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危険運転とは?当てはまる行為や対策、危険運転致死傷罪の罰則を解説

更新

2024/11/11

公開

2024/11/11

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運転中の交通ルール違反の中でも、人命を奪いかねない特に悪質な行為は「危険運転」と呼ばれ、極めて重い罰則が設けられています。当記事では、そんな危険運転に該当する行為や罰則、万が一危険運転をする車に遭遇してしまった際の対処法について解説します。

目次

    1.危険運転とは

    危険運転とは、酒や薬を摂取した状態での運転やあおり運転など、人を死傷させる可能性の高い危険な運転のことです。危険運転とそのほかの交通違反の最大の違いは、その行為によって人身事故を起こしてしまった際に「危険運転致死傷罪」が適用されるか否かにあります。

    具体的には、危険運転によって人を負傷させた場合は「危険運転致傷罪」、人を死亡させた場合は「危険運転致死罪」という罪に該当します。また、あおり運転は人身事故の有無に関わらず「妨害運転」の罪に問われるなど、一部の危険運転はそれ自体が罰則の対象となっています。

    危険運転致死傷罪とは

    車による人身事故には、これまで長らく「業務上過失致死傷罪」という罪が適用されてきたものの、社会問題化するあおり運転など、一部の危険な運転に対して厳罰化を望む声が多く見られました。

    そこで2013年に新たに成立した「自動車運転死傷処罰法」では、過失の域を超えた悪質で危険な運転による人身事故に対し、より罰則の重い危険運転致死傷罪が適用されるようになりました。

    ちなみに、令和5年に公表された警察庁の資料によれば、危険運転致死傷罪の適用件数は令和3年以降増加を続けています。違反の内容別では、信号の殊更無視とアルコールの影響による危険運転が特に多い傾向にあり、今後もさらなる取締りの強化が予想されます。

    出典
    交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について

    2.危険運転に該当する8つの行為

    危険運転にあたる行為は、自動車運転死傷処罰法の第2条によって以下の8つに分類されています。

    酒酔い・酒気帯び・薬物の影響下での運転(酩酊危険運転)

    酒や薬物を摂取し、判断力が低下した状態で車を運転することは、重大な事故につながる極めて危険な行為です。そのため、これらの運転は人身事故の際に危険運転致死傷罪が適用されるだけでなく、その行為自体が飲酒運転や麻薬等運転、過労等運転といった違反とみなされます。

    速度超過(高速度危険運転)

    適切に制御できないほどの速度を出して走行することも、事故を誘発する危険運転の一種です。こちらも人身事故の有無に関係なく、道路ごとの指定速度(指定速度表示がない道路では法定速度)を超えたスピードで走行した時点で「スピード違反(速度超過)」として罰則や加点の対象となります。

    運転技量不足(技能欠如危険運転)

    運転者自身に十分な運転能力がない状態で車を運転することは、同乗者はもちろんのこと、周囲の車や歩行者にとっても大きなリスクとなります。ちなみに、運転能力の欠如にあたるかどうかは、事故の際の状況や運転者の免許の有無、運転経験などをもとに総合的に判断されます。

    通行を妨害する目的で車や人へ異常に接近する行為

    周囲の歩行者や車に対して異常なまでに接近したり、走行中の車の直前へ故意に割り込んだりといった行為を、重大な事故につながる速度で行うことは危険運転の代表例です。こうした他の車や人の通行を妨害するいわゆる「あおり運転」も、その悪質性・危険性の高さから「妨害運転」として単独で厳しい罰則が設けられています。

    走行車の前で意図的な急停止

    重大な事故に発展しかねない速度で走行している車の前で、通行妨害を目的として車を「急停止」させることも危険運転に該当します。また、完全に停止していなかったとしても、近い形で危険を生じさせた場合は危険運転として罪に問われることになります。

    高速自動車国道・自動車専用道路で急停止

    多くの車がスピードを出して走行する高速自動車国道や自動車専用道路では、走行中に速度を落とすだけでも大きな事故につながりかねません。そのため、これらの道路の走行中に妨害目的で急激な停止や減速を行い、後方の車を停止・徐行させることは速度に関わらず危険運転とみなされます。

    赤信号無視(信号無視危険運転)

    危険運転には、赤信号を無視して危険な速度で走行することも含まれます。ただし、赤信号無視が危険運転とみなされるのは走行速度の危険性が認められた場合のみであり、信号の無視だけでは危険運転にはあたらない点に注意が必要です。

    通行禁止無視(通行禁止道路危険運転)

    「車両通行止め」の標識がある道路や、歩行者・自転車専用道路など、通行が禁止されている道路を危険な速度で走ることは通行禁止無視という危険運転にあたります。ほかには、一方通行の道路や高速道路を逆走することも、禁止された通行を行っているため通行禁止無視に該当します。

    3. 危険運転の罰則

    危険運転を行った運転者に対しては、その内容に応じた罰則が科されます。具体的な罰則は以下の表の通りです。

    被害者が負傷した場合 被害者が死亡した場合
    危険運転致死傷罪 15年以下の懲役
    (無免許の場合、6ヶ月以上20年以下の有期懲役)
    1年以上20年以下の有期懲役
    準危険運転致死傷罪 12年以下の懲役
    (無免許の場合、15年以下の懲役)
    15年以下の懲役
    (無免許の場合、6ヶ月以上20年以下の有期懲役)

    ここからは、それぞれのケースについて詳しく解説していきます。

    危険運転致死傷罪の罰則

    上記の6つの危険運転に該当する、被害者が正常な運転の「できない」状態で人身事故が起きた場合は、危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法2条)が適用されます。

    罰則の内容としては、被害者が死亡した場合は1年以上20年以下の懲役、負傷した場合には15年以下の懲役が科されます。また、運転者が無免許のケースでは、同法6条によりさらに刑が重くなり、負傷の場合も6ヶ月以上20年以下の有期懲役となります。

    準危険運転致死傷罪の罰則

    準危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法3条)とは、アルコールや薬物、特定の病気などの影響で、正常な運転ができない「おそれがある」状態での人身事故に適用される罪です。

    こちらに該当するケースでは、致死罪であれば15年以下の懲役、致傷罪であれば12年以下の懲役が科されます。さらに無免許の場合、致死罪は6ヶ月以上20年以下の有期懲役、致傷罪は15年以下の懲役へと刑が重くなります。

    妨害運転(あおり運転)の罰則

    2020年6月より施行された改正道路交通法では、妨害運転(あおり運転)に対して新たに罰則が創設されました。改正道路交通法のあおり運転の罰則は、交通の危険の「おそれがある」場合と、交通の危険を「実際に生じさせた」場合で分かれています。

    交通の危険のおそれがある運転には、急ブレーキや急激な接近など、妨害を目的としたさまざまな行為が含まれます。違反した場合には違反点数25点の加算(欠格期間2年の免許取消)と3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科され、前歴・累積点数があれば欠格期間が最大5年となります。

    一方で、あおり運転によって高速道路上でほかの車を停車させてしまったり、直接的に事故を起こしてしまったりした場合は、著しい交通の危険を実際に生じさせたとみなされます。こちらのケースでは、違反点数35点の加算(欠格期間3年の免許取消)と5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるほか、前歴・累積点数がある場合には欠格期間は最大10年まで延長されます。

    各罰則の位置付けは以下の表の通りです。

    行政罰 刑事罰
    交通の危険のおそれがある場合 違反点数25点加算
    (欠格期間2年の免許取消、前歴・累積点数があれば欠格期間最大5年)
    3年以下の懲役または50万円以下の罰金
    著しい交通の危険を実際に生じさせた場合 違反点数35点加算
    (欠格期間3年の免許取消、前歴・累積点数があれば欠格期間最大10年)
    5年以下の懲役または100万円以下の罰金

    4. 危険運転をされた際の対処法

    悪質な危険運転をする車に遭遇した際は、以下のような方法で身を守りましょう。危険運転を受けた直後は動揺して適切な行動をとれない可能性も高いため、日頃から対処法の確認・準備を行っておくことが大切です。

    安全な場所への避難

    危険運転に遭遇した際は、まずは相手の車から距離を取ることを最優先に考えましょう。とはいえ、急激にスピードを上げて逃げるのは、かえって事故につながってしまう可能性も高く逆効果です。

    より安全に接触を回避するためには、冷静に相手に道を譲った後、タイミングを見て人目のある駐車場やサービスエリアなどに避難することをおすすめします。相手から強く迫られたとしても、決して外に出たり、窓を開けてコミュニケーションに応じたりしてはいけません。

    相手の車や被害状況の撮影

    あくまで身の安全が第一ではあるものの、もし余裕がある場合には、危険運転の様子や相手の車を撮影しておくことでその後の通報などに活用できます。中でも、自動録画機能のあるドライブレコーダーなら、その場で焦って操作を行う必要がなく、危険運転への対処に専念することが可能です。

    また、危険運転を撮影されることは相手にとっても不都合なため、ドライブレコーダーは車外から見える位置に設置しておくだけでも危険運転を抑止する効果が期待できます。もしドライブレコーダーを搭載していない場合には、同乗者にスマートフォンでの撮影を頼むのもよいでしょう。

    警察への通報

    危険運転車から十分な距離を取ることができたら、すみやかに警察へ通報します。危険運転の状況や相手の車の車種、車体の色、ナンバープレートの情報などをわかる範囲で伝えた後は、指定された場所で警察の到着やその後の対応を待ちましょう。

    ちなみに、危険運転についての通報は通常の110番のほか、警察本部の相談窓口「#9110」でも受け付けています。こちらの番号では、危険運転に該当するかどうか判断が難しい事例や、比較的緊急性の低い事柄についても気軽に相談が可能です。

    5. 監修コメント

    高速道路を走行していると、あおり運転に思えるような車を見かけることがあります。そのような事態は追い越し車線で起こっていることが多い気がします。
    おそらく後ろから距離を詰めているドライバーは、追い越し車線を譲らない車にイラついているのだと思います。追い越し車線を走行し続けることは道路交通法違反にもなるので、自分に非がないと思っているのかもしれません。
    でも、その行為があおり運転などと判断されたら、重大な罰則が科されます。イラっとしたら一旦冷静になって、前方を走る車と距離をとるようにしましょう。

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    井口 豪
    監修
    井口 豪(いのくち たけし)

    特定行政書士、法務ライター。タウン誌編集部や自動車雑誌編集部勤務を経て、2004年にフリーライターに転身。自動車関連、ファッション、スポーツ、ライフスタイル、医療、環境アセスメント、各界インタビューなど、幅広い分野で取材・執筆活動を展開する。約20年にわたりフリーライターとして活動した経験と人脈を生かし、「行政書士いのくち法務事務所」を運営。自動車関連手続き、許認可申請、入管申請取次、補助金申請代行、遺言作成のサポート、相続手続きなど法務のほか、執筆業も手掛ける。

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