜6,000cc以下 | 88,000円 | 87,000円 |
6,000cc超 | 111,000円 | 111,000円 |
なお、令和5年の3月31日まで、電気自動車や天然ガス自動車などの環境性能に優れた普通自動車・軽自動車を新車として登録するとグリーン化特例」が適応されます。基準の達成度合いにより、おおむね25〜75%が翌年度の自動車税から軽減されるので、買い替えを考えている方は今がチャンスです。
なお、自動車税・軽自動車税については下記の記事でも紹介しております。あわせてご覧ください。
7.監修者(鈴木 健一)コメント
車は用途、サイズにあったエンジンの排気量が必要です。6人家族であれば、3列シートの大きな車が必要になります。そういった場合、排気量も車体に合わせて大きくなります。
また、最近はハイブリッド車が増えており、エンジン排気量は小さくなる傾向です。一方で、排気量は大きいものの優遇税制があるディーゼル・エンジンも存在します。維持費を考えれば、こうしたハイブリッドやディーゼル・エンジン車が有利になります。
ただし、エンジン車と比べると、ハイブリッド車やディーゼル・エンジン車は本体価格が高くなる傾向があります。
購入費用と維持費のバランスを検討し、排気量にこだわらずに、用途にあわせた車選びが良いのではないでしょうか。